シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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シャンフロのコミック20巻が発売されましたね
でもクターニッド戦最後まで入っていなかったし次巻の発売日がかなり先で時間稼ぎも難しそうなので、クターニッド戦は最終形態だけなろう原作基準になると思います
先が気になり過ぎる……!


暴徒と二つ名

 「フルスロットル・レーシング」の効果時間中で止まれないので、そのまま全速力でシャチの頭部へ向かってダイブする。

 

「流星キーック!!」

 

 まだスキルとして落下攻撃が習得できていないのがちょっと残念だが、それでもこの高速落下攻撃は非常に高い威力になるはずだ。

 

「あっつ!?」

 

 どうやらこのシャチ、エフェクトじゃなくて本当に頭部が燃えていたようで、炎が消えかかっている今でも頭部に近づくとダメージが発生する。一発蹴り飛ばし、即座に走って距離を置く。

 アラバも追撃を加えようとしているが、熱で近寄れないようだ。

 

「戻った!今どんな状況!?」

 

「サンラクさん!作戦は成功したけどまだ死んでいない!!追撃お願いします!!」

 

「了解!!」

 

 インベントリアから戻ってきたサンラクが武器を構えて追撃に向かう。

 サンラクが頭部を殴り、俺は熱ダメージを受けにくい腹部を殴る。ここで決め切らないと面倒なことになりそうだ。

 

 頭から尻尾の方へ、尻尾から頭の方へと往復しながら「如意自在」で晶尾鞭(クリスタル・ケイン)を高速で振り回す。

 更に筋力不足を灼毒馬釘(ソーマ=スタング)(スペリオル)で腕を強制的に加速させることでカバー。これなら最低限ダメージを出せるはず!

 

「鱗も無いのに硬すぎだろコイツ!?」

 

 殴れ殴れ殴れ殴れ!!兎に角殴れ!!!

 

ドオンッ!!!

 

 サンラクが何らかのスキルを使ったのかシャチが大きく仰け反り、そして遂にシャチの姿がポリゴンとなって──

 

ボォオオオ……

 

 ……なんか炎の勢い強くなってきていないか?

 

「退避ーーーッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最期に自爆とか大技ブッパとかしてくる敵というのはゲームではありがちではあるし盛り上がりはするのだが、それで死んでやり直しになったりすると凄まじいストレスなので個人的にはそういうのはイベントシーンにしてもらいたい所存である。VRだからってなんでも体感させればいいってもんじゃないぞ。

 

 戦闘終了を知らせるメッセージとともに「フルスロットル・レーシング」の効果も終了し、脚が止まる。

 

「……終わったか……」

 

 戦闘時間だけで言えばまあそこまで長い訳ではなかったのだが、脳が凄く疲れている。一瞬でカフェインを使い切ってしまったようだ。

 

「サンラクさーん?アラバさーん?」

 

「ぶんぶん丸氏ー!無事だったか!」

 

 さっきの爆発で二人纏めて消し飛んでいるんじゃないかと心配になって爆心地に戻ってきたのだが、どうやらサンラクが出した急成長する水晶の陰に隠れて二人とも爆発をやり過ごせたようだ。

 

「戦利品はっと……おお、めっちゃ沢山あるじゃん!」

 

「深海の王と言うくらいだ、こりゃきっといいものが作れるぞ!」

 

 幸運を一時的に高めるという調べてみたらかなり珍しいタイプの効果を持つ「蓋然律改変(ランダムナンバーターン)」を最後に発動した影響なのか、ドロップアイテムがかなり大量に手に入った。アクセサリーの追加インベントリに詰め込んでおこう。

 

「う~ん大満足!今夜はぐっすり寝られそうだぜ!!」

 

「そう言えば今何時ですかね?」

 

「……あっ」

 

 明日大事な用事があることを思い出したらしいサンラクが慌てて拠点へと走っていった。

 俺も明日は仕事だしもう寝ないとな……

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 ルルイアス攻略三日目。今日は仕事があったので色々と用事を済ませた後、真夜中にログインする。

 

 ルストとモルドはもうログアウトしているようなので、今日こそ一人で特訓ができそうだ。

 

「おはようございます」

 

「今は夜だぞ……」

 

 最初会った時は完全に警戒されまくっていたアラバだったが、今では少しだけ会話ができるようになった。

 そうだ、折角だしシャチやヤドカリ以外にも何か強いモンスターがいないのか聞いてみよう。いるなら特訓のついでに探して挑んでみたい。

 

「君は随分と好戦的だな……アトランティクス・レプノルカやアーコリウム・ハーミットに匹敵する存在となれば、「スレーギヴン・キャリアングラー」がいるな。周囲の魚を取り込んで眷属にして差し向けてくる。アレに挑もうものなら最悪吸収されてしまうぞ」

 

「なるほど」

 

 魚を取り込む能力か。戦い方はヤドカリに似ているが、ヤドカリは予め用意しておいた眷属を相手に合わせて更に調整しながら差し向けてくるからちょっと違う能力なのかな?

 

 まあ挑んでみればわかることだ。都合よくルルイアスに来てくれるかはわからないが、それっぽいのがいたら挑んでみよう。

 

「……ん?なんだこの音……?」

 

 そんなことを考えながらインベントリを整理していると、ガラガラと何かがぶつかり合うような音や管楽器のような重くてよく響く音が遠くから聞こえてきた。

 BGMにしてはあまりにも不協和音だ。というかそもそもシャンフロにBGMは無い。

 

「アラバさん、これなんの音か分かりますか?……アラバさん?」

 

 返事がないアラバを見てみると、明らかに体調が悪そうな顔色をしている。

 

「もしかしてこれってそのスレーギヴンとかいうやつの音ですか?」

 

「違う……これは奴の……!」

 

「奴?」

 

 アラバの様子がおかしい。なんというか、シャチと遭遇した時とはまた違う……もっとヤバい奴と遭遇したかのような……

 

「……"独勝(アリア)"だ」

 

「アリア?」

 

「"独勝(アリア)"……魚人族(マーマーン)の間でその「二つ名」で呼ばれ、恐れられてきたアーコリウム・ハーミットの特殊個体だ……!」

 

 二つ名……確かユニークモンスターとは別に存在するという別の名前を持つモンスターのことだ。

 簡単に言うと通常個体と比較して何かしら違う行動をするのが二つ名持ちの特徴で、ドロップアイテムは通常個体と変わらないが、その強さや特異性からNPCから恐れられているので、偶にギルドから討伐対象として高額の依頼が出回るらしい。

 そして難しすぎて誰もクリアできなかった時はそれが呪啓者ギルドに流れて来たりする。呪啓者ギルドの仕事は基本的にこういうのばっかりである。その中でも特にヤバいのは別の所に流れて行ったりもするらしいが……それは今はどうでもいい。

 

 アーコリウム・ハーミットの二つ名個体ってそれアレ以上の化け物ってことか?それは確かにヤバそうだが……

 

「うぅぅ……」

 

「スチューデ?」

 

 寝ているスチューデの呻き声が聞こえて来て、そちらに視線を向けて……アラバが"独勝(アリア)"を恐れる理由を理解する。

 

 明らかにスチューデの顔色が悪い。エムルちゃんもシークルゥもうなされて……

 

「まさか……」

 

「そのまさかだ……"独勝(アリア)"の音色を聴いた者は呪われ、生命力が失われる……!このままヤツがこのルルイアスの近辺に留まり続けたら、我々は呪いで全員死ぬことになる……!!」

 

 なんじゃそりゃ!?まさかルルイアス攻略に時間をかけ過ぎるとこうなるのか!?

 細かいことを考えるのは後だ。急いでこの状況を解決しなければならない。

 

 インベントリの中から回復アイテムや聖水、ラローリーさんから貰った呪いを防ぐお札などを全て取り出す。とりあえずこれで時間は稼げるはずだ。

 グループチャットでみんなに呼びかけるが……反応なし。まあ深夜だしこれはしょうがない。深夜にNPCぶっ殺しイベントなんて起こすなバカ!!!

 

「クッソ……アラバさん、そいつについて知っている情報を全部下さい。俺がそいつを撃退します」

 

「わ、わかった……」

 

 アラバからの情報をまとめると、この音は至近距離で聴くほどに強い呪いとなるそうだ。それが故に遠くから少し目撃しただけという証言が多く、情報はあまり正確なものではないと念押しされた。

 

 "独勝(アリア)"は通常個体と異なり、眷属を用いずに一匹で戦うらしい。しかも泳ぐことを得意としており、アトランティクス・レプノルカを直接殴って倒したという信じ難い証言もあるとのこと。

 鋏から眩い光線を放つことがあるらしく、その光を見た者は力が抜けて溺れてしまうらしい。

 そしてコイツが背負う特徴的な見た目の貝殻がこの音の発生源だと考えられているらしい。

 

「俺が知っているのはこれだけだ……」

 

「それだけ分かれば十分です。アラバさんはみんなを連れてこの音から可能な限り離れて下さい。俺は既に別のヤバいのに呪われているので奴の呪いは効きませんから、俺だけで挑みます」

 

「わかった。死ぬんじゃないぞ!」

 

「死んだ程度で俺は止まりませんよ。百回死んででも奴を何とかしてきます」

 

 音が近づいてきている。急がなければ。

 

 拠点から飛び出し、音が聞こえる方向を向けば、遠くの方で海底を巨大な何かがゆっくりと移動しているのが見えた。

 移動ルートからしてこのままだとルルイアスの上を真っ直ぐ横切ることになる。それまでNPCのHPが持つかわからないし、そのまま通り過ぎてくれるとも限らない。

 あれをルルイアスの端で足止めし、撃退しなければならない。

 

「あんなモンスター運営は野放しにするんじゃないよ全く……!」

 

 急いでルルイアスの端、建物の無い岩場に到着する。

 "独勝(アリア)"は現在丁度この真上を移動している。ここから先に進ませるわけにはいかない。

 

「おい、ここから先は立ち入り禁止だぞ!!痛い目に遭いたくなければさっさとUターンするんだな!!」

 

 声が届いたのか"独勝(アリア)"の脚が止まり……視界が揺れる。

 

「グゥウウッ!!?」

 

 貝殻から鳴り響く不快な音が更に大きくなり、動きが封じられる。

 ああもう!なんでこうも相性が悪い相手ばっかり出てくるんだ!!

 

 "独勝(アリア)"が海底から跳び上がり、水中で反転してこちらに向かって泳いでくる。

 アラバから聞いていた通りあの巨体からは想像できないほどの速度で水中を移動している。明らかに泳ぐのには向いていないあのフォルムであれだけのスピードが出せるのはおかしい。何かカラクリが存在しているはずだ。

 

 反転空間内に突入した"独勝(アリア)"が通常個体よりも大きく発達した右の鋏をこちらに向けて広げながら突撃して来る。

 

「速いしデカいが、そんな単調な攻撃ならいくらでも対処法が──」

 

 その言葉を言い切るよりも早く、鋏が眩い閃光を放つ。

 あまりにも眩しくうるさいそれから脳を保護するためか、シャンフロのセーフティによって視界が暗転し、耳からの情報が遮断される。

 

 水晶の欠片を撒き散らしながら俺の体はルルイアスの街中へと吹き飛ばされていった。




どこかしらで出したいと思っていた二つ名モンスターをこのタイミングで出した理由は、このままだと主人公が特にやることがないまま最終日になってしまう&ウェザエモン戦での作者のうっかりでスキルの同調連結のためのお手本を主人公に見せるのを忘れていたのでそれの埋め合わせ&主人公の強化イベント&作者が我慢できなくなったからです

アーコリウム・ハーミット"独勝(アリア)"
アーコリウム・ハーミットの二つ名個体。通常個体の倍以上という明らかに巨大すぎる体躯を持ち、更に右の鋏が異常に成長している。
アーコリウム・ハーミットでありながら眷属を用いないという特殊なスタイルで戦い、アトランティクス・レプノルカやスレーギヴン・キャリアングラーすらも自分の鋏で殴り倒すと言われている
なぜか周囲に不思議な音色を響かせており、その音を聴くだけで呪いを発症してしまうのだが、詳しい原理については全く判明していない
たまにその音色に合わせて鋏を鳴らしたり歌っているかのように声を発したりする姿が目撃されているが、この音を聴いた時点で呪われるので近付いて観察することができず、なぜそのような行動をとるのかも不明
途轍もなく巨大な体をもっとデカい貝殻で隠しているようだが、どこでそんなデカい貝殻を見つけてきたのかも不明。つまりデカくて強いことしかわかっていない
常に呪いを撒き散らしているので呪い対策は必須。その上でルルイアス以外では水中戦対策も必須。そしてシンプルに強いというプレイヤーの深海進出への大きな壁となるモンスターとして運営に期待されている

実はこいつがルルイアスにやってきたのは半分主人公のせい
もう半分は──

???「なんかこっちに進まなきゃいけないような気がする……」
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