シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
「トッププレイヤーに名前を覚えてもらえてるなんて光栄ね、サイガ-0さん。それにサンラクさん……ぶんぶん丸?……ああ、あのウェザエモンを倒した……まあいいわ」
「そんなガチ装備メンバーを大勢引き連れて何をやってる?まさか
「……貴方達こそ終点から外れたこんなエリアの端っこで何をやっているのかしら?」
「なにって攻略に決まってんだろ……!!……って、エリアの端っこ?」
やっぱり迷子になってるわこれ。それにしてもあのAnimaliaって人は有名人なんだろうか?
なんかちょっとピリピリとした雰囲気だが、お互いに何について喋っているのかよくわからないまま会話が進んで行く。
話を纏めると……ラビッツとやらに行きたいからリュカオーンを殴りに来たと?
「……私達は「
夜空の一点から星の光が消滅する。
ああ、この威圧感……懐かしいな。とは言っても二ヶ月くらい前の話だが
夜空の闇の中からそいつは姿を現す──
『ユニークモンスター「夜襲のリュカオーン」に遭遇しました』
「あいつ行動パターンとかあったんだ。まあ狼だしそりゃそうか」
シャンフロを始めたばかりの頃、まだスキルが全然揃っていなくて一瞬で息切れを起こして負けたのを思い出す。あれ以来スタミナがあってもスキルも揃えないと息切れを起こすということを学習したのだ。そういう意味ではあの勝負には大きな意味があった。
「SF-Zoo!!全員行動開始!!作戦は「対ドラゴン想定」!!」
おお、今まで少人数で戦ってばかりだったのもあって、こういう大人数での連携をシャンフロで見るのは初めてだ。
サンラクとサイガ-0と一緒に瓦礫の陰に隠れて観戦する。
「すげー。あのタンク、リュカオーンの攻撃に耐えてる」
「なるほど、良いコンビネーションだ。あの鉄塊ダルマ達優秀だね。攻撃を引き付けるだけじゃなく、あのリュカオーン相手に可能な限り移動させないよう立ち回っている。恐らくデバッファーが攻撃を当てやすいようにだろう」
俺基本的に協力ゲーはやらないからそういうの苦手なんだよね。ドローンでもあれば一人で全部やってやるのだが。
SF-Zooはかなり極端なパーティ編成をしているが、どうやら兎に角モンスターを動けないようにすることに特化させているようで、次々と飛んでいく魔法によってリュカオーンの動きが着実に鈍ってゆく。
「おいおいっ、アイツらやるじゃねぇか!」
「ドラゴンすら捕縛するSF-Zooの基本戦術です。『シャンフロ』屈指のタンクがひたすらヘイトを集め、大量のデバフで動きを止める。そして仕上げは……」
Animaliaが先端が継ぎ接ぎだらけの六本指の手になっている不気味な杖を取り出す。
「ユニークウェポン「冥府の鍵杖」を装備時のみ発動可能な固有呪術。
地面から生えてきた巨大な腕がリュカオーンを上から押さえつけ、地面に伏せさせる。
「あらゆる生物に対して一分間の行動不能状態を付与する。これで……「夜襲のリュカオーン」完全捕縛作戦成功よ!!!!」
ユニークモンスターだろうと一分間拘束できるってヤバすぎないか?なんかこう、モンスター側に耐性か対抗手段がありそうなものだが……ん?
「……空に何か……」
「……足音?何か来て──」
その瞬間、こちらにまで衝撃が届くほどの威力を持つ未知の攻撃によってAnimaliaが上空へと吹き飛ばされた……いや、あれは──
「リュカオーンが……もう一体……!?」
一体は確かに拘束されて地面に伏せている。だがその隣にもう一体のリュカオーンが確かにいて、Animaliaを咥えて持ち上げているのだ。あ、食われた。
Animaliaを捕食したリュカオーンの姿が溶けるように消えてしまう。
そしてその直後、SF-Zooのメンバーの背後から再びリュカオーンが出現し、蹴散らしてゆく。噂の人間ボウリングってあれのことか……
「一瞬で移動した……!?」
「ただの移動じゃない。「暗闇」を渡り歩いてる」
もう一体のリュカオーンを拘束する腕が崩壊し、リュカオーンが解き放たれる。
なるほど、あの分身と瞬間移動を何とかしながら戦えって敵なのね。
「あー、SF-Zoo全滅した……」
さて、ここからどうするかだが……今の俺にはサンラクの攻略を手伝うという目的があり、独断で突っ込んで死ぬわけにはいかないのだ。
というわけでサンラクに視線を向ける。
「SF-Zooのお陰で「夜襲のリュカオーン」とエンカウントできたし、不確定だった奴の攻撃をじっくり観察することもできた。つまりあの余裕かましてるイヌッコロにお仕置きする絶好のチャンスが来たってわけだ」
「わかりました。やるんですね」
どうやら挑むつもりらしい。なら全力で行こうか。死んだらごめんということで。
「じゃあ俺から突っ込みます。俺、こんなステータスでも割としぶといので」
「あっ」
瓦礫の陰から飛び出し、リュカオーンの正面に立つ。
「こいよリュカオーン。お前は俺の事覚えてないかもしれんが、今の俺はあの時の俺より十五倍は強いぞ?」
何が十五倍かって?スタミナだが?
右手に
「フハハハハ!!遅いぞリュカオーン!」
リュカオーンが振り下ろす前脚をするりと避け、後ろ脚を斬り裂く。シャンフロ始めたばかりの俺でもギリギリとは言え見切れてはいたのだ。今の俺ならこのくらいの攻撃なら対処は余裕だ。
「……ん?」
何か違和感が……もう一度リュカオーンの攻撃を避けて黒死の抱擁で顎を下から斬りつける。
「しっかりと斬った感触がある……?」
この感じ、黒死の抱擁でアンデッドモンスターを攻撃した時と同じだ。どういうことだ?リュカオーンは幽霊なのか?いや、攻撃は普通に当たるよな……?
「サンラクさーん?リュカオーンって……サンラクさーん?」
サンラクはどうやらサイガ-0の話を聞いているようだ。作戦会議中か?
「まあいいか。後で聞くとしよう」
こいつが仮に幽霊系だとするなら、その体は魔力で構成されているはずだ。
「燃えちまえ」
リュカオーンの引っ掻きを左手の
「グルゥ……ッ!?」
「ビンゴ!!」
その黒炎は魔力を燃やす。全身が魔力の塊なら実質燃料の塊だ。よく燃えるだろうよ。
リュカオーンに黒炎が燃え移り、一瞬で全身に燃え広がるが、リュカオーンが激しく身震いすると黒炎が周囲に撒き散らされてしまった。
ただ効いてはいるようで、ちょっとリュカオーンが縮んでいるように見える……なんかこうして見ると水で濡れたでかい犬って感じがするな。炎を水みたいに撒き散らすんじゃない。
「ぶんぶん丸氏!」
「あ、作戦会議終わりました?」
「作戦……?あ、はい。お待たせしてスミマセン……」
「?大丈夫ですよ。それより聞きたいことがあるんですけど、リュカオーンって幽霊系だったりします?」
「え?」
「おっと」
リュカオーンの噛みつきを回避し、後退する。しかし背後から風を切る音が迫る。
「後ろ!分身攻撃です!」
「後ろね」
振り向いて分身攻撃をパリィすると分身は直ぐに消滅した。
「ぶんぶん丸氏、分身は簡単な行動しかできないようだ」
「簡単な行動?」
「分身の基本行動は精々「真っ直ぐ跳びかかる」程度の単純なものばかり。例えば「避けた相手に追撃を入れる」なんて複雑な行動は一度もしてなかった」
なるほど、となると影からの奇襲は建物の影の位置を把握しておけば避けられるってことか。
「そして月明かりが雲で隠れた時、フィールド全体が「暗闇」判定になる!奴がどこから攻撃して来るのか判断が難しくなる!」
「暗闇?……あ、そうか。夜でも見えるのはゲーム的都合で実際は真っ暗だから見えないと」
「多分そういうこと!」
しまった。それならラメリンさんの店で周囲を明るく照らす魔法のスクロールを買っておけばよかった。ランタンの明かりの方が好きだし魔法は魔力を消費するからスルーしていた。
ランタンの光では明るさが足りない可能性があるし、そもそも片手が塞がるので邪魔だ。まさかあの魔法にそんな使い道があるとは……
「はあああ!!」
サイガ-0が振るう大剣がリュカオーンの後脚にヒットし、派手なエフェクトと共にリュカオーンが怯む。
しかしさっきからダメージが入っているとは思うのだが、出血を表す赤いポリゴンが見えない。やっぱり全身が魔力かなんかで出来ているのか?
リュカオーンが前脚を振り下ろすのを避け、追撃を入れようとするが──
「……いない?」
消えた?土煙で視界から外れたこの一瞬で?透明化?違う、それでも
「はっ!懲りずにまた分身かよ!」
サンラクが分身攻撃を回避──違う!あれは……!
「ふう、危ねぇ。だが一度回避すれば終い……!!」
「サンラクさん!!それ本体!!」
「なに!?」
間一髪、サンラクのスキル発動が間に合い、分身と思いきや本体だったリュカオーンの追撃を回避した。
「今の攻撃……!!まさか本体も影移動ができるなんて……!!」
「……いや、本体が影を移動できるってこと自体は……大したことじゃない。問題なのはそれを隠してたってことだ……!!」
確かに、ここまでリュカオーン本体は影移動をしていなかった。攻撃パターンを見せ、確信させ、油断した瞬間を狙う……それができるAIが搭載されていると。
ゲームでよくあるHPが減ったことによる行動パターンの変化にしてはまだ早すぎるし、シャンフロの運営ならそのくらいのAIを用意できるのだろう。
「流石は「七つの最強種」、「夜襲のリュカオーン」。ただ強いだけのモンスターなわけがねぇよな……!!」
さて、強いだけでなく狡猾なリュカオーンをどう攻略したものか……
主人公は当然サンラクサンが考えていることとか何も知らないので真っ先にリュカオーンに突撃しています
この牙から染み出す特殊な毒が魔力と反応すると黒い炎が発生して魔力を燃やします。危険物すぎてこの毒の持ち主が割と頻繁に自滅していたこともあって現在では絶滅しているというなんともおっちょこちょいな種族です
ただ魔力を燃やすという性質はこの星においてはかなり凶悪であり、自滅にさえ気をつければ非常に強力です。この素材を用いた武器はその危険さからかなり高めの起用と技量を装備条件として要求されますが、実は槍の穂先にしたりして持ち手から遠く離すと要求ステータスがだいぶマイルドになります。これが人類の叡智……!