シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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暴徒と反転都市

 黒死の抱擁(ノリ・エイ・タンゲレ)を振り回し続けること数分。だいぶ魚人ゾンビの数は減ってきたが、それでもまだ湧いてくる。まさか無限湧きなのか?

 サンラク、ルスト、モルドが相手をしているあの錨を振り回すでかい魚人ゾンビ……あれがボスだとして、ボスを倒さない限り無限湧きというのはギミックとしてありえそうだ。

 

 しかしなんというか、最後の街で起こるシナリオにしては簡単すぎるような気がするな。無限湧きは厄介だが、ザコ処理係とボス処理係に別れて戦えばいい話だし、あのボスもそんなに強くなさそうに見える。

 今まで理不尽な相手と戦いすぎて感覚がおかしくなっているだけで、これが普通のユニークシナリオの難易度だったりするのだろうか?

 

「こ……この化け物めぇ!!僕様がパパの仇を討ってやる!!」

 

 あ、なんか嫌な予感がしてきたぞ。

 

 こちらの船に乗り込んで来たスチューデの姿を見たボス魚人ゾンビのヘイトが切り替わり、咆哮しながらスチューデへと突撃する。

 

「護衛系ミッションだ!!スチューデを守れ!!」

 

「やっぱりー!?」

 

 慌てて「ソニックカノン」を放ち、ボス魚人ゾンビを吹き飛ばす。これで吹き飛ばなかったら最悪スチューデの方を吹き飛ばさなくちゃいけなかった。命拾いしたな。

 

 しかしボス魚人ゾンビは吹き飛ばされてもそれでもなおスチューデにヘイトを向けているようで、スチューデを睨みつけている。

 だがそんなボスとスチューデの間に立ち塞がる者が一人。

 

「……ステータスのデバフは如何ともし難いですが……この装備であれば十分戦えるはずです!!」

 

 向こうの魚人ゾンビは大体片付いたようで、装備をいつもの西洋の騎士風な物から、東洋の武者風な鎧に鬼の面へと変更したサイガ-0もこちらの船に乗り込んで来たのだ。装備変えても威圧感凄いなあの人……

 

 ボス以外のヘイトもスチューデに集中しているようで、ザコもスチューデに群がるが、サイガ-0の振り回す巨大なハンマーによって纏めて薙ぎ払われる。

 「アルマゲドン」の反動でステータスが下がっているらしいが、それでも頼りになる強さだ。

 

「すみません!遅れました!!私もコチラに参戦します!!」

 

 秋津茜とシークルゥも船に乗り込ん──

 

「──んあっ!?ラグ……?」

 

 一瞬時が止まったかのような感覚。これはゲームの読み込みが何かしらの理由で遅れた時になる感覚……シャンフロの中では初めての経験だ。

 やっぱりシャンフロでもこういうのはあるんだなぁ……とか考えていたら、急激に天候が悪化してきた。

 

 落雷が降り注ぎ、突風が吹き荒れ、海は大荒れ。船は激しく揺れ、最早立っていることも難しいほどに船が傾いている。まあ俺はスキルで浮いているから問題ないのだが。

 魚人ゾンビもこれは想定外なのか、次々と船から落ちてゆく。

 

 それにしても荒れすぎじゃないか?これがイベントだとすると、今から何かが起きるはずだ。警戒を強めて──下!?

 

 海から大きな水の柱が立ち上がり、その中から現れたのは……吸盤がついている巨大な触手。それが八本。

 

「た、タコ!?」

 

「やばいですわ!やばいですわ!!島をも掴む巨大(おお)いなる腕……!!サンラクサン!これ……!!クターニッドですわぁーー!!」

 

 エムルちゃんの絶叫によって判明した超巨大タコ足の正体……それはまさかのユニークモンスター、「深淵のクターニッド」だった。

 

 タコ足が幽霊船に巻き付き、海の中へと引きずり込んでいく。急いで船から飛び出そうとするが、突然「蝋の翼(イカロス・ウィングス)」も「呪界啓示(カース・ビジョン)」も全く機能しなくなり、船に叩きつけられる。

 これはまさか……このままクターニッド戦になるのか!?ユニークシナリオEXは!?

 

 

 

 

 

『ユニークシナリオEX「人よ深淵(ソラ)を見仰げ、世界は反転(マワ)る」を開始します』

 

「また強制スタートかよぉ!?」

 

 視界が暗転する──

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

「──んに……?」

 

 先程までの嵐が嘘だったかのような静寂の中、目が覚める。

 

「ここは……?」

 

 タコ足に海の中に引きずり込まれたかと思いきや、空気が存在する洞窟のような空間に移動していた。

 上を見れば岩の天井のようなものが見えるが……よく見ればその手前に水面がある。というか水に包まれているというかなんというか……

 

「頭がおかしくなってくるな……えーっと……」

 

 まず、俺の視界一面に広がるこの光景。ここはどこかの都市のようだ。地下都市?海底都市?それはわからないが、人の気配はしない。

 

 そして都市全体を覆うように周囲が水の膜で包まれている……いや、ここが海の中だとすると、海の巨大な泡の中にこの都市が存在している?ここからじゃよくわからん。

 

 最後にあの天井……ただ泡で包まれているだけなら普通に海面が見えると思うのだが……都市が丸ごと入る大きさの超巨大海中洞窟の中に都市が立っていて、泡で浸水を防いでいる?なんでそんなことを?

 

「やっぱり考察は苦手だな……」

 

 それとメニューを表示したら一緒に出てきた謎のタイマー……特殊状態「深淵の刻限」……約170時間からどんどんカウントが減っていっている。

 これは恐らくタイムリミットだと思うのだが……一週間?一週間以内に脱出か、あるいはボス……深淵のクターニッドを討伐しなければならないということだろうか?

 

 流石に一週間ずっとログインしていることはできないし、となれば休憩ポイントが存在すると思うのだが……どこにあるんだ?

 

 というか俺以外誰もいないのだが、みんなどこに行ったのだろうか?とりあえず歩き回ってみるとしようか。

 

「うーん、建物はボロボロ、しかも入り口が塞がれている……過去に何かあったのか?」

 

 どの建物も道路も青い石材を用いて建築されているせいで都市が全体的に青いな……家屋は風化して所々崩れており、玄関や窓が残っている家屋の殆どが外側から板で封鎖されている。どういう状況なんだこれは?

 

「あ、ここの家は頑張れば入れる……」

 

 試しに侵入してみると、なんと建物全体がセーブゾーンになっており、リスポーンポイントの更新ができた。これでとりあえず死んでも大丈夫な状態になった。

 周囲の家屋にも侵入してみたが、どうやら全てセーブゾーンとして扱えるらしい。

 

 しかしここからどうするか。とりあえず全力で叫んでみたら誰かに声が届くだろうか?

 そう考えて外に出てみると──

 

「何あれぇ……?」

 

 ここから都市の中央の大きな建築物を挟んで反対側、超巨大なリュウグウノツカイ?それが泡の外から中に入って来て、空中を泳ぎながら地上に向かってブレスを放っている……いや本当に何あれ……?

 下手に全力で叫んでいたらアレに襲われていたのかもしれないな……しかしアレは一体何と戦っているのだろうか?

 

「他のみんなも孤立していた場合……一番最悪なパターンは戦闘能力皆無なスチューデがアレに追われているパターンだな……」

 

 「フルスロットル・レーシング」を起動し、急いで現場に向かう。流石に知らない間に重要なNPCが勝手に死んでいるみたいなことは起こらないと思いたいのだが……

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 走り続けて暫くすると、超巨大リュウグウノツカイが何かと派手に戦い始めて、現場に到着する直前にはポリゴンとなって消滅してしまった。

 誰がアレを倒したのか……まあ、ある程度近づいた時点で分かっていたが、サンラクがやったようだ。魚は鰓が弱点なのね、覚えておこう。

 

「えーっとこの辺りか……誰かー!?」

 

 少し大きな声を出してみると、少し離れた所からサンラクと秋津茜の返事が聞こえてきたのでそちらへ向かって移動する。

 

「サンラクさん!秋津茜さん!あ、モルドさんも!」

 

「ぶんぶん丸氏!無事だったか!」

 

「他の人は?」

 

「レイ氏以外とはもう合流した。今は拠点で待たせていますよ」

 

 サイガ-0だけ合流できていないと……まああの人強いから死んではいないだろう。

 

 サンラクの言う拠点に向かいつつ話を聞くと、ここは「深淵盟都ルルイアス」と言うらしく、上下逆さまな「反転都市」なのだという。クターニッドが元々海上に存在していた町全体を海中へ丸ごとひっくり返してしまったんだとか。

 

「……?つまりあの天井は……海底?」

 

「そういうことになるらしい」

 

「水と空気も反転、重力も反転……魚は空中を泳ぎ、俺達は水中で呼吸している……これ全部クターニッドの能力だとしたら勝負にすらならないのでは……」

 

 だって水中と空中を入れ替えたらそれだけで全員水圧で潰れて死ぬだろうし、そもそもここのモンスターは魚を反転させたものなのだという……つまり生と死すらも超越可能な存在だ。何でもかんでもひっくり返せるなら勝負の土台すらひっくり返せるわけで、勝てないし瞬殺されるのでは?

 

 サンラクが遭遇したNPC曰く、ここから生きて出たいのならばクターニッドを楽しませる他に無いと……

 

「……まるでゲームキーパーのクソ難易度シナリオに振り回されるプレイヤーキャラのようだ……」

 

「あー、TdRPG(テーブルドラマ・ロールプレイングゲーム)……言われてみればだいぶそれっぽさが……」

 

 まあ俺はTdRPGをコナツとNPCとしか遊んだことが無いのだが、AIの進歩によって一人で遊ぶのも中々楽しいものが増えてきていて、人見知りの俺としては嬉しい限りである。自分がKPになってAIのPCが攻略するのを眺めているだけでも中々楽しかったりする。そしてシナリオの難易度をどんどん上げていって……あの時のPC達はこんな気分だったのかもしれない。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

「秋津殿!無事でござったか!!」

 

「シークルゥさんこそ!!」

 

「サンラクサァァン!!」

 

「むげっ」

 

 シークルゥと秋津茜の再会のハグの横でエムルちゃんの熱烈なハグがサンラクの首に炸裂した。今ダメージエフェクト出てなかった?

 

 というわけで拠点に到着した。これでサイガ-0以外とは合流できたわけだが……

 

「……」

 

「警戒されている……」

 

 「アラバ」とかいう鮫っぽい半魚人……「魚人族(マーマーン)」と言ったか?NPCという時点で嫌な予感はしていたが、めちゃくちゃ警戒されている。あとさり気なくスチューデも可能な限り俺から距離を取っている。呪いの道は理解され難いものだな……

 まあ今は俺一人ではないのだ、NPCイベントは他の人に任せておこう

 

 さて、ここからどうこのEXシナリオを攻略していくかだが……当然全員が一週間フルでログインできるわけではない。それぞれ何かしらの用事があるのだ。

 

 今日を一日目として、俺が自由にいつでもログインできるのは二日目だけとなる。社会人なのでな……夜遅い時間のログインも含めれば一週間毎日ログインできるのだが、みんなと時間が合わなさそうだ。一応七日目の夜からその翌日の八日目のタイムリミットまでは自由なタイミングでログインできるが……

 

 秋津茜がログインできるのは二日目、六日目、七日目。

 ルストとモルドは三日目、五日目、七日目。

 サンラクは四日目、五日目、六日目、七日目。予定が延びる可能性あり。

 サイガ-0は不明。

 

 行方不明のサイガ-0を除くみんなが集まれる七日目から八日目のタイムリミットまでの間にボスに挑むとして、その時に備えるべく情報を集めながら攻略していこう。

 ところで集めた情報の交換はどうすればいいのか……え、リアルのSNSで部屋を作ってそこで?

 

 ということで本日は一旦解散となったが、俺は今日中にやっておかないといけないことがある。

 このずっと視界に映り続けている未来を映す影と……危なすぎて封印していたローエンアンヴァ琥珀晶を用いたアクセサリー、「灼毒馬釘(ソーマ=スタング)(スペリオル)」を制御できるようにするのだ。




社会人が夏休みの学生パーティに混ざってしまった図

正直災と極の差とか条件とか詳しくわからないのでこの辺りはノリで書いてます
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