シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

34 / 113
長かった……いや、これでも原作からかなり描写を端折っているんですけどね。原作の文章力が凄すぎる……


暴徒と天晴

「……見事」

 

 弾き飛ばされたウェザエモンの刀が地面に刺さり、折れた。

 

晴天(セイテン)転じて我が窮極の天晴(テンセイ)。言葉は移りて(イワイ)に転ず。天晴(あっぱれ)である」

 

 晴天大征及び天晴はサンラクによって攻略された。ボロボロと崩れゆくウェザエモンからはもう戦闘の意思は感じ取れない。

 

「ダジャレかよ」

 

 ……この状況でよくそういうこと言えるなアイツ。

 

「……呵々……セツナにもよく言われたものよ……」

 

 あ、会話ができてる。

 

「……重ねて天晴で ある。「拓く者」の末えイ よ……」

 

 折れた刀を拾い上げ、こちらに向かって歩き出すウェザエモン。

 俺……じゃない。墓標だ。隣を見れば、既にセツナの姿はそこには無かった。

 

 騏驎との戦闘を終えたオイカッツォとペンシルゴンも走ってきたが、もうウェザエモンに限界が来ていることを察したのか、ただその光景を静かに見つめていた。

 

「我が身……朽ち果テ 眠る……」

 

 墓標の前で膝をつき、遂にウェザエモンの全身が崩壊する。

 

「セツ……ナ……今……そコ……へ……」

 

 ウェザエモン塵となって完全に消滅した。刀も少し遅れて崩壊してゆく。

 

「お……終わった……?」

 

「クリア表示はまだ出ていないみたい……」

 

 真の最終決戦とかマジでやめてくれよ……?とか考えていると、あれだけ咲き誇っていた桜の木が枯れていっているのに気が付く。というよりこのエリア全体がが元に戻っていっているようだ。

 

「セッちゃん……」

 

 元の色に戻ってゆく夜空を眺めていたところ、ペンシルゴンの声で視線を下せば、墓標の側に新月の夜であるにも関わらずセツナが立っていた。

 

「アーサー……それにオイカッツォ、サンラク、ぶんぶん丸。成し遂げてくれたのね。本当にありがとう。私の……いいえ、遠い過去に「セツナ」が抱いた願いはここに果たされました」

 

「?引っかかる言い方だな」

 

「まるで「自分はセツナじゃない」みたいに言うね」

 

「セッちゃん……?「セツナ」って貴女のことでしょ?」

 

「いいえアーサー……私は確かに「セツナ」ではある。けれどあの日死んだ「セツナ本人」とは違う……」

 

 ん?本人の魂とか幽霊とかじゃないのか?

 

「セツナの願い……「もしも恋人がずっとずっと私の死に囚われるのならどうかやめてほしい」。その想いが生み出した彼女の残滓。謂わば筆跡まで完全に再現された写本のようなもの」

 

「だから「遠き日の」セツナ……か」

 

 本人ではない残滓……なんかどこかで……あ。

 

「そうか、喪失骸将(ジェネラルデュラハン)黒死の天霊(トゥルー・クワイエット )と似たようなものか。元になった過去の人物がいるのに何度倒しても出てくるし、本人ではない残滓とはそういうことか」

 

「知らないモンスターの情報で納得しないで欲しいんだけど?」

 

 今解説していい雰囲気じゃないのでまた後でね。

 ふと剣に目を向ければいつの間にかヨハンナが復活したのかヴィンセントと合体して一本の大剣に戻っていた。

 

「私はセツナの残滓。役目を終えれば消える存在」

 

 セツナの姿が消えてゆく。

 

「!待って!セッちゃん……!!」

 

「悲しまないでアーサー。彼女の願いに「世界が応えた」時点でいつかはこうなることは決まっていたの。貴方達は開拓者。二号計画(セカンドプラン)の末裔。世界を「拓く者」。もしも貴方達が自身のルーツ、「世界の真実」を知りたいと願うのなら……「バハムート」を探しなさい」

 

 ……なんか知らん情報がまた出てきたぞ?バハムートってドラゴン?魚?海に行けばいいのか?

 

「セッちゃん、それはどういう……」

 

「ここから先は自分で見つけ出してちょうだい。だってそれが未来を切り拓くってことでしょう?」

 

 うーむ、旧大陸は大体調査されているだろうし、新大陸の方にいるんだろうか?あるいは海か空か地中に隠れているか、ウェザエモンのように別次元にいるかもしれない。

 

「アーサー……これは「セツナ」としてではなく、「私」自身が貴女に贈る言葉。いつも「私」に会いに来てくれてありがとう。大好きよアーサー」

 

「あ……こちらこそ!」

 

 阿修羅会に残って毎月会いに行ってウェザエモンにも挑み、そして勝ったわけだから。好感度すげー高いんだろうなペンシルゴン。コナツもこの場にいたらこういう会話があったのだろうか。

 

 セツナの姿が完全に消え、なんか色々とウィンドウが表示される。

 

 

 

『墓守のウェザエモンは永い眠りについた』

『セツナの残滓は遠き日の願いを終えた』

『ユニークシナリオEX「此岸より彼岸へ愛を込めて」をクリアしました』

『称号【看取りし者】を獲得しました』

『称号【刹那を想う者】を獲得しました』

『称号【神代の英雄に届きし刃】を獲得しました』

『アクセサリー【格納鍵インベントリア】を獲得しました』

『アイテム【セツナメタル】を獲得しました』

『アイテム【世界の真理書「墓守編」】を獲得しました』

 

 

 

「……本当にクリア出来たんだね……三人とも私のワガママに付き合ってくれてありがとう」

 

「俺達はやりたいと思ったから参加しただけだよ」

 

「……最初は幼馴染に会おうと思っただけだったのに、なんかいつの間にかとんでもないことになってしまった……」

 

「あはは、コナツちゃんにも早く報告してあげないとね」

 

「『シャングリラ・フロンティア』がサービス開始されてから初のユニークモンスター討伐か……いやぁ~どんな恩恵があるのか楽しみだねぇ!!」

 

「よーし!それじゃあ早速、報酬確認と洒落込もう──」

 

 

 

 ──鐘の音が鳴り響く。

 

 

 

『シャングリラ・フロンティアをプレイされている全てのプレイヤーの皆様にお知らせ致します』

 

 これは、運営のアナウンスか?

 

『現時刻を持ちまして、ユニークモンスター「墓守のウェザエモン」の討伐を確認致しました』

 

 あー、ユニークモンスターって凄いモンスターだし、運営が倒されたことをアナウンスしてくれるのね。

 

『討伐者プレイヤー名は「サンラク」、「ぶんぶん丸」、「オイカッツォ」、「アーサー・ペンシルゴン」の四名です』

 

 ……討伐者の名前も公表されるんすか、そうっすか……いやまあ普通のプレイヤーならそっちの方が嬉しいんだろうけどさ……

 

『さらにユニークモンスターの討伐に伴い、ワールドストーリー「シャングリラ・フロンティア」が進行しました』

 

「ワールド……ストーリー?」

 

 なんかもう頭痛くなってきた。早くログアウトして寝たい。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 洞窟を抜け、千紫万紅の樹海窟の通常エリアに戻ってきた俺達四人。

 それを出迎えたのは……オルスロットというプレイヤーとあと二人、計三人の赤い名前のプレイヤーだった。

 

「おっ」

 

「やっぱりいたね」

 

「あー、アイツが例の?」

 

「お……おま……お前らぁ……!!」

 

 ペンシルゴン曰く、この隠しエリアを知っている阿修羅会の生き残りが出待ちしている可能性が高いとのことだったが、三人しかいない。だいぶボロボロにされたようだ。

 

 三人に煽られた阿修羅会の残党が武器を構える。一応人数ではこちらの方が上だが、全員ウェザエモンとの戦闘で疲弊しているし、ペンシルゴンに至っては騏驎との戦いで武器を全部失ったようで素手だし、オイカッツォに至ってはなんかの薬の副作用でレベル20に下がったらしい。このままだと普通に負る可能性がある。

 

 まあ何の策もなく出てきたわけではないのだが。

 

 俺達と阿修羅会残党の間の地面に魔法陣が出現する。

 PK対策として存在する魔法の一つ、【朋友救助(フレンドワープ)】。PKに襲われた時にフレンドに「救難信号」を出すことで、受け取ったフレンドの中にこの魔法を習得している者がいれば、一時的に助けに来てもらうことが可能となる。

 

 魔法陣から出現したのは重厚かつ神々しい白金の鎧を身に纏った一人のプレイヤー。その手には分厚い大剣が握られており、恐らく重戦士ビルドだと思われる。

 

「またテメェか!!サイガ-0……!!」

 

 サンラクのフレンドでめちゃくちゃ強い人らしい。なんでもこのゲームにおいて最大のダメージを叩き出したプレイヤーなんだとか。

 

「うわ廃人強い……ん?」

 

 サイガ-0が阿修羅会残党を捻り潰しているところを眺めていると、一羽の鳥が飛んできた。メールバードだ。

 

「あ、リーダーからだ……」

 

「なんだって?」

 

「えー……さっきのアナウンスについて聞きたいことがあると……」

 

「名前読み上げられてたからねぇ……」

 

 どうしようかなこれ。ユニークモンスターという再戦できるかもわからない激レアコンテンツをクランに黙って攻略しちゃったわけだが、下手したらめっちゃ怒られるんじゃないだろうかこれ。

 

「……まあ、最悪クランから追い出されてもなんとかなるか」

 

 その時は呪啓者ギルドを拠点にして頑張って生きていこう。阿修羅会みたいなPK集団だって生きていけているんだからなんとかなるだろう。今その阿修羅会が目の前で蹂躙されているわけだが。あ、ペンシルゴンがとどめ刺した。

 

 しかし今日はもう疲れた。今からクランに報告とかめちゃくちゃ疲れるし、ここからフィフティシアに行くのもかなりめんどくさい。

 

「ああ、メールバードがめっちゃ飛んでくる……すみません先に帰りますね……」

 

「あ、お疲れ様です」

 

 とりあえずメールバードを「疲れたので今日はもう寝ます」と返信して、ニトロ薬局サードレマ支店でログアウトすることにした。

 

 

 

 

 

 

忍:つかれた

 

日向:お疲れ様

 

日向:勝ったんだね

 

忍:まじでつかれた

 

忍:しこうにゅうりょくのへんかんがきのうしないまあいいや

 

忍:いべんとしーんろくがしといたとちゅうからだけど

 

忍:せつめいだるいからこれみといて

 

忍:[動画]

 

忍:[画像]あとしんりしょとかいうあいてむのすくしょ

 

日向:ありがとう

 

忍:ほんとつかれたなんだあれはそくしこうげきれんだってなんだなにがてんせいてんじてあっぱれじゃ

 

忍:まあなんだありがとうふざけんなたちばな

 

日向:ごめんって

 

忍:さーどれまでろぐあうとしたからあしたへびのりんごで

 

日向:サードレマの蛇の林檎ね

 

忍:くりあほうしゅうにへんなあくせさりーがあったけどつかわないからあげる

 

日向:ユニークモンスターの報酬だから凄くレアなんじゃないのそれ?

 

忍:すたみなふえないあくせさりーいらない

 

忍:それとうぇざえもんのことおしえてくれたおれい

 

忍:もうだめねむいねる

 

日向:おやすみ




半裸のバカとビキニのバカの足止めにメンバーをほとんど持っていかれたオルスロットくん。ボロボロになった阿修羅会残党の前に最大火力(アタックホルダー)が立ち塞がる!

「神代の英雄に届きし刃」……ウェザエモンに対して与えた影響の大きさが一定以上のプレイヤーが貰える称号。要するに無敵のウェザエモンを投げ飛ばしたり、沢山デバフ入れたり、大ダメージを与えて吹っ飛ばしたりしたプレイヤーに与えられる
「セツナメタル」……ウェザエモンに一定以上のダメージを与えて鎧を大きく破損させたプレイヤーが貰える報酬。ウェザエモンの砕けて消えてしまったはずの鎧の一部と同じ見た目をしている。それは神代の鋼であり、英雄の残滓であり、貴方が成した偉業である

これでこの作品は一旦一区切りとなります。次回は幕間で主人公のステータスやスキルの紹介になります
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。