シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
「呪業【巨影】」から「墓守呪業【
進化前は重い影を纏うスキルであったがために動きが大きく鈍ってしまい、更に他のスキルの発動ができなくなるというデメリットがあったのだが、それが無くなったのだ。
圧倒的質量を持つボディで動きが鈍らないとなれば、ただ走って殴って暴れまわるだけでも強いのだが、それだけでなく発動するスキルもスケールアップする。そう、声のデカさだって巨人スケールになるのだ。
更に「呪業【狼影】」を同時に発動する。これは自分の影を狼の形にするスキルで、「【魔勁修羅】」は影を纏うスキルだ。つまりこれを同時に発動すると──
「リュ、リュカオーンが増えましたわーっ!?」
「んなっ……!?ぶんぶん丸氏が、リュカオーンになっちまったぁ!?」
狼の影を纏った俺の姿はリュカオーンにだって負けないサイズの巨狼と化した。このサイズになるとリュカオーンも可愛い大型犬だな。
アクセサリーの効果で口の中に大量の
見せてやるよリュカオーン。これが下手すれば一発で数千万の金が消える俺の切り札だ。
「消し飛べ!!「
煌めく水晶の欠片とともに体内で圧縮された大地のエネルギーを全力で吐き出す。
これは食べたアイテムに応じた属性ブレスを吐き出せる攻撃スキルであり、威力は当然肺活量と食べたアイテムの質と量が影響する。
俺のスタミナにありとあらゆるバフを乗せ、最高の素材を摂取して一気に吐き出せば、その威力はユザーパー・ドラゴンだって一撃で消し飛ぶ超火力となる。
「うおおおおお俺が夜の帝王じゃあああああああああ!!!!!」
「ぶんぶん丸氏のテンションがおかしなことに……!」
蘇生アイテムも無しでユニークモンスターと戦い続けたことによる疲労でなんかおかしくなっている。適度な休憩って大事だね。
全てのエネルギーを吐き出し終え、スキルの効果が切れると同時に激しい倦怠感に襲われる。
「ぐへっ」
纏っていた影が霧散し、地面にうつ伏せで落下する。スタミナも使い切り、動けなくなったが……流石に今のでリュカオーンも満身創痍のようだ。体のあちこちがボロボロに崩れている……だが、まだ倒れていない。崩れた部位も少しずつだが修復されているのがわかる。
「殺しきらなきゃダメというわけか……だが……もう用意はできているようだぞ。お前を殺しきる用意がな」
サイガ-0がリュカオーンに向かって駆けだす。
リュカオーンも再生が間に合っていない体で走り出し、サイガ-0を迎え撃つ。
「
世界が揺れる。明らかになんかヤバそうなラスボスが使いそうな必殺技がリュカオーンに叩きつけられる。
「おわっ!?」
サイガ-0の切り札とリュカオーンがぶつかり合う衝撃波でスタミナ切れの俺の身体が吹き飛ばされる。
「ぴえええええ!」
「これが……レイ氏の切り……!!とんでもねぇ技じゃねぇか……!!」
「あああああ転がってゆくううううぅぅぅぅ……」
「ぶ、ぶんぶん丸さーん!?」
ゴロゴロ転がって瓦礫の山に頭から突っ込み、ようやく止まることができた。
リュカオーンは……リュカオーンはどうなった……!?
顔を上げると、地に膝をつくサイガ-0の姿と……それを見下ろすリュカオーンの姿がそこにはあった。
「えぇ……?」
もうここまで来ると困惑の方が大きい。あれを耐えるとなるともうお手上げなのだが……ああ、【
「……あれ?」
リュカオーンが震えたかと思えば、その体が崩壊して夜の闇へと体が溶けて消えてゆく。
「……影移動……じゃない?」
「サンラクサン!あれ見てですわ!」
エムルちゃんが指差した空を見上げると、夜空にリュカオーンの顔が浮かび上がっていた。
その顔は直ぐに消えたが……なんか笑ってなかったかあいつ?
『称号【影狼を穿つ】を獲得しました』
『特殊状態「導きの灯火」を入手しました』
『ユニークシナリオEX「夜闇を祓うは勇気の灯火」を開始しますか?はい・いいえ』
「……勝ったのか?いやしかしこれは……」
ウェザエモンと戦った後だからわかる。なんというか……ちょっとショボい。
もっとこう、演出とか戦闘とか報酬とか、そういうのが全体的になんか足りていないというか……
「影狼……そうか、そういうことかよ。恐らく俺達が本体だと思っていたアイツも、元よりリュカオーンが作り出した「影狼」……つまり分身だったってわけだ」
サンラクの発言が恐らく正解なのだろう。本当の本体はどこか別の場所にいて、本体だと思っていたあれは遠隔操作か自動操縦かはわからないが実は分身だったと。そして分身だと思っていたのは分身の分身……それであの強さか。やはりユニークモンスターは事前準備無しのぶっつけ本番で勝てるような相手じゃないのは間違いない。ウェザエモンだって天秤とか蘇生アイテムとか揃えて事前に技の詳細を把握しておいてなおギリギリだったわけだしな。
「チクショー!!どこまで人をコケにしやがるんだ!あの犬っころめ……!!」
「良いじゃないですか、分身や偽物でも。誰も太刀打ちできなかったあのリュカオーンを……皆さんと協力して撃退することができた。私はそれだけでも楽しかったですよ!」
そういやあの偽物リュカオーン、偽物でも誰も倒せていないんだよな。いや、もしかしたら黙っているだけでこっそり倒しているプレイヤーがいたりするのかもしれないが。まあ倒したという報告が無いのなら俺達が一番乗りということでいいだろう。
「……まぁそうだな、レイ氏の言う通りだ。あのとんでもねぇ「アルマゲドン」を見れただけでも全力を出し切った価値はあった!」
「確かに凄かったですもんね!ぶんぶん丸さんのあの狼になって口からビームを出すやつも同じくらい凄かったですよ!」
「あ、ありがとうございます……」
インベントリに詰めておいた蠍の素材がほぼ全部あれで消えてしまったがな……インベントリアを装備していればもっと弾数増えていた?あんなの何回も使わなきゃいけないような状況になったらクソゲーだよ!
「影だろうが分身だろうが勝ちは勝ち!あのにっくきリュカオーンに見事リベンジを果たしたってことだぜぇ!!!」
サンラクも以前リュカオーンと色々あったらしいからなぁ。あの
一式装備ボーナス結構強いからなぁ。それが無くなるのは防御力低下よりも大きな問題……ん?
「あん?」
「サンラクサンのリュカオーンの
サンラクの
「そうかっ、これは……!!俺に
両手を上げてはしゃぐサンラク。強制半裸プレイは普通に人前ではキツイものがあるよな。視線も集まるし、俺は絶対にあんな風にはなりたくないと変態スタイル見納めとか言ってハシビロコウ頭に戻したサンラクを見て改めてそう思った。
「さぁ!こい!この忌々しい
サンラクから出たモヤが空中で集まり──リュカオーンの頭部になった。
「え?」
え、何あの……何?宙に浮かぶ頭だけのリュカオーンが口を開き……そのままサンラクを食べた。
いや、口の中でサンラクがもがいている……舐め回されている?よくわからないが、攻撃じゃなくてイベントシーンらしい。
そのまま暫くして、よだれでベタベタのサンラクが吐き出される。よくわからんがSF-Zooの人ならあれで喜ぶんだろうか?
「大丈夫ですわ!?サンラクサン!」
「おえ……路上に吐き捨てられたガムの気分だぜ……だがコレできれいサッパリ
きれいサッパリどころかくっきりハッキリとサンラクの体には以前と変わらず古傷のような模様が残っていた。
「変わっていない……いや、もっと濃くなっているような……」
ステータスを確認したらしいサンラクが
「解けるどころか強化されてんじゃねぇかぁー!!」
なんか色々と
「あ、リュカオーンの頭が……ぶんぶん丸さん!」
「え?」
秋津茜の声で振り向けば、そこには口を大きく開けたリュカオーンの頭が──
「おわああああああ!?」
咄嗟に避けようとするが、それを遥かに上回る速度で追尾してくるリュカオーンの頭。
「半裸は嫌だーっ!?」
咄嗟に繰り出した左の拳をバクンと口でキャッチされる。
「いででででっ!?噛むな噛むな!?」
「ぶんぶん丸氏ぃ……そのまま半裸になぁれ……!」
「仲間を増やそうとしてますわ!?」
ゲームなのでそこまで痛くはないのだが、明らかに牙が腕に刺さっている。このまま噛み千切られるんじゃないかと一瞬思ったが、何度かガジガジと噛まれた後、俺の左腕はちゃんと肩に繋がった状態で吐き出された。
「な、何……?まさか……!?」
袖を捲って見てみると、
リュカオーンの刻傷
夜の帝王の分け身を打ち破りし者を、最早リュカオーンは餌として認識しない。
それは自らの手で仕留めるにふさわしい「敵」の証明であり、最強種が認めた強者の刻印である。
魂に刻み込まれた呪いは黒狼の真なる姿を打ち破る他に解く術無し。
「リュカオーンの刻傷を持つキャラ以上のレベルのモンスターが積極的に戦闘を選択します」
「リュカオーンの刻傷を持つキャラ以下のレベルのモンスターは積極的に逃走を選択します」
「リュカオーンの刻傷を持つキャラはあらゆる「呪い」を無効化します」
「リュカオーンの刻傷を持つキャラはNPCとの会話で補正がかかります」
「リュカオーンの刻傷を持つキャラは
「リュカオーンの刻傷が付与された部位に装備したアイテムを武器や防具として戦闘に使用した場合、耐久度が急速に減少し、性能が大幅に低下します」
『ユニークシナリオ「呪いに囚われし者、理を呪う者」を開始します』
左手には武器も盾も持つなってか?というかここでユニークシナリオ?しかも強制スタート?
リュカオーン「ノーダメクリアおめでとう!」
呪いやアクセサリーの自傷ダメージ以外で実はダメージを受けていなかった主人公。
呪われたのは左腕の装備枠なので半裸にはなりませんが、左腕に武器も盾も持てない、両手持ちもダメで片手武器強制は普通のプレイヤーなら余裕で引退案件ですが、主人公のプレイスタイルの関係でなんとか致命傷は避けられている……というかリュカオーンサーバーのAIが主人公のログを参照して、シャンフロを引退しないように考慮して左腕を狙ったのは内緒。主人公的には防具のセットボーナスが無くなることの方がメンタルダメージが大きいと判断された
因みにリュカオーンの刻傷でも呪いの装備の呪いは防げない設定です。装備中は体の一部となっているので内側から呪われているという扱いです……
「呪いに囚われし者、理を呪う者」……呪い値が一定値を超えた呪啓者に発生するユニークシナリオ。条件を満たした時点で強制的にスタートする
シナリオクリアと同時に強制的に呪啓者の最上位職となる。因みにシナリオ失敗は存在せず、このシナリオ中に転職した場合は再び呪啓者に戻ると即このシナリオの続きから再開となる
シナリオの結果によって呪啓者の■匠を除いて二つある最上位職の内どちらかに変化する。一度呪啓者の最上位職になると何をしても再び呪啓者に戻ることはできず、もう片方の最上位職には二度となることが不可能になる
因みにりっちゃんが修正する前は呪啓者の最上位職は■匠を除けば■■■一つしか存在せず、ユニークシナリオがスタートした瞬間から転職が不可能になり、しかもあまりにもリスクがデカい職業だったので、ゲーム的につまらないという判断で新たにもう一つのシンプルな性能の最上位職が追加された