シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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ようやく登場する原作主人公


暴徒と鳥頭

 蛇の林檎にて待ち合わせにまだ来ていない最後のメンバーのことを待ちながらウェザエモン討伐に向けて前提となるユニークシナリオの受注方法や戦闘パターンの説明を受ける。

 

「満月の夜限定で隠しエリアに武器を装備していない状態で受注できるって面倒な条件だな……ところで次の満月っていつ?」

 

「今夜だけど」

 

「えっ」

 

 しかもウェザエモンに挑むのは次の新月の夜……二週間後のシャンフロの大型アプデの日に決行するそうだ。強いプレイヤーが新大陸に行ってしまう前のこのタイミングがラストチャンスなんだとか?

 

「二週間で色々準備しておかないとな……この装備も変えないといけないだろうし……」

 

「変えるの?強そうなのに」

 

「これ回復弾いちゃうんですよ。多分蘇生も弾くと思うので……」

 

「回復できないってデメリットとしてヤバすぎない?」

 

「アクセサリーでの回復ならできます。俺のHPは初期値の10なのでリジェネアクセサリーで一秒も掛からずに全回復しますから普段は実質ノーデメリットなんです」

 

「それ回復しなくても一発で即死じゃね?」

 

「呪いで毎秒5ダメージ受けてるので回復しないと二秒で死ぬんです。この赤いポリゴンがダラダラ出ているのがそれです」

 

 犬面を外すといつものように首から赤いポリゴンが噴き出す。やってから思ってももう遅いが、飲食店でこれは実質テロでは?

 

「あとアクセサリーで即死対策をある程度してあります。ウェザエモンに効果があるかはわかりませんけど……」

 

「そんなアクセサリーあるの?」

 

「あるよ、こんな感じ」

 

 拳を握り締め、自分の顔を思いっきりぶん殴ろうとしたその瞬間、拳と顔の間に水晶が生えてそれを受け止める。

 

「こうやってMPと専用のゲージを消費してダメージを防いでくれる。ワイバーンに噛まれても暫くは耐えられる」

 

「アクセサリーってそんな凄い効果あるんだ」

 

「私もレベル99だけどそんなアクセサリー知らないんだよなぁ……」

 

「まあ万能ではないですよ。打撃には弱くて電気はほぼ貫通。ゲージの補充にもこうして補給が必要ですし」

 

「補給って、その水晶を……え、食べっ、ええ……?」

 

 消費した水晶ゲージを補充するためにインベントリから取り出した水晶をボリボリ食べてたらドン引きされた。意外と癖になる歯応えなんだよねこれ。あとMPもちょっと回復するぞ。

 

「ん-、そのアクセサリーといい、ぶんぶん丸君も何らかのユニーク隠してる?」

 

「いいなーユニークいいなー」

 

「ユニーク……あ、一応ユニークからの派生か……でもこれはニトロ製薬が見つけてまだ公開していない情報なので、知りたければ我らのリーダーと交渉してください」

 

「まあ簡単には教えてくれないよねぇ……」

 

「そういえば、ぶんぶん丸は錬金術師じゃないのにどうやってニトロ製薬に入ったの?」

 

「あーそれは……メンバーが錬金術師ばかりだと素材集めで赤字になるから錬金術師以外のメンバーが欲しかったとか……」

 

「ふーん?」

 

 俺が呪いの武器を持っていたからというのは思いっきり隠している情報のヒントになるので答えられない。なんか適当に答えて誤魔化しておいた。

 

「それにしてもサンラクのやつおっせーなー」

 

「あともうちょっとってメールは来てるんだけどねぇ。向こうのユニークのフラグ踏んじゃったってさ」

 

「サンラク?」

 

「最近話題の兎を引き連れた半裸のこと知らないの?」

 

「なんだそりゃ?シャンフロ内の掲示板は見たことなかったからなぁ……しかしサンラクか……」

 

 サンラクという名前は結構いろんなゲームで耳にしたことがある……そして戦ったことも少しだけある。

 

「同一人物か……?」

 

 その時、店のドアが開かれ、一人の……何あれ?羽根を引っこ抜かれた鳥人間?俺に匹敵するレベルの不審者が現れた。

 しかもこっちに向かって歩いてくるぞ。おいまさかこいつが……!?

 

「待たせてしまい誠に申し訳ございませんでした!」

 

 躊躇いの無い土下座で嘴を床に叩きつけた何故か半裸の鳥人間の頭上には「サンラク」と表示されていた。

 鳥の覆面も気になるが、服を着ていない胴と足には何やら俺の呪いのような黒い傷跡のような模様が浮かんでいるのも気になる。あとその可愛いけど変なマフラー何?ネタ装備?

 

「サンラク君何か言い残すことはあるかな?」

 

「いやマジでほんと申し訳ない……お前ら二人はいいとして初対面のお二人を待たしてしまって……」

 

「二時間遅刻は顔見知りでもアウトだよなぁ?この大遅刻は簡単には許されないよぉ?」

 

「ほら見てみなよサンラク君、待たせ過ぎてぶんぶん丸君ブチギレだよ。キレすぎて血管までキレてるよこれ」

 

「ひょえっ……」

 

「元からこんな顔です。というか覆面です」

 

 この人覆面の上からでも表情の変化がわかりやすいな。俺の覆面は常に地獄の果てまで追いかけて食い殺してやるとでも言わんばかりの表情なのに。

 

「実は……「こっちのユニーク」関連を進めていたら、ウェザエモンについての言及がありやして。もしかしたら何かの足しになるやも……」

 

 ユニークねぇ。なんか俺も自力でそういうの見つけてみたいものだ。普通のプレイで見つけられるようなものは大体先に見つけられているだろうから、変なプレイを極めてゆくその先にユニークがあることを祈ろう。

 

 サンラクが齎した情報は、墓守のウェザエモンがNPCから「死に損ない」や「生きる屍」と形容されていたというものだった。

 

「つまり……アンデッド?」

 

「アンデッドが墓守とは、そうなってでも守りたい墓があるのかね?」

 

「……それは今夜わかるよ、ぶんぶん丸」

 

「ふぅん……?」

 

 ペンシルゴンはその情報から何かを思いついたようで、夜まで別行動をするらしい。

 そしてオイカッツォとサンラクは夜までレベル上げだ。どうやら「神代の鐵遺跡」に効率の良いレベリングスポットがあるらしいが……なぜ釣り竿?湖でもあるのか?

 

「で、コナツは夜までどうするんだ?俺は夜まで暇だから、何もないなら俺もその遺跡に行ってみようかと思っているんだが……」

 

「んー、私も別行動かな。当日に備えて準備しておきたいの」

 

 コナツはウェザエモンと直接戦いはしないが、その代わりに別の方面で支援するとのこと。何をするのかはわからんが、それでウェザエモンに勝ててもユニークモンスターの討伐報酬もこのゲームで最初にユニークモンスターを討伐したメンバーの一人という名誉も受け取ることができない。なのに勝つためにそこまでするとは、余程セツナとかいうNPCに入れ込んでいるようだ。

 

「……来た時からずっと思ってたんだけど、サンラク君……それは擬態させてるつもりなのかな?」

 

「ハテ?リュウコウノサイセンタンデスガ?」

 

「え?なになに?」

 

 ……やっぱりあのマフラー動いてない?だいぶ首が辛そうなデザインだなーとか思ってたけど、あれってやっぱりこう、首に兎が耳で巻き付いていないか?

 

「サンラクサンサンラクサン、そろそろお耳がおつらいですわ。ちょっとくらい動いてもいいですわ?」

 

「えぇぇぇ!?サンラク!装備が喋ってるんだけど!」

 

「やっぱりそれ例の喋るヴォーパルバニーちゃんだったのね!あーかわいい……」

 

 例の?普通に喋ってるし、テイムモンスターではなくNPCなんだろうか?

 あの一番最初の森……何て言ったっけ?まあいいや、あの森で出会ったヴォーパルバニーと比べると随分と丸いな……見た目も印象も。服を着ているし、包丁も持っていないけどヴォーパルバニーなんだな。

 

「なるほど、これは話題になるのもわかるな……みんな喋るかわいい兎と冒険してみたいんだろうな。俺はコミュ障だから喋らない兎でいいが」

 

「このゲーム犬と猫しかテイムできないよ」

 

「マジかよ」

 

「今度の大型アプデで実装されるライダーは色々とテイムできるという噂だけどね」

 

「は、離すですわー!」

 

 モンスターに乗れる職業かぁ。そういうのも楽しそうだな。昔やったゲームで絶対に馬から降りずに攻略とかしたことあるしな。

 でもそうやって色々と目移りして中途半端になるのは嫌なので、俺は最初にこれで行くと決めたものを可能な限り曲げないようにゲームをプレイすることにしている。まあそのせいで一番使っているものと実際に俺と相性が良いものが全然違うなんてことも起こるのだが。ネフホロとか最初に組むと決めてそれからずっと使い続けている超軽量機体よりも、たまにストレスが溜まっている時に使う屈折(フレキシブル)レーザーや思考誘導ミサイルをガン積みした遠距離から封殺する機体の方が圧倒的に勝率良いからな……どっちもネタ扱いされるビルドなのに何が違うのか。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 神代の鐵遺跡は名前に神代と入っている通りその時代の遺跡であり、だいぶSFチックな空間になっている。それはいいけどなんで黒い板や三角錐が飛び回っているんだろうか。神代では物を浮かせるのが流行っていたのか?車も空を飛んでいたのかな?車があるのか知らんけれども。

 

 最初の方のエリアなのでレベル99の俺なら余裕……と思いきや、この浮いている黒いのに混ざっているドローンが奇襲して来るという割と面倒なステージである。攻撃自体は真っ直ぐで対処しやすいものだが、油断はしない方がいいだろう。

 「反響定位(エコーロケーション)」で周囲の地形を把握しつつ不審な動きをするものを素早く発見できるようにし、レベル上げも兼ねてオイカッツォとサンラクにそれを伝えて処理してもらう。

 

「すみませんねレベル99なのに敵の処理を任せちゃって」

 

「いえいえ、奇襲を未然に防いでくれるだけで十分っすよ」

 

「それお耳がキーンってするからちょっと苦手ですわ……」

 

「ワガママ言うんじゃありません!」

 

「ぷぺぺぺぺ!?」

 

 この頬をモチモチされているヴォーパルバニーのエムルちゃんは兎らしく耳がいいようだ。音系のスキルは使わない方がいいだろう。

 

「最後は穴に飛び込め……か」

 

 ペンシルゴンの地図を頼りに複雑なルートを通ってここまで来た訳だが、最後はこの穴に入る必要があるそうだ。

 

「底が良く見えんな」

 

「実は俺達を遠回しに暗殺するためのドッキリでした~とか無いよね?」

 

「いや俺とカッツォの二人だけなら兎も角、流石に初対面のぶんぶん丸氏まで巻き込むようなドッキリは……やるかやらないかで言えばやりそうだな……」

 

 この二人とペンシルゴンの三人は仲が良いようで、所謂仲が良いからこそ遠慮が無い感じなのだろう。

 そして俺はこの二人の友達の友達の友達という凄く微妙なポジションに居る。助けてくれコナツとペンシルゴン、俺何喋ればいいか全くわからない。

 

「あー、俺が先に降りますよ。安全に降りれるスキルがありますので」

 

「へー、そんなスキルが……じゃあお願いします」

 

 「ホバリング」を発動して穴に飛び込み、ゆっくりと落ちる。

 真っ直ぐ穴に落ち続けていると、途中から穴が斜めになっていて滑り台のようになっている。

 

「この先次第ではまあ大丈夫な高さかな?」

 

 更に穴の奥へ進むと、その終点は開けた空間になっていた。これまでのSFチックな空間とは異なり、淡い光を放つ青い湖が広がる幻想的な鍾乳洞のエリアだ。

 いいねこういうの、現実でもギリ見れそうな光景だが、こういうのを現実で見に行くのには色々と面倒なあれこれが必要になるからな。しかも暗い。VRで観光とかが流行るのも納得できる。

 

 さて。安全は確保できたし、二人と一匹を呼ぶとしようか。




知らない人を待たせてしまったので原作よりも若干早めにログインしたサンラクサン。なおイベントフラグを踏んでしまい遅刻した模様

主人公はプレイするゲームによって名前を「○○丸」と変えている上にゲームによってプレイスタイルがまるで違うのでサンラクサンはぶんぶん丸と過去に出会っていることに気が付いていません

主人公はネフホロを可能な限り軽くした超軽量機体で遊んでいます。ブースターさえ最低限なのでそんなに速くないけど、めちゃくちゃ軽快なステップで攻撃をヌルヌル避けて組みついてきます
なお、本気の屈折(フレキシブル)レーザーや思考誘導ミサイルをガン積みした機体なら一人で相手をレーザーとミサイルで包囲して瞬殺するチートを疑われるバケモノになります
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