シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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職場の同僚がやらかして残業が爆増したのでもしかしたらどこかのタイミングで投稿頻度が落ちるかもしれません。土日に気合で書いてます


暴徒と協奏

 アンデッドタツノオトシゴは"独勝(アリア)"の急所であろう胴体に尻尾を撒きつけて"独勝(アリア)"を守りつつ、吻から衝撃波を発生させるほどの大音量を発して攻撃して来るし、"独勝(アリア)"はそれに合わせて右の鋏を閉じる勢いで衝撃波を発生させて攻撃して来る。

 機敏なタツノオトシゴが先にこちらの動きを止めて、力強い"独勝(アリア)"がトドメを刺す恐るべき連携に苦しめられている。こいつら隙が殆ど存在しないのだ。

 

「一人で倒すことが想定されていない……」

 

 初めから二匹セットのそういうモンスターとして設計されているモンスターなら理不尽にならないように分かりやすい隙があったり、片方が動いている時はもう片方が大人しくなったり、分断する方法があったりするものだが……こいつら近寄ると一緒に下がりながらお互いの隙をカバーするように範囲攻撃してきやがる。クソゲーでは?

 

「どうする……?振動耐性マイナスのせいでむりやり突っ切ることも困難。体が持たない……」

 

 逃げるので精一杯だ。タツノオトシゴの音による振動ダメージを受け続けると死んでしまう。走り続けるしかない。

 

「そうだ、一旦隠れてスタミナを最大まで回復させて硬直を解除しよう。攻撃スキルで短期決戦を狙う……!」

 

 その為にもなんとかして隙を作りたいのだが、どうするか……自由に異空間に逃げられるインベントリアってマジでヤバいアクセサリーだったんだな……

 

「何か良い方法は……」

 

 ちらりとスキルを確認する。

 蘇生効果を持つスキル「心呪律動(フリダヤターラ)」はまだリキャストタイム中のようだ。

 

 このスキルは特殊で、戦闘開始と同時に強制的に二十四時間のリキャストタイムに入る。そこから何かしらの条件でリキャストタイムが短縮されてゆくのだ。

 その条件はまだ判明していないが、現在のリキャストタイムは残り七時間……このスキルにはまだ頼れない。

 

「そうだ、このスキルなら……!」

 

 今まで戦闘終了時にばかり使っていたが、シャンフロの仕様を思い出してそれが戦闘中にも役立つスキルだと気が付く。

 "独勝(アリア)"が右の鋏を開き、再び衝撃波を放つその瞬間、「蓋然律改変(ランダムナンバーターン)」を発動して一気に接近する!

 

「ぐおおおおっ!?た、耐えたぞ!!」

 

 鋏から放たれる衝撃波を至近距離で浴びたが、HPの減少が1で止まり、直ぐに回復する。

 

 「蓋然律改変(ランダムナンバーターン)」はLUCにレベルの数値を加算した上で更に様々な確率をある程度変動させることができるスキルだ。つまり今の俺は幸運100越えということになる。

 シャンフロの仕様で幸運が100以上のプレイヤーは一度だけ確定で即死を免れることができる。多段ヒットやスリップダメージには弱いのだが、この衝撃波は単発ヒットかつ、スリップダメージを上回る回復が常に行われていることによって俺は死なずに済んだのだ。

 

 "独勝(アリア)"が衝撃波攻撃を行う直前にタツノオトシゴが音の攻撃を止めて衝撃に備えることに気が付き、それならこのスキルでいけるのでは思いついて試してみたのだが、賭けに勝つことができた。

 

「よお」

 

「ギィイ!!?」

 

 "独勝(アリア)"に接近することに成功した俺はそのまま懐に潜り込んで黒死の抱擁(ノリ・エイ・タンゲレ)を振るい続ける。

 

 直ぐに泳いで距離を離されてしまったので攻撃できた回数は少なかったが、黒死の(まじな)い釘によって大幅に強化された状態異常蓄積量によって、僅かな時間で"独勝(アリア)"に黒死の呪いと斬首の呪いが発現する。

 更に連鎖して猛毒、火傷、凍傷、麻痺も発症し、"独勝(アリア)"の動きが大幅に鈍り、鋏がだらんと下がる。

 

「そのままスリップダメージでくたばってくれ!」

 

 アンデッドタツノオトシゴの意識が"独勝(アリア)"に向いているその隙に「回避術【隠狐】」を発動してルルイアスのまだ建物が残っている方へと走り出す。

 

 建築物の中に逃げ込み、奴らに気づかれないように息を潜めてスタミナが回復するのを待つ。

 何回か衝撃波によって周囲の建築物が吹き飛ばされたが、それでも忍び続けたことで俺のことを見失ったのか、今ではガラガラと骨の音だけが響いている。

 

 いいぞ、スタミナが戻ってきた。この調子ならもう直ぐ……!?

 

「なんじゃありゃ……!?」

 

 アンデッドタツノオトシゴのスカスカのお腹の骨の隙間から詰め込まれていた無数の骨が飛び出す。

 それを建物の陰に隠れながらよく見てみれば大小様々な海洋生物の骨のようで、放出されたそれらが空中でくっつき合い、まるで生きているかのように空中で泳ぎだす。

 

「ガラガラ……」

 

「ガチガチガチ……」

 

「ブォー……ブォー……」

 

「賑やかな奴らだ……」

 

 色々な海洋生物の骨が雑に繋げられたようなアンバランスな骨キメラは泳ぐのがあまり上手ではないようだが、数が凄まじく多い。それぞれがまるで楽器を奏でているかのような音を発しながら索敵を行っている。

 だがしかし、スタミナ回復スキルの重ね掛けでこちらのスタミナはもう殆ど回復している。ルルイアスでは補充出来ないから貴重なスタミナ回復アイテムもフル投入だ。

 

「三……二……一……今!!」

 

 骨キメラに発見されそうになる直前でスタミナが完全回復し、硬直状態が解除。

 MPが無くなるので水晶ガードが使えなくなるが、それでもスキルを使いたいので瑠璃天(ラピステラ)(まじな)い釘を封花の(まじな)い釘・(ハザード)と取り換えて再び発動し、再び狂咲(ヒステリー)状態になることでデメリットを解除。これでスキルを自由に使える!

 

 その場から勢い良く飛び上がり、骨キメラの群れを飛び越えて奴らよりも高い位置に移動する。

 衝撃波で迎撃されるよりも早くスキルを一斉に起動。影に包まれて巨大化、更にそこからスキルで巨大化、落下方向変更、落下速度上昇──!!

 

「ちゃんとスキルとして習得済みだ!!「隕星落蹴(メテオ・フォール)」!!!」

 

 それは落下エネルギーを威力に変換する攻撃スキル……つまり速くて重いほどに威力が大きく向上する!!

 

「ぶち抜けぇえええええええええ!!!!!」

 

 斜め下へと落下しながら放つその飛び蹴りは、落下エネルギーの分だけ派手になるエフェクトと合わさり、まるで漆黒の槍のようになって奴らへと迫る。迎撃しようとしていた奴らが今から回避しようとしても間に合わない。

 これが通常のアーコリウム・ハーミットなら貝殻に隠れて凌ぐことができたのだろうが、こいつがそれをすれば相方のアンデッドタツノオトシゴにこれがクリーンヒットすることになる。

 

「ギギギィ!!」

 

「ブォオオオッ!!?」

 

 なんとアンデッドタツノオトシゴが"独勝(アリア)"に覆いかぶさり、守ろうとした……が、"独勝(アリア)"はそれを拒むかのように鋏で相方を掴んで引き剥がし──

 

ズドォオオオオン!!!

 

「先にタツノオトシゴの方をやっておきたいんだがな……」

 

 大きくノックバックした"独勝(アリア)"をタツノオトシゴが空中で支え、姿勢を安定させて静かに着地する。

 影で補強した上でなお俺の脚が圧し折れるほどの威力の全力の蹴りを受け止めた巨大な右の鋏には大きなヒビが入り、もう少しで破壊できそうだ。

 

「ブオオオオオオオオ!!!!!」

 

「お前が怒るのか。仲いいんだな」

 

 タツノオトシゴの怒りの咆哮は骨キメラへの攻撃指令でもあったようで、即座に無数の骨に包囲される。

 だがスキルの効果時間はまだ続いている。

 

「沢山聴かせてもらったからな。今度はこっちが聴かせてやるよ……俺の咆哮をなあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

 「獣王咆哮(ビースト・ロア)」を放ち、俺を包囲していた骨キメラを全て骨粉に変えてやる。骨密度足りてないねぇ!

 

「まだまだぁ!!」

 

 続いて「超振動咆」を放ち、二匹纏めて怯ませながら距離を詰める。

 

「防げるもんなら防いでみな!」

 

 黒死の抱擁を逆手に握り、使ったことが無いのに習得してしまった短剣のスキルの「死角の隠し刃」を発動。

 このスキルは相手の不意を突いて短剣を命中させた場合、威力が大幅に上昇して確定でクリティカルになる効果に加えて、武器が持つ効果やアイテムや魔法で武器に付与した追加効果の付与確立や蓄積量などを大幅に向上させる。

 

 黒死の抱擁は短剣並みの軽さであるためこのスキルが発動可能であり、しかも基本的に刃は物質をすり抜けるので防ぐことができないという理不尽性能を持つ。

 ここで重要なのは物質をすり抜けられるということ。つまりガードできると思って構えてしまった相手に対して正面からガードをすり抜けて不意を突くことが可能なのだ。

 

 目の前に迫る巨大な刃を前にしてガードしないという判断は困難だ。"独勝(アリア)"は咄嗟に左の鋏で顔を覆うが、それを貫通して顔面に黒死の抱擁が突き刺さる。

 

「クターニッド戦に取っておきたかったが、そうも言ってられんな。食らいやがれ!!「二人別離つ者よ死を想え(メメント・モリ)」!!!」

 

 柄から黄金の光の奔流が溢れ出し、黒死の抱擁の刃が物理的な破壊現象を引き起こすほどの勢いで発射される。

 "独勝(アリア)"の左の鋏が砕け散り、眩い光で二匹まとめて押し流されてゆく。

 

 ルルイアスの反転空間の外へと押し出され、更に遠くへと押し流されていった奴らがそのまま帰ってこないことを祈りつつ、戻ってきた時のために備える。

 

「頼むぞヴィンセント……ヨハンナは大人しくしていてくれ……」

 

 黄金の水晶が成長してヴィンセントが完全な姿になったのを確認して構え直す。

 インベントリ内で荒ぶるヨハンナの呪いで物凄いスリップダメージを受けている今、リジェネでの回復がかなりギリギリなので、音の振動でHPをゴリゴリ削ってくるアンデッドタツノオトシゴを急いで黙らせないといけない。

 

「ブオオオオッ!!!」

 

「ギギギィ……!」

 

「そのまま逃げればいいものを……」

 

 再び反転空間内に戻ってきたら2匹はかなりボロボロになっていた。

 特に"独勝(アリア)"は左の鋏を殆ど失い、右の鋏も大きく欠けている。顔も半分近く吹き飛んでおり、激しくポリゴンを撒き散らしている。あれで生きているのが不思議なくらいだ。

 アンデッドタツノオトシゴも腹の骨が砕けて、中に詰まっていた骨がボロボロと零れ落ちている……ん?なんかあいつの腹の中に棒状の骨じゃない物体が入っている……?あれが弱点だったりしないだろうか?

 

「逃げないのなら、お望み通りぶっ殺してやるよ!!」

 

 正直撃退だと素材勿体無いなって思ってたんだよね!




気が付けばこの小説の評価の投票者数が49人になっていました
もう少しで目標の50人ということでこれからも気合を入れて執筆していきたいと思います

これだけデカくて強くても、ただの二つ名モンスターである以上ドロップアイテムは通常個体と変わらないというね
しかしギルドやNPCからのクエストでの討伐でなら得られるものは多い。今回の場合、アラバからの好感度はかなり上がるし、アラバ経由で魚人族全体の好感度もそれなりに上がる。初対面で敵対するかしないかギリギリのレベルから多少警戒されるレベルまで印象が良くなるぞ!主人公の信頼値とカルマ値が極端すぎるのが悪い



まあ通常ドロップと感謝以外の報酬もあるんですけどね
それはこいつらがここまで巨大化した原因であり、主人公とこいつらを引き合わせた元凶……
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