シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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書き溜めが減りつつある……書かねば


暴徒と終演

「あががが……下半身が砕け散った……!」

 

 幸運パワーで自滅は避けられたが、なんで死んでいないのか不思議なレベルだ。

 

 頭部を完全に粉砕された"伴葬(レクイエム)"だが、流石にこれで終わ……っていない!?

 

「死体が消えていないってことは……!」

 

 ボロボロに砕けた"伴葬(レクイエム)"の骨と"独勝(アリア)"の甲殻が宙に浮かび、先ほどの爆発の衝撃で吹き飛んで地面に突き刺さっていた光っている棒状の何かを中心として集まり、黄金に輝く何かによってまるで金継ぎのようにくっついて巨大な何かへと姿を変えてゆく。

 あまりにも歪ではあるが、長い尻尾があり、大きな翼があり、長い首の先に鋭い牙が生えた大きな顎を持つ頭部があり、太い手足で大きな体を支えている……ドラゴンと聞いて真っ先にイメージするようなシルエットを持つ、全身が黄金色にひび割れたドラゴンが一瞬で組み上がってしまった。

 

「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!!」

 

「原型残ってねぇじゃん!?そんなのアリなのか!?」

 

 しかし無理をしているのか、直ぐに全身の骨や甲殻がボロボロと崩れ落ちている。

 放っておいても勝手に自滅しそうだが、アレを放置していたらどれだけの被害が出るかわからない。

 

 まだ「魔勁修羅(マヘーシュヴァラ)」と「量律翻弄(ワンダーランドトリップ)」の効果時間は残っている。向こうの方が体格はデカいが、十分殴り合いが成立する程度の差だ。

 

「うおおおおおおお!!!」

 

「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!」

 

 首を伸ばして噛みついてくるのをアッパーで顎を殴って阻止。首を斬り落とそうとヴィンセントを首に叩きつけるが、切断したそばから首が黄金で繋がってしまう。

 時間経過による自滅じゃないと倒せない可能性もありそうだが、攻撃の手を緩めずに殴り続ける。

 

「うおっ!?」

 

 翼で体を押さえつけられ、尻尾で頭を叩かれて首が圧し折れる……いや、これは「魔勁修羅(マヘーシュヴァラ)」で纏っている影の首だから大丈夫だ。俺の本体は胴体の中にある。

 

「何しやがる!!」

 

 首を戻してドラゴンの尻尾を掴んで振り回し、そのままの勢いで地面に叩きつける。

 衝撃でドラゴンの尻尾が千切れてバラバラになって砕け散ったが、即座に元のドラゴンの姿に戻ってしまった。

 

 もう「魔勁修羅(マヘーシュヴァラ)」効果時間が残り僅かだ。ここで決めるしかない!

 

「進化したのはお前だけじゃねぇぞ!」

 

 アクセサリーを変更してMPを確保。さっき進化させたばかりの新スキルを発動する。

 

 纏っている影が形を変え、俺にも奴と同じように翼や尻尾が生え、爪が鋭く伸びたドラゴンの姿に変身する。

 これが一度戦闘終了からのレベルアップを挟んだことで「天覇呪業【対焼滅】」から進化したスキル、「天覇呪業【英雄律(ヒロイック・ルール)】」だ!

 

 このスキルはブレス系スキルであるのと同時に味方に特殊状態「英雄喝采」を付与するスキルでもある。

 この状態になると歴戦値やら野生値やらの謎のステータスを参照して様々な行動が強化されるらしい。詳しいことは知らないが、まあ弱くなることは多分ないだろう。このスキルを進化させたらまたレベルが下がったからそういう意味では弱体化しているのだが。

 

 俺がブレスをチャージし始めたのとほぼ同じタイミングで奴の口元からも黒い瘴気と黄金の光が漏れ出し始めた。

 恐らく奴もブレスをチャージしている。考えていることは同じというわけか。

 

「これで終わりだ!!!とっとと死にやがれぇえええええええええッ!!!!!」

 

「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!!」

 

 視界が眩い光によって埋め尽くされ、音が消える。

 体が削れてゆくのがわかる。それでも俺は叫び続ける。

 

 視界が暗転し、遂に「心呪律動(フリダヤターラ)」が発動する。

 失われた肉体が削れながらも高速で再生し、心臓が激しく鼓動しているのがわかる。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 叫び続けてどのくらいの時間が経ったのか。視界が元に戻り、気が付いた時には「魔勁修羅(マヘーシュヴァラ)」も「量律翻弄(ワンダーランドトリップ)」も効果が切れて、俺は元の姿に戻っていた。

 

 周囲の地面が抉れて、瓦礫すらも消し飛んで何も残っていないルルイアス……その爆心地の中央、上半身が消えて無くなっているドラゴンの姿がそこにあった

 ドラゴンはもう動くことはなく、パーツを繋いでいる黄金が消えてゆき、残った胴体がバラバラになって崩れ落ちてゆく。

 

 あれが奴の残り全ての力を振り絞って繰り出した最期の一撃だったのだろう。

 そして──ポリゴンに変化して砕け散った。今度こそ奴は死んだのだ……いや、アンデッドだから元から死んでいるか。

 

 その巨体が一気にポリゴン化して爆散したことでルルイアスにポリゴンの雨が降り注ぐ。

 デカいモンスターを倒した後のこの瞬間の気分と景色は格別だな。

 

「……つっっっっっっっっ……かれたぁぁぁ……」

 

 あまりの疲労感にその場で崩れ落ちる。

 精神的な疲労でゲーム内で立ち上がれなくなるのは久しぶりの経験だ……剣道のゲーム……というよりVR教材か。それの裏ボスを含む全ステージでオールS評価を取得するまでのタイムを競うRTAをやった時以来かな……

 

「ぶんぶん丸殿ー!」

 

「無事だったか……思いっきりぶっ飛んでいったから心配した……」

 

「巻き添えで死ぬかと思ったぞ……」

 

 ここまでNPCを死なせないように頑張って戦ってきたのに、最後の最後で自分の攻撃が死因になったらどうしようかと……あ、そうだ。

 

「エムルとスチューデは……?」

 

「呪いが解けた後、安全な場所で避難させてある。全員無事だ」

 

「そうか……よかった……」

 

 安心したら更に体から力が抜けてしまった。このまま強制ログアウトしてしまいそうなほどの疲労感だ。強制ログアウトって死亡扱い?

 

 サンラク達にもう解決したと報告しないとな……もう今日はさっさとログアウトして寝よう。これ絶対明日の仕事に響くやつだ……

 

「立てるか?」

 

「立てる……肉体は健康そのものだから……」

 

「そ、そうか……」

 

 そうだ、ドロップアイテムを確認しておこう。

 とは言っても二つ名モンスターの素材は通常個体と同じなのだが、何かレアドロップがあるかもしれない。

 

 

 

 

 

深海楽団(ブロスバンド)の怨奏喪殻

スーマラン・シュヴァラゴン・スケルトン"伴葬(レクイエム)"が取り込んだアーコリウム・ハーミット"独勝(アリア)"の甲殻。

"独勝(アリア)"に育てられ、共に数々の深海の強者を打ち破ってきたスーマラン・シュヴァラゴン・スケルトンが莫大な経験を積み重ねた末に辿り着いた怨嗟と喪失で塗り潰された姿こそが"伴葬(レクイエム)"である。

この甲殻は友の仇(ぶんぶん丸)への死してなお消えることのない怨嗟と、かつて友と奏でた未だ消えることのない律動を宿している。

 

 

 

 

 

「ヒェッ……」

 

「大丈夫か!?」

 

「だいじょうぶじゃないかも……」

 

「ぶんぶん丸殿!?」

 

「あれだけの激闘を制したのだ。肉体は無事でも精神的な疲労は計り知れん」

 

 すみませんね余計に心配させちゃって……

 

 どの素材にも持っているだけで呪われそうなことが書いてあるのだが、これもしかして刻傷が無ければヤバかったのでは?

 しかし二つ名モンスターなのに明らかに固有っぽいアイテムをドロップするとは、もしかして進化して通常とは完全に別の個体になっていたのか?

 

「うおっ」

 

 これ装備に使っても呪いとか大丈夫なのかと考えていると、アラバにシークルゥと一緒に担がれる。

 

「拠点に戻ろう。そこでゆっくり休んでくれ」

 

「助かる……」

 

 アラバに担がれて空中を泳ぐ途中、更地になったルルイアスの一角を見下ろしてみれば、クターニッドの力で粉々になった建築物や捲れ上がった大地が修復されてゆくのがハッキリとわかる。あそこまでボロボロになっても直るんだな……

 

「クターニッドはアレよりも強いのか……いやまあ一人で挑むわけじゃないが……あ、今回も一人じゃなかったな……」

 

 アラバとシークルゥが助けに来ていなかったら俺はあの時自爆して相打ちを狙っていただろう。

 新しいスキルを習得して深海の強いモンスターも倒して、これでもう怖い奴なんてあんまりいないだろうと思っていたらこれだ。

 きっと新大陸もこのレベルの化け物揃いなのだろう。もっと強くならなくてはな……

 

「……ん?」

 

「どうした?」

 

 修復されてゆくルルイアスの街道に何かが突き刺さっている……アレもしかして"伴葬(レクイエム)"の腹の中にあった棒状の何かじゃないか?攻撃に巻き込まれて消滅したと思っていたのだが、どうやら耐えていたらしい。

 

「アラバさん、ちょっとアレ回収したいです」

 

「アレ?……何だアレは?」

 

「棒状の何かが刺さっているでござるな」

 

 近くに寄って地面に刺さっているそれを引き抜いて確認してみる。

 あいつの体の一部という可能性もあったが、それはまるで長い年月によってボロボロに朽ち果てたかのような風化具合で、先端部分には錆が浮かんでいる。どうやら先端部分は骨ではなく金属製の物体のようだ……というかこれ人工物では?

 

 

 

 

 

・朽ち果てたルインヴァル

とてもみすぼらしい姿をしている上に呪いを宿しているかつて槍だったもの。

朽ち果てる前は計り知れないほどの価値を持っていたらしいが、こうなってしまってはただのなまくらでしかなく、その価値を証明できる者ももういないだろう。

 

 

 

 

 

 ……なんだこれ?

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 ルルイアス攻略四日目。昨日は本当に大変だった……

 

 一体何があったのか、"独勝(アリア)"とはどういうモンスターだったのかをNPC達に説明し、リアルでもどういう問題が起こってそれをどう解決したのかを深夜にグループチャットに書き込んで……寝たの何時だ?

 "独勝(アリア)"も"伴葬(レクイエム)"もヤバかったが、戦いが終わった後の精神的に疲れ切った状態での後処理も同じくらい大変だったんじゃないかな……

 

 職場にも寝不足のまま向かい、ライオットブラッドでむりやり脳を覚醒させて仕事したからな……家に帰って来てからちょっと仮眠しようと横になったら、目が覚めた時にはもう真夜中だった。

 

 ちょっとだけ夜食を食べてからシャンフロにログインする。

 

「おはようございます」

 

「今は真夜中で御座るよぶんぶん丸殿」

 

 今日はアラバとエムルが不在か。スチューデはベッドの下で震えている。そのポジション気に入ったのか?

 

「数刻前にサンラク殿が起きて、エムルと一緒にアラバ殿とその愛刀を探しに行ったでござるよ」

 

「へー」

 

 そんな話もあったな。見つかればアラバも戦力になるんだろうか?危ないからあんまりNPCをボス戦に連れて行きたくはないのだが……

 まあ俺もその愛刀とやらを探しに行ってみるとしようか。

 

「いってきまー……す……?」

 

 拠点から出た瞬間、眩い光が目に飛び込んで来る。

 

 海底を見上げてみると、めちゃくちゃデカいチョウチンアンコウが数多の海洋生物を身に纏いながら空中を悠々と泳いでおり、上空からルルイアスを照らしていた。

 

「あー……あれがスレーギヴン・キャリアングラーかな?」

 

 このルルイアス、毎晩超巨大生物が出てくるじゃん。

 今日は軽く特訓して直ぐに寝るつもりだったけど……

 

「素材寄越せやオラーッ!!」

 

 次いつ深海に来れるかわからないし、水の抵抗を無視して戦えるのはここだけだろう。チャンスは今だけかもしれないのだ。

 予定変更、今日はアンコウ狩りだ!ここ数日ずっと予定通りになっていないような気がする!!




レクイエムが最後ドラゴンに変身したのは、自分の死を自覚しつつも絶対にあいつをぶっ殺すと決意した上でこれまでずっと抱えてきたルインヴァルのパワーを解放することで、己の姿を崩壊させて目的を達成できる姿へと作り替える最終奥義。見た目がドラゴンなのはルインヴァルの■■■■■■としてのドラゴンへの執着の影響が大きい……もう伏字にする必要なさそう
当然無茶をしまくっているので時間経過で「もう死んでいる」という現実に塗り潰されて動かぬ屍へと変化してしまうので時間切れまで逃げ回っても勝ちになるが、その場合ルルイアスがクターニッドによる破壊不可の建物を除いてNPCごと消し飛ばされていたし、ドロップアイテムが槍以外消滅していた

深海楽団(ブロスバンド)の怨奏喪殻はスーマラン・シュヴァラゴン・スケルトンが「アーコリウム・ハーミットの二つ名モンスターであるアリアからドロップした」という情報を保持していたドロップアイテムを取り込んで後天的レアモンスター扱いのレクイエムに進化するというイレギュラーによって実現してしまったレクイエムの最高レアのドロップ素材。勿論呪われている
理論上再現は可能だが、再現できる可能性は限りなく低い
因みに深海楽団(ブロスバンド)はクターニッドサーバーが急いで考えたアリアとレクイエムの二匹の総称としての二つ名。フレーバーテキストもクターニッドサーバーが担当している

朽ち果てたルインヴァル
ボロボロの槍。もう名前で何となくわかると思うけど、皆さん大好き輝ける槍の一本
なんで海の底にあったのかと言えば、海に捨てなきゃいけなかったから
なお、海に捨てられた後も周辺海域に大きな影響を与えていたようで、現在こいつが捨てられていた場所は「海の墓場」と呼ばれるエリアと化しており、迂闊に近付けば特殊な海流によって引き摺り込まれ、アンデッドモンスターの餌食となる
海の墓場には近付いてはならないと言っているのに沈没船のお宝が沢山存在するという噂を信じてその海域に近付いて命を落とす者が絶えなかった
まだ小さかった頃のアリアとレクイエムが屍の山に埋まっていたルインヴァルを引っこ抜いて持ち去っていったが、今もその影響はその海域に残り続けている
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