シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
サードレマの蛇の林檎にてコナツと待ち合わせしていると、ペンシルゴン達も蛇の林檎にやってきた。折角なのでコナツと俺も一緒の席に座ることになった。
「見たかよあのSF的素敵武装の陳列を!!『シャンフロ』の全プレイヤーを相手取っても勝てそうだぞ!!」
「見てないですね」
「あ、まだ装備してない感じっスか?」
「俺は既にアクセサリースロットを全部特殊なアクセサリーで潰しているので、そのジャンルのアクセサリーしか装備できないんです」
「マジで?」
「話を聞いた限りあれ以外にも何かしらのデメリットがありそうだとは思ってたけど、装備の自由度制限とは中々重いデメリットだね」
「俺はスタミナを増やすアクセサリー以外装備するつもりはありません。無限インベントリとか素敵武装とか気になりますけど、一度装備したら恐らく外せないアクセサリーはちょっと……って感じですね」
「え?……あ、ホントだ外せないやこれ」
「おかげでPKKのペナルティでも没収されなかったけどね」
ペンシルゴンはあの後サイガ-0と戦ってPKKされたらしい。まあこの人も阿修羅会残党だしな。
「というわけでこれあげる」
「え、本当にいいの……?中に色々入ってるんでしょこれ?」
「中身は気になるけど、武装ってことはどこかしら装備枠使うってことだろ?俺は装備枠全部スタミナ特化にするつもりだからいらん」
「前々から思ってたけど、その特化プレイへの拘りはなんなの……?」
「中途半端があまり好きじゃないだけ。尖らせられるなら限界まで尖らせたいの」
スタミナ以外にも振った方が強い?無限インベントリがあれば色々と便利?知らん知らん。俺は効率や利便性を投げ捨てたところに楽しみを見出してしまったのだ。これからもこのスタイルでやっていくぞ。
話を戻して、あのアクセサリー、「格納鍵インベントリア」の中身のロボや装備は動かすのには「規格外エーテルリアクター」なるものが必要かつ、そのリアクターが必要な装備を着ていないとインベントリアの中の特殊な武器を使用できないらしい。
「「規格外エーテルリアクター」なら俺持ってるけど」
「ぶっ!?」
「汚ねぇ!!」
オイカッツォの言葉にペンシルゴンがケーキを吹き出す。
「ちょっと!どこでそれを!?」
「俺はほとんど騏驎と戦っていたからなのか報酬で貰ったんだよね」
俺は貰ってないし、反応からしてペンシルゴンとサンラクも貰っていない。一人だけしか貰えない報酬だろうか?
「でも実はコレ……破損してるみたいなんだよなぁ」
「店で修理できないの?」
「そこらの鍛冶屋に持って行っても門前払いだったよ。こんな訳がわからんモノ直せるかって」
「神代文明の道具だからね……特別な鍛冶師でも必要なのか……あるいはアイテムか……」
特別な鍛冶師……流石にムンクさんは違うか。ウェザエモンの報酬のセツナメタルか?いや、修理素材と破損アイテムを別々の人に渡すか?
「それ修理できるアテがあるかも」
「ぶーっ!」
「テメェ!今のはワザとだろ!!」
再びケーキを吹きかけられたサンラク曰く、そのアテとはサンラクが受注しているユニークシナリオ絡みの話なんだと言う。だからそのアイテムを預けて欲しいとオイカッツォに頼む。
しかし仲は良いとはいえなんかこう、若干邪悪な仲間意識を持つ三人組の一人、オイカッツォはリアクターを預ける交換条件としてサンラクが隠しているユニークシナリオの発生条件を教えてくれと言う。
「……俺達店を出た方がいいですかね?」
「いや、大丈夫ですよ。でも他の人には内緒にしといてください。カッツォ、リザルトで条件が表示された訳でも無いからその時の状況説明しかできないけど、それでもいいか?」
「え!?いいの?」
「できれば明かしたくないが、誠意は見せるべきだろ?それと今言った通り条件に確証は無いからな」
俺もこの話を聞いていいらしい。さて、その条件とは?
「それじゃ説明始めるぞ。俺の場合は……」
場合は……?
「レベル20以下でランダムエンカしたユニークモンスター「夜襲のリュカオーン」相手に五分間ノーダメかつ二百回ほど
「誰ができんだよ!!この曲芸お馬鹿!!」
「んぎゃあ!」
オイカッツォが投擲したリアクターがサンラクの顔面に突き刺さった。
「なんで俺がキレられるんだよ!」
「どうやったら空を飛べますかと聞いたら大胸筋を鍛えようって答えられた気分だよ」
「どうせマネできねぇだろうから教えても支障ねぇってか!?」
「私基本素手だから無理かなぁ……」
あくまで状況説明だから全く同じことをしなければいけない訳ではないのは救いか。もしかしたらウェザエモン相手でも良いかもしれないし、レベル1でユザーパー・ドラゴンに挑んでも条件を達成できる可能性もある。
まあまずレアモンスターからレアドロップを狙うのも面倒だし、クリティカルも条件に含まれているのならそもそも幸運に振って無ければ厳しい条件だ。こういうのは狙えそうなタイミングがあったら狙うくらいで良いだろう。
ペンシルゴンとコナツのPKKペナルティ回避のためのロンダリング講座を聞き流しつつ、昨日眠くてよく確認していなかった報酬アイテムを改めて確認をする。
まずこの世界の真理書「墓守編」だが、簡単に言えばウェザエモン戦の攻略情報と世界観の補足が書かれている本だ。一度読めばそれで終わりのコレクションアイテムに近いが、この世界に四冊しかない本というのはネットに全文公開でもしない限り金を払ってでも読みたいという人は沢山いるだろう。
そしてセツナメタルだが、これは俺だけが報酬で貰えたアイテムのようだ。
ウェザエモンの鎧の一部がそのままアイテムとしてドロップしたかのような見た目だが、本物の鎧は朽ちて無くなってしまったことやフレーバーテキストからして恐らくだが
そんなことを考えていると、ペンシルゴンが持っていた黄金の天秤が眩い光を放ち、机の上に真理書と……花飾り?が出現する。
どうやらこの花飾りがペンシルゴンの報酬らしい。なんとなくだがセツナ関係だろうか?
因みにPKKされたペンシルゴンの罰金額は5億マーニらしい。水晶巣崖蠍ツアー何周分だろうか。
……
…………
………………
あれからオイカッツォ、ペンシルゴン、サンラクの三人でクランを作るという話になり、そこからは俺達には関係ない話なのでコナツと一緒に店を出た。
コナツも俺とは別のベクトルでコミュ障なので、あまり面識のないオイカッツォとサンラクの二人と一緒の空間にいると何を話せばいいのか分からなくなってちょっと居心地が悪かったらしい。
「それで、昨日の動画は見たか?」
「うん。直接この目で見れなかったのは残念だけど、セッちゃんが成仏……と言っていいのかわからないけど、消えちゃったのは残念だけど……「セツナ」の願いは叶えられて、「セッちゃん」はペンシルゴンさんに大切にしてもらえて……よかった。本当によかった……」
こいつが幼女以外にここまで入れ込むとはな。まあ数年話していない間になんか色々あったのだろう。
俺のコミュ力ではそこに踏み込んで話を聞くことはできない。まあ別に聞く必要もないか。
「じゃあ渡すもんは渡したし、俺はニトロ製薬に出頭してくるわ」
「あ、うん……頑張ってね」
「おう……あ、そうだ忘れていた」
「?」
インベントリからローエンアンヴァ琥珀晶を取り出し、コナツに渡す。
「阿修羅会との戦い、俺は直接見てないから知らんが結構消耗しただろ?それ結構高値で売れるらしいからあげるよ」
「え、いいの?綺麗な宝石だけど……琥珀?何か入っているような……」
「中身によってアクセサリーにした時の効果が違うんだとさ。俺にはあまり合わない効果っぽいし、水晶巣崖に行けばそこそこ手に入るからいいよ。持ってけ」
「へー……うん。大切にするよ」
現金を渡すのもなんかあれなので宝石にしたのだが、気に入ってもらえたようだ。
さて……メールバードがさっきからガンガン飛んで来ているし、出頭するか……
……
…………
………………
「それじゃあ……お話しようか?ぶんぶん丸くぅん?」
「はい……」
ニトロ薬局サードレマ支店にて、相変わらずフットワークが軽いリーダーから俺は尋問を受けていた。
表情はいつも通りニッコリと笑顔だが、放っているオーラが肉食獣のそれである。
「まずは、ユニークモンスターの討伐おめでとう!墓守のウェザエモンだっけ?誰も知らないユニークモンスターの突然の討伐でシャンフロどころか現実世界でも大騒ぎだよ」
「ははは……」
「ライブラリすら把握していないようなモンスターの情報、できればうちらに先に伝えておいて欲しかったなぁ……クランメンバーとして、ねぇ?」
「それにはその、深い理由がありまして……」
俺は墓守のウェザエモン討伐に関わることになった経緯から説明する。
墓守のウェザエモンは阿修羅会が秘匿していたユニークモンスターであること。
リアルフレンドが偶然にも元阿修羅会であったこと。
阿修羅会のペンシルゴンが阿修羅会を出し抜いてウェザエモンを討伐する作戦を立てていたこと。
本来はペンシルゴンとその友人のオイカッツォとサンラクの三人で討伐する予定だったところに運よくペンシルゴンの作戦を裏方で支えていたリアルフレンドが俺を紹介してくれたことで討伐メンバーに入り込めたこと。
参加させてもらう立場かつ、情報漏洩を防ぐため、人数増加による難易度上昇を防ぐためなどの理由で他の人に話すことができなかったこと。
ウェザエモンに挑めるタイミングは限られていて、ウェザエモンに挑もうとする阿修羅会をブッキングしないように足止めする必要があり、有力なクランを阿修羅会にぶつけたこと。
めちゃくちゃ話した。多分ここ数年で一番長く話したと思う。もうつらい。精神的につらい。
「ふーん……?」
ああ怖い。表情が全く変わらないのが本当に怖い。実は仮面だったりしない?
どれだけ理由を説明したところでこのゲームにおける重要なコンテンツの内の一つを身内に秘匿されてクリアされたことを受け入れて欲しいと言われても中々難しい話だろう。
全く関わりの無い人なら先を越されたか~で済む話だが、身内だとなんで教えてくれなかったの?信用してないの?という話になってくるのだ。めんどくせぇ!!
せめてもの償いというか、出せる情報は全部出しておく。ユニークシナリオEXの存在、発生条件、討伐報酬、真理書……
「……」
どうだ……?
「……なるほどねぇ。これだけの情報があれば……アーサー・ペンシルゴンもこの情報を持っているから……」
いけるか……?
「……よし!情報提供ありがとね。まぁそれはそれとして、ちょーっと頼みたいことがあるんだけど……聞いてくれるよねぇ?」
「はい……」
たすけて。
変な拘りでチートアイテムをあげちゃう主人公。
実はそんなに怒っていない二十六。ガチ攻略しているクランではないので、クランメンバーも殆どが自分たちのクランからユニークモンスター討伐者が現れたことを素直に喜んでいるし、二十六はぶんぶん丸に逃げられないようにしつつ、より多くの利益を得るために色々と計画を立てています
二十六は主人公の知らないところでペンシルゴンと今回手に入れた情報に関して秘密裏に交渉を進めています。具体的にはどれだけ値段を吊り上げてライブラリから搾り取るかとか、爆薬の取引とか……
今クターニッド戦まで書いているのですが、単行本20巻の発売日が遠くて筆が止まっちゃっていて悩んでいます。
原作なろう版ベースにいきなり切り替わるとセリフや描写に色々と違和感が出そうなので、クターニッド戦終了まではコミック版ベースで進めたいと思っているのですが、拙者単行本勢故、次巻発売まで待たなければならないのでござる……というか次巻でクターニッド戦終わるのかこれ?