シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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残業ラッシュで執筆時間が確保できない……
この土日でクターニッド編書き終わらせる勢いで書かないと……


暴徒と深淵

 ルルイアス攻略八日目……最終日だ。

 

 残り時間も僅かなので朝五時からログインする。

 

「おはようございます」

 

「おはようですわ!」

 

 もうサンラク以外はログインしているようだ。

 みんなは探索にでも出かけたのだろうか?この部屋にはエムルちゃんだけが待機していた。

 

「そういやこの本の中身確認してなかったな……」

 

 昨日この城を探し回って発見した謎の書物……「輝ける槍の伝説(ブリューナク)仮説の輝槍(ブリューナク)」。

 クターニッドに関係している可能性もあるので目を通しておく。

 

「うーん……?」

 

「槍のことばっかり書いてあるですわ?」

 

 ざっと読んでみたが、最初から最後まで特にクターニッドとは何の関係も無さそうな何とかヴァルという名前の槍が沢山出てくるだけの本だった。

 だがしかし、俺にとっては少し重要な情報がこの本には書かれていた。

 

「輝槍仮説第六:魔晶……ルインヴァル……」

 

 華美な装飾を施された槍の挿絵と、その槍の名前とざっくりとした来歴が記されている。

 この前拾ったボロボロのアレと同じ名前だ。アレが朽ち果てる前の姿がこの挿絵なのだろう。

 

「「輝槍の光とは即ち価値の輝き、誰の目にも輝いて見える竜の心さえも奪う羨望の至宝。故にこそブリューナクとは全てを惹きつける魔魅の槍に他ならない」……「しかしそのあまりにも高すぎた価値が人々を狂わせた。多くの人々がこの槍のために命を落とし、それがまたこの槍の価値を高めていった」……なにこれ怖……」

 

「お、恐ろしいですわー!?」

 

「多分これがその実物」

 

「ひょええええ!!?」

 

 まあ呪い関係なら呪啓者ギルドに聞けば大体何とかなるだろう……お?

 

「あ、ぶんぶん丸さんもログインしていたんですね!」

 

 探索からみんなが帰ってきたようだ。あ、サイガ-0もいる。

 

「さっきログインしてきたのですが、俺がいない間に何か進展ありましたか?」

 

「ある。王冠の謎が解けた」

 

「王冠……グループチャットで言っていたやつですか?」

 

「そう、これだ」

 

 ルストがインベントリから取り出したのは宝石で装飾された王冠……しかし一つだけ宝石が欠けているように見える。

 

「最後の一つをはめ込んだら何か起こるかもしれないから、サンラクがログインしてきてからにしようということになって……あ、もうすぐログインしてくるらしいよ」

 

「そう言えばそんな通知が……あ、来た」

 

「サンラクサーン!」

 

 昨日リアルで何かしらあったらしいサンラクだが、無事にログインしてきた。

 しかしなんだろうか、このオーラ……この溢れ出るカフェインパワーはライオットブラッド特有の……だがしかしこの気配は……?

 

「フフフ……」

 

「サ、サンラクサン?」

 

「アッハッハー!!」

 

「サンラクサンがおかしくなったですわぁ!?」

 

 これは、合法堕ち……!?いや、あまりにも強すぎるカフェインパワーに酔っているのか……!?

 

「喝ッ!」

 

「あだぁ!?」

 

 丁度手に持っていた朽ち果てたルインヴァルでサンラクの頭を引っ叩く。

 孤島でライオットブラッドをキメすぎて合法の沼に沈みそうになっていた奴らを正気に戻すために編み出した特殊な技術だ。素人が真似すると死ぬ。

 

「……はっ!?一体俺は何を……?」

 

「未知なるライオットブラッドのエネルギーに飲まれかけていたようですね。どうやってそれを入手したのかはわかりませんが、それの一気飲みには十分な注意を」

 

「アッハイ……」

 

 どうやら俺の知らないライオットブラッドのフレーバーがこの世には存在しているようだ。一般販売されるその時を静かに待つとしよう。

 

 どうやらサンラクは溜まっていた疲れが昨日の休憩のタイミングで一気に来てしまったようで、十四時間ガッツリ寝てしまったようだ。

 

 エナドリで誤魔化せる疲労にも限度がある。ライオットブラッドがどれだけ凄くても、活動を続ける限り疲労の蓄積は止まらないのだ。

 俺もτ鯖の島が燃やされた時とか不眠不休で消火活動をしていたら、その後ログアウトして寝て起きたら二十時間経過していたことがあった。

 

「ところでぶんぶん丸さん。その錆びた槍と本は?」

 

「この槍はこの前話したスーマラン・シュヴァラゴン・スケルトンが落としたもので、「朽ち果てたルインヴァル」と言うそうです。こっちは「輝ける槍の伝説(ブリューナク)仮説の輝槍(ブリューナク)」という本で、この城で見つけた本なんですがクターニッドとは関係なさそうです」

 

「ルインヴァルにブリューナク……なんかお宝って感じがするアイテムっスね」

 

「修復できるんでしょうか?」

 

「さあ……?」

 

 そんなこんなでルルイアスに来てから初めてメンバー全員が揃ったわけだが、残り時間がもう四時間ほどしかない。

 とりあえず謎が解けた王冠のギミックを実行してみようという話になった。

 

「成程、つまりこの宝石類が「王権」を意味していたのか!」

 

 下の階へ移動し、玉座の前に集まる俺達。

 玉座には女性を象った水晶の像が腰掛けており、宝石が抜き取られた部分が窪んでいる。

 

 サンラクは像に残った目の部分の最後の宝石に手を伸ばす。

 

要の碑(クリスタル)に付けられた宝石を王冠に戻すことでクターニッドに譲渡されていた「王権」がルルイアスへと還る……!!」

 

 抜き取った宝石を王冠の最後の窪みにはめ込み、これで王冠は完全なものとなった。

 

「……で?コレをどうすればクターニッドと戦えると?」

 

「知らない」

 

 王冠を完成させたら即イベントが起こるわけではないようだ。

 しかしここからどうすればいいのだろうか?時間が無い。

 

「んー?王権を王冠に戻して、他に何をしたらいいんだ……?」

 

「やっぱりクリスタル像に被せるんですよ!」

 

「この像から宝石を抜き取ったのに、この像に宝石がついた王冠を被せても……あれ?じゃあコイツは誰だ?」

 

「え?」

 

「玉座に座っていたからこのルルイアスの本来の王族の像かと思っていたけれど、それなら譲渡したはずの王権を表す宝石がハマっているのはおかしい。となるとこれはクターニッド側の人物の像……?」

 

 それによく見ればこの像の服のデザインがなんか王族っぽくないと言うか、やけに現代っぽい服というか──

 

「──んえ?」

 

 突然の浮遊感。反転する視界。

 

「上下が反転した……!?」

 

 咄嗟にスキルを起動し、宙に浮かぶ。

 他のみんなは……それぞれの手段で空中に留まったり何かに捕まることで落下死を避けられたようだ。

 

「何なんだ急に……!?」

 

 上下がひっくり返っただけでイベントは終わらない。

 壁や天井が動き始め、城が姿を変えてゆく。

 

「んあっ!?」

 

 急にスキルが機能しなくなり、重力に引かれて落ちる。

 

「強制エリア移動の気配ーっ!?」

 

 このシナリオこういうのばっかりだなほんと!

 

 落下、浮遊感、やっぱり落下──

 

「ぐえっ!?」

 

 どうやら落下ダメージが発生しないようになっているようだが、突然高い所から落とさないでくれ。心臓に悪い……

 

「なんだここ……?円形の……コロッセオか?」

 

「皆……!!無事か……!?」

 

「は……はいダメージとかはないみたいです……」

 

 みんな大体同じ場所に落下したようだ。

 周囲を見回せば、変形したルルイアスの建築物によってこのエリアは円く囲われており、明らかにここで戦えと言わんばかりの空間が広がっている。

 

「……てか何処なのココ……」

 

「!!見ろ……!!空だ……!!」

 

 アラバの見上げる先……そこには海底も天井も無く、青空が広がっていた。

 

 そして空に浮かんでいる黒い何か……触手を縮め、圧縮されてゆくアレは……

 

「遂にボス戦だな」

 

 今の内に残しておいた残り少ないスタミナ補助アイテムを摂取しておく。

 

 黒いアレを中心として空中に八芒星の頂点を尖らせたような形状で複雑な紋様がある魔法陣が出現し、その八つの頂点の内四つから黒いタコの触手が生えてくる。

 ……いや、よく見れば触手から更に小さい触手が無数に生えているなアレ。何本あるんだ?

 

 アレから凄まじいオーラを感じる。言われてみれば確かにリアリティがどうとかそういうレベルじゃないなこれは……!

 そうだ、この威圧感はウェザエモンやリュカオーンと遭遇した時と同じ──

 

 

 

『ユニークモンスター「深淵のクターニッド」に遭遇しました』

 

 

 

「あれが……深淵の盟主……!?」

 

「「七つの最強種」がただのデカい蛸なわけないって事だな。ようやく正体を現しやがった……!!」

 

 それにしたって凄い姿をしているなアレ……神みたいな力を使う奴がただのデカいタコなのは流石に威厳が無いなとは思っていたが……

 

『示せ』

 

「あ、喋った……」

 

『継がれし遺志を』

 

 クターニッドが喋れるのは手記の存在から予測できたが、声があまりにも酷い音質をしている。めっちゃ頭が痛くなってくるからちょっと音量下げて欲しい。

 

「ここ……こいつが……!!クターニッド……!!ここ……怖くなんてない……!!やや……やってやるぞ……!!」

 

 スチューデがめちゃくちゃ震えているが、これ戦力になるんだろうか……いや、戦力としては数えない方が良さそうだな……

 

「パパの仇……!!ぼっ……僕様が討ってや──」

 

「危ない!」

 

「る?」

 

 猛スピードで伸びてきた触手が俺達の中心へと突き刺さる。

 咄嗟にスチューデを掴んでスキルを発動して回避したが、かなりギリギリの回避になってしまった。

 

 俺の筋力があまりにも低すぎるせいで、回避スキル連打移動は少しでも重量が増えると一気に速度が落ちる。

 灼毒馬釘(ソーマ=スタング)(スペリオル)で筋力不足を補うこともできるが、このアクセサリーは起動中に周囲に高温で毒性のある蒸気を撒き散らす。この状況で使えばスチューデが死ぬ。

 

「来るぞ……!!」

 

 太い触手から生えている無数の細い触手がブルブルと震えている。明らかに攻撃の合図だ。

 

「うわーっ!?」

 

「ひぃい!?」

 

 細い触手が一気に拡散し、周囲一帯を無数の触手が埋め尽くす。

 避けることに集中し、スチューデに攻撃が当たらないように振り回しながら回避スキルを連打する。

 

「と、止めてくれぇえ!?」

 

「止まったら死ぬんだがぁーっ!?」

 

 スチューデを抱えたまま戦うことはできない。安全地帯を探さなくては。




τ鯖では最初はどういうわけか栄養ドリンクが流行していたが、後からやってきた主人公はエナドリ派だったので栄養ドリンク派に頻繁に拠点を襲撃されていた
折角作った拠点を破壊されまくった主人公がキレて暴れた結果、気が付いた頃には栄養ドリンク派の大多数が鞍替えしてエナドリ派、もといライオットブラッド派が最大勢力と化した
最終的に島民全員が暴徒化し、孤島に平和が訪れた
その後、ライオットブラッドの名のもとに統一されたτ鯖はその中でも一番戦闘能力が高かった主人公の発案によって建築に力を入れるようになる

主人公は建築するのに邪魔な奴らをボコボコにして人柱にしていたらなんかいつの間にかτ鯖のリーダー的立ち位置になっていた
合法堕ちした暴徒を沢山見てきたのでその辺りの知識は豊富で、数々の闇の服用法もここで身に着けた
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