シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
蟲人族の里の目印になるものは二重螺旋のサボテンで、岩に囲まれたオアシスに里があるらしい。
結構高い位置からじゃないと岩と砂塵で確認し辛いのだとか……それで探しても中々見つからなかったわけだ。
というかサンラクも飛行手段持っているんだな。ウェザエモン報酬のロボットって燃費悪いらしいから、それ以外にも何か飛行手段があるのだろう。
「あれかな?」
二重螺旋のサボテンが見えたら里までもう少し。
結構長い道のりだったぞ。連結スキル無しだと移動に時間がかかるなぁ……
用事があるのはプレイヤーなわけだし、着替えずにこのまま入っても良いかな。
「目的地上空に到着。着地用意!」
真下とその周囲の安全を確認し、そのまま垂直落下。
ズドンと大きな音を立て、砂埃を巻き上げながら着地。ダメージはリジェネで即回復。
封晶の
ちょっと目立ってしまったが、滞在の許可を取るのにどうせ話しかける必要はあるのでまあいいだろう。
蟲人族は虫が苦手な人が見たら発狂しそうなくらいにはかなり虫っぽいデザインをしている。
腕の数も多いし、知らなかったらモンスターと勘違いして殴りかかっていたかもしれない。
「あの、すみません。ちょっとイムロンという人に用事がありまして……」
なるべく丁寧に刺激しないように周囲にいた蟻っぽい見た目の蟲人族らしい人物にに話しかける……悲鳴を上げて逃げられた。
あの、本当に敵対するつもりは無くてですね……うわ、なんかめっちゃ走って来たんだけど? あれってカブトムシかな? あっちは蜂?
いやあの、本当に襲うつもりはないんですよ。うわやめてこないで怖い怖いこっちが悲鳴を上げたいんだけど!?
三十分後。
「……何この状況?」
「あ、もしかして貴方がイムロンさんですか?」
「お、おう。確かに俺がイムロンだが……」
騒ぎを聞きつけて新たにやってきたのは壮年の男性アバター……にしては女性的な高い声をしているプレイヤー。
金ピカの金槌が若干ミスマッチではあるが、全体的に職人らしい雰囲気で統一されているアバターだ。
この人こそ俺がこの里にやってきた目的である聖槌の所有者イムロンだ。
「……で、この状況は?」
「えっとですね……」
辺り一面に倒れ伏す蟲人族の戦士達。
死んではいない。回復ポーションも念のためかけておいたからな。
「敵じゃないと言っているのに襲い掛かって来るから……その、攻撃する意思は無いと伝えるために盾で応戦したらこんなことに……」
「ええ……」
「グォオ……我ラガバグズ・プライドがコウモ容易ク……!」
初めは完全に守りに徹していたんだよ。でもどんどん数が増えていくからちょっと減らさないとって思ってついタワーシールドでこう……ゴンって。
数十キロの鉄の塊に超スピードで激突されたら人間はこうなる。蜂っぽい人とか腕がヤバい方向に曲がってた。
「あの、この状況で頼むのもあれなんですけど、イムロンさんに盾を作ってもらいたくてここに来たんですけど……」
「俺に依頼か……って、その燃える頭! その名前! もしや今話題の
「あんまり話題になってほしくはないですけどね……」
まあ今回は知名度のおかげで話がスムーズに進んでいるので悪いことばかりでは無いのだろうが……それでもなぁ……
タワーシールドと激しく正面衝突して撥ね飛ばされてボロボロになっていた蟲人族を救助。そしてイムロンを通してなんとか蟲人族の誤解を解く。
警戒されまくりではあるものの、蟲人族の思考回路は割と蛮族というか戦士っぽいところがあるようで、殴り合ったことでなんか戦士として認められたらしい?
そんなこんなで一応滞在の許可が出たのでイムロンと里の鍛冶場へと向かう。
「お邪魔します……」
イムロンと共に鍛冶場に入ると、そこには服を着た二足歩行の兎が一匹。
体の大きさはエムルちゃんよりも大きい。シークルゥと近いな。もしかして……
「ふむ、この恐ろしくもヴォーパルな気配は……もしかして君がぶんぶん丸かな?」
「あ、はい……えっと、もしかしてエムルちゃんのお姉さんでしょうか?」
「そうだとも。私の名はディアレ、エムルとシークルゥから君の噂は聞いているよ」
ディアレ……Dかな。B、C、D、M……まだまだ沢山兄弟姉妹がいそうだな……
「イムロンさんと一緒に行動しているんですか?」
「正確にはサイガ-0とだな。今はログインしていないが、サイガ-0もここに滞在してる」
謎のロールプレイをしながらイムロンがそう答える。
リーダーやサンラクから聞いた話だけど、イムロンは職人っぽいロールプレイをする人なんだとか。ゲームの楽しみ方は人それぞれだがちょっと面倒だな……
「要望通り盾は作ってやる……しかしわた、俺は金だけで簡単に動きはしねぇ……等価交換だ。あんたのところのリーダーから話は聞いている。鉱人族と遭遇し、そこに勇者の試練があるという情報を齎したのはあんただと! その他にも噂の剣聖っぽい剣とかウェザエモン素材の刀とか! 根掘り葉掘り聞かせてもらうわよ、ぜ!」
「等価交換ならマーニを上乗せでいけませんかね?」
「お金よりも情報よ!」
うーんめんどくさい。それとロールプレイめっちゃ簡単に剥がれるなこの人。
仕方ないので話せる範囲内の情報と盾に使えそうな素材を出す。
「何このデタラメなデメリット……!? ジークヴルムの角……!? リビルドの、その先……!?」
さっきから表情がコロコロと変わりまくって忙しい人だな。あとロールプレイは完全にどこかへと飛んでいった。
「フォルトレス・ガルガンチュラ……この装甲、もしや重ねれば重ねる程強く……!? こっちの殻は金属っぽい性質があって尚且つ柔軟性が高い……この骨、硬さはそこそこだけど……りそーす、せん……1000!!?!??」
職人ロールプレイは直ぐに行方不明になるけれど、流石はプレイヤーの中では最高クラスの鍛冶師と言われるだけあって、俺の要望を実現するべく思案する姿は正に職人のそれだ。
両親を思い出すな……ゲームとは言えその真剣さが確かに伝わって来る。
アイデアが纏まったところで代金を支払い、必要な素材を置いて里から去る。
さて、レベル上げに戻ろうか。
……
…………
………………
蠍、百足、蜘蛛……ひたすらにモンスターを狩りまくり数日が経過。
レベルが遂に140に到達したので一旦旧大陸に帰還する。
目的は勿論……アクセサリースロット!
『称号【後の祭り】を獲得しました』
やかましいわ。
「霊穴を八つも潰すなんて、ここから先は私にもどうなるか分からないよ」
「釘が強すぎて普通のアクセサリーにはもう戻れない……」
「おやおや嬉しいこと言ってくれるねぇ」
八つ目のアクセサリースロットを解放し、そして潰した。これで八本目の釘が装備可能となった。
それだけではない。新しい釘も用意してもらっている。
・
呪啓者及びその派生職でのみ装備可能。
ラピステリア星晶体とポストイ・ツァーベリルを用いて作られた
星空と空っぽの水晶で作られたこの釘は魔力をアブソーブ、ストック、コンバートする機能を持っている。
夜の間だけこのアクセサリーの効果が発動する。星の魔力を取り込んで装備者に流し込み、魔力の循環速度を引き上げることでスキル及び魔法のリキャストタイムを短縮する。また、装備者のMPが持続的に回復するようになる。
霊穴に直接突き刺して装備する
・竜滅の
呪啓者及びその派生職でのみ装備可能。
アムルシディアン・クォーツとトレイノル・センチピード・ドーラの外殻の合金と炉心を用いて作られた
ドラゴンさえも恐れ戦く合金で作られたこの釘は装備者の怯み耐性を補正し、怯まなかった場合に受けるダメージを軽減し、一定数値以下のダメージを無効化する強靭さを与える。また、衝撃によるダメージを受ける際、スタミナでダメージを肩代わりできるようになる。
使用者の任意で発動可能で、自身にHPとMPを削る毒を流し込む。このアクセサリーによる毒状態が続いている間、他の毒への耐性を獲得し、スタミナを1.5倍にする。
霊穴に直接突き刺して装備する
これまでずっと活躍してきた
「
うわこれヤバい。最終的な数値から更に2倍にする計算なのかよ。しかも竜滅の
神聖属性耐性低下のデメリットはモンスターの中に神聖属性を使う奴がまずいないので対モンスターならほぼデメリット無しだし一度くらえば暫くは耐性が付く。その他のデメリットはもう誤差みたいなものだ。
検証は必要だが、総合的にめちゃくちゃ硬くなっていそうだな。装備を整えれば本当にタンクみたいな戦い方ができるぞこれ。
これでもっと効率良く経験値を稼げるようになった筈だ。スキルを整理して残り10レベルも一気に上げてしまおう。
リソース1000の素材はレクイエムの二番目にレアな素材。ただし素材にすると絶対にヤバい呪いがつく
そして主人公はレクイエムの最高レアドロップをまだ使わずに残してあります。レア過ぎて使えずにいる模様
二つ以上の何かしらの親和性のある素材を一本の釘に纏める超技術。一本に普通のアクセサリーの二倍以上の効果が盛られている
ただし隠された装備条件としてかなりの呪い値を求められる……なお主人公は余裕で装備可能
【後の祭り】……アクセサリースロットを全て潰す、もしくはインベントリアのような取り外せないアクセサリーで埋めると獲得できる隠し称号。運営からの煽り