シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
「ありがとうございました……」
チュートリアルが終わり、ようやく解放された俺は歩いていただけなのにかなり疲弊していた。
人と関わるのはやはり疲れる。それがNPCであっても、人と変わらないレベルの知能や感情があるのならば人と話しているのと大差ない。
普通の人なら人と変わらないレベルのAIに感動するところなのだろうが、俺としてはここから先不安しかない。
ジョブとか職業とかなんか重要なことを言っていたようだがが、緊張していてあんまり頭に入っていない。そんなことより今は一人で居たい。
人から逃げるように街を出て、跳梁跋扈の森へと足を踏み入れた。
「うおっ、森の匂いがする……」
狂気じみた作り込みを眼や耳だけでなく鼻や肌でも感じ取る。
これが普通のゲームなら、森散歩シミュレーションとかでもなければ絶対そんなところ再現する容量で別の所を充実させた方がいいだろとツッコミ入れられるところだが、このゲームは全てがこのレベルで作り込まれているんだとか。そこまで行くと感動するよりも先に恐怖が湧き上がってくる。
「ギギッ!」
「あ?」
右の方から声が聞こえたのでそちらを見てみると、緑色の肌をした小さな人型存在がこちらに向かって斧を構えて突撃して来るところだった。
「ゴブリンかな?」
しかし小さいな。俺が身長を最大サイズにしたのもあるのだろうが、ゴブリンは人間の幼児くらいの大きさで俺とはかなりのサイズ差がある。
「えいっ」
「ギャッ!?」
まあそんだけサイズ差があればリーチと質量の差も圧倒的なわけで。
真っ直ぐ突っ込んできたゴブリンに傭兵の直剣の切っ先を向けて突き出せばそのまま串刺しとなった。
「最初の敵なんてこんなもんよね」
どうやら一撃でゴブリンのHPを削り切ったようで、ゴブリンはそのままポリゴンとなって分解され、消滅した。死体が残るタイプじゃないのね。
消滅したゴブリンからドロップしたのは非常に雑な作りの石斧、「ゴブリンの手斧」だった。
「こんなボロい斧貰ってもな……投げるなら石ころよりはダメージ出るかな」
武器には耐久値が存在するので、今使っている直剣の耐久をケチるのには使えそうだが、下手に攻撃力が低くてリーチが短い武器を使ってそれが原因で被弾したらアホらしいので、投げるか緊急時用の武器程度に思っておこう。
「お、レベルが上がった」
レベルアップでスキルを習得できるらしいが、習得できるスキルはジョブとステータスとプレイスタイルが影響するらしい。スタミナ特化だとスタミナ関係のものばかりになったりするんだろうか?
少なくとも習得にレベルとスタミナ以外のステータスを要求するスキルは覚えられないか、かなり習得に時間がかかることになるだろう。
「とりあえず暫くレベル上げしてみるか。スタミナしか上げるつもりはないが、なんかいいスキルを覚えられたら強くなれるかもしれないし、この体を動かすのにも慣れておきたい」
何が居るんだったかこの森。
チュートリアルをしてくれたあのNPC曰く、オークとたまに出てくるヴォーパルバニーというのに気をつければいいらしい。
……
…………
………………
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PN:ぶんぶん丸
LV:11
JOB:傭兵(片手剣)
4,500マーニ
HP(体力):10
MP(魔力):1
STM (スタミナ):120
STR(筋力):10
DEX(器用):10
AGI(敏捷):10
TEC(技量):10
VIT(耐久力):10(11)
LUC(幸運):10
スキル
・ラッシュスラッシュ
・ループスラッシュLv.2
・スクーピアス
・ナックルラッシュ
・タップステップ
・咆哮
・瞑想
・深呼吸
・仕切り直しLv.2
装備
右:傭兵の直剣
左:無し
頭:歓喜の犬面(VIT+2)
胴:皮の服(VIT+3)
腰:皮のベルト(VIT+3)
足:皮の靴(VIT+3)
アクセサリー:無し
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レベルを上げた結果がこれである。
スタミナが100を超えたところから一気にスタミナ関連のスキルとスタミナ消費が激しいスキルばかり増えた。
スタミナが余りまくっているのをどうするか悩んでいたら、丁度スタミナが続く限り連続で回転斬りを放てるループスラッシュというスキルを覚えたので暫くはこれがメイン火力になりそうだ。
ただ元の筋力が初期値なのでそのうちまともにダメージが入らなくなる気がする。早いところ毒属性とかの筋力関係なくダメージを与えられる武器が欲しいな。
短時間で沢山攻撃できるスキルばかり使っていたら武器の耐久がだいぶ削れてしまったので一旦街に帰って鍛冶屋に寄ってみることにした。
「武器の修理だな?明日の朝までには直しておくぜ!」
「あ、はい……」
……リアルなゲームだとは聞いていたが、武器の修理にもそれだけの時間がかかるのか。
まあいいや、明日は休みだし、今日はもうログアウトして少し調べ物をしてから寝よう。
……
…………
………………
そして翌日の朝、NPCの鍛冶屋から修理された傭兵の直剣を受け取った。
それとついでに予備の武器が無いと色々と不便そうなのでアイアンレイピアを購入した。
別のゲームでの話になるが、こういう中世的な刃物や鈍器は大体使ったことがある。余程変な武器でなければ扱いに困ることはないだろう。
「うん、最初の街の武器って感じだ」
特に飾り気が無いが手抜きでも無い、とてもシンプルな細身の剣を軽く振り回す。もちろん街中ではなく森の中での話である。
レイピアを最後に使ったのは何のゲームだったか。最近はナイフや刀を振り回していることが多かったのでレイピアを振るうのは久しぶりだ。
今日中にこのエリアのボスに勝利して次の街に行きたいと思っているのだが、ソロでもボスに勝てるのだろうか?ソロだとどうしようもない即死攻撃とかされなきゃいいのだが。
レイピアをブンブン振り回しながら歩いていると、目の前に小さくてふわふわとした生き物が現れた。
「アルミラージ……ではないな、あれがヴォーパルバニーか。かわいいね」
角が生えているアルミラージと違い、なぜかその小さな手に包丁を握っている二足歩行の兎だ。油断していると首をスパッと切り飛ばされるんだとか。
出現率は低いようで、昨日のレベル上げでは出会わなかったモンスターだ。
お互いに睨み合い、相手がどう動くのか伺っている状況が暫く続いたが、先に痺れを切らしたのは向こうだった。
ヴォーパルバニーは前方へ跳躍し、血で染めたかのように赤黒い包丁を俺の首目掛けて振るう。
しかしヴォーパルバニーからすればかなり高い位置にある俺の首を狙うにはそれだけ高く跳躍せざるを得ず、二段ジャンプでもしなければ滞空時間はそのまま大きな隙となる。
「ほいっ」
包丁が俺の首に届くよりも早くレイピアをヴォーパルバニーの体の中心を狙って振り下ろせば、そのままクリティカルの表示と共にヴォーパルバニーは地面へと叩きつけられ、ポリゴンとなって消滅した。
「包丁ドロップしなかった……」
レアドロップとしてヴォーパルバニーが持っていた包丁がドロップすることがあるらしい。
なんでもそれを持っていることが前提のクエストだかシナリオだかなんだかがあるらしいが、クリア報酬は魔法らしいのでレアドロップを粘る必要は無いだろう。レアモンスターのレアドロップとか面倒だしね。
今のところこのエリアで遭遇したモンスターはオーク以外一撃で倒せている。やはり最初のエリアならこのくらいの難易度か。
あまり歯ごたえが無いし、レベルも上がりづらくなってきた。このエリアでのこれ以上のレベル上げは効率が悪そうだしつまらない。さっさと次に行きたいところだ。
……
…………
………………
「あの橋を渡った先が次の街か」
渓谷の先に街並みが見えるのだが、問題はその渓谷の手前側、橋の前に居座る巨大な蛇だ。
なぜか頭から毛髪のような毛が生えているのは置いといて、明らかに倒さないと先に進めませんよ的な雰囲気を出している。あいつがこのエリアのボスなのだろう。
もう少し近くで見てみようと近づいてみると、どうやら戦闘開始距離に入ってしまったようで大蛇が動き出した。
『エリアボス 貪食の大蛇』
『推奨レベル10 推奨人数3人』
「推奨人数3人か、いきなり15人推奨とかじゃなくてよかった」
大蛇が口を大きく開いて突撃してきたのでとりあえず引き寄せてから横へ回避。
まずは動きを覚えるところからだ。攻撃したい欲を抑え込み、回避に全神経を集中する。
このゲームの最初のボスだからか、ゲームに慣れていない人や後衛ジョブ多めの偏ったパーティーでも対処できるようにしてあるようで、動きはシンプルで分かりやすい。
今のところ見えている攻撃は噛みつきと突進、尻尾の振り回しと叩きつけだ。まあ普通の蛇型モンスターの動きだな。噛みつきを避けた後が顔への攻撃チャンスだと思われる。
その仮説が正しいのか確認するために、噛みつき攻撃が来るまで回避し続ける。
スタミナに振り続けたのに加えて、スタミナの消費を抑えるスキルの「瞑想」とスタミナの回復を早めるスキルの「深呼吸」の組み合わせでスタミナにはかなり余裕がある。というか有り余っている。
「来た」
大蛇の突進をギリギリで回避すると、回避の後隙を狙うかのように体を捻って口を大きく開いて噛みついてきた。
「タップステップ」を発動して背後へステップすると、ついさっきまでと同じ敏捷初期値とは思えない程体が素早く動き、大蛇の牙が空を切る。多分今後もこのスキルにはお世話になることだろう、大切に育てていこう。
「ここだ、目潰し!」
「シャァアッ!?」
何もない虚空を咬んで、弱点であろう頭部を殴りやすい位置で大蛇の動きが一瞬止まったタイミングを逃さす、「スクーピアス」のスキルで加速したレイピアを左の眼球に突き刺してやると、大蛇は悲鳴らしき声を上げてのたうち回った。
恐らくボスモンスターである以上あれだけで死ぬことはないだろうが、それはそれとして眼球という急所を傷つけられて平然としていられるような生き物は基本的に居ないはずだ。
シャンフロのAIが優秀であるが故に、大蛇はまるで本物の生き物であるかのように暴れ回る。
これが小さな生き物なら追撃チャンスなのだが、あれだけ巨大な蛇だと下手に近寄って追撃しようとすれば奴のうねる体に跳ね飛ばされることになるだろう。遠距離攻撃手段が欲しい。
ようやく落ち着いたのか、左目から赤いポリゴンを撒き散らしながら大蛇が尻尾を叩きつけてくる。
これもギリギリで回避して尻尾を一発レイピアで突いているが、カキンと弾かれてしまった。弱点を狙わないと初期ステータスじゃキツイか。
尻尾を引っ込めた大蛇が再び突撃しようと頭を持ち上げる。
もう何度も見た動きであり、避けるのは容易い……だが──
「尻尾の先をこっちに向けて何をするつもりだ?」
大蛇の頭部に視線が誘導される中、今までで一度も見せてこなかった尻尾の先をこちらに向けるという未知の動きが視界の端で行われていた。
あの動きはなんだ?尻尾突き刺し?或いは……
とりあえず距離を置こうとしたその瞬間、大蛇の尻尾を覆う白い毛の中から何かが飛び出した。
「うおっと!?」
咄嗟に「仕切り直し」を発動し、後方へ全力で跳躍する。
大蛇の尻尾から放たれたそれは先ほどまで自分が居た場所にベチャっと音を立てて着弾した。
「……あれうんこじゃないよね?」
あれだよね?スカンクみたいに肛門付近に分泌物を出す穴があるだけだよね?それでも浴びたくはないけれども。
あんな攻撃を隠していたとは、だがわかってしまえば対処は簡単だな。
「仕切り直し」の発動でがっつり減ったスタミナが「仕切り直し」が持つ発動後のスタミナ急速回復バフによって大体回復したのを確認する。
「お前のことは大体把握した。ここからはガン攻めで行かせてもらうぞ」
この作品は基本的にオリ主の視点で話が進むので細かい描写が少ない……ということにしていますが、本当は投稿者の文章力が低すぎるだけです。お許し下さい……
この主人公は技量にステータスを全く振らないので攻撃スキルをあんまり覚えられません
シャンフロのオリ主二次創作と言えばオリ主も原作主人公みたいに兎の国に行くのが定番な気がしますが、この主人公が兎の国に行くかは未定です……せめて花鳥風月陣営の分類法とか分かればもっとオリ主を自由に動かせるのですが……原作の更新か原作者のゲロを待ちましょう