シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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原作で度々登場する人間がボウリングのピンに例えられる描写好き


暴徒と理不尽

 ユニークモンスターというのは俺がシャンフロをやっていなかった頃から度々話題になっていたので少しは知っている。

 初心者用エリアに急に現れたと思ったらプレイヤーを纏めて虐殺して帰っていったとか、黄金のビームで焼き払われたとか、それで復讐しようとレベル99まで上げてフルパで挑んだのにそれでもワンパンでボウリングのピンのように纏めて吹っ飛ばされたとか、聞く限りでは負けイベとしか思えないようなやつらだ。ワンパン即死はコントローラーでディスプレイに映っているキャラを操作するような昔のゲームじゃなきゃ許されないやつだろそれ。

 

 レベルキャップが解放されるまで倒せないようになっているとか伝説の勇者の武器を集めないと勝てないとか色々と噂されているがそれは置いといて、今俺の目の前にいるこの狼はレベル99でもどうにもならないバケモノであることだけは確かだ。

 

 既にこのエリアに居たプレイヤーたちは殺し尽くされたか逃げ出した後のようで、この場に残っているプレイヤーは俺一人だけのようだ。あ、目が合──

 

「あっぶねぇ!?」

 

 振り下ろされたリュカオーンの右前脚が大地を叩き割り、風圧だけで吹き飛ばされる。

 動き始めた瞬間に「スケートフット」を発動しなければ死んでいた。もう技量で何とかできる速度差じゃないよこれ、外付けのブースターとか無いと対応できなくないか?

 

 見切るだけならこのくらい早い敵なんて別ゲーで何度も見てきたしそう難しいことではないが、見切れてもそれに体が追い付かないのでは意味がない。

 

 次は左前脚での薙ぎ払い。「クイックスピン」と「仕切り直し」の連続発動でリュカオーンの頭上を飛び越えて後頭部に「スパイラルエッジ」を打ち込むが、切っ先が毛皮に阻まれてそれ以上先に進んでくれないし、スキルで発生した渦も毛がちょっとクルクルするだけでまるでダメージが入っているように見えない。

 

「どうすりゃいいんだよこれ……」

 

 車よりでかい狼を飛び越えて背後へ着地した俺へリュカオーンは振り向きながら右前脚を叩きつけてくる。着地で硬直した瞬間を容赦なく狙ってきやがるなこいつ。

 この体格差やステータス差で成功するのかは賭けだったが、「ジャストパリィ」をタイミングを合わせて発動して攻撃を受け流す。

 

 パリィ成功で作り出した隙で武器を沼鉄の鈍直剣に変更して右前脚に無尽連斬を叩きつけるが、コンクリートの壁でも殴っているかのような反動が腕に帰ってくる。

 斬撃は全く通らないし打撃も威力が足りない。ステータスの差があまりにも大きすぎる。1ダメージすら入っていないかもしれない。

 

 となればどでかい一発をくらわせてやるしか無い訳だ。

 頭の動きから次の攻撃は噛みつきである可能性が高いと判断して斜め前へ跳び、ギリギリのところでリュカオーンの顎の下を潜り抜け、そのままリュカオーンの耳を掴む。

 

「どっこいしょー!!」

 

 俺の数倍の巨体を持つリュカオーンの体がほんの少しだけ持ち上がる。

 

 相手の攻撃を直接掴む、若しくは攻撃を繰り出した相手の体の一部を掴み、その攻撃の勢いを利用して投げ飛ばすスキル、「カウンタースロー」が成功し、リュカオーンの攻撃の勢いが乗った投げ技が発動するが、やはり体格差とステータス差が大きすぎるのか、リュカオーンの体はほんの少ししか浮かばず、半周ほどぐるんと回して大地に寝かせる程度が限界だった。

 

「くらいやがれ!「スタンストライク」!!」

 

 リュカオーンの頭部にエフェクトを纏う鉄鞭を全力で叩きつける。

 このスキルは単発高火力の打撃攻撃であり、頭部に命中すればスタン判定が発生する。

 

 しかし、リュカオーンは何事もなかったかのように頭を振って鉄鞭を弾いて起き上がった。

 なんなんだこいつ、そこはちょっとだけでもいいからスタンしておけよ。

 

 さて、ここからどうしよう。リキャストタイムというものが存在する以上、今の俺はスキルに頼らないと回避も防御もできないような格上相手には一瞬しか持たないのだ。

 ぞれに攻撃スキルも威力が低すぎてどれだけ多段ヒットしようが一撃に全てを賭けようがある程度の硬さがある相手には掠り傷すら与えられない。

 

 耐えられないし倒せない。もっとスキルを増やさないと勝負にすらならない。となれば──

 

「もっとレベルを上げてスキルを揃えてから再挑戦ということでへぶっ」

 

 俺はこのゲームで初めての死を迎えた。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

————————————

PN:ぶんぶん丸

LV:33

JOB:傭兵(片手剣)

10マーニ

HP(体力):10

MP(魔力):1

STM (スタミナ):250

STR(筋力):10

DEX(器用):10

AGI(敏捷):10

TEC(技量):10

VIT(耐久力):10(70)

LUC(幸運):10

スキル

・無尽連斬

・スパイラルエッジ

・フルパワースイング

・レペルカウンター

・カウンタースロー

・フリースケーティング

・一艘跳び

・シャープターン

・威嚇の咆哮

・リフレッシュブレスLv.2

・アージェントチャージLv.5

・ハイエンデュランスLv.5

・仕切り直しLv.6

・トレイルランニング

・剣を拳に拳を剣にLv.1

 

装備

右:沼鉄の鈍直剣

左:無し

頭:歓喜の炎眼犬面(VIT+20)

胴:赤帽子の服(VIT+18)

腰:赤帽子のベルト(VIT+16)

足:赤帽子の晒(VIT+16)

アクセサリー:無し

————————————

 

 

 ユニークモンスター凄い。出会うだけでかなりレベルが上がったんだけど、これから毎日会いに行っていいか?

 

 それは置いといて、事故はあったがレベル上げ自体は無事完了したと言ってもいいだろう。

 リュカオーンとの戦いで感じた圧倒的ステータス不足を解消すべく、新たに習得、進化したスキルを更に合体させてみたところ、正に俺が望んでいたスキルが誕生した。

 

 一つ目は「フルパワースイング」。打撃系のスキルらしいので沼鉄の鈍直剣でしか発動できないが、その効果は『スタミナを全て消費して放つ攻撃。この時消費したスタミナに応じてダメージ補正が入り、スタン確率、ノックバック確率、ノックバック距離に補正が入る』というものである。

 野球のバットを振るかのような大振りのモーションで放たれる攻撃スキルだが、このダメージ補正がヤバい。

 

 このゲーム、基本的にステータスやダメージの補正は乗算のようで、例えばSTRを二倍にするスキルがあったとしても俺のSTRは10であり、それを二倍にしても20でそこら辺の魔法職にすら負けていてもおかしくはないし、前衛職ならレベル1にも負けているだろう。

 ダメージ補正もやはりどれだけ大きな数字を掛け算したところで元があまりにもゴミ過ぎてまともなダメージを出せない。しかしこのスキルなら物凄く雑に言えば消費した分のスタミナの数値を一時的にSTRに足したかのようなダメージを出すことができるのだ。

 実際のダメージ計算式はもっと複雑だし更に速さや重さなどの物理演算による補正もあるという話は置いといて、勿論実際にスタミナをSTRに足している訳ではないので武器が軽く感じるようになったりはしないし、殴った反動でこっちが死ぬということも起こらない。

 恐らくこのスキル以外にもこういうタイプのスタミナ消費系攻撃スキルが存在するはずだ。後で探してみよう。

 

 問題点としてはスタミナを全て消費するため、スタミナ切れによる硬直が発生してしまうことだろう。これをなんとかできるようなスキルがあればいいのだが。

 

 二つ目は「フリースケーティング」。回避スキルの「スケートフット」を元にしたスキルなのだが、効果が『回避モーションが高速で滑るような特殊モーションになる』のに加えて、『スタミナを消費し続けることで効果時間が延長される』というものになっている。

 これによってスタミナが続く限り何度でも回避を連打できるようになったし、この特殊モーションはかなりのスピードで滑れるので、回避を連打すれば爆速で滑って移動に使うこともできる。

 

 ただし、回避はそれなりにスタミナを消耗する行為であり、それを連打すれば俺のスタミナ量でもあっさりと枯渇することになる。それに効果時間延長のためのスタミナ消費も結構な勢いでスタミナが減っていくし、効果時間中は棒立ちしていてもスタミナが自然回復しなくなる。

 幸いなことにスタミナを直接回復する「アージェントチャージ」やスタミナのステータスを上昇させる「ハイエンデュランス」は効果があるようで効果時間の更なる延長が可能だが、スキルを中断すれば再び発動するのにリキャストタイムを待たなければならないという問題点は変わっていないので、これも似たようなスキルを複数覚える必要があるだろう。

 

 三つ目は「トレイルランニング」。「オフロード」を元にしたスキルで、これもスタミナ消費で効果時間の延長が可能である。

 ただし「フリースケーティング」と同時発動すればスタミナがガリガリ削ていく。オフロードLv.MAXの方がスタミナを使わない分扱いやすかったかもしれないが、将来的にスタミナにもっと余裕ができれば長期戦にも対応できるようになるだろう。

 

 四つ目は「剣を拳に拳を剣に」。片手武器(スキル名に剣が入っているが片手剣である必要はない)と素手の組み合わせでのみ発動可能なスキルで、片手武器を使った攻撃ではスタミナ消費軽減、武器耐久消耗軽減の効果があり、素手での攻撃ではダメージ補正と反動の軽減の効果がある。

 更に効果時間中は片手武器の装備条件が緩和されるらしい。このゲームは強い武器には装備条件として一定値以上のステータスを要求されることがあるらしく、俺のゴミカスステータスではどれだけバフしても要求値に届かない可能性があったのでこの効果は非常にありがたい。普通の人ならステータスバフした方が威力も上がってお得だからこれはおまけみたいな効果なんだろうけどな。

 

 なんというか、ようやくスタミナ特化ビルドのスタートラインに立てたような感じがする。というかこのゲームはレベルダウンとかあるらしいし、普通はスキルを揃えてからレベルを下げて特化型にするものなんだろうな……

 

 スキルは揃ったしスタミナも増えた。そろそろボスに挑んでみてもいいだろう。

 しかし現在の時刻は深夜1時。今からボスに挑んでたら仕事に支障が出るのは間違いない。準備だけしようにも深夜は殆どの店が開いていない。さっさと寝ろってことだな。

 

 というわけでログアウトして寝る。おやすみ。

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 眠れなかった。日曜の夜にライオットブラッドキメちゃダメだわ。




オリ主二次創作定番の呪いイベントをスルーしてしまう主人公。ステータス的にどうしようもなかった模様

ここで習得したスキルでようやく主人公のビルドが上手く回り始めます。スタミナに全振りする異常なプレイスタイルと、プレイスタイルの影響を強く受ける傭兵のスキル習得補正により、スタミナに関係するかなりレアなスキルを覚えやすくなっています。それが強いとは限りませんが、少なくともスタミナ全振りに意味があるということなので主人公としては感動しています
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