シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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スタミナ特化の本領発揮


暴徒とオンリョウ

 暫く「ブリンク」と「ホバリング」の同時発動は封印しておくことにした。あんなの人間が操作できるもんじゃ無いと思う。ネフホロで二、三ヶ月前に急に流行った翡翠構築(カワセミビルド)に近いものがある。あれの初速から最高速版。

 俺がネフホロで良く使っている機体は速さというより軽さ最重視でちょっとブースターを吹かせばいきなり最高速度に達するように構築してあるのだが、あれの最高速度はそこまでではない。ブースターを積みまくることで多少重くなってでもそれ以外を削って加速力を確保しつつ最高速度を重視したカワセミとは似ているようで違う構築である。

 

 話を戻すと、同時発動しなければ「ブリンク」は単体ならなんとか制御できる速度だ。動画で見たレベル99の軽戦士の「フォーミュラドリフト」とやらと比べれば瞬間的な速度ではあちらの方がヤバそうだし、このくらいは制御できなければここから先一発も被弾せずに戦うことは不可能だろう。

 

 首から血を撒き散らしながら全身から黒いオーラを発する大男が点滅しながら移動する姿があまりにも不審者すぎて何回かすれ違ったプレイヤーに襲われたりもしたが、なんとか振り切って渓谷の奥へと進んだ。

 

「明らかに霧が濃いというか、霧がドームみたいになってるな……ここがボスだろう多分」

 

 入ったら即呪われそうなくらい瘴気で満ちている黒いドームに入ってみると、その中心に居たのは人間の頭蓋骨と肋骨の一部、そして異様に大きい右腕の骨を持ち、足りない部分をドス黒い瘴気のローブで補ったかのような体を持つおおよそ人型のアンデッドだった。右手には悪趣味な骨の杖を持っていて、何らかの魔法を使ってきそうな気がする。杖の先端に沢山ついてるの下顎の骨かあれ?

 

「実体があるのかないのかわからんが、こいつなら関係ないか」

 

 黒蝕の喪白剣を構えて歌う瘴骨魔(ハミング・リッチ)と相対する。霊体に干渉可能なこの武器なら幽霊系のモンスターでも問題なく斬れる。

 

 歌う瘴骨魔が杖を振るうと瘴気が前方広範囲へと拡散する。これまでのボスよりも攻撃範囲が広い!

 

 「ブリンク」を発動して連続回避で歌う瘴骨魔の背後へと大きく回り込む。進化してスタミナ消費がさらに増えたが、それを補うスキルだって成長している!

 「回避術【走兎】」、「活力湧出」、「フューエルコンバート」、「ハイエスト・エンデュランス」、「パーシスタンド」、「ヨコセ」、あとエナジーバーにスタミナポーション……よし、これなら暫くは回避し放題だ!

 

 姿が消えたり現れたりしながら高速移動するだけでも相手を攪乱する効果があるようで、歌う瘴骨魔は狙いを定めることができないのか杖を構えたままオロオロと首を振っている。どっちが幽霊だよほんと……

 「ホバリング」を一瞬だけ起動して、姿が消えている一瞬の間に消える直前に向かっていた方向と逆の方向へとむりやり体をひねって滑れば、俺を見失った歌う瘴骨魔が俺が消える直前に向かっていた方向へと視線を向け、逆の方向へ移動していた俺に背中を見せてくれた。

 

「「剣舞【紡刃】」、「合気」、「フィドラー・シザーズ」、「ハキダセ」……「獣鏖無尽」!」

 

 呪いの剣の影響なのかスキルのエフェクトが全部ドス黒いものになっているのは置いといて、バフを可能な限り積んだ「獣鏖無尽」の一発目を歌う瘴骨魔の首に叩き込む。

 黒と赤の飛沫を巻き散らしながら歌う瘴骨魔を切り刻んでゆく。スタミナが続く限り継続する乱舞から逃れようとする歌う瘴骨魔だが、「ハキダセ」によって武器に纏わせた血が武器を振るう度に飛び散り、しかもそれにも黒いエフェクトがかかっている。つまり攻撃スキルが血の刃と一緒に飛んでいるという判定になっているようで、少し距離を話した程度ではこの連撃からは逃れられない。

 それとなぜか左手にも血が纏わりついているのだが、多分「フィドラー・シザーズ」の素手を武器としても扱うことができる効果で武器判定になっているせいだろう。多分。

 

 しかしずっと俺のターンとはいかないようで、歌う瘴骨魔の姿が掻き消え、少し離れた場所に再出現する。

 

 歌う瘴骨魔の握る杖に六つのドス黒い炎が宿り、それぞれ炎は頭蓋骨に、煙は体に変化してゆく。

 本体も含めて七体に増えた歌う瘴骨魔がそれぞれ異なる悍ましい歌声を発する。なるほど、だからハミングというわけか。

 

「ここからは七対一か……流石に一体一体は脆かったりとかそういう弱点はあるはずだ」

 

 それぞれ違う武器を手に持つ歌う瘴骨魔の分身の内五体が突撃して来る。弓を持つ分身と杖を持つ本体は後方から支援するつもりのようだ。

 この前衛の数、ソロだと真っ先に本体を倒すというのはかなり難しそうだ。だが……!

 

「最近気が付いたんだけどさ、このゲームスタミナと声の大きさが比例しているっぽいんだよな」

 

 肺活量がスタミナ依存というのは言われてみればおかしな話ではない。

 ならばスタミナに特化したプレイヤーにとって最大の武器とは何なのか?それは──

 

「「ダイナブレス」、そしてこれが俺の新たな必殺技……スゥー……「ソニックブレス」だぁああああああああああああああああ!!!!!」

 

 本当に俺の喉から出ているのかと疑いたくなる程の音量のシャウトが歌う瘴骨魔のハミングを掻き消す。

 「劈く咆哮」から進化した「ソニックブレス」は声によって凄まじい振動を発生させることで前方広範囲を攻撃することを可能としている。更に肺活量の強化という特殊なバフがかかる「ダイナブレス」によって音量を上げられたそれは目の前まで迫っていた歌う瘴骨魔の分身五体を激しく揺さぶり、消し飛ばした。

 

 遠く離れていた弓の分身と本体も悶え苦しんでいる。当然このスキルもスタミナが続く限り叫び続けることが可能なのでそのまま声を浴びせ続ける。

 進化元が相手を怯ませるスキルなので拘束性能も高く、特に柔らかい相手や霊体にはこのスキルだけで完封が狙える。他プレイヤーが周囲に居ないことを確認してからじゃないと使えないのが欠点だ。

 

 暫く声を浴びせ続ければ弓の分身もポリゴンとなって消滅した。本体は死ぬ前に硬直が解けたようで、杖を動かすと俺の周囲の地面に闇が広がり、そこから無数の黒い腕が出現して俺を包囲して捕まえようとする。

 

「スタミナを使いすぎたか……」

 

 仕方ないので「ソニックブレス」と「ブリンク」を中断して「リスタート」を発動。後方へ凄まじい勢いで加速して吹っ飛び、黒い腕の追跡を振り切る。

 「ブリンク」がリキャストタイムに入ってしまったことで機動力が大幅に落ちたが、その他のスキルはまだ効果時間が残っている。

 

「「六艘跳び」、「アイドルリダクション」、「アクロバット」、「穿孔発条」……!」

 

 「穿孔発条」は溜めている間スタミナを消費し続ける攻撃スキルであり、レベルが上がるほど時間当たりのスタミナ消費量と溜められる時間が延びていく。そしてスタミナの消費量に応じて威力とヒット数が増加する。ただし最大まで溜まればその時点で威力とヒット数の増加は止まり、そこからはただスタミナを消費して溜めを維持するだけとなる。

 その為発動するタイミングの判断が難しいスキルだが、その威力は俺が持つスキルの中でもトップクラスだ。

 

 「六艘跳び」の跳躍力強化を利用して瘴気の弾幕を次々と飛び越える。敏捷初期値でもこれくらい鈍い攻撃なら避けるのはそう難しくはない。

 

「血が足りない、ならこれで……!」

 

 アクセサリーの豊穣と節制の円環を装備し、黒蝕の喪白剣の刃を左手で握りしめる。左手から赤いポリゴンが噴き出し、自分のHPがガクンと減るが、即座に豊穣と節制の円環の中にセットされたハイ・ポーションによって即座にその分のHPが回復する。

 黒蝕の喪白剣によるダメージは血液ゲージとして剣に蓄積される。歌う瘴骨魔が血を流さないせいで枯渇しそうになっていた血液ゲージが俺の血によって回復する。

 

「これで決める!「ハキダセ」ェッ!」

 

 再び赤黒い血が剣を包み込む。これ本当に対象年齢15歳なのかという疑問は投げ捨てて「六艘跳び」最後の一歩で真っ直ぐ歌う瘴骨魔に突撃する。

 歌う瘴骨魔は瘴気を球状に纏めてそれを俺に向ける。どうやら迎撃を選んだようだ。

 

 勢いよく放たれた瘴気の弾丸を角度をつけた剣の腹で受け止める。STR初期値でできるか少し不安だったが、瘴気の弾丸は剣の腹を滑って俺の後方へと飛んでいった。

 これが「ハキダセ」の効果の内の一つ、武器が弾かれなくなるというシンプルに見えて思っていたよりも結構ヤバい効果である。この通り、攻撃がぶつかり合えば弾かれない性質によって相手の攻撃だけが一方的に弾かれるのだ。それが魔法であろうと血で滑って俺に直撃することを防いでくれる。

 

 なんとか射程圏内にまで踏み込めた。後は狙いを定めてこいつを解き放つだけだ。

 

「その首、貰い受ける!」

 

 狙いは歌う瘴骨魔の首。溜め続けた力を解き放ち、「穿孔発条」をその首に突き立てた。

 「ドリルピアッサー」から更に荒々しく進化した赤と黒の螺旋のエフェクトが歌う瘴骨魔の首を貫いた。それでも回転の勢いは止まらず、首の骨を砕かれて捥げた首を肋骨に繋ぎとめようとする瘴気にも穴を空け、更に空いた穴を内側から削って広げてゆき、最終的に首から上が丸ごと千切れ飛んでいったことで歌う瘴骨魔のHPが尽きてポリゴンとなって砕け散った。

 

 歌う瘴骨魔がこの瘴気の発生源だったのか、周囲の瘴気のドームが薄くなって先の景色が見えるようになった。

 

「次は血が流れている毒が効く相手だといいなぁ……」

 

 ボスのドロップアイテムを拾って次の街へ進むことにした。次の街はどんなところかな?

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 エイドルトはあちこちに水晶が用いられている街で、建物にも照明にも水晶が用いられている。

 ニトロ薬局エイドルト支店担当の男性プレイヤー、『オカモットー』によると、水晶群蠍がどんどん水晶巣崖を広げているらしく、水晶を放置していると街が水晶に侵食されてしまうから水晶を間引いて加工しているんだとか。水晶の装備が安く買えるらしいが、ここまで来れるプレイヤーは大体装備が整っているのであまり売れないらしい。

 

 そしてこの先のエリア、去栄の残骸遺道にはゴーレムが主な敵として出現するんだとか。血も流れていないし毒も効かない相手だったよ畜生!




原作主人公は兎と仲良くワイワイしているのにうちの主人公は一人です。コミュ障なので……
何の躊躇も無く自傷できるあたりこの主人公も孤島経験者ということです

ニトロ製薬メンバーの名前にはある共通点が……言われなくてもわかると思いますが、爆発するもの関係です
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