シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
「ちょっ……!!待てぇ!!一仕事終えた顔して消えんなぁ!!」
俺とサンラクに刻傷を与えたリュカオーンの頭が崩れてゆき、夜に溶けて消えた。
半裸卒業という希望を圧し折られたサンラクが項垂れているのを横目にとりあえず報酬の導きの灯火を確認する。
・特殊状態「導きの灯火」
昏く黒い夜闇の中において夜の帝王への道を示す小さな炎をその身に宿した状態。
ユニークモンスター「夜襲のリュカオーン」が一定範囲内に存在する場合、その方向を指し示す。
闇を束ねるリュカオーンは、逆説的に光を払う事ができる。リュカオーンより授けられた灯火はリュカオーンの一部であり、破棄された光である。
「リュカオーンの位置が分かるだけか」
まあ無いよりはあった方がいいだろう。いつか本体に挑む時にこれが必須だったりするのかもしれない。
それとユニークシナリオEX……恐らくこれがリュカオーン本体に挑むためのものだろう。ウェザエモンの時もそうだったが、このEXのシナリオを受けてからじゃないとユニークモンスターは倒せないのかもしれないな。
で、もう一つのEXじゃないユニークシナリオだが……これが始まった瞬間から視界が常に「
シナリオの説明を見る限り「
まあこれは後で考えよう。忘れそうになっていたが、今はサンラクの攻略を手伝っている最中なのだ。自分のユニークシナリオを優先して自殺するのは迷惑どころの騒ぎではない。
攻略メンバーに秋津茜、シークルゥ、エムルちゃんが加わり、改めてボスエリアに向かう。かなり消耗しているが、今の状態でユザーパー・ドラゴンに勝てるだろうか?
「リュカオーンとの戦闘でレベル99に戻ってきたな……ん?」
新しく習得したスキルや進化できるスキルがないかステータス画面を眺めていると、「呪業【狼影】」が進化可能になっていた。これフレーバーテキストからして龍王とかいうのと関係するやつだと思っていたのだが、別にそれと出会わなくても進化は可能なのか?「呪業【巨影】」はウェザエモン戦後に進化できたから、それぞれの秘伝書のフレーバーテキストに書かれている恐らくユニークモンスターだと思われる奴らを倒すか戦うかするのが進化条件かと思っていたのだが違うようだ。
とりあえず進化は後回しにしておこう。またレベルが下がるだろうし、攻略の手伝いが終わってからだ。
「進化先のスキルは……「天覇呪業【対焼滅】」?ブレス系攻撃スキルかこれ?」
MPを消費するようになったが、自身の影を龍へと変え、スキル、魔法などをある程度貫通しつつ、更に相手のMPを削る効果を持つ黄金のブレスを放てるらしい……あれ、これって……
「秋津茜さん。あの口からビームを出していたのはどういう魔法なんですか?」
「あれは刃隠心得の奥義、【竜威吹】です!ジークヴルムさんのブレスを再現できる忍術なんですよ!」
ジークヴルムのブレス……ジークヴルムって確かユニークモンスターの金色のドラゴンだったな……まさか特定の技を見ることが進化条件で、しかも本体のものじゃなくて再現されたものでも構わないということなのか……?そんなのでいいのかこれ?
まあ再戦不可能だと思われるウェザエモンのことを考えるとその辺りの条件が緩い可能性はあるか。だとすると朱雀みたいなウェザエモン由来のロボを見るだけで「呪業【巨影】」は進化可能だったのかもしれない。
さて、ようやく見たことがある景色に戻ってきた。ボスエリアは近い、さっさと終わらせて寝るとしよう。
……
…………
………………
「ユザーパー・ドラゴン……まさかあそこまで苦戦するとは……」
なんとかエリアボスの討伐に成功し、誰も欠けることなくフィフティシアに到着することができた。
もう空が明るくなってきている。封花の
まさか魔法が跳ね返されるとは……遠距離攻撃手段がだいぶ封じられてしまい、サイガ-0は「アルマゲドン」の反動で全ステータス半減、秋津茜はレベル不足でダメージを稼ぎ辛く、サンラクは攻撃が届かず、俺はエナドリ切れ……
しかしこの常時発動している「
まず通常のスキル版と異なり、白がかなり伸び辛いのに黒にはめっちゃ伸びる……つまり物凄く暴走を起こしやすい。危うくこの場にいる全員をジェノサイドしかけた。
影の案内を無視すれば白が伸びる訳だが、通常のスキル版と異なり、最善の行動だけでなく、次善の、更にその次の……といった感じで回避ルートや攻撃ルートが同時に複数表示されるし、ゲージが白か黒のどちらかに偏れば偏るほどにそれが多くなってくる。出現する影を一瞬で全て把握して、どれとも被らない正解を自分で見出さなければならないという鬼畜仕様となっている。
つまりモンスターを前にしてわざと悪手をとるか、シャンフロの超性能サーバーでも予測できない一手を即座に見つけ出すかしないと白ゲージが伸びないのだ。
これのせいでユザーパー・ドラゴン相手に有効になるであろう声や息を使う遠距離攻撃がまともに使えなくなり、自殺行為ギリギリの特攻を選び続けなきゃいけなくなってしまった。これさっさとクリア条件満たしてユニークシナリオを終わらせないとどこかで取り返しのつかない事故を起こしそうだ……
街中でヴォーパルバニーがそのままの姿でいると目立ってしまうので、何らかのアイテムによってエムルちゃんは人間の女性に変身し、シークルゥは丸まって箱に擬態して……擬態になっているのかあれ?狐のお面で顔を隠した秋津茜に背負われている。ヴォーパルバニーを連れ歩くのも色々と大変そうだ。
それとサンラクがレベル99になっていたらしく、裏路地でタロットカードを渡してくる怪しい人、覚醒の導師アーカヌムと遭遇した。
サンラクに渡された
「さて、思わぬ収穫もあったことだし、そろそろラビッツに行くかな」
「今
エムルが何らかの魔法か何かで何もない裏路地の壁に扉を作り出した。そうやってラビッツとやらに行くのか。
「今日は何から何まで本当にありがとう。みんな」
「いえ……私も楽しかったですから……!また何か私が協力できるようなことがあれば……!!是非!」
「疲れた……でも楽しかったです。またいつか、俺の力が必要になった時は遠慮せずに呼んでください」
「その時はまた連絡するよ」
あー疲れた……一旦ログアウトして寝るか。やること色々あるけれど、頭が回らない……
……
…………
………………
仮眠して朝食を食べてライオットブラッドを補給し、再びシャンフロにログインする。
海外から取り寄せた新作、「ライオットブラッド・トゥナイト」……凄まじい効き目だ。脳が活性化しているのが実感できる。仮眠も必要無かったんじゃないか?いや、流石に寝ないとヤバいのはこれまでの経験で知っているが、それでもそう思わせるほどのパワーを与えてくれる。トゥナイト……日本での発売はいつになるのかな?
ニトロ薬局で消費したアイテムを補給してからムンクさんの工房へ向かう。
裏路地を歩いている途中で遭遇したチンピラ風NPCが俺を一目見て腰を抜かして即退散していくのを見て複雑な気持ちになった。リュカオーンの刻傷のせいでNPCの反応が今までよりももっと酷くなっているなこれ……
そんなこんなで工房に到着。これでムンクさんにまでドン引きされたら俺は泣くぞ。
「……お前さん、その気配は……そうか、夜の帝王に打ち勝ったか……」
ムンクさんは一目見ただけで俺が何をしてきたか一瞬で把握したようで、ニヤリと笑ってそう言った。どうやら会話補正は悪い方向にばかり働くものではないようだ。
いつもと変わらない態度で接してもらえることに安心しつつ、インベントリから焔刀【石墨】を取り出してムンクさんに見せる。
「焔刀【石墨】……これでリュカオーンに挑みましたけど、真化に必要な経験はこれで足りていますかね?」
「もっと時間がかかると思ってたんだがよぉ、一日でここまで鍛え上げるとはな……ああ、これでいい。だが、できれば用意してもらいてぇもんがある」
「他にもまだ何か必要なものが?」
「こいつの炎をより強力にする方法がある……魔力だ。こいつの炎は魔力を燃やす……だからよ、魔力をより多く内包する物こそこいつを鍛える炎の燃料に相応しい。こいつの炎で燃料を燃やし、その炎でこいつを鍛えるのよ」
「なるほど」
インベントリから水晶巣崖産の魔力を多く含んでいるらしい宝石を全部取り出す。ラピステリア星晶体の一等星級もあるぞ。
「これでいけますか?」
「……先にこれを扱える炉を作らなきゃならんな……」
ということで石墨と燃料にする宝石と炉の材料にする鉱石をムンクさんに預ける。後は暫く待てばセツナメタルを使用した武器が完成するはずだ。期待して待つとしよう。
で、次。この視界についてだが……
「そうか……お前さんもその領域に踏み込んだか。夜の帝王の呪いが後押しになったんだろうよ」
「?」
「それは「呪律者」に至らんとする者に訪れる試練だ……気をつけなお前さん、気を抜けば取り返しのつかねぇことになる。だがよぉ、俺達は死んだらお仕舞いだが、お前さんは死んでも死なん。呪いに呑まれ、暴走しそうになった時は……手遅れになる前に、自分で自分を殺しな。それでその場はやり過ごせるだろうよ」
自殺するなら釘を一本抜けば一瞬だが、自殺しなくちゃいけないような状況に追い込んで来るとかとんでもないユニークシナリオだな……VRゲームで自殺って俺は慣れているけど、普通の人には結構きついことらしいからな。
しかし「呪律者」か。呪啓者の上位の職業だろうか?呪律者になれたらクランに報告しよう。
「それ以上詳しいことは俺にはわからん。お前さんとは進んだ道が違うからな。詳しく知りたきゃ団長に聞きな」
団長か。呪啓者ギルドをまとめている人だしそういうのにも詳しいのだろう。
というわけで呪啓者ギルドに向かおうとしたその時、目の前に一つのゲームシステムによるウィンドウが出現する。
『ユニークシナリオ「深淵の使徒を穿て」を開始しますか?はい・いいえ』
なぜか突然ユニークシナリオが発生した。なにこれ?なんかフラグ踏んだ?
呪い関係かシナリオ名で判断できないが……とりあえず受注してみるか。
ドドドドド……
「外が騒がしいな……」
アクセサリーによって強化された感覚によって何かがここに向かって走って来ていることを感知する。まさかこれ深淵の使徒とやらが攻め込んでくるシナリオなのか?外に出て迎撃を……
「おうおうおう!!赤鯨海賊団名物「バレル・デリバリー」だ!!」
「!?」
外に出たその瞬間、猛スピードで突っ込んできたのは樽を抱えた屈強な男達。状況を理解できないまま包囲される。
「
「
「な、何……!?うわ力強い!?」
男達にひょいと担がれ、樽の中に詰め込まれる。見た目は人間だしこれ抵抗してもいいのかと悩んだその一瞬で俺は誘拐されることとなった。
呪啓者の悪辣な部分がどんどん出てくる。
ゲージを完全に白に染めた場合、最上位職の「呪律者」になります。それは呪いを律する者であり、呪いによって理に抗う者……習得できる固有スキルは一つだけですが、規格外の効果を持ちます。また、特定のジャンルのスキルの習得、進化に非常に大きな補正がかかります
ゲージを完全に黒に染めた場合、もう一つの最上位職の「■■■」になります。それは呪いに縛られる囚人であり、生きている限り常に破滅の道へと導かれ続ける者……常時「
一度この職業になってしまうともう転職不可能なので、ログインとログアウトのタイミングとゲージの管理を徹底して暴走を回避し続けるか、開き直って人類の敵ルートに突入するかになります
一応習得できるスキルが規格外に強いのでメリットが無いわけではない……まあ間違いなく有名人にはなれますし、レベルやキャラビルド次第でシャンフロの歴史に名を残せるかもしれない……なお暴走して誰かに危害を加えたら呪啓者ギルドと敵対しますし、被害状況によっては賞金狩人がフル出動してくるのでそれを超えて暴れることは困難な模様。一度賞金狩人が出てきたら一生幽閉されるので実質キャラロストです
これで影リュカオーン編は完結となります。明日幕間を投稿して、また少し期間を開けてからクターニッド編を投稿していきたいと思います