シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
まあぶん投げたところでダメージは入らないわけだが、時間は稼げた。
このスキル、効果時間が短いしリキャストタイムはかなり長いのだが、1億マーニしただけのことはある。これならリュカオーンだって投げられるのでは?
「入道雲」
「うおぉおおッ!!?」
投げが効かないなら打撃と言わんばかりに巨大な雲の腕が振るわれる。
この体は非常に動かしづらい。自分の影なのだからどれだけ重くても全く動けないということにはならないようだが、それはそれとしてこんな分厚い影を纏って機敏に動けるわけがない。しかも他のスキルも発動できなくなる。
正面から雲の腕を受け止めるが、凄まじい力でそのままどんどん押されていく。影の体と雲の腕の間に水晶が発生して俺へのダメージを吸収するが、あまりの威力にMPがゴリゴリと削れていく。
「どこ見てんだウェザエモン!!お前の刀はここだろうが!!」
サンラクがウェザエモンから奪った刀でそウェザエモンの後頭部を思いっきり叩く。
敵の攻撃なら敵に通る……ということもないようで、ウェザエモンは止まらない。
「大時化」
「んな!?その向きから掴めるのかよ!?」
片手で首を掴まれたサンラクがそのままの勢いで地面に頭を叩きつけられる。掴みからの投げがスムーズすぎる。あんな投げ技格ゲーにあったら炎上するレベルだな……。
俺はなんとか耐えられたがサンラクが死んでしまい、刀が再びウェザエモンの手に戻ってしまった。
「っと、効果時間が切れたか……いや、これでいいのか。刀があったらあれはただのデカい的だ」
こうなるとやっぱり影にヘイトを押し付けられる「呪業【切影】」の方が良かったかもしれない。他にも転ばせるとか怯ませるとか暗くするとか色々あったが、多分ウェザエモンには効かないだろう。というか暗くするってなんだよどう使うんだ?
サンラクが蘇生して準備が整うまでの間、俺がウェザエモンの相手をする。派手に投げ飛ばすのは暫くできないが、他にも便利なスキルはある。
「今のステータスならこいつも使いこなせる……「
名前からして呪啓者専用っぽいこのスキルは、簡単に言えば攻撃予測スキルだ。相手がどう攻撃してくるのか、それが俺の視界に影で表示されるのだ。
それだけではなく、なんとどう避けるのが最善か、避け方まで影で教えてくれるし、逆にこちらから攻撃する時には最適な攻撃ルートを教えてくれる。
こう聞くとぶっ壊れだが、このスキルを習得するとステータスに一本のゲージが出現する。
このゲージは左からは黒、右からは白が伸びてお互いを押し合っており、
黒が伸びれば呪いの悪影響が減っていくが、ゲージが完全に黒に染まった時、AIに肉体の操作を奪われることになる。そのため暴走を防ぐには時々わざと表示される最適解から外れた行動をしなければならない。しかし、ウェザエモンを相手にしてわざと最適解から外れた行動を選ぶ余裕が無く、さっき使用した時は反射的に案内に従いすぎて危うく暴走しかけた。
だが天秤の恩恵がある今ならこのスキルのメリットを最大限利用できる!
「断風」
「よっと」
ウェザエモンの神速の刃が通る場所に予めレイピアを置き、抜刀の瞬間にそれを跳ね上げて刀を弾く。攻撃のタイミングや軌道が事前にわかるならパリィスキルが無くともパリィし放題だ。
「
因みに白が伸びると呪いの悪影響が大きくなり、完全に白に染まると即死するが、白に偏っているほど強くなるスキルも一緒に覚えたのでこの辺りを上手く調整しながら使っていく必要がある。
それとレベル上げ中に丁度良く覚えた「ガッツガード」というスキルとも相性が良い。ガードやパリィのスタミナ消費が大幅に増える代わりに、効果時間中はガードやパリィで貫通ダメージが発生しなくなるというスキルだ。かと言って雑に素手ガードとかすると俺のスタミナでもごっそり消し飛ぶので注意が必要だが、わざと「
「雷鐘」
「ガードできないのはやめてぇ!?」
天秤の恩恵で得た敏捷によって回避速度も大幅に上がっており、なんとか落雷の範囲外へと逃げ出す。
というかあれやっぱり俺にだけものすごい追尾しているじゃん。まさか雷耐性低下の悪影響がここまで響くとは……
「スイッチ!」
「よしきた!」
そしてそのまま準備を整えたサンラクと入れ替わる。さてオイカッツォの方は……
「おおおおみみみてみてコレ!」
「えぇ……?」
一体何があったのか、オイカッツォは鞭で自分の体ごと騏驎の頭部を縛り上げ、振り回されていた。
いやまあ確かにあれなら振り落とされることはないだろうし合理的ではあるのだが……
絶叫アトラクションでもあそこまで酷いのは中々無いと思うレベルでブンブン振り回されていたオイカッツォだったが、急に騏驎の動きがピタリと止まる。
そしてそれとほぼ同時のタイミングでウェザエモンが突然地面に膝をついた。
「倒したって雰囲気じゃあ……ねぇよな……」
「……うん」
タイマーを確認すると、既に戦闘開始から二十分が経過していた。つまり──
「気を引き締めて。私がここまで来たのはたったの一度きり。ここからが本番、第三フェイズだ」
ウェザエモンの鎧が音を立てて亀裂が入り始める。それは限界が近づいているようにも見えるし、枷が外れていくようにも見える。
「メンバーがマシだった頃の阿修羅会でたった一度だけこの第三フェイズまで来たことがある。その時は初手で全滅。鎧に亀裂が入った墓守のウェザエモンが咆哮と同時にフィールド全体に放つ衝撃波によってね。当たった瞬間、バフやらで防御をガチガチに固めていても即死だった」
つまり超範囲即死攻撃をぶちかましながら形態変化すると?どうしようもなくない?
しかも咆哮と同時に発生する衝撃波ってことは音攻撃?俺はアクセサリーで振動耐性下がってるからどう足掻いても耐えられないぞそれ。
しかしペンシルゴンには何か秘策があるようで、インベントリから一つの液体が入った瓶を取り出す。
「シャンフロは世界観や設定が攻略の鍵になるんだ。私はずっと「墓守のウェザエモン」を「神代の技術で身体を機械化したサイボーグ」だと思っていた。だけど……サンラク君が聞いたという「死に損ない」って単語、それで大体ウラが見えた」
ウェザエモンの鎧の口の部分が開く。今にも叫びだしそうなウェザエモンに向けてペンシルゴンが瓶を投擲する。
「奴の分類は「アンデッドモンスター」。死者には「聖水」!!それもただの聖水じゃない……「慈愛の聖女イリステラ」が丹精込めて作った「聖女ちゃんの聖水」……!!」
なんか知らんキャラの情報が出てきたぞ。なんか雰囲気からして凄い人が作った聖水ってことか。
ペンシルゴン曰く対アンデッドポーションとしては最強クラスだという瓶の中身がウェザエモンにぶちまけられる。
ウェザエモンが叫びだす……しかしあれは攻撃のための咆哮ではない。俺の咆哮と比べて音が小さすぎる。
「ビンゴ……!!全体攻撃をキャンセルできた!!」
「しかし……流石にこれで終わりってことはないでしょうね……」
ウェザエモンの鎧の隙間や亀裂から炎のようなエフェクトが噴き出し始める。ここからが真の本番ですと言わんばかりだ。それだけではない。
「んえ!?」
「オイカッツォ!?」
騏驎が変形を始め、縄が千切れたオイカッツォが落下する。
今まで馬型だった騏驎が二足歩行する人型ロボットへと変形してしまった。しかも真ん中の空いたスペース、人が乗れそうだけど、普通の人が乗ることを考慮していなさそうな作りで、丁度ウェザエモンのネジみたいな脚が良い感じにドッキングしそうな穴が二つ空いている……つまり?
「あれとウェザエモンが合体したら無双ロボゲーがスタートするでしょうね……」
「俺達が無双される側ってか……!?」
「こっちもロボに乗れたら良かったんですけどね。ネフホロなら得意ですし」
「お、ぶんぶん丸氏もネフホロやってるんすか?」
「今そんな話してる場合じゃないよ!ここからは完全に情報なしなんだから!」
そう、阿修羅会は第三段階の初手で壊滅した……ここから先は攻略情報なし真の初見プレイだ。
「ウェザエモンの身体が……少しずつだが崩壊し始めている」
「ここまでと同じだとすれば、自壊するまで耐えることが勝利条件ですかね?」
「勝利条件が時間経過なのはほぼ確定と見ていいと思う。流れから考えればまた十分……おそらくこれが最後のタイムリミット」
……これで実はここから一時間粘りますとかは流石に無いよな?そこはシャンフロを調整している人達を信じるしかない。
「ウェザエモンの行動パターンに変化が無いとしても、問題はあの騏驎……あそこまで変わると対処法も全く違うものになっているでしょうね」
「そうだな……ペンシルゴン、お前はカッツォのアシストに回ってやれよ」
「こっちは俺がサンラクさんを蘇生します。ペンシルゴンさんはオイカッツォさんを」
「わかった。任せたよ、サンラク君。ぶんぶん丸君」
ペンシルゴンがオイカッツォの方へと走り出す。
サンラクはウェザエモンに向けて走り出す。
「……楽しいな」
俺が今までプレイしてきたゲームはその殆どが自分一人かNPCの仲間と一緒に戦うようなゲームだった。俺がいつも変なプレイをするから味方プレイヤーの迷惑になるのを恐れて一人で遊んでいたのだ。勿論それらのゲームがつまらないわけではない。
思い出すのはコナツと一緒に遊んだ幾つかのゲーム……明らかに子供向けのゲームを二人とも幼女アバターでプレイし、果汁の濁流で溺れかけてそのゲームが低評価な理由を察したり、コナツが誘拐……好感度最大にした幼女のNPCが実はラスボスでトゥルーエンドに偶然到達したり、初期装備のおたまと鍋の蓋でドラゴンに挑んだり……
「ふははははははははっ!!」
サンラクの笑い声が聞こえてくる。ここまで温存していたのか装備を変更したサンラクが兜の角でパリィしたり、なぜか背後へ振り向いたウェザエモンの背中に剣を突き立てたりと、ウェザエモンと楽しそうに斬り合っている。
サンラクの攻撃がヒットする度にこのゲームにおいてダメージを受けた時に発生するポリゴンがウェザエモンから散り、背後からの攻撃ではウェザエモンが膝をついている。どうやら第三段階でダメージが入るようになったらしい。
「ここまでやられるだけだったのがここに来て反撃可能になると……ここで憂さ晴らしをしてくださいってか。いいねぇ!」
思いっきり楽しませてもらうとしようか。神ゲーを!好きなプレイスタイルで!!仲間と共に!!!
ぶっ壊れスキルに見える
これを使い続けていると呪い値が上がり、呪啓者から派生する最上位職業に繋がるところまでは良いのですが、そこで発生するユニークシナリオが罠で最悪キャラロスト級の詰みになる可能性があります
そもそも