シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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暴徒と暴れ馬

 結論。状態異常もデバフも効かねぇやこいつ。

 鎧が弾いてるのかそもそも効かない体なのか、細かいことは知らんが全然効いている気がしない。

 

「ウォアアアアア!!?」

 

「ぶん氏!代わるぞ!!」

 

 途中から回避の姿勢がおかしくなってきて、最後の方はもうほぼ仰向けになって地面スレスレを滑っている状態だった。グルグル回って目が回るし、こんな姿勢なのにウェザエモンは普通に対処して来るしで死にかけていたところでサンラクがヘイトを取ってくれた。

 

「どうだった?」

 

「状態異常もデバフも全部駄目っぽいです。時間稼ぎしかできない……」

 

「それができれば十分!」

 

 戦闘開始からどのくらい経った?余計なことを考えている余裕が一切ない!

 呪いの秘伝書の習得によりレベルが下がり、そこからレベルを上げ直したことで習得した呪啓者の職業スキルのおかげでギリギリ回避できている状態だ。回避ルートが分かっても速すぎて判断が間に合わない!

 

「入道雲」

 

「離れて!纏めて薙ぎ払われるよ!」

 

 ウェザエモンの腕から煙が上がったかと思えば、それは即座に巨大な腕の形となって薙ぎ払われ、至近距離にいたサンラクが吹き飛ばされる。

 

「風圧だけで死にかねないんだが!?」

 

「ウェザエモン相手にHPなんて10でも100でも変わらないかと思ってたけど、流石にHP初期値は辛そうだねぇ」

 

「でも色々あって常に割合ダメージを受けているので、初期値じゃないとダメなんですよ。HPを増やしたらリジェネが追い付かなくなります」

 

「そうなんだ」

 

 サンラクに蘇生アイテムを使用し、その間にオイカッツォがウェザエモンの相手をする。オイカッツォがピンチになれば次は俺、俺がピンチになれば次はサンラク……上手く回っているように見えるが、実際は蘇生アイテムが結構溶けている。これ二十分持つか?

 

 サンラクが真っ二つになり、オイカッツォが感電死し、俺も感電死し、また感電死し、今度はオイカッツォが真っ二つになり……何回死んだ?数えている余裕もない。

 ウェザエモン、俺よりスタミナあるんじゃないか?

 

「雷鐘」

 

「雷属性は止めてくれー!?」

 

 五秒間の間、秒間五発の落雷が襲い掛かってくる技だ。これも即死かつ攻撃範囲が非常に広く、アクセサリーのデメリットで雷耐性が低下している俺は少しでも掠れば問答無用で即死する。というか二回死んだ。これを使われたら全力で離れるしかない。

 なんか他の三人と見比べてみると、俺にだけやたらと雷が追尾してきているような気がする。もしかして雷耐性が低すぎると雷を引きつけるようになったりするのか?俺は避雷針じゃないんだが?

 

「その雷耐性下がるアクセサリーとやらは外せないの?」

 

「それが例のリジェネアクセサリーでもあるので……あと水晶で攻撃防げるやつ」

 

「随分といろんな効果があるアクセサリーだこと……おっと、十分経過……ここから第二フェイズだ」

 

 暴れまくっていたウェザエモンの動きが止まった。ここからはクソデカい馬の形をしたロボットが来ると聞いているが……

 

「……質量転送(エクスポート)及び展開(サモンコール)、戦術機馬……【騏驎】」

 

 空中に描かれた巨大な魔法陣から徐々にメカメカしい装甲を持つ馬が……馬が……?

 

「でっか……」

 

「足の生えたダンプカーだねコレは……」

 

 馬型ロボットではあるのだが、巨体のウェザエモンが乗る、というか合体するためか、馬の方も圧倒的なデカさだ。しかもミサイルやレーザーを搭載しているんだって。バカじゃねえの?

 

「「騏驎」の相手は頼んだよカッツォ君!そいつは放置しているとミサイルやレーザーをまき散らした挙げ句、ウェザエモンと合体しようとするんだ……!!そうなったらもう……策もクソもない。一方的に蹂躙されて成す術もなく即終了」

 

「対処法はプレイヤーが飛び乗り、騏驎のアクションを中断させ、ひたすら振り落としモーションを誘発させ続けること……って言うけれども……」

 

 騏驎の背中が開いたかと思えば、そこから飛び出す複数のミサイル。三本ある尻尾の先端からはレーザーが放たれ、ターゲットにされたオイカッツォが逃げ回る。

 

「どうやってこんな奴とロデオするんだよ!!」

 

「「キャバリー・クライシス」やり込んでたでしょ?乗馬テクニック見せてよ」

 

「それは馬に乗って戦うゲームであって、暴れ馬を制御するゲームでは……」

 

「お、ぶんぶん丸君もプレイしたことある?カッツォ君が振り下ろされたらその時は頼むよ」

 

「馬具無しであれを……!?」

 

「バグ!?」

 

「サンラク君はそっちに集中して!」

 

「あいよぉー!!」

 

 ここからはサンラクがウェザエモン、オイカッツォが騏驎の相手をし、どちらかが死んだらペンシルゴンがそれを蘇生し、俺はその間ウェザエモンか騏驎の足止めを行う。

 しかし、合流されたらアウトなバケモノ二体を同時に相手にしないといけないとは、絶対にソロでどうにかできる相手ではないな……

 

「馬には轡が必要だよねぇ」

 

 騏驎の背中に登ったオイカッツォが何らかのスキルによるものなのか、自在に動く鞭で騏驎の首を絞めて手綱代わりに……あっ

 

「……あれ大丈夫?振り回されてますけど……」

 

「振り落としモーションは出てるからオッケーかな」

 

 人間ってあんな風に振り回せるものなんだなぁ。座席の無いジェットコースターに握力でしがみついているようなもんだろあれ。

 

「さて、ぶんぶん丸君。約束の物は用意してくれたよね?」

 

「約束……兎に角高額なアイテムをできるだけ沢山、でしたよね?」

 

 ペンシルゴンがさっきからずっと操作している黄金の輝きを放つ天秤……それに高額なアイテム、となれば大体効果は予測できる。

 

「ここまで持ってくるの結構緊張しましたよ。これが水晶巣崖のレアアイテムです」

 

「うひゃあ、こんな大量のレアアイテム、阿修羅会が見たらPK待ったなしだね」

 

「阿修羅会のメンバーがそういうのなら間違いなしですね……」

 

 ペンシルゴンが俺から受け取ったアイテムを次々と天秤に捧げていく。ペンシルゴンがこれまで集めてきた戦利品や、トレードや売買で集めた高額アイテム。総額3000万マーニ。そして──

 

「総額2億4000万マーニ……これならユニークモンスターにだって張り合えるだろうね……!」

 

 ああ、二週間チマチマと集めてきた蠍の素材が消えてゆく……いや、消えたんじゃない。その天秤は捧げたものの価値に応じた恩恵を与えてくれるのだという。

 

「無理無理無理!遠心力で飛ばされるぅう!!」

 

「クソ……!!スタミナが全然足りねぇ!!攻撃を見切れてもスタミナ管理を少しでも怠ったら避けきれず瞬殺だ……!!」

 

 同時に聞こえてきたオイカッツォとサンラクの悲鳴。

 

「スタミナが足りないそうですよ」

 

「ぶんぶん丸君はスタミナ足りてる?」

 

「はい……今だけは、スタミナ以外のステータスが欲しいです」

 

「了解……天秤は均衡を保つ。価値を数値に、万夫不当の力を」

 

 黄金の天秤が輝きを増す。今のは詠唱か。

 

「一時的という制限のもと、「追加ステータスポイント」の恩恵を得る。レートは10万マーニで1ポイント。よって合計……2400ポイント……!!」

 

 俺のスタミナより高いじゃんチートか?このポイントに更に補正がかかるとしたら、全部スタミナに突っ込めば俺のスタミナ1万超えるじゃん。うわぁ、あれ俺も欲しいな……

 

「先駆けとして三人それぞれに計600ポイントずつ……!!持ってけ泥棒!!」

 

 天秤から光が溢れ出し、オイカッツォとサンラク、そして俺の全身が黄金のエフェクトに包まれる。

 

「体が軽い……!」

 

「どう?スタミナ以外のステータスに振った気分は?」

 

「何とも言えない感情…ですが、流石にこの状況で遊ぶわけにもいきませんから」

 

 俺一人だったら間違いなくスタミナに全振りしていただろうなこれ。でも今は協力プレイ中だ。コナツもここには居ないが、今もどこかで戦っているんだ。負けるわけにはいかない、お遊びは無しだ!

 

 ステータスが上がったのは俺だけではない。激しい衝突音と共にウェザエモンの刀が吹き飛ぶ。

 

「剣を持たない剣士などルーのないカレーと同義!ざまぁねぇな白米野郎!梅干しかたくあん持って出直してきな!」

 

 白米単品でも結構美味いと思うんだが。つまり油断するなってことでは?

 

「わぁああぁあ!!?」

 

 オイカッツォは……相変わらず騏驎に振り回されている。

 

「いや確かに……!!ステータスは上がったけれども……!!そんなんじゃこいつ止められないって……!!」

 

 まあレベル99でもなんとかできるような存在には見えないし仕方ないか……あ、飛んでった。

 でもなんかいいこと思いついたって顔しているな。ステータスも上がっているし、あのまま任せても大丈夫だろう。

 

 しかし状況は好転しつつある。サンラクはスタミナに余裕ができて、更にはウェザエモンの刀を奪った。これであの雷は落ちてこないはず……っ!?

 

「大時化」

 

 ウェザエモンがサンラクへと手を伸ばし、その手はサンラクのバックステップが間に合ったことで空を切る。

 

「掴み技まであんのか……!」

 

 しかもこの位置関係、サンラクが後ろに下がったことで俺とペンシルゴンがウェザエモンの射程圏内に入ってしまった。それなら──

 

「俺が前に出る!」

 

 天秤のステータスアップ、使わせてもらおうか!

 

 ウェザエモンのヘイトが俺に向き、一瞬で俺の目の前にまで距離を詰められる。そのネジみたいな脚で良く走れるものだ。

 ウェザエモンがこの状況で選ぶ技は……さっきの投げ技だ!

 

「大時化」

 

「ここだ!「呪業【巨影】」!!」

 

 俺の体を影が包み込む。一瞬にして俺が見上げる程に大きかったウェザエモンが逆に見下ろす程に小さくなる。正確には俺がそこまで巨大化したのだ。

 

 このスキルは動きが鈍る代わりに圧倒的質量を持つ影を身に纏い、巨人へと姿を変えるというもの。ウェザエモンは俺を掴もうとするが……掴めない。影を掴める訳が無く、重い影に阻まれ、俺の本体にまで手が届かない。

 

「体格差は正義……投げ飛ばされるのはお前の方だ、ウェザエモン!!」

 

 ウェザエモンを両手で鷲掴みにしてそのまま持ち上げる。

 確かにお前はどれだけ殴ってもダメージを受けないし、吹き飛びもしない。だが、持ち上げることは可能なようだな!

 

「快適な空の旅をぉ!お楽しみくださぁあああい!!」

 

 ウェザエモンを騏驎から遠く離れた方へと全力で投げ飛ばした。

 攻略サイトに「ウェザエモンは投げるとよく飛びます」って書いたら怒られるかな?




黄金の天秤とかいうぶっ壊れアイテム。原作最新話のサンラクサンが持ち出したらどうなってしまうのか

呪業シリーズはその昔誰かが夜の帝王に魅了され、狂気の果てに作り出した影を操るスキルです
その進化には夜の帝王に匹敵するような存在との遭遇が鍵となります

主人公の雷耐性が低いから雷が誘導されているというより、主人公の体が釘の影響で雷が落ちやすい物質として扱われているのが原因。おまけに鉱物系素材の釘を刺しまくっているのでめっちゃ電気を通しやすくなっています
要するに今の主人公の体は蠍くんと同じめっちゃ電気を通す水晶扱いになっていて、電気を通しやす過ぎて雷が引き寄せられています
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