シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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因みにこの小説は某笑顔の動画サイトがハッキングされた時期に暇だったので書き始めました


暴徒と新武器

 人間はミスをする生き物である。どれだけ慎重に作業をしても、時間をかければかける程にミスをする確率は上がっていくものだ。

 

 ゲームで例えるのならば、HP1攻撃力1でも相手からの攻撃を一発も食らわないで全部避け続け、絶対に反撃されないタイミングで一回だけ殴るのを繰り返せば、理論上回復しない相手ならいつか必ず勝てる訳だが、実際にそれを実行しようとすれば倒しきるのに相手によっては数時間、下手したら数日かかることになる。その間集中力を維持し続けてノーミス撃破を成し遂げるのは至難の業だし、ミスしてしまった時の精神的ダメージはかなり大きいものになる。

 それならば多少のリスクを背負ってでも殴る回数を増やして速攻撃破を狙った方が逆に安定することもあるのだ。

 

「「スクーピアス」からの「ラッシュスラッシュ」。このコンボなら尻尾にも攻撃が通る!」

 

 「スクーピアス」の鋭い突きは大蛇の鱗を貫いてそこに数秒間傷口を残す。

 この傷口は肉質が柔らかい弱点という扱いになるようで、傷口が消える前にそこに追撃を加えれば大きなダメージを与えられるようだ。

 

 大蛇が尻尾を後ろに下げれば頭を、頭を後ろに下げれば尻尾を狙う。大蛇が前に出ればその分後ろへ下がり、後ろに下がればその分前に出る。

 大蛇に張り付くように立ち回り、有り余るスタミナを有効活用し、途切れることなくひたすら攻撃を加え続ける。

 

 弱点への攻撃で怯みが発生し、その怯みから回復する前に次の弱点を狙ってまた怯みを狙い、動きを制限し続けるよく怯みループなどと呼ばれる戦い方だ。

 時には攻撃が最大の防御になるのだ。

 

 とは言え、MMOのボスが一人ずっと怯みループができるようなバランスにはなっていないだろう。どこかしらでループを抜け出してくるはずだ。

 

「シャアアアア!!」

 

大蛇は攻撃を一度中断して後ろへ大きく下がることで怯みループから抜け出し、突撃の構えを取った。もちろんそれでも攻撃の手は緩めない。

 

「すぅー……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

「!?」

 

 「咆哮」のスキルを発動して叫びながら大蛇に突撃すると怯みが発生してくれたようで、大蛇の体がビクンと震えて動きが止まる。

 このスキルは耳が良さそうなアルミラージ相手にでかい声出したら怯んでくれないかなと思って奇声を上げながら兎を追いかけまわしてたら習得した。流石に怯みは確定ではないが、ボス相手でも効くんだな。

 

 大蛇の動きが止まったのは一瞬だったが、それだけの時間があれば十分だ。

 「タップステップ」を発動して前方へとステップを踏めば急加速となり、そのスピードを利用してすれ違いざまに大蛇の右目を切り裂く。

 更にそのままの勢いで空いている左手で大蛇のなぜか生えている髪の毛を掴んだ。

 

「素手は決して舐めプでは無い、何も持っていないからこそなんでも咄嗟に掴むことができる」

 

 左目に続いて今度は右目を切り裂かれた大蛇は再び暴れだす。振り落とされないようにしっかりと髪を握りしめ、何度も右目にレイピアを突き刺していく。

 

「いい加減くたばれ!」

 

リキャストタイムが終わった「ラッシュスラッシュ」と「スクーピアス」も打ち込むと、傷口から激しくポリゴンが噴き出し、遂に大蛇の全身がポリゴンとなって砕け散った。

 

「やはり初見一発クリアは気分がいいな!」

 

 正直今回は様子見のつもりだったのだがそのまま行けてしまった。

 負けたら装備を整えて回復アイテムをもっと揃えてスキルも育ててから、夜にライオットブラッドをキメて挑むつもりだったのだが、まあ倒せたのならそれでヨシ!

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 セカンディル。それが二番目の街の名前らしい。もしかして次の街の名前サードなんちゃらだったりしない?

 

「ベッドで寝ないとリスポーンポイントは更新されないんだったな」

 

 丁度良い時間だったので宿屋に入り、ベッドで横になってリスポーンポイントを更新しつつ一旦ログアウト。

 今日はパンの気分だったので適当に冷蔵庫の中の食材を挟んだサンドイッチを作ってリアルでの昼食を済ませてから再びシャンフロにログインした。

 

「リアルでも食事をして、ゲームでも食事をしなきゃならんのはなんか変な感じがするな……」

 

 シャンフロでは空腹値はHPやスタミナに関わる重要なステータスであり、腹が減る前に死ぬような命を投げ捨てるプレイでもしていない限り意識しなければならない要素の一つだ。

 食べ物はインベントリに入れておけば割と長持ちするらしいので、携帯食料をいくらかインベントリに入れておくことにした。

 

 このゲームの料理は若干味が薄いが味自体はしっかり作り込まれている。お金に余裕ができたら食べ歩きとかしても面白いかもしれない。

 鯖癌とか味覚をほぼ完全再現している癖にまともな食料の入手難易度が高くて、何度もライオットブラッド・クァンタムの力を借りることになった。なんで現実で飲んでゲーム内でも効果あるんだあれ。

 

 でも今はそれよりも戦闘に役立つ物を揃えたい。とりあえず武器と防具を更新することにしよう。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 このゲームは何でもかんでもリアルにしようとする。それはお店の品揃えもそうだ。

 沢山売れれば当然売り切れるし、補充にも時間がかかるのだ。

 

「すまねぇな、作り置きしていた片手剣はついさっき全部売り切れちまった」

 

「あ、はい……そうですか……」

 

 うーん新武器ゲットならず。

 いや別に片手剣に拘る必要は無いんだが、片手剣が使いたい気分なのだ。具体的に言うと片手でそれなりの長さがある両刃の刃物を振り回したい気分。

 

「素材があるならお望みの片手剣を新しく作ってやるぜ?」

 

 あ、そういう要素あるのね……そりゃそうか鍛冶屋なんだし。

 

「あの、鉱石とか、素材を採れる場所知りませんか……?」

 

「おう、ここからサードレマの間にある四駆八駆の沼荒野に鉱物を採掘できる場所がある。ツルハシを忘れるなよ」

 

 なるほどね。というか本当に次の街の名前にサードが入っているのか。覚えやすくていいけどさ。

 それは置いといて次のエリアは名前からして沼地だろう、足場が悪そうだ。一発食らえば死にかねない初期値のHPとVITでは回避がとにかく重要だ。悪路対策をした方がいいかもしれない。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

「「オフロード」……なるほど、これは便利……うわ効果時間短けぇなこれ。レベル上げなきゃダメか」

 

 早速四駆八駆の沼荒野に来てみたのだが、やはり沼だらけでしかもまともに走ることもできない程の深さだった。

 というわけで特技剪定所で「オフロード」の秘伝書を買ってきて、直方体に手足をつけたかのような四角いカエルをボコボコに殴り倒してレベルを上げて「オフロード」を習得した。あのカエル妙に斬撃に強いから殴った方が早かった。

 このスキルを発動すれば泥沼の中でも快適に動くことが可能になるのだが、レベルが低いからか効果時間が短い。またレベル上げをしなければ。

 

「ツルハシ重い……STRが全然足りていないなこれ」

 

 泥沼の中にあった明らかに鉱石が採掘できそうな見た目の岩にツルハシを振り下ろす。

 一回振るだけでスタミナがかなり持っていかれる。このステータスじゃ重い武器は振り回せないな。

 

 心を無にしてツルハシを振るい続け、インベントリに詰め込んで動きが鈍るギリギリまで鉱石を採掘する。

 

「鉄鉱石にも種類があるんだな」

 

 灰色とか銀色とかあるけど混ざっている成分の違いとかなんだろうか?

 武器を作るのにどのくらい必要か聞いておけばよかった。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

「おう、お前か。頼まれてた武器はもうできてるぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 セカンディルに戻り、鍛冶屋のおっさんに素材と武器を預けて暫く街を見て回って、夜にまた鍛冶屋に訪れると新しい武器が既に出来上がっていた。

 鍛冶に魔法を使っているからなのか、完成まで割と早かった。しかし鍛冶に魔法が必要となると、俺のステータスだと自力で武器を作ったり直したりするのは無理だな。

 

「ほらよ、『沼鉄の鈍直剣』だ。しかし頼まれたとは言え斬れない剣とは、こういう武器を作るのは久々だな」

 

 おっさんから受け取った新武器の名は沼鉄の鈍直剣。直剣と名前に入っているし見た目も剣っぽいが、正確にはメイス、その派生となる鉄鞭というカテゴリの武器である。

 剣なら本来刃があるべき場所に刃が無い、簡単に言えば剣の形をした鉄の棒である。

 

 なぜこんな武器を頼んだのかと言えば、シンプルに打撃武器が欲しかったからだ。それに鉄鞭は斬撃系の攻撃スキルを使用できるというメリットもある。ただし鉄鞭で斬撃系攻撃スキルを放つと当然斬れないので打撃として扱われるらしい。

 

 因みに追加効果としてクリティカルが発生すると一定時間耐久の消耗が半減する代わりに、その戦闘中はクリティカルが発生しづらくなる効果が存在する。

 幸運初期値なので元からクリティカルは急所を殴る以外で狙うつもりは無いので、クリティカル率低下はあまり問題にならないだろう。いくらクリティカル率が下がろうと急所をぶん殴ればクリティカルである。

 

 このゲームでは急所を殴る以外にも、攻撃する面に対して大体垂直で攻撃を当てればクリティカルとなり、幸運やクリティカル補正はこの判定の緩さに影響する。

 きっと幸運に振りまくっている人ならこの武器は雑に使っても長持ちするのだろう。俺の場合は最初に急所に当てることを意識して慎重に使った方がよさそうだ。

 

「それでこっちが『貪食蛇の刺剣』だ。毒があるから気をつけろよ」

 

 こっちは貪食の大蛇の素材を用いて作ってもらったレイピアだ。どうやって加工したのかは知らないが、貪食の大蛇の牙が真っ直ぐで細長いレイピアの剣身になっている。

 貪食の大蛇には一度も噛まれていないので牙に毒があるかはわからないが、重要なのは毒を使う生き物の素材であることらしく、実際この武器には毒属性が付与されている。

 リアルで昼食を食いながら貪食の大蛇について調べてみたのだが、あの尻尾から発射される毒糞に当たると毒状態になるらしい。食事中に調べたことを後悔した。

 

 スタミナ以外のステータスが何もかも低い俺にとって状態異常は重要なものになるだろう。それにスタミナを消費した分だけ連続攻撃ができるスキルとの相性はいいはずだ。

 同じモンスターに対して同じ状態異常はどんどん耐性が上がっていって効きづらくなるそうなのでもっと状態異常の種類を増やしたいところだ。

 

「傭兵の直剣も進化させといたぜ、大切にしてやれよ」

 

 おっさん曰く、武器は素材を用いて強化したり進化させたりできるとのことなので、初期装備の傭兵の直剣を試しに進化させてもらった。

 その名は『グレーブレード』、今までの無骨で粗雑だった傭兵の直剣から、なんというか特にこれといった特徴もない普通の剣といった見た目になっている。

 追加効果も存在せず、ただシンプルに耐久が高いだけだが、こういうのも悪くない。

 

 さて、早速新武器を試してみるとしよう。夜のモンスターは昼のモンスターよりも危険らしいが、どうせ死んでも復活するのがプレイヤーだ。

 そんな考えが顔に出ていたのか鍛冶屋のおっさんが夜行性のモンスターの危険さを警告してくれた。AI賢過ぎない?




初期武器を鍛えていったら最強になるやつ好きだけど、シャンフロでそれが可能なのかはわからないので、まあその辺りは独自設定ということで……
この主人公は孤島でサバイバルしていたことがありますが、生きるか死ぬかの孤島を快適に暮らせるようにリフォームすることに全力を尽くしていました。建築資材なくなっちゃった……別のサーバーから奪……貰うとするか!
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