シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
「実はこのエリアのボス、かなり簡単な倒し方があるんだよね」
リーダーによると去栄の残骸遺道のボス、オーバドレス・ゴーレムは山のように巨大なゴーレムであり、表面に大量に張り付けられた瓦礫によって攻撃が中々通らないし、纏う素材によって性質がランダムに変化するという終盤のボスらしい厄介なボスなのだが、そいつをお手軽に倒す方法があるのだという。
なんでもゴーレムは頭の上には必ず巨大なホイールを乗せているらしいのだが、そのホイールを支えている支柱を破壊すると、重力に引かれて落下したホイールがゴーレムの頭部に直撃して即死するらしい。
「なんですかそのアホみたいな弱点は……」
「しかもドロップアイテムがこのエリアのレアアイテムの中からランダムで選ばれるから頻繁に狩られていて、今では討伐までのタイムを競うタイムアタックも盛んで、ボスを一分で倒したパーティも居るらしいわ」
「うちらもクランのメンバーを集めてタイムアタックしてみたことがあるけれど、上の方へ攻撃が届かなくて大変だったねぇ」
「最終的に普通に爆殺した。爆弾代で大赤字だけど沢山爆破できて楽しかった」
歩きながら作戦会議もどきをしていると、遠くに天井に大きな穴が空いている円形のフィールドが見えてきた。
「あそこがボスエリアだよ」
「もしかしてあの瓦礫の山が……?」
「そう、あれがオーバドレス・ゴーレム。まだあれは寝ている状態で、戦うときは起き上がってもっと巨大になるから覚悟しておいてね」
マジかよ、起き上がっていない状態でも今まで戦ってきたモンスターの中でもトップの大きさだぞ?
作戦会議もどきで作られた凄く雑な作戦通りにやればオーバドレス・ゴーレム討伐TA一分切りも狙えるとかリーダーが言ってたけど、俺としては急いでクリアするより安定をとりたいのだが……まあいいか。楽しそうだし。
「はい、これ爆弾。ここを持ってグッて押し込んだらくっつくから、カチって音が鳴るまで押したら直ぐに離れて物陰に隠れてね」
作戦の内容はとてもシンプル。下で錬金術師組が派手に色々やってヘイトを稼いでいる間に俺がゴーレムの体を登って爆弾をセットして逃げるだけである。まあ丁度いいスキルもあることだし、早速行ってみようか。
ボスエリアに足を踏み入れれば、このエリアの出口を塞いでいた瓦礫の山がガラガラと崩れ落ちて何かが起き上がる。
「でっか……」
無数の重機とガラクタと瓦礫をごちゃ混ぜにして雑に高く積み重ねたかような……というか実際そういうものにしか見えない。初見だと何をどうしたら勝ちになるのかもわからなかっただろう。去栄の残骸遺道のボス、オーバドレス・ゴーレムがその山のような巨体で俺たちを見下ろしていた。
「ヘイトはうちらが稼ぐ!合図したら登って!」
「はい!」
錬金術師三人がインベントリから取り出したのは……何あれ?筒?
「
筒からなんか発射されて……ゴーレムに命中して粉末状の何かが飛び散る。
「発射!」
「これ作るの面倒なのにあんまり出番無いのよね。発射!」
あれ迫撃砲なの?また何かが筒から発射されて──
ズドォオオオオン!!!!!
「よし!ぶんぶん丸くんGO!」
「あ、はい」
……巻き込まれないように裏から急いで登るか。
今ので錬金術師三人にヘイトが向いたようで、三人に向かって瓦礫を次々と発射して攻撃するゴーレムに「ブリンク」で近付き、裏側に回り込む。目的地はあの瓦礫の山の頂上、あの巨大なホイールの支柱を破壊する!
「「ブリンク」は切って……「ホバリング」、「六艘跳び」!」
ホバリングの姿勢安定効果によりほんのわずかな出っ張りでもあればそこを足場にスイスイと登っていける。これだけ凹凸があれば手を使わずに上ることも余裕だ。仮に足を踏み外してもスタミナの消費は激しくなるが、空中で高度を維持できるので落下することはない。
ある程度登ったところで流石に俺に気が付いたのか、何らかの重機のアームのようなものが伸びてきて俺を叩き落とそうとする。
「普通によじ登ってたらあれで落とされるというわけか」
瓦礫を蹴ってゴーレムから離れるように跳躍し、アームの叩きつけを回避する。そしてホバリングで高度を落とさずに空中を移動し、アームが届かない場所を選んで再び瓦礫の山の斜面に着地する。
「飛べるって便利だな。スタミナ消費がエグいが……」
スタミナバフを重ねまくっても短時間の飛行でスタミナがだいぶ減る。スタミナが尽きる前にさっさと登ってしまおう。
反対側で見えないが、多分錬金術師三人がヘイトを取ってくれているのだろう。あまり攻撃されることも無く、らくらく瓦礫の山の登頂に成功する。
「よっと、到着……えーっと、この接合部が壊せるんだったな」
巨大なホイールを支える支柱の根元の部分にあるパーツにリーダーから預かった爆弾をセットする。カチってなるまで押し込んで……よし、くっついた。
爆弾から小さくシューっと音が聞こえてきたので急いで二つの支柱の真ん中にあるゴーレムの頭であろう出っ張りを乗り越えて反対側へと向かう。
間にゴーレムの頭を挟んだ反対側へと着地したタイミングでゴーレムの頭の向こう側から爆発音が響き渡り、大きな音を立ててホイールがぐらつき始める。向こう側の支柱の破壊には成功したようだ。
「こっちにも爆弾をセットして……退避!」
やることはやったので瓦礫の山を全速力で駆け降りる。下に居る錬金術師三人が居る方向に降りたら巻き添えで爆殺されそうなので降りる時もその反対側を降りる。
下山中でも油断せずにゴーレムの攻撃が来るのを警戒していると、頭上から爆発音が聞こえてきた。
「どうだ……?」
支柱がメキメキと音を立てて、巨大なホイールが傾いて……落ちた!
ホイールはそのまま真下へと落下し、瓦礫の山の頂上に直撃した。巨大な金属と金属がぶつかり合い、これまでの爆発にも劣らない凄まじい轟音が鳴り響く。
瓦礫の山が震え、崩れ落ちてゆき……そして最後はその全てがポリゴンとなって爆散した。
「おおっと!?」
足場にしていた瓦礫が消滅したことで急に空中に放り出されることになったが、まだスタミナは残っている。落下速度をゆっくりにして、ふわりと安全に大地に着地した。
「記録は……54秒!」
一人で挑んでたら数時間……下手したら数日かかっていたかもしれない相手がこんなにあっさり死ぬとは。これが情報と仲間の大切さというものか……
「お疲れ様ー!新記録達成だねぇ!」
リーダーたち三人も無事だったようだ。魔法使い派生の生産職なのにボスのヘイトを集めて耐えられるとは、やはり強いなこの人たち。
「ヘイトを集めてもらえたのであまり妨害されずに簡単に登れました。ありがとうございました」
「崖を登ったり空を飛んだり、便利なスキルだな。どうやって覚えたの?」
「えっと、オフロードから進化したスキルですね。泥沼とか歩けるようになるやつです」
「オフロードってそんな進化するの……?ライブラリに知られたらきっと全振りビルドの場合のスキルの進化先を全部知りたいとか言われて検証に引っ張りだこになるでしょうね」
ライブラリ……確かシャンフロでいろんな情報を考察、検証して公開しているクランだったか。
シャンフロの攻略サイトを運営しているのもこのクランらしい。あのサイトは俺もよく閲覧しているんだけれど、チェア型VRマシンでもだいぶ重いのは何とかならないのだろうか。
「他にもこういうビルドやっている人居るんじゃないですか?」
「極振りは居ても全振りは滅多に居ないと思うよ。何に全振りしているのかにもよるけれど、一発攻撃が直撃すれば死ぬのに避けれる速さが無い。殴ってもまともにダメージが入らない。スタミナが直ぐに尽きる。殴った反動で自分が死ぬ……恐らくぶんぶん丸くんみたいにそれを補うスキルを習得して使いこなす所まで行ける人が稀だろうからねぇ」
「しかも強いプレイヤーがそれを介護してレベル上げをすると覚えるスキルが介護される前提のものばかりになるらしい。MP全振りとSTR全振りは仲間に護ってもらう前提で遠距離から魔法や投擲で攻撃する固定砲台にしかならないし、HP全振りとVIT全振りは殴られるだけのタンクの劣化にしかならないとか」
うーん、プレイスタイルが習得スキルに影響するから高レベルの仲間頼りの介護プレイはあまりよろしくないのね。逆に幸運全振りの姫プとか存在しているだけで物凄いドロップ率とかに影響を与えるスキルとか習得できたりしそうでそれはそれで面白そうだな。
この次のエリアの敵はちゃんと毒も効くし血も流れているモンスターが多いらしいので、一人で頑張って攻略してみるか。
……
…………
………………
イレベンタルは最後の街フィフティシアの一つ前の街の一つであり、現時点での最終エリアの一つである無果落耀の古城骸に挑むために滞在しているプレイヤーが多い。巨大な剣の像が街中に飾られていて、目立つから待ち合わせスポットとしてよく利用されているんだとか。
ニトロ薬局イレベンタル支店でリスポーンポイントを更新し、冒険を手伝ってくれた三人にお礼を言ってフレンド登録をしてからとパーティを解散する。アルカリウムさんはこのイレベンタル支店の担当で明日店番をするらしく、到着して直ぐに薬局のベッドでログアウトした。フランさんはエイドルト支店の店番を休んで協力してくれていたらしく、リスポーンポイントを更新せずに去栄の残骸遺道へと戻っていった。
というわけで現在ニトロ薬局のスタッフルームで俺とリーダーの二人きりの状況である。
「さて、暫くレベル上げかな……」
「次のエリアの無果落耀の古城骸にはレベル99のモンスターが沢山居るからねぇ。ダンジョンや隠しエリアを除けば一番難しいエリアの一つだから、ソロなら最低でもレベル90以上は欲しいね」
レベル99か。水晶群蠍は一匹で100超えてるんだっけ?なんでそんな物騒なの序盤に配置してるんだよ。
「スキルも揃えないと……ああ、こうなると通ってないルートの街のスキルの秘伝書も気になってくる……」
「ぶんぶん丸くんのビルドはスキルへの依存度が高いからねぇ……そうだ!ぶんぶん丸くん、暫くレベル上げをするなら暫くこの街に留まるってことでしょ?その間にうちが全ての街の使えそうな秘伝書を買ってきてあげるよ」
「え、いいんですか?」
「もうぶんぶん丸くんはうちのクランの大事な戦力だからねぇ。経費で落ちるし、各地の薬局の見回りもしておきたいからそのついでにね」
「ありがとうございます!」
二十六さん、見た目が胡散臭いこととヤバい爆弾を作ろうとしていることを除けば強いし優しい理想のリーダーなんだよなぁ。俺の都合で各地をを行ったり来たりさせてばかりで申し訳ない……何かお礼した方が良いだろうか?しかし俺が持っている素材は大体リーダーも持っているだろうし、かと言って水晶巣崖の高すぎるアイテムを渡すのも……あ、これなら丁度いいかな?
ラピステリア星晶体の中では多分一番等級が低いであろう六等星級をお礼としていくつか渡した。ラピステリア星晶体は錬金術の触媒として最高のものらしく、喜んでもらえたようだ。
それと自分用に何かに使いたいので手元に一等星級を残してあるのだが、これをアクセサリーとかにできるのか聞いてみたが、リーダーもこれをアクセサリーにできるような人を知らないらしい。それは残念だったが、一等星級を見せた時のリーダーの顔が面白かったのでまあよしとしよう。
実は最初は主人公は幸運全振りにしてはぐれメタル的なモンスターの素材で防具を作って、クリティカル以外でダメージを受けない&幸運の差でお互いのクリティカル率に補正をかけるスキルで無敵化するみたいなキャラにする予定でした
しかし幸運特化の都合上、何もかもご都合主義みたいになりそうだったのでボツになりました。そもそもポイントを割り振って強化できる幸運ってなんだよ。確率改変能力?