シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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暴徒と晴天

 晴天大征……どんな技かと思えば、それは理不尽としか言いようがないものであった。

 俺の目の前で繰り広げられる理不尽の数々……それがターゲットにされたサンラクへと絶え間なく繰り返される。

 

「断風、断風、断風、火砕龍、灰吹雪、雷鐘」

 

 ゲームにおいて最もクソとされる要素の一つ……攻撃後に隙がほぼ存在しない、無限のスタミナから絶え間なく繰り出される即死攻撃の連打。しかも持続が長い技は重なることもあり、決まったパターンも恐らく無い。

 

「反撃は無理、ここに来てまた避けゲーか?」

 

 サンラクを助けたいが、その攻撃範囲の広さと隙の無さから助けに入ることもできず、出来ることは外から攻略法を探すことだけだ。

 

「晴天大征、流転と手向けを以て終局と成す」

 

 ほぼ瞬間移動と言ってもいい速度でサンラクの移動先へと回り込んだウェザエモンが刀を振り被る。

 サンラクの足に黒いエフェクトが纏わりつき、足が止まる。

 

「晴天転じて我が窮極の一太刀」

 

 ここに来て回避も封印!?じゃあもうパリィするしか──

 

「我、龍をも断つ──」

 

 

 

 

 

「──天晴」

 

 

 

 

 

 サンラクがパリィエフェクトを纏った角ごと真っ二つにされる。

 切断の余波で背後の地面までもが割け、衝撃がこっちにまでやってくる。

 

「……回避不可かつガード不可で斬られたら何もかも貫通して即死……斬られないようにアレをパリィしろと……?」

 

 流石にパリィ完全無効ではないはず……となれば、刀の側面か腕を横から叩いて逸らすしかないか?或いはあの刀を破壊するか……その前にまずサンラクを蘇生する。

 

「しからば、わが窮極を超えぬ限りこの身は斃るることあらず」

 

 ウェザエモンはこちらを向いて構えている。それは晴天大征を発動した時と同じ構えだ。どうやら一回発動して終わりではないらしい。

 

「雷鐘」

 

「要するに、あれを攻略しないと連続技からやり直しってことか!?」

 

 あらゆるスキルをフル活用し、全力で回避を試みるが……速すぎる。どれだけ離れてもウェザエモンがランダムで選んだ技が命中する位置まで一瞬で距離を詰めてきて、運が悪ければそこから雷鐘を使ってくることがあるし、雷鐘がまだ続いている状態で次の技を使ってくる。

 

「がぁあッ!!?」

 

「ぶん氏!?」

 

 感電死した俺はサンラクの蘇生アイテムによって蘇生する。

 やっぱりどうしてもあの雷攻撃と俺のビルドの相性が悪すぎる。スキルでいくら先が見えても、俺のスキル連打による繊細さを欠く回避ではあの引き寄せられる落雷を回避しきれず、減速しないように範囲外へと真っ直ぐ逃げる以外の対処法が無い。直前に使われた技や状況次第で死ぬ。

 そして真っ直ぐ逃げているとそこを狙って次の技が来て、それを避けようとすればまだ続いている落雷に狙われる……少しでも減速すれば感電は避けられなくなるため、雷鐘が来るイコール死となってしまっている。敏捷補正スキル殆ど無しがこんなところで響いてくるとは……

 

 MMORPGはシャンフロ以外殆どやったことが無いが、役割分担が非常に重要になるというのはわかる。自分には無理なことを無理してやって仲間をピンチに追い込むようなことをしてはならない。あれを直接攻略できないのは悔しいが、俺のビルドではどうしようもない相手なんだからそこは仕方がない。ここはサンラクに任せよう。

 

「サンラクさん、俺はサポートに専念します……晴天大征の攻略、任せました」

 

「わかった!俺が死んだときは頼む!」

 

 ウェザエモンに立ち向かうサンラクの背中を少し離れた位置から見つめる。

 

「やっぱ強ぇな……間違いなく鯖癌や幕末で出会ったサンラクと同一人物だろうなあれは……」

 

 鯖癌で遭遇した時は……μ-skYとか言われてたっけな。τ鯖が伐採&採掘のし過ぎで圧倒的建材不足に陥った時に仕方なく色んなサーバーへと遠征しに行ったのだが、その中で一度だけ訪れたμ鯖で出会った幼女アバターの名がサンラクだった。まあ俺も元々はコナツと遊ぶ予定だったのでコナツの要望で幼女アバターだったのだが。

 一緒に伐採していた仲間が次々と闇討ちされる中、建材が欲しいだけなのに奇襲してくる奴らが面倒になってきて全員斧で叩き割ってやろうと森の奥へ突撃したあの日のことを思い出す。いや思い出している場合じゃねぇ集中しろ。

 

 幕末ではイベントがある日にそこそこの確率で遭遇する般若面の二刀流使いの名がサンラクだった。幕末では産廃扱いされている鎧兜縛りでプレイしている俺を「鎧の隙間を狙う練習に丁度良い」とか言って頻繁に襲撃して来るのでその度に殺し殺されを繰り返している。一々鎧兜用意すんの面倒なんだぞ。脱いだ方が強いとか言うな。

 

 サンラクが天晴でぶった切られる度に俺が即座に蘇生し、少しの間ウェザエモンのヘイトを引き付ける。準備を整えたサンラクが晴天大征の途中でヘイトを奪って俺の後を引き継ぐ。

 一度試してみたが、どうやら天晴のタイミングではヘイトを奪えないようで、最後だけ俺が対処するというのも困難のようだ。

 

「サンラクさん、蘇生アイテムがもう……!」

 

「そうか、じゃあこの三十秒……次が最後の天晴だ」

 

 サンラクは角が折れてパリィに使えなくなった壊れかけの兜を外し、いつもの鳥の覆面を装備する。顔を隠してた方がパフォーマンス上がるの?

 

「墓守のウェザエモン、窮極の一太刀。攻略して終幕(フィナーレ)といこうか!!」

 

 ……この状況でも堂々と見得を切れるのか。見習いたいメンタルだ。

 

 オイカッツォとペンシルゴンの方は……騏驎がなんかレーザーとミサイルを乱れ撃ちしている。大丈夫なのかあれ?あれはもう二人を信じるしかない。

 

「おらこいやウェザエモン!雷鐘以外で!!雷鐘以外で!!!」

 

 俺の祈りが通じたのか、晴天大征の初撃は断風。これはパリィ……「呪界啓示(カース・ビジョン)」によって見えた次の技は入道雲。最善の回避ルートを選びウェザエモンの背後へ回り込む。

 断風、断風、大時化。続く技が雷鐘じゃなければ対処は容易い。火砕龍、灰吹雪はモーションが長いし避けやすいから当たり。多分これ本来は複数のプレイヤーでウェザエモンを囲むと使ってくる広範囲殲滅用の技なんだろうな。はい断風はパリィで……あっ。

 

 遂に「呪界啓示(カース・ビジョン)」によって空から雷が降り注ぐ未来が見えた。幸い断風からなら回避が間に合う。

 

「サンラクさん!」

 

「【水鏡の月】ィ!!」

 

 サンラクが武器を振るうと、ウェザエモンの背後に波紋が広がり、そこから攻撃判定が発生する。

 ウェザエモンが背後からの攻撃に振り返り、ヘイトがサンラクに向かう。これで追撃は俺の方には来ないはずだ。

 

「うおぉおお!!!」

 

 俺は兎に角走る。ここで落雷に当たればもう復活できない。ワンチャンオイカッツォとペンシルゴンが助けてくれる可能性はあるが、死なないのが一番だ。

 

 暫く走り続けると、落雷の音が聞こえなくなり、遠くでウェザエモンとサンラクが戦う音が聞こえてくる。

 

「逃げ切れたか……」

 

 振り返ってみれば、オイカッツォとペンシルゴンが居た方向から激しく飛び散るポリゴンが見えた……どうやら騏驎を撃破したらしい。手助けはいらなかったようだ。

 ならあと俺にできることは祈ることだけか?何かできることはないだろうか、祈るのはできることを全てやり尽くした後だ。

 

 周囲を見渡していると、ふと桜の木の根元の墓標が視界に入る。あれ攻略のヒントだったりしないか?

 

 

 

 

 

 

 サンラクはその手に持つ二つの剣、兎月【上弦】と兎月【下弦】を重ね合わせ、一つの片刃の大剣の形状をした武器、兎月【双弦月】へと合体させる。

 クリティカル威力と成功率を上昇させる双弦月の特殊効果によってパリィの成功確率を可能な限り高める。

 

 天晴に喰らいつくため、更に速度を上げるべくスキルを重ね掛けしようとして……そのスキルの内の一つ、「クライマックス・ブースト」が不発する。

 ここでサンラクは「クライマックス・ブースト」の発動条件のHP三分の一以下を満たしていないことに気が付いた。調整ミスである。

 

 今からHPを減らすには遅すぎる。既にウェザエモンは刀を振り被っているのだ。

 

「天……」

 

 何度も喰らってきたからこそサンラクにはわかる、通常攻撃や断風とは違う、もっと理不尽な死が振り下ろされようとしている。

 

 その時だった。

 

「こっちを見ろウェザエモン!!!」

 

 刀が振り下ろされようとしたその瞬間、遠くから聞こえてきたのは雷鐘から走って逃げていったぶんぶん丸の声。

 何かしらのスキルによるものか、ウェザエモンの頭部側面からヒットエフェクトが飛び散り、一瞬とはいえ動きが完全に停止する。

 

 ウェザエモンの視界に映るのは、墓標の側に立ち、黄金の剣を携えるぶんぶん丸と──既に亡くなったはずの恋人の姿。

 

 それはこのゲームの運営が想定していた仕様なのか、世界観を忠実に守ろうとしたサーバーが起こした奇跡なのか。

 偶然にも月光の魔力を放つアイテムを身に着けていたぶんぶん丸が墓標に近付いたことで、月光が届かない次元の裏側であるが故に見えることがなかった遠き日のセツナの姿が浮かび上がったのだ。

 

 ぶんぶん丸は突然の出来事に混乱し、ウェザエモンの方を見ればそこには明らかに焦っている様子のサンラクと刀を振り上げるウェザエモン。咄嗟にウェザエモンへ向けて「ソニックカノン」を放ち、セツナの姿を見せて隙を作ろうとしたのだ。

 

 ウェザエモンの動きが一秒だけだが止まった。

 サンラクにとってその一秒は起死回生の一手を指すのには十分な時間だった。

 

 サンラクは自分自身に剣を突き刺す。

 本日行われた大型アップデートによる仕様変更により、幸運戦士であるサンラクは一度だけ自傷ダメージによる自滅をHPを1残して確定で耐えられるようになっていたのだ。

 

 HP調整が完了し、今度こそ「クライマックス・ブースト」が発動する。

 

「晴天大征は「天晴」を以て終わる一連のアクション。言い換えれば「天晴」を放たなければお前は終われない。「晴天大征」のアクションも、永い永い墓守の誓いすらも!親分(ヴァッシュ)に代わって俺が張っ倒してやるよ!!」

 

 全てを断ち切らんとする刃を正面から受けることはできない。故にサンラクは兎月【双弦月】の専用スキル、「致命の三日月(クレセント・ヴォーパル)」を振り下ろされる刀の側面に叩きつけることを選んだ。

 

 振り下ろされた窮極の一太刀に限界まで高めたクリティカルの火力が横から叩きつけられる。

 

「そろそろ眠りな!!墓守のウェザエモン!!!」

 

 一瞬の拮抗。凄まじい衝撃がウェザエモンの鎧を砕き──その手から刀が弾き飛ばされた。

 

「お前は強かった!けどな、死ぬほど見てるんだぜ?俺にはもうその刃は届かねぇよ。窮極の一太刀、攻略完了だ」




オリ主にどこまでやらせるか、原作キャラの活躍をなるべく奪わないようにするにはどうすればいいのか、色々考えてこのような結末になりました。因みに主人公がウェザエモンのHPを一気に削った影響で晴天大征発動までが若干早くなっており、それでペンシルゴンとオイカッツォの騏驎撃破のタイミングがズレたので、主人公がウェザエモンの気を引く役となりました
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