シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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行き当たりばったりで書いてます


暴徒とクラン

「ニトロ製薬は錬金術師が集まってできたクランで、複雑で奥が深いシャンフロの錬金術を極める為に活動しているんだ」

 

「俺のジョブは傭兵ですけど……」

 

「錬金術ってお金がかかるんだよねぇ……素材を集めるのに素材をバンバン使ってるから色々とカツカツで、薬局をやってるのもこうしないとお金が足りなくなっちゃうからなんだよ。だからそろそろ錬金術師以外にもメンバーを増やしたいと思っていたところなのよ」

 

 錬金術師は生産職の中では戦える方というのは調べたことがあるので知っている。恐らく錬成毒とか爆薬とかその辺りを使うのだろうが、確かにザコ敵と戦う度にアイテムを使っていたら赤字になってしまうだろう。

 

「ニトロ薬局はファステイアからフィフティシアまで、シャンフロの全ての街に出店している。だからうちのクランはある意味全ての街に拠点を持っているということになるんだ。もし君がうちのクランに入ってくれれば、薬局をセーブポイントや倉庫として自由に使ってもらっても構わないよ!」

 

 全ての街にあるんだこの店。俺にとってセーブポイントも倉庫も今一番欲しいものだ。

 

「クランメンバーとして時々素材集めやクエスト攻略の手伝いに呼ばれることもあると思うけど、それ以外は基本的に自由にしてもらって構わないし、逆に君が困った時はクランメンバーが力を貸してくれるよ。素材の売買とか装備品の製作とか、野良の知らないプレイヤーに頼るとトラブルになることも珍しくない。特にシャンフロを始めたばかりで知識が少なくて、クランに所属していなくて後ろ盾の無いプレイヤーなら尚更。その点うちらは信頼できるプレイヤーとのコネもあるし、取引の経験も豊富だからね!必ず君の助けになれるよ!」

 

 なんかこう、あまりにも都合がいいと何か裏があるんじゃないかと疑いたくなってしまうな。

 そんな思いが顔に出ていたのか二十六さんは更に話を続ける。

 

「そしてこれはうちらのクランが秘匿している情報なんだけれどね……実はうちらはあるNPCの組織との繋がりがあってね、まだ誰も就職できていない隠し職業を知っているんだ」

 

「隠し職業?」

 

「シャンフロでは普通に働いてその職業を習熟していくことでより上位の職になることができるんだけど、実は普通じゃない方法で就職できる隠し職業が幾らか発見されているんだ。シャンフロには膨大な量の隠し要素があって、サービス開始から今まで誰にも発見されていない、或いは発見しても秘匿されている隠し要素がまだまだ沢山存在すると言われている……そう、うちらが見つけた隠し職業もそのうちの一つ!もしかしたら君ならその職業に一番乗りできるかもしれないとうちは考えている」

 

 まだ誰も就職できていない隠し職業に一番乗り、というのはかなり魅力的な話ではある。実際シャンフロがここまで流行している理由の一つがその膨大な量の発見が困難な隠し要素が存在するが故に誰でもそれの第一発見者になれる可能性があるところだと聞いたことがある。まあ隠し要素が多すぎ難解すぎというのはシャンフロの悪い所としてアンチがよく挙げる問題点でもあるのだが。

 

「その隠し職業はどんなものなんですか?」

 

「それはうちのクランのメンバーだけの秘密ということで……詳しく知りたいならうちらの仲間になってからだねぇ」

 

 まあそうだよな。クランが秘匿している情報をそう簡単に部外者に教えるはずがない。

 

「……しかし、なぜ急に秘匿している情報まで出して勧誘を?」

 

「シャンフロにおいてプレイヤーにとって有益な隠し要素に関する情報は上手く取り扱えば莫大な利益を生み出せる……うちのクランはさっき言った通りお金が沢山必要なの。だから何としてもその隠し職業の就職条件を特定して、その情報で一儲けしたいってわけ。君がうちのクランに入ってくれればうちらは儲かるし、君は様々なサービスを受けつつ誰よりも早くその職業に就ける。win-winだねぇ」

 

「なるほど……」

 

「あとぶっちゃけ3億7000万マーニ即金で払うのはうちのクランじゃ無理だから、クランの倉庫を使わせてあげるから必要な分を必要な時に買わせてほしいんだよねぇ……」

 

「ああ、そういう……」

 

 よく考えたら数億マーニとかとんでもない金額をそんな簡単に用意できるわけが無い。まあ今すぐに億単位のお金が欲しいわけじゃないしそれはいいのだが。

 

「それと、さっき言ったうちらと関わりのあるNPCの組織、呪いの装備に関係があってね……そこのお抱えのNPCの鍛冶師はめちゃくちゃ鍛冶が上手いし当然呪いの装備の扱いにも長けているんだ。でも気難しい人で、一度しか発生しないユニークシナリオをクリアしたうちが紹介しないとプレイヤーからの仕事は断られちゃうんだよねぇ……」

 

 ……なるほど、何となくわかってきたぞ。恐らく俺が持っている黒蝕の喪白剣くらいめちゃくちゃ重いデメリットを持つ呪いの武器の所持がその隠し職業の就職条件の一つなのだろう。

 この人たちは恐らく呪いガチャに失敗しまくっていて自力でその条件を満たすことができず、条件を満たせそうな呪いの装備を持っている俺をクランに引き込んで代わりにやってもらいつつ、その情報を有効活用したいと、そういうことなんじゃないだろうか。

 何か嘘を言っている訳じゃないなら俺には何の損も無いはずだ。それにその鍛冶師のNPCというのも気になる。

 

「……断る理由はありませんね」

 

「よし決まり!申請送るから、それでクランに入れるよ」

 

「指先一つで入れるものなのか……いやゲームならそれが普通か……」

 

 このゲームのことだからクソ長い契約書を読んでサインして特定の施設に提出までしろとか言われても驚かないぞ。

 というわけでクラン「ニトロ製薬」に入ることになった。あとついでに送られてきた二十六さんのフレンド申請も承認する。

 

「早速クランメンバーに新しい仲間が増えたことを知らせないとねぇ……あ、そうそう忘れるところだった。とりあえず水晶群蠍の素材二匹分は即金で買わせてもらうね」

 

 ポンッと7000万マーニのやり取りが行われ、一攫千金ならぬ一攫万金という実績を獲得した。実績なんてあったんだなこのゲーム。

 

「それで隠し職業なんだけどね、まずフィフティシアを拠点として活動しているNPCの組織、「呪啓者ギルド」の団長さんに会わないといけないんだよね」

 

「名前怖……」

 

「ああそれと、恐らくなんだけど無職であることも条件っぽいんだよねぇ……呪啓者になるならぶんぶん丸くんは傭兵ギルドを抜けることになると思うけど、それでもいい?」

 

「抜けたら何かデメリットがあるんですか?」

 

「職業にもよるけれど、その職業限定のスキルが使えなくなることが多いね。あとその職業の施設も利用できなくなるかな」

 

 職業限定のスキルとかあるのか?もう習得しているのか?まあその時になったらそのギルドとやらを抜ければいいだろう。別に入った記憶もないし利用したことも無いんだが、多分最初に傭兵を選んだ時点で自動的にギルドに入っているのだろう。

 

 呪啓者とか鍛冶師とか気になることは多いが、その為にもまずフィフティシアまで行かないとな。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 早速ニトロ薬局で購入した「ハイエスト・エナジーバー(エンパイアビー・ハニー味)」をもしゃもしゃと食べながら奥古来魂の渓谷を進む。手のひらサイズの直方体のパサパサとしたほんのりと雑に甘い食べ物だが、こんな見た目でも結構強力なSTMバフがかかる上に直ぐに食べられて空腹値も結構回復するし長期間保存も可能というとんでもない性能の食品である。薬剤師と料理人の二つのジョブを習熟することで作れるようになるんだとか。欠点は口の中の水分が持っていかれて口の中がパッサパサになることくらいか。

 

「薬局に食べ物売ってて助かったな……」

 

 最悪食べ物を店員に買ってきてもらうか餓死するかの二択だったからな。首から血を噴き出しているやつとかプレイヤーでも飲食店には入れたくないだろこれ。

 

 蠍落としで一気にレベルが上がったことで変化したスキルを確かめつつ、いけそうならボスも倒してしまおうと思いやってきたのだが……なんか自分の周りだけ空気が澄んでいる。

 

「既に呪われているからもう呪われないってことか?」

 

 聖水を買わなくて済んだので呪いも悪いことばかりではないな。悪いことがでかすぎるが。

 

 アンデッドとの遭遇率に補正と言うだけあって、普段はノロノロと歩いていて結構近づくまで反応しないゾンビが結構遠くから走って来ているのが見えた。

 

「お前で新しいスキルを試してみるとしようか……「ブリンク」、「ホバリング」!」

 

 「フリードリフティング」から進化した回避スキルは正しく名前の通りの効果を持つ。回避モーションが特殊モーションとなり、俺の姿が一瞬消える。モーションの終わり際に再び姿が現れるが、連続で回避を行うことで再び消える。消えたり現れたりを繰り返しながら高速で移動する姿は点滅(ブリンク)しているように見えるだろう。因みに見えないだけでダメージは受けるし連続で発動するとめちゃくちゃ速いので制御をミスると死ぬ。

 

 「エクストリームランニング」から進化した「ホバリング」は名前の通り空中浮遊を可能とするスキルだ。ただし浮けるのはほんの数十センチだし、高い場所で発動するとその高度を維持可能だがスタミナがアホみたいな勢いで溶ける。というか地上で発動してもスタミナ消費がエグイ。体を傾けたらその方向へ滑るように移動可能だが、歩くより多少早い程度の速度しか出ない。本当に浮くだけのスキルである。

 

 ただし、地面を蹴らずに加速できるスキルと組み合わせた場合──

 

「待って待って速い速いハヤイッ!!?」

 

 「ブリンク」は発動中に回避しようとした瞬間にその方向へ殺人的な加速が発生する。そしてモーションの途中から加速が無くなり、終わり際には足の裏が地面と接触して滑るモーションが行われて摩擦によって減速する訳なのだが、「ホバリング」によって浮いている間は当然地面との摩擦が無くなり、そこにある減速要素は空気抵抗だけになる。

 殺人的な加速に対して空気抵抗による減速が全く追い付かず、制御は困難を極める。しかも「ホバリング」の姿勢安定効果が働きすぎていて、曲がろうとすると遠心力で内臓が吹っ飛んでいくんじゃないかというレベルの急旋回が可能であり、そして「ブリンク」は反射的な動きにも反応する為、一度ビビッて変な動きをしてしまうと連鎖的にめちゃくちゃな軌道ですっ飛んでいくことになる。

 

「ウオァアーッ!!?」

 

 俺は高速で点滅しながら紙にボールペンでぐちゃぐちゃに線を引いたような軌道で渓谷内を跳ね回ることになった。一応「ホバリング」の効果で壁とかにぶつかりそうになったら若干磁石のように反発する力が働くのでそれを感じた瞬間に旋回することで崖に衝突して死ぬことは回避できるのだが、曲がる方向をミスればその勢いのまま崖を登って行ったりそこから反射的に戻ろうとしたせいで鋭角で急旋回して地面に向かって叩きつけられそうになったりと全然制御できていない。

 

 一瞬見えたゾンビの顔は凄く困惑しているように見えた気がした。




ここまでユニークに全然関わりが無かった主人公がようやくユニーク要素に関わり始めます。遅くない?
「ブリンク」は簡単に言ってしまえば猟犬のステップみたいな回避スキルです。これの執筆途中でエルデンリングのDLCが来たのですが、執筆が楽しすぎて投稿時点でもまだプレイできていません

ユニークシナリオ「呪われし名匠の病」
フィフティシアの裏路地でひっそりと営業している開拓者お断りの鍛冶屋の店主から受けることができるユニークシナリオ
このユニークシナリオを開始するにはどうにかしてその開拓者嫌いの鍛冶師と出会い、病を患っていることを見抜いて説得する必要があるのでかなりのコミュ力が求められる
その上で治療に必要な薬を用意するのも調合するのもかなり難しく、高レベルの錬金術師の力が必要になる
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