シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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暴徒と忍者

「な、なんか俺だけめっちゃ狙われてないか!?」

 

 さっきから全員が交代で攻撃しているのだが、やたらと俺が集中狙いされているような気がする。俺が一番攻撃力が低いと思うのだが……やはり魔力で肉体を構成しているモンスターに対してこの武器が刺さりまくっているのか?

 

「【ウツロウミカガミ】!」

 

 サンラクのスキルによって出現したサンラクの分身にリュカオーンのヘイトが向かう。いいなそのスキル。俺も欲しい。

 

「今の内に手短に作戦を立てよう」

 

「は……はいっ!」

 

「ぶんぶん丸氏、ウェザエモン戦で使ったあれ使えるか?」

 

「まだリキャストタイム中なんですよあれ。再使用に一週間はかかりますので」

 

「マジか……」

 

 黒死の抱擁(ノリ・エイ・タンゲレ)の分離は一度行うと一週間再分離ができなくなる。

 あとついでにその間呪いも強化されるので、本来は非常に危険な最後の手段とでも言うべきものである。

 

「……サンラクさん。それなんですが、実は一つだけ「切り札」があるんです」

 

「え?」

 

「私が「最大火力(アタックホルダー)」の称号を持つ由縁。『シャンフロ』内で「最大瞬間火力」を記録した攻撃スキルです。当てることができればリュカオーンにも十分通用するかと」

 

 マジかよ。最大火力(アタックホルダー)の切り札って俺の切り札なんかよりも遥かに強いのでは?

 

「……ただ発動条件がかなり面倒で、リュカオーン相手に条件を達成できたことが……一度もないんです」

 

 発動条件は「アポカリプス」と「カタストロフィ」というスキルをそれぞれ五回ずつ命中させて、そこから更に長い詠唱を行ってようやく発動可能で、しかもその直後に当てる必要があると……めんどくせぇ!!

 

「つまり、俺達がヘイトコントロールすればいいってことですね?」

 

「称号「最大火力(アタックホルダー)」の「切り札」か……そんな魅力的な誘いに乗らない奴はいないでしょう。決まりだレイ氏。俺達の勝利、「それ」に賭けよう!」

 

「はいっ!!」

 

 サンラクが出した囮が消え、リュカオーンのヘイトが再びこちらに戻る。

 

「よぉ、戦闘再開だ」

 

 サンラクが取り出したのは非常に大きな左右で色が異なる水晶のガントレット……あの形状に色……そうか、サンラクも水晶巣崖に挑んだのか。

 

 サンラクがリュカオーンを殴り、ヘイトがサンラクに向かって分身がそちらを狙っている間に俺が本体を斬る。今度はその逆を繰り返して、その間に隙を見てサイガ-0がスキルをぶち込む……それが理想的なのだが、どうもヘイト管理がうまくいかない。もしかしてこいつ、火力を出し過ぎるとそいつを優先するAIなのか?

 

魔王天帝(サタナエル)反転……!!」

 

 サイガ-0の色が反転し、振るった大剣がリュカオーンに命中し、激しいエフェクトが迸る。

 どうやらあれもヘイトを買いやすい攻撃らしい。ヒットを確認したら即座に攻撃してヘイトを奪う!

 

「月が雲に……!!透明分身が来ます!!」

 

「了解!!」

 

 透明分身は直前まで誰を狙うのかがわからないのが一番恐ろしい。俺一人だけならまだしも、サンラクやサイガ-0に向かう可能性もあるのだ。今回は……

 

「サンラクさん!!」

 

「やべっ!?」

 

 サンラクが本体の攻撃を避けた瞬間を狙うゲームとしてそれはどうなのかと言いたくなる分身の一撃が炸裂する。

 サンラクのステータスではあれが直撃したら一撃で消し飛んでそうだが……

 

「……サンラクがいない?」

 

 粉微塵に消し飛んだわけではないだろう。もしやインベントリアのワープで逃げたのか?あれそういう使い方もできるのか……俺は使わないが。

 

 サンラクがインベントリアで体勢を立て直しているとして、その間俺がこいつをなんとかしないといけない。

 石墨でリュカオーンの鼻を切り裂いてクリティカルを出せば、再びリュカオーンに黒い炎が燃え広がる。

 

「「呪業【狼影】」……フレーバーテキストからしてお前を参考にしたスキルらしいぜこれ」

 

 俺の影が形を変えてゆき、大きな狼の形になる。まあ元から装備のせいでちょっと狼みたいなシルエットだったが、今は完全に狼の影だ。

 狼と言えば遠吠え。このスキルは効果時間中、声が大きく、遠くまで届くようになり、更に怯みや硬直などの効果を追加する。

 

 更に新しく覚えた魔法、【怨嗟の言霊】の発動準備をする。

 この魔法は特殊で詠唱が必要無い代わりに、全力で叫ぶことを発動条件とする。

 

「すぅー……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!

 

 全ての肺活量強化スキルを乗せた「獣王咆哮(ビースト・ロア)」を放つ。

 一緒に【怨嗟の言霊】も発動し、俺の口から黒いオーラが放たれる。よく見ると黒いオーラの中に人の手や顔などに見えるエフェクトが混ざっているのだが気にしないでおこう。

 

 【怨嗟の言霊】は効果時間中、大きな声を出す、詠唱をする、声や息に関係するスキルを使うなどの条件で口から呪いを放ち、追加ダメージと呪いの状態異常が発生するようになる魔法だ。見た目はアレだが非常に扱いやすい。

 

 俺の前方に存在する瓦礫も建築物の残骸も全てまとめて粉々になって消し飛んでゆく。その大音量で炎を振り払おうとしていたリュカオーンがもがき苦しむ。

 実はあまりの大音量とVIT不足で俺のHPもゴリゴリと削れているのだが、そこはリジェネでなんとかなっている。このまま息が続く限り怯ませ続けてやろうかと思ったところで分身の攻撃によって中断を余儀なくされた。

 

「ああもう邪魔すんじゃねぇ!!」

 

 噛みつきを避け、「豪猪針(ヤマアラシ)」を発動。連続突きをリュカオーンの顔面に叩き込む。

 大剣が纏う漆黒のエフェクトが顔面に刺さったまま暫く残り続け、その間スリップダメージを与え続ける。はははウザかろう。ほら呪いの声を聞け!

 

「悪い、復帰が遅れた」

 

 サンラクの声。どうやら戻ってきたよう……だ?

 

「サンラクさん!やはり無事でしたか……!?その装備は……?」

 

「あぁ。規格外特殊強化装甲【艶羽】……の頭装備」

 

 相変わらず半裸に覆面スタイルのサンラクだが、頭装備がいつものハシビロコウヘッドではなく、メカメカしさを感じさせるものになっている……半裸にそれだとかなり浮いているが、恐らくあれはインベントリアの中にあるというロボスーツの一つなのだろう。

 

「ここから巻き返しだ。さぁ初仕事だ!規格外戦術機鳥【朱雀】!!」

 

 更にサンラクのインベントリアから出現したのは翼抜きで背中を丸めた姿勢でも人間くらいの大きさがある鳥型ロボット。そういう世界観なのは知っているが、急にロボが出てくるとちょっとビックリするな。どうやらリアクターの修理は無事にできたようだ。

 

 サンラクから何らかの指示を受けた朱雀が空高くブースターで飛んで行く。

 朱雀はサンラクが直接操作しているのではなく、指示をすればその通りに動いてくれるAI搭載タイプのようだ。俺は直接脳波で遠隔操作する方が得意なんだが、まあそれは人それぞれか。

 

 再び三人に戻り、ヘイトを受け渡しながら順調にサイガ-0のスキルを「カタストロフィ」、「アポカリプス」と命中させてゆく。

 

「……?」

 

 リュカオーンの動きが一瞬止まり、サイガ-0を見つめた。まあ高度なAIを搭載しているならそういう動きを見せることもあるか?

 

「どうした!?かかって来いよリュカオーン!」

 

 サンラクのガントレットから水晶の弾丸が発射される。そんな機能もあるのかあれ。シャンフロの武器製作って自由度かなり高いな。

 発射された水晶弾は回避されたが、ヘイトを買うことはできたようで、サンラクが狙われる。

 

「さぁ、巻き返していくぜ!」

 

 リュカオーンの攻撃を避けながら、サンラクが水晶弾が突き刺さった残骸へと走ってゆく……それ発射したら回収して装填する必要があるとかじゃないよね?

 そんなことを考えていると、サンラクは水晶弾が突き刺さった残骸をガントレットで殴りつける……そうか、それにも振動に関係するギミックがあるのか。

 

 残骸に突き刺さった水晶が振動と命令によって急速に成長し、リュカオーンの頭部に激突して大きな衝撃を与えた。いいなああいう筋力とか関係ない攻撃手段。ムンクさんに聞かせたら似たようなギミックの武器を用意してもらえないだろうか?

 

「サンラクさん!透明分身が来ます……!!」

 

 月が雲に隠れてゆく。金晶独蠍(ゴールディ・スコーピオン)とは逆の月が隠れると面倒なことになるギミックだ。これ天候によっては常時透明のクソモードもありえるんじゃないか?

 

「お前の出番だ【朱雀】!!」

 

 サンラクの指示を受け、空高く飛んでいた朱雀がブースターの出力を上げて猛スピードで空中を旋回し、月を覆う雲を吹き飛ばした。

 これで月光が地上に届く……え、吹き飛ばせるってことはシャンフロって雲にまで物理演算適用しているの……?あれ背景じゃなくて……?

 

「見えさえすれば!ただの分身攻撃と大差ない……!!残念だったなリュカオーン。もう透明分身は使えないものと思え……!!」

 

 月光で照らされ、リュカオーンの分身が見えるようになったことで透明分身の脅威度は大きく低下した

 分身の攻撃を飛んで避けたサンラクがそのままの勢いでスキルを乗せた拳を本体に打ち込み、更にサイガ-0の「アポカリプス」が叩き込まれる。

 

「このまま順調に行けばいいんだが……」

 

 墓守のウェザエモンと比較すると、なんというか、ちょっとぬるい感じがするのだ。何かまだ隠していそうな感じがする……

 

「!」

 

「レイ氏!!」

 

 リュカオーンの反撃でサイガ-0が吹き飛ばされる。分厚い鎧に守られてどうやら即死はしていないようだが、回復する時間を稼がないといけない。

 

「オラァッ!!」

 

「これは無視できないだろ?」

 

 サンラクと二人でリュカオーンに攻撃を加えてゆく。しかし──リュカオーンの視線は吹き飛ばされたサイガ-0に向いていた。

 

「んなっ……!?」

 

 リュカオーンが俺達を無視してサイガ-0の方へと走り出す。

 マジかよ、ゲームとしてそれはどうなんだ!?最近こればっかり言っているような気がするんだが!?

 

「ヘイトがサイガ-0さんに……あいつやっぱり脅威になるやつを優先している!!切り札の存在がバレたか……!?」

 

「知能高すぎんだろ……!」

 

 サイガ-0の回復が間に合っていない。このままでは……!

 

「はああああ!!」

 

 サイガ-0が大剣を振り被り、リュカオーンに叩きつけようとするが、その隙を狙うかのように分身攻撃がサイガ-0の背後から出現する。

 そのまま分身に噛みつかれ、空高く掲げられる。

 

「レイ氏ー!!」

 

 このまま捕食されるならもう巻き込む覚悟で俺も切り札を……!?

 

「は!?(まる)……()ぁ!?」

 

「えっ何あれ……変わり身の術?」

 

 サイガ-0の姿が歪んだかと思えば、その姿が丸太に変わってしまった。

 このゲームに忍者がジョブとして存在しているのは知っているが、サイガ-0は忍者だったのか?

 

「刃隠心得……【空蝉】!!」

 

 突然聞こえてきたサイガ-0とは別の女性の声……そちらに意識を向けると、そこには無事だったサイガ-0と、いかにも忍者という格好をした一人の女性プレイヤーがいた。

 

「やっぱり変わり身の術といえば丸太ですよねっ!」

 

 え、誰……?




コメントが執筆のモチベーションになっているのですが、当然ながら投稿頻度を落とすとその分コメントが届く頻度も落ちるからモチベーションの維持が難しい……もっと書きたいけど仕事が忙しい……!
このペースで更新を続けるとすると、今考えている新武器の出番が三十話くらい先になりそうで、公開できるのがリアルで三ヶ月くらい先になるんですよね……リュカオーン戦が終わったら幕間でちょっとゲロっちゃおうかな……

シャンフロの圧倒的クオリティに毎回驚いている主人公。ゲーマーでありクリエイターでもあるからわかるシャンフロのめちゃくちゃさを楽しんでいます
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