シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
便利だねシャンフロサーバーが勝手に修正する設定!
暫く戦っていて思ったことなのだが、恐らくあのヤドカリは相手に合わせてメタ能力を持つ生き物を差し向けてくるだけではなく、その場でメタ能力を持つ生物を作り出すことも可能なのではないだろうか?
最初は
しかもこちらに有効な攻撃手段を模索しているのか、多種多様な海洋生物をちまちまと差し向けてきており、中には電撃を放つエイまで存在していた。まだバレていないが、あれが有効だとバレたら雷属性の海洋生物を優先して差し向けてくるようになるのだろう。
そして忘れてはいけないシンプルな本体の性能の高さ。
相手だけが受けている水の抵抗もあって機敏と言うほどではないが、背負っている巻貝の形状を利用してゴロゴロと転がって押し潰そうとしてくるし、あの鋏で掴まれたらそのまま真っ二つだろう。
先ほどから取り巻きを掻い潜って何度か攻撃を当ててはいるのだが、黒死の抱擁でも中々状態異常にならない。とんでもなくタフだぞこいつは……
「畜生、これが無ければもっと戦いやすいんだが……!!」
視界にずっと移り続ける未来を映す影。わざと無視し続けている余裕が殆ど無い中、気合で指し示されたルートを無視し続ける。
予測の影が新たに出現した瞬間に一瞬だけ
関節を逆方向に捻じ曲げることくらいネフホロでいつもやっている。今だけ球体関節になれないかな。
システム的にもこのヤドカリは強敵判定のようで、昼に戦った魚人ゾンビや人魚と比較すればかなり白ゲージの伸びが良い。あともう少し、もう少しで完全にゲージが白で染まる!
「こんのっ……!邪魔だ!!」
アクセサリーを起動し、最低限の関節だけを動かして巨大ウツボの下顎を自分の脚が千切れ飛ぶ勢いで蹴り上げる思いっきり蹴り上げる。これで……いや、ギリギリ足りていないか?
その瞬間、そう簡単にはクリアはさせないと言わんばかりに視界を大量の影が埋め尽くす。
押し寄せる海洋生物達の攻撃ルートが一斉に表示され、更にそれに対する考え付く限り全ての対処法が先に表示される。なんで体を捩じ切ったり折りたたんだりして回避するのが先読みされているんだよこれ。
どの方向に逃げるのもダメ、防ぐのもダメ、パリィもダメ、迎撃するのもダメ、あれもダメ、これもダメ……迫るタイムリミット。なんだこれ、クソゲーか?
後僅かでゲージが完全に白に染まり切る……思考を加速させて必死に考えるが、まるで思考が読み取られているかのように思いついたそばからそのルートが潰される。
団長に相談できていたら何かヒントがあったのかもしれないと後悔してももう遅い。回避が間に合わなくなったことでどんどん表示される自分の影が減ってゆく。
ヤドカリの回転の勢いを乗せた鋏の振り下ろし……自滅覚悟の迎撃もダメ。どうやらこのまま何もせずに死ねと言っているようだ。
「じゃあ……死ぬか!」
これで死亡からのゲージリセットになったら俺はキレるぞ。
「み゛っ!?」
巨大な鋏で叩き潰されて俺は死んだ──
『呪いの啓示に抗い続けた「ぶんぶん丸」は死んだ』
『しかし、その決して屈することのない強靭な意志は
『死してなお消えぬ呪いが世界の理を覆す──』
『ユニークシナリオ「呪いに囚われし者、理を呪う者」をクリアしました』
『ジョブチェンジ! メイン職業が「呪律者」に変更されました』
『「
──意識が戻る。
巻貝の中へと戻ってゆく海洋生物達。その内何匹かのタコがヤドカリに刺さったままのレイピアを引き抜こうとしているのが見える。
あいつの能力は学習からのメタ張りだ。故に──対策される前に本体に初見の超火力をぶち込む。それが奴への最大のメタの一つだろう。
ノシノシと歩いて去ってゆくヤドカリ。時々巻貝の中から飛び出した海洋生物が泳いでいる野生の魚を捕まえて、雇い主の所へと持ち帰っているのが見える。
もう俺のことは過去の存在と認識しているようだ。それは好都合。
「我が血を大地に捧ぐ……【
スタミナバフを重ね掛けし、限界まで増やしたスタミナを全て魔法陣を描くのに消費する。
ルルイアスの青い街を血の魔法陣で赤く染め上げる。更にスタミナ回復バフを重ね掛けし、回復速度が落ちているスタミナを強引に回復させる。スタミナポーションにマナポーションも服用して、これで準備完了だ。
「「墓守呪業【
死んだふりのために横たわっていた俺の体を影が包み込む。
ヤドカリも異常に気が付いたようでこちらに向き直る。だがもう遅い。
まだ一度も試したことが無いスキルだが……秋津茜のアレを見る限り、威力は十分だろう。
視線がどんどん高くなってゆく。自分の掌を見てみれば、長く鋭い爪が生えている。背中にあるこれは多分ドラゴンの翼なのだろう。
ヤドカリは殻の中に立て籠り、貝の中から次々と硬そうな甲殻類や亀、貝類などが飛び出してヤドカリの殻の表面に張り付き、更に電撃を纏うノコギリザメの群れが猛烈な速度で突撃して来る。
「もう遅い!纏めて消し飛べ!!!」
口の中でチャージされた魔力を殺す魔力が空気中の魔力と対消滅を起こし、赤熱する黄金の如き輝きを放つ。
狙いを定めて咆哮と共にそれを一気に解き放てば、黄金の閃光が視界を一瞬で埋め尽くした。
「うおぉおおッ!!?」
凄まじい反動だ。纏っていた影がどんどん剥がれてゆく。これ魔勁修羅無しで使っていたら反動で死んでいたんじゃないか?
後ろ足の爪で踏ん張り、それでもまだ反作用で吹き飛びそうになるので腕も使い、更に翼も広げて反動を耐える。
もう視界が大体閃光で埋め尽くされているのでよくわからないのだが、なんかあのヤドカリはまだ耐えていそうな感じがする。ならばこのMPが続く限りぶっ放し続けてやろうじゃないか!
「ウオアアアアアアアアアア!!!!!」
叫ぶ必要があるのかはわからないが、兎に角全力で叫び続けてどのくらいの時間が経っただろうか。
MPが尽き、スキルの効果時間も切れて影が元の人の形に戻ってゆく。
「これでも死なないのかよ……」
それでもあのヤドカリは耐え切ってみせた。
貝は砕け、中にいたのであろう海洋生物達が全滅したことで無数のポリゴンに包まれてはいるが、それでもあいつは死んでいない。
大切な貝を破壊されてご立腹なのか、身軽になった体で突撃して来るヤドカリ。
まあなんというか、タイマンなら負けるような相手じゃなさそうなのだが、最後まで何が起こるのかわからないのが勝負と言うものだ。ついさっき俺も死んだのにその場で生き返るという理不尽で逆転したしな。油断せずにいこう。
黒死の抱擁を装備し、攻撃スキルを順番に繰り出して、単調な攻撃を回避スキルで最小限の動きで回避する。
もう未来を映す影は見えない。スキルとしても消滅しているのか、未来予知は不可能になったものの、今の俺を縛るものは何もないのだ。
「ん-、時間にして一日未満ではあったけれども、あれ結構凄いストレスだったからな……溜まっていたストレスはお前にぶつけてやるよ」
黒死の抱擁によるデバフが入り、動きが鈍るヤドカリ。更に刺さったままだった金晶弩針剣によって体がどんどん水晶化して少しずつ崩壊が進行している。
横槍を入れられても困るので「
「アラバさん、横槍が入らないように見張っておいてくれませんか?」
「!?あ、ああ……」
これで横槍の警戒に意識をあまり割かなくてもよくなった。ずっと見られているのも恥ずかしいしな……
「ぬんっ!」
ヤドカリの鋏の振り下ろしを避けて懐に潜り込み、金晶弩針剣を引き抜いて「
この呪いは首に破壊が発生する度に即死判定を行うため、壊毒との相性が良い。死ななくても首への破壊は大きなダメージとなる。
己の死が近づいていることを理解したのか、器用に首に刺さったレイピアを引き抜こうとするヤドカリ。当然その隙に更に追撃を加える。
インベントリから
いつもならフルパワーの「壊力無双」をぶち込んでやるところだが、実は今ルルイアスで武器を修理する手段が無いという深刻な問題を抱えているため、耐久を大幅に消費する「壊力無双」は無しだ。代わりにこのスキルを使う。
「その首置いてけ!!
一瞬起動した灼毒馬釘の効果で加速した晶尾鞭がヤドカリの首に叩きつけられた。
剣に破壊属性を付与し、首に命中させた時には更に大きな補正がかかる攻撃スキルを、斬撃スキルを使える打撃武器である鉄鞭で発動したのだ。その結果──
ブチンッ!!!
ヤドカリの体がビクンと跳ね、その直後にポリゴンとなって爆散した。ちょっとエグいラストだったが、勝てたので良しとする。
勝利した証であり報酬であるドロップアイテムがゴロゴロと出て……なんか多くない?ソロ討伐なのもあるだろうが、貝殻の中の生き物の素材もついでにドロップする仕様なのか?ブレスで消し飛ばしちゃって勿体ないなと思っていたからありがたいが……
灼毒馬釘本体の効果としてこの釘自体が追加のインベントリとなっているので、そこにドロップした素材を詰め込んでおく。何気にローエンアンヴァアクセサリーのインベントリ関係の効果には助けられているな……ちょっとインベントリアが羨ましく思えてきた。
あのヤドカリ、名前は「アーコリウム・ハーミット」と言うのね。甲殻類だからか重そうな素材ばかりなのだが、これでなんかいいもの作れないだろうか?
「終わった……疲れた……」
というか海の生物相手に自分だけ水の抵抗を無視して戦っているというだいぶアンフェアな状況なのにここまで苦戦するとは……
何はともあれ、ユニークシナリオはクリアできたし、ついでに強そうなモンスターの討伐にも成功したのだ。
ジョブも呪律者になったし、なんか変なスキルも習得したし、レベルも上がった。詳しいことは後で確認するとして、大満足な成果と言えるだろう。
今日はもうログアウトして休むとしよう。あ、そうだ。寝る前にSNSでこの情報をみんなに共有しておかないとな。
いつの間にか戻ってきていたアラバにお礼を言い、その後特に会話も無く、二人で拠点に帰った。
……最低限の会話だけでいいのは気が楽だが、やっぱりちょっぴり寂しいな……
「
効果は非常にシンプルなデメリット無しのオート完全蘇生。しかも状態異常やリキャストタイムなどもリセットされる。(特殊状態など一部のものはリセットされない)
ただし戦闘開始と同時に24時間のリキャストタイムに入るので、そこからなんとかしてリキャストタイムを短縮しないといけない。このスキル自体にも特定の条件でリキャストタイムが短縮される効果がある
因みにこのスキルや呪業スキルなどは呪律者をサブに置いても発動可能。なお一度呪啓者ギルドに入る条件を満たしたプレイヤーが他のジョブに転職するのは信頼値的な問題で結構難しいので、呪啓者ギルドに入る前に望みの職業に就いてそれをサブに保管しておくのが望ましかったりする
本当はもっと引っ張ってここぞという場面で転職させたかったのですが、それまで主人公がずっとストレス抱えながら戦犯プレイしているのもアレなのでちょっと早めにユニークシナリオを終わらせました
因みにこのユニークシナリオのシナリオ名にはりっちゃんの吟遊GMへのちょっとした恨みが入っていたりいなかったり……
因みにアラバは割と最初の方から主人公の戦いを見ていました
NPC目線だと自分の体を破壊するようなめちゃくちゃな戦い方の末にミンチにされたと思ったら、そこから蘇生してドラゴンになってビームをぶっ放して急に動きが見違えるほど良くなって海の森に勝利したなんか常にブチギレている獣人族に見えています。そりゃこんなのと会話したくないわ
それと特に今回の話に関係は無いのですが、ようやく