シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
次が待ち遠しい……というかこのペースだと次が出る前に単行本最新話に展開が追い付いてしまう……!
知らない人その1、オイカッツォ。
知らない人その2、アーサー・ペンシルゴン。
知ってるけど知らないふりをしたい半裸、コナツ。
そして俺。
どうすればいいんですかねこの状況。
「えーと……久しぶりね、し、ぶんぶん丸」
「そうだな、シャンフロ内では初めましてだけど」
自由にキャラメイクできるゲームではいつもアバターを幼女にしているコナツだが、シャンフロでは身長に下限があるので小学校高学年くらいの年齢に見えるアバターにしているようだ。
俺のアバターは逆に身長の上限なのでかなりサイズに差がある。リアルなら首が痛くなりそうだな。
「ペンシルゴン、もう一人加えたいメンバーってどっちのこと?」
「こっちの黒ずくめの方だね。でもこっちの半裸も協力者だよ」
んー?なんか知らんけど何らかのメンバーに入れられそうになってないか俺?
「どういうこと?」
「その、伝え忘れてたんだけど、この前話したウェザエモンってユニークモンスターのこと覚えてる?」
「阿修羅会が独占しているってやつ?」
「そうそれ……それを倒しちゃおうって話」
「へー……え、マジで?」
「マジで」
PKクランが独占しているやつを倒しちゃうのか?最悪報復とかされそうな気がするんだが……
「ぶんぶん丸はゲームが上手いから、きっとウェザエモン攻略に役立つ筈だって私がペンシルゴンさんに推薦したの」
「おま、お前また俺の知らんところで勝手に俺のことそうやって……!」
「ウェザエモンを何が何でも倒したいの!本当は私が倒しに行きたかったけど、私じゃ足を引っ張るだけだし……」
過去に上位入賞の賞品が欲しいからとこいつに勝手にゲームの大会にエントリーさせられたことを思い出す。しかも複数回。大会の数日前になって知らせてくるからキャンセルもできずに仕方なく出場することになり、その度に「これで最後だから!」とのたまうこいつを練習台としてそのゲームでボコボコにしていた。
「この人達本当に大丈夫なのペンシルゴン?」
「大丈夫カッツォ君。少なくともコナツちゃんは私と同じくらいには強いし、ぶんぶん丸くんはコナツちゃん曰くプロゲーマーにも負けないそうだから」
「へぇ……プロゲーマーにも負けない、ねぇ?」
……なんかちょっと嫌な寒気がするんだが?このオイカッツォっていう人、なんというか、凄くVR慣れしている人特有の何かを感じる。
「それは言いすぎだろコナツ。プロゲーマーと戦ったことなんて……一応あるけど、一回だけだぞ?」
「でもしの、ぶんぶん丸がゲームが上手いのは本当のことじゃない。格ゲー大会のアマチュア部門で優勝してエキシビションマッチでプロにも勝ってプロゲーミングチームからスカウトされたこともあるでしょ?」
「一回勝っただけでプロにも負けないというのは大袈裟だろ。それにシャンフロはまだ始めてから一ヶ月くらいだぞ?ウェザエモンって人型ボスなんだろ?一年シャンフロで対人やってたコナツの方が強いんじゃないか?」
「じゃあぶんぶん丸がシャンフロで倒した中で一番強かったモンスターは?」
「あ?んー……シンプルに強さなら
ユザーパー・ドラゴンも同じくらい苦戦したが、あれはなんというか、強いは強いのだが相性差とかそういうのがでかい気がする。
「ゴールディ・スコーピオン?トゥルー・クワイエット ?」
「
「それってどっちもまだ討伐されたという報告が無いモンスターだけど……証拠とかある?」
「証拠ならここに」
インベントリから装備を作るのに結構使ってしまったがまだ少し余っていた金晶独蠍の素材と黒死の天霊からドロップした鎌や防具を取り出して見せる。
「なるほど……少なくとも水晶巣崖を攻略して、あのお仕置きモンスターを撃退できる力はあると」
「これそんなに凄い素材なの?」
「まだレベル25のカッツォ君は知らないと思うけど、どっちも理不尽さならウェザエモン級のモンスターの素材だね」
「マジで?ユニークモンスター級の通常モンスターみたいなの存在するの?」
「単体での戦闘力はウェザエモンの方が上だと思うけど、水晶巣崖は一歩足を踏み入れればレベル100オーバーの蠍が無限に突撃して圧殺してくる地雷原だし、
うーん戦闘力はウェザエモンの方が上、か。周囲の環境をフル活用してなんとか削り切った金晶独蠍やトライアンドエラーを繰り返してなんとか安定させた黒死の天霊よりもヤバいってどんなバケモノなんだ……
「ユニークモンスターの討伐には興味があるけれど、何がどうなってその話を俺に?俺よりもっと強い人は居るんじゃないか?」
「えっと、説明すると少し長くなるんだけどね……」
コナツの話を簡単にまとめると、ウェザエモンはとあるNPCと深い関わりがあり、コナツとペンシルゴンはそのNPCに感情移入して、そのNPCの願いであるウェザエモン討伐を成し遂げたいのだという。しかし阿修羅会はウェザエモンを倒す気が無い上に一ヶ月に一度しか挑めないウェザエモンを独占してしまっている。
そこでペンシルゴンがこれまでのシャンフロプレイで貯め込んだリソースを全て費やして、阿修羅会を出し抜いてウェザエモンを倒す計画を立てた。
ウェザエモンはプレイヤー数に応じてステータスが強化される上に数を揃えてどうにかなるような相手ではないので少数精鋭で挑む。しかもウェザエモンはこちらのレベル上限を強制的に50にしてくる上に相手はレベル200という圧倒的ステータス差での勝負を強制してくるため、レベルよりもプレイヤースキルが重要になる。そして相手の攻撃をくらえば基本的に一撃で即死かつ勝利条件が恐らく時間経過なので回避スキルを無限に連打できる俺が最適なのではと考えて推薦した、と……
「えーと、レベル50になったらステータスはどうなる?」
「勿論レベル51から99までの間に割り振ったステータスポイントは消滅するよ。スキルはそのままだけど、装備条件とかある装備はステータスが足りなくなれば使えなくなるから注意してね」
「アクセサリースロットは?」
「それも開いた分はそのままだね」
「なるほど。だとすると……えーと……ボーナスとか抜いて、装備無しでスタミナが335まで下がって……そこから装備の補正で2.8倍した数値を元のスタミナに加算するから……1273か。攻撃しないなら多分無限回避できますね」
「何そのスタミナ量!?どんなステ振りしてたらそうなるの?」
「スタミナ全振りですけど?他は全部初期値です」
「おいペンシルゴン本当に大丈夫なのかこの人?」
まあ心配になる気持ちはわかる。俺もそんなやつと一緒にパーティ組むの嫌だわ。
「ん-、確かにそのステータスでどのくらい動けるのかは私も把握しておきたいねぇ……サンラク君から少し遅れるってメールも来たし、ちょっと外に出ようか」
……
…………
………………
「……スタミナ以外全部初期値の俺が言うのもなんですけど、レベル25なのに大丈夫なんですか?」
「俺でも一発当てれば勝てるってことでしょ?ワンチャンあるなら十分!」
広く人通りの少ないエリアにやってきた俺たちはなんとPKペナルティ無しのルールでオイカッツォと決闘することになった。
普通に考えれば圧倒的レベル差で圧勝だが、ワンチャン即死がありえるビルドなので油断はできない。かといって全力で挑んで一発で終わらせてしまっても俺の実力の把握ができないので素手で勝負することにした。
オイカッツォは「
「赤!」
修行僧のジョブ固有魔法により赤色の光がオイカッツォの拳を包み込む。ああいうのかっこいいけど、バフの時間管理とかMP配分とか面倒そうだな……
「いつでもどうぞ」
「それじゃあ、いきます」
とりあえず発動できるバフスキルを一部除いて一斉に起動。そして「フリッカー」と「ホバリング」も起動する。
思考加速が続いている間に最速で接近し背後へと回り込む……っ!?
ぎょろりとオイカッツォの目玉が動き、その視線は確実に俺を補足している。既に体が動き出している、最小限の動きで俺のスピードについて来ようとしている!
恐ろしい反応速度だ。それに戦いに慣れている。俺の高速移動はむりやり体を引っ張るかのような力によって行われているため細かい制御ができない。このまま突っ込んでカウンターで死ぬ未来が見えた俺は一度オイカッツォから距離を置いて「ホバリング」を解除する。あれは地に足つけてないとダメなやつだ。
再び接近し、しかし攻撃はしない。相手の攻撃が届くか届かないかのギリギリの位置で相手の出方を窺う。
こっちから先に手を出したところで器用も敏捷も初期値である以上、腕を動かす速さの差で後出しで対処されるのは間違いない。「
「……」
「……」
お互いに動かないままスキルのタイムリミットが迫って来る。
恐らくオイカッツォからしても先に動けば俺があの速度で突っ込んでくるから下手に動けないのだろう。となればこっちから初見殺しを仕掛けさせてもらおう。
「フリッカー」の姿を消しながら高速で滑る回避の途中、姿が完全に消えたその瞬間に「クーガーステップ」で地面を蹴り、回避方向をむりやり変更して反対方向へと回り込み、背後からオイカッツォへ突っ込む!
「ぐうっ!?」
透明化した俺の飛び蹴りが振り返ったオイカッツォの脇腹に突き刺さるが、硬い!結構VITにも振ってるっぽい?あまり怯まなかったオイカッツォのから再び距離を置く。
完全に不意をついたと思ったのだが、あの動きは透明のまま背後から攻撃されるのを想定していたようだ。本当どんな反応速度してんだこの人。
時間切れで
「硬くてダメージが入らないのなら……相手の力を利用しよう」
オイカッツォに接近し、今度は普通に殴りかかる。しかし俺の拳が相手に届くよりも早く、オイカッツォの赤い光を纏う拳が俺の拳を弾く──
「ここ」
「!?」
弾かれる直前、拳を止めて握った手を開き、オイカッツォの手首を掴む。
掴まれた左腕を反射的に引こうとするのに合わせて一歩前へ。右の拳が繰り出されるよりも早く目を狙って手を伸ばせば、オイカッツォは咄嗟に体を後ろに反らす。そうしたら更に一歩前へ。オイカッツォの足を踏みつける。
バランスを崩して後ろに倒れそうになるオイカッツォは倒れないように足を後ろに下げようとするが、踏みつけられた足を下げることができず、そのまま後ろに倒れていく。しかし一瞬で倒れることを受け入れたオイカッツォは倒れながらも攻撃することを選び、俺の脇腹に拳を叩き込もうとする。だがそれを待っていた。
「パンクラチオン」によってパリィを可能とした拳がオイカッツォの拳とぶつかり合い、なんとか弾くことに成功する。
「パンクラチオン」はあらゆる格闘スキルを複合したスキルであり、当身の威力や速度の上昇や投げの判定緩和、生身でのガード性能の向上、更には生身でのパリィすらも可能とするスキルだが、詰め込み過ぎてリキャストタイムがアホみたいに長い欠点を持つ。だが取り回しが悪くても全部乗せなスキルだからこその強みもあるんじゃないかと俺は思っている。
「うげぇっ!?」
弾かれた拳が自分の腹に直撃し、オイカッツォは受け身を取れずに転倒する。即座に「ジャイロバランサー」を起動。そして「フリッカー」による回避を行い、回避の勢いそのままに何度も往復して倒れているオイカッツォを踏みつける。人間の体は凸凹しているが、「ロデオ・ライディング」でバランスを崩すことなく綺麗なフォームでオイカッツォをベース代わりに殺人スライディングを繰り返す。
「いだだだだぁ!?」
「動きからして格ゲーやってそうだし、そんな相手に素直に殴り合いするわけがないよね」
いくらステータス差があるといっても、レベル25の魔法も使う軽戦士のステータスではこれには耐えられなかったようで、オイカッツォはポリゴンになって消滅した。
「……とまあ、こんな感じで初期ステでもスピードは出せます」
「なるほどねぇ。カッツォ君は後で煽ってやるとして、それだけ動けるならウェザエモン相手でも生き残ることはできそうかな?」
なんでも蘇生アイテムフル活用のゾンビ戦法で行く予定だから必ず一人は生き残って死んだ仲間を蘇生しなくちゃいけないらしい。
ゾンビ戦法前提の難易度かぁ……というか蘇生アイテムなんてあるんだねこのゲーム。
オイカッツォを圧倒しているように見えて、圧倒的スタミナでノンストップで攻撃が可能かつ初見殺し連打でようやく勝負になっているという割とギリギリの勝利だったりする。同じ条件であと二回戦えば主人公は負けます
主人公はライオットブラッドで脳の処理速度をブーストしていないと意外と反応速度はそこまで速くないです。ただシャンフロには反応速度は並なのにめちゃくちゃやっている強い人がいますよね?主人公はそのタイプです