シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
砕け散った腕を生やしながら腕ごと飛んでいった
残る杯は二つ、そして二つとも一度発動済みなので次の発動で反転が元に戻るはずだ。それまでに両方の杯を破壊寸前まで削っていって、反転解除後即破壊が理想の流れだ。
ぶっちゃけこの形態のクターニッドは反転による撹乱以外はそこまで恐ろしくない。
もしかしたら発動前に破壊したあの杯や、もしかしたらあったのかもしれない切り落とされた四本の触腕で握る四つの杯の中にとんでもない効果のやつがあったのかもしれないが、楽に勝てるならそれでもいい。
「【竜威吹】!!うぉーーーーっ!!」
反転した秋津茜の野太い叫び声と共に放たれた黄金のブレスが丸いのが沢山ついているステータス反転の杯に直撃し、大きなヒビが入る。
心なしか威力が上がっているような……見てない間にレベルが上がったからだろうか?それとも体格が大きくなって肺活量が増えたから?
ブレスの威力に体格が影響するのか検証してみたいが、キャラメイクのやり直しってシャンフロではできないらしい……あ、丁度今、俺の体格小さくなっているじゃん。
「それじゃあ俺も……「超振動咆」!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
「小さくなっても声はでけぇ!?」
うーん……?気のせいと言われたら気のせいかもしれないくらいの差だな。
まあ今ので残る二つの杯のどちらにも十分なダメージを与えられた。後はちょこちょこ削りながら反転するまで回避し続ければ……おっ。
「聖杯が光った!」
「あの聖杯は……ステータス反転か……!!」
ステータスが戻っているか確認……いやわからんわ。
みんなの反応からして戻ったらしい。これで遠慮なくあの杯を破壊できる!
「また反転される前に破壊する!」
「おう!」
機動力の高い俺とサンラクの二人でクターニッドの触腕を登る。
振り落とそうと暴れたり、他の触腕で払い落そうとするのを線で出来ているクターニッドの内側へ潜り込むことでやり過ごしながらステータス反転の杯に接近してゆく。
「おお!クターニッドの内側に入れるのか!」
「揺れるし足場が細いのであまりおすすめはできませんけどね」
「ロデオ・ライディング」と「
「くっ、揺れて動き辛ぇ……!」
サンラクは慣れない体で動きが少しぎこちないが、それでも流石の機動力で空中ジャンプスキルを駆使して後から追い付いてきた。
そういえば胸の大きさは何を基準にして反転するのだろうか?まあそんなこと考えても仕方がないか。
「へいパース!」
「ナイスパース!」
杯をぶん殴ってクターニッドの頭の上に乗ったサンラクの方へと飛ばし、サンラクがそこへラッシュを仕掛ける。
杯を逃がそうとする触腕を鉄鞭で更に殴って動きを止め、サンラクのラッシュを継続させる。
「食らいやがれ!!幸運が戻った
「挟み撃ちーっ!!」
俺の鉄鞭の一撃とサンラクの籠手の一撃に挟まれたステータス反転の杯に大きなヒビが入り、そして砕け散った。
「しゃああ!!ステータス反転の聖杯、破壊完了!!」
「残るは性別反転……追い詰めたぞクターニッド!」
残る一つを破壊しに向かおうとしたその時、クターニッドが激しく体を揺さぶって暴れだす。
流石にもうあたふたしているところを観察している場合ではないと判断したようだ。
「あっ、やべっ!?」
クターニッドが急に暴れたことでサンラクが振り落とされた。
流石にこの高さはヤバい!急いで引き返して空中でサンラクをキャッチ……
「お、重い……!」
「ぶんぶん丸氏!?結構な速度で高度落ちてきてるけどこれ大丈夫なのか!?」
「この飛行スキル重さに弱いので……俺がクッションになれば……へぶっ!?」
あぶねぇ、変な体勢で落ちて危うく死にかけた……しかしこの隙を見逃してくれるほどクターニッドは甘くは無いようで、サンラクの下敷きになっている所に触腕が振り下ろされる。
このまま叩き潰されるくらいならサンラクを巻き込むことになるが
「ステータス反転がなくなった今なら……!」
急いでメニューを操作し、なんとか胴装備だけだが装備が間に合ったサイガ-0が触腕の叩きつけを受け止める。
タンクほど耐久に特化している訳ではないだろうが、いつも重装備なだけあって流石の耐久力だ
「流石だぜレイ氏……!!」
「サンラクさんどいて……」
「あ、スミマセン……」
筋力初期値の俺では人間一人を持ち上げるのも難しいのだ。体が小さくなった分更に筋力が落ちているような気がする……
「体格の変化でここまで影響が出るゲームも珍しいな……お?」
「聖杯が……!」
顔を上げると丁度クターニッドが最後の杯を再び掲げたところだったようで、杯から青い光が放たれる。
「うおっ!?急に体がデカくなった!?」
「や……やった!性別が戻ったー!!」
今ので全員の性別の反転が再び反転して元に戻ったようだ。
急いで防具を再び身に着けてスタミナ補正を復活させる。それに半裸だと落ち着かないからな……
「よーし!身体も戻って動きやすくなったぜ!!早速戦闘再開だ!」
サンラクもいつの間にか鳥頭に戻っている……あの覆面はゲーム開始時に選べるネタ装備の一つだったと思うのだが、何か思い入れがあるのか、あるいは特殊効果でもあるんだろうか?
……よく考えたら俺の被っている犬面もネタ装備だったわ。
「後はあの聖杯を破壊すれば──」
そのセリフを言い終わる前に、突然クターニッドが跳躍する。
「うわあぁぁ!?つ、潰され……!?」
「奴の判定は線にしかありません!間を通れば潰されない……はず!!」
スキルで思考を加速させ、落下して来るクターニッドの持つ最後の杯を見つめる。
杯に重なっている魔法陣の線がクターニッドの動きと共に増えたり減ったりするのを見逃さないようにし、ここから杯への直線の道が現れたその瞬間、地面をフルパワーで蹴って跳躍する。
弾丸の如く直線で跳び上がり、クターニッドの触腕を通り抜け、胴体を通り抜け、少し軌道を修正して更に触腕を潜り……落下する勢いが乗せられた杯にカウンターを叩き込む!!
「もう反転はさせないぞ!「遠当て」!!」
スタミナを殆ど消費して放った一撃に俺の跳び上がるエネルギーとクターニッドの跳びかかるエネルギーが加わり、猛烈な勢いで鉄鞭と杯が激突する。
クターニッドは杯を手放さないように設定されているのかそれとも純粋な腕力によるものか、杯が落下とは反対方向へと吹き飛ばされたことでそちらへ体が引っ張られ、落下の軌道が大きくずれて誰もいない地面に不時着する。
「ああ、また腕が……後は頼みます!」
「サンキュー!任された!」
殴った反動で腕が捥げたので、腕と一緒に飛んでいった鉄鞭を急いで回収しに向かう。
鉄鞭を拾い上げてちょっとステータスを確認する……うーん、今ので耐久値が半分下回ったか。
それでも俺が持っている他の武器より圧倒的に頑丈だから「壊力無双」でもまだ壊れないと思うが、この勝負がどのくらい長引くかだな……
「お、最後の杯壊れた」
鉄鞭の耐久値の心配をしていたらサンラク達が最後の杯の破壊に成功したようだ、
これでまた形態変化すると思うのだが、次はどうなるんだ?
魔法陣がぐにゃりと歪み、圧縮されて黒く変色して滴り落ちる。
ドロドロになったクターニッドが地面に触れると、まるで強酸のように地面を溶かしてゆき、エリアの中央に大きな穴が空いてしまった。
『世界が変わり果てようと根幹は揺るがず』
『されば人は星の海を未だ泳ぐのか……』
『遠く、遠く、遠くまで来た。私は彼女の故郷を知らない』
『私の故郷は星の海と同胞と、彼女の笑みであった』
『この世に在りてされどこの世に在らざるもの』
『我が身に肉はなく、我が身に骨はなく、我が身に血は流れぬ』
そりゃ蛸には骨無いだろと一瞬思ったが、じゃあなんで肉と血も無いのだろうか?
何か意味ありげなポエム。魔法陣で出来た体……本当にクターニッドとは何者なのだろうか?
「!サンラクさん……!!足元……!!」
そんなことを考えていると地面に空いた大穴から黒い線が次々と伸びて地面を這いまわる。
そして一瞬にして地面に無数の魔法陣が描かれた。
『……であれば、私は妄想を事実とし、幻想として生じ、空想より出でて、想像とならん』
『故にこそ──』
突如として魔法陣から無数の魚人ゾンビが出現して包囲された。
物凄い物量に加えて、幽霊船で見たボス魚人ゾンビまで沢山召喚されている。
『故にこそ仮想となりて、我、血肉を求む』
『命脈の波濤に抗え、闘争こそが命の本質故に』
「……つまり、全員ぶっ殺せ……ってことかな?」
包囲されている上にこちらには戦えないスチューデがいるのだ。何かギミックはあると思うが、今は速攻撃破こそが最適解!
「雑魚の殲滅なら任せて下さい。すぅー……」
大きく息を吸い、押し寄せる魚人ゾンビの波に自ら突撃する。
これだけ大量の雑魚モンスター、範囲攻撃で薙ぎ払えたら爽快だろうね!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
バフモリモリのフルパワー「
「スタミナが尽きるまで走り回りながら叫び続けてやるよおぉおおおおおおおおお!!!!!」
スタミナの多さは肺活量の多さ!咆哮の威力も持続時間も大幅にアップするシャンフロの仕様をフル活用させてもらう!
チラッとサンラク達の方を見てみたらドン引きされているっぽいけど気にしちゃいけない。このままぐるっと回って魚人ゾンビを殲滅してやる!
雑魚の殲滅力が高すぎる主人公
そしてクターニッド最終形態の強さはここでどれだけ雑魚を倒せるかが影響する……
はい、最終形態がめっちゃ楽になります。盛り上がらねぇ……!
クターニッド編の終わりが近づいていますが、丁度この作品のお気に入り数が1000、感想数が100を超えそうになってて驚いています。連載開始当初はこれだけの人に読んで反応してもらえるとは思っていませんでした
拙い文章ですが、これからもよろしくお願いします