シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
この連休で沢山書き溜めしないと
武器を再び双剣に持ち替えたクターニッドを格闘で怯ませつつ、「壊身の一撃」を再び発動する。
このスキルは次に繰り出す攻撃のダメージを二倍にする代わりに武器の耐久消費を二倍にするスキルだが、実は重ね掛けが可能となっている。
今の
「どっせい!!」
クターニッドの脚を掴んで動きを止め、持ち上げて地面に叩きつける。
「やるぞネレイス!」
「【
魔法を宿したアラバの大剣が双剣の上からクターニッドを叩き潰す。
これは良いダメージが入ったんじゃな──
ズドドドドドドドド!!!
「うわぁっ!?」
「なっ、なんだ!?急に巨大な触手が!?」
ダメージをある程度与えることが条件だったのか、クターニッドの珠から光と共に巨大な触腕が次々と生え、俺とアラバを押し返す。
「この触手、俺達を海の底に引き摺り込んだ……!」
「最終形態……の、第二段階?どこまでタフなんだコイツは……!」
数十メートルはある船さえも掴んでしまうほどの超巨大な触腕が同時に八本も出現して激しく暴れだす。
どうやらここからは動きの模倣は無しのようで双剣は消滅しているが、それ以上にあの攻撃範囲はマズい。
「うおぉおお!?急に豪快になりすぎだろ!?」
クターニッドが触腕を一本振り回しただけでコロッセオの一角が粉々に粉砕される。
あれが八本……流石にもうスチューデは護り切れない。どうにかして逃がすか、先にクターニッドを倒すか……
「──
その時、遂に「アルマゲドン」の詠唱を終えたサイガ-0が動き出す。
クターニッドの視線がサイガ-0に向き、八本の触腕全て向けられる。
「やれ!レイ氏!!」
「──「アルマゲドン」っ!!」
サイガ-0の大剣が纏う白と黒の螺旋がクターニッドに激突するその直前で一本の触腕がその間に割り込み、「アルマゲドン」を受け止める。
更に残り七本の触腕が白黒の螺旋を包み込むように巻き付いてゆく。
激しいダメージエフェクトが確かにダメージを与えていることを物語っているが、それでも触腕は止まらない。
白黒の螺旋が締め上げられ、絞られ──
ボシュッ!
「そん、な……!」
そして遂に最大火力の「アルマゲドン」が握り潰されてしまった。
しかし完全に無効化したわけではなくダメージは入っているようで、触腕はだらりと地面に横たわって動かなくなる。だがそれがずっと続くとは思えない。
「不発したわけじゃない、ダメージは入っている……だが、あとどれだけ耐えるんだコイツは……!」
勝負はまだ続く……触腕がピクリと動いたのを見てそう確信する。
俺はスチューデに向けて声をかける。
「スチューデ!今の内にあそこから外に出ろ!!早く!!!」
超巨大触腕によって破壊されたコロッセオの一角……そこから遠くに海岸が見えている。そこへ向かうようにスチューデに指示を出す。
「あ……」
「帰りの船を用意してくれ!全員でこの島から生きて帰るには船が必要なんだよ!頼むぞ船長!」
ええい説得は苦手なんだ!なんか適当にそれっぽいことを大声で叫んで足が竦んでいたスチューデを走らせる。
スチューデが走り出したその時、遂に倒れていた触腕が起き上がる。
「ラストスパートだ……カフェインが切れる前に終わらせる……!」
クターニッド戦にはこれまで様々なギミックが存在した。
最終形態だけは正面から殴り合うのが正解という可能性もあるが、やっぱり何か特殊なギミックがあるんじゃないかと思う。無いとしても弱点はどこかしらにあるんじゃないだろうか?
なんかこう、弱点がピカピカ光っててくれたらわかりやすいんだけどな。
「ぶんぶん丸氏、俺は少しやることがある。レイ氏の救助と、作戦会議と……切り札の準備!その間耐えてくれ!」
「任せて下さい!」
「壊身の一撃」を更に重ねる。これで八倍……まだだ、もっと出力を上げるぞ!
クターニッドが触手が二本の触腕で地面を叩くと、クターニッドの巨体が浮き上がる……浮いてるというか、触腕で体を支えているのか。
かなり高い位置に逃げられてしまった。あの触腕を全部破壊するか、遠距離攻撃か……
「或いは、俺も飛ぶかだな」
地面を蹴り、空気を蹴り、クターニッドへと駆け出す。
六本の触腕が観客席を粉砕しながら俺に迫る。
迫力満点ではあるが、それだけだ。俺を撃ち落とすのにはあまりにも遅すぎる。
「そんなんじゃ鳥の一匹も撃ち落とせないぞクターニッド!」
しかし本体へ咆哮を飛ばしながら接近するが、触腕を含めて余裕で数百トンはありそうな巨体でありながらクターニッドはスルスルと軽快に動き回り、咆哮を回避しながら距離を取って来る。
物理法則ガン無視の華麗なステップで逃げ回りながら周辺に甚大な被害を発生させるクターニッド。となると心配なのが……
「ヒィイイイ!!?」
「スチューデ!」
まだ逃げきれていないスチューデに巨大な触腕のうち一本が迫っている。
重力方向を斜め下に変更、落下速度を上昇させてスチューデと触腕の間に着地する。
「な、なんっ……」
「振り向くな!!走れ!!」
目の前に迫る超質量の触腕……だがしかし、それと同時に俺を薄っすらと包んでいた黄金のオーラが目に見えてハッキリと濃くなってゆくのがわかる。
「天覇呪業【
「ラストの「壊身の一撃」、からの……!」
目の前にまで迫った触腕に全力の一発を叩き込む──!
「──「壊力無双」!!!」
あらゆるバフで増やしたスタミナを全て
激突したその直後、鉄鞭と俺の右腕が砕け散り、ポリゴンとなって消滅してしまう。だが──
「……ムンクさん、貴方の武器は最高だ」
目の前まで迫っていた触腕が折れ曲がり、思考加速スキルでも捉えることが困難な速度で跳ね返ってゆく。
当然跳ね返ってゆく先は──
ズドォオオオオン!!!!!
「ホームラン!」
自分の触腕がクリーンヒットしたクターニッドの巨体が傾いてゆく。
それだけでなく、打ち返した触腕の根元から強い光が放たれ、そしてボロボロと崩れ去ってゆく。
「その触腕は消せると……じゃあ、触腕を全部消すことがギミックかな?」
ちょっとスタミナ回復するまで待っててな……クターニッドも怯んでくれて助かった。
チラリとスチューデが走っていった方を見る……どうやら外へ逃げ出せたようだ。
サンラク達もサイガ-0を救助してコロッセオの端の方へと一旦避難したようだ。多分作戦会議とか切り札の準備とかで戻って来るのはもう少し先になるだろう。
「スタミナ回復アイテムもこれが最後か……」
もうインベントリには食べられるアイテムが僅かしか残っていない。「
「この一戦で一体どれだけのマーニが失われたのか……お前を倒して得られる報酬で釣り合うかな?」
さて、スタミナは十分回復した。
クターニッドも起き上がってしまったが、まだまだ時間稼ぎはできる。
「先制点は貰ったぞ。このまま八点いただいてやろうか?」
クターニッドに挑発の意味があるのかはわからないが、一応やってみた。
それのおかげかは分からないがヘイトは十分に稼げていたようで、七本の触腕が振り回される。
「当たらないよそんなんじゃ!」
しかしなんというか、生と死を反転して即死!みたいな最初に危惧したようなことは全然やってこないなクターニッド。
何かしらの理由で能力に制限が掛かっているのか、或いは遊んでいるだけなのか。その辺り多分倒したら貰える真理書に書いてあるのだろう。
「普通に走ってダメならこれ!」
小回りを重視してここまであまり使ってこなかった「フリッカー」連打による高速移動を行う。
まるで瞬間移動をしているようにも見えるその動きに惑わされたのか、明らかにクターニッドの攻撃の狙いが雑になっているし、動きも単調になっている。
「ここ!」
触腕で体を持ち上げたクターニッドの下をスライディングで潜り抜け、背後を取ることに成功する。
クターニッドの背中から生えている触手の根元でアナライシスに使っていた珠が輝いているのが見えた。
「それ、弱点だな?」
クターニッドが振り向くよりも早く「遠当て」を発動して、その珠の内の一つに遠距離から蹴りを叩き込むと強い光と共に珠が爆ぜた。
そしてそれと繋がっていた触腕がボロボロと根元から崩れて消えてゆく。
「攻略法みーつけた!」
流石に一人でアレを全部破壊するのは大変だが、今の俺は一人ではない。
視界の端にチラチラと映っていたけれど、ガッツリ見たらクターニッドにバレそうだったから見てないふりをしていた高速移動する影の主が上空から奇襲を仕掛ける。
「墨をブチまけろ!」
スパークを帯びたエネルギー弾が空から降り注ぎ、クターニッドの頭部に命中する。
まるで透明の道を滑るかのような挙動で空を駆けるのは……何だアレ?ロボ?
いや、ロボを……着ている?合体しているのか?
「えーっと、サンラク?さーん!背中の珠を破壊すると触腕を消せまーす!」
「了解!聞こえたなルスト!」
「……すごい、とてもすごい、とてもマーベラス……!」
「聞こえてないっぽい」
「えー……よーっし!全員!プランBだ!!」
シャンフロのロボを見てルストのテンションがおかしなことになっている。
そんなにロボが好きなのか。まあ側にモルドもいるし大丈夫だろう。
空を駆けるサンラクの首の動きでやろうとしていることを何となく理解し、俺は地上で待機する。
「正々堂々一対一!!」
その言葉が作戦の合図なのか、サンラクを見上げるクターニッドの背後へみんなが回り込み、シークルゥとアラバがクターニッドの膝の裏へと狙いを定める。
「【タケミカヅチ】!!」
「【
シークルゥとアラバの魔法がクターニッドの膝の裏に不意打ちで叩き込まれたことでクターニッドの重心が崩れる。
「正々堂々一対一」の裏返しは「卑怯上等袋叩き」と言ったところだろうか?ここまで散々反転に苦しめられてきたからか、こちらも言葉を反転させて意趣返しというわけか。
更にサンラクが上空から放った大砲らしきものがクターニッドの上半身に命中し、巨体が後ろへと倒れてゆく。
ファンタジーというかSFな武器だな、あのスーツとか銃とか大砲とか、ウェザエモンの報酬のヤツなのかな?やっぱりちょっと羨ましい。後で借りてみようかな?
「行きます……【
サイガ-0のマジックスクロールから放たれた魔法によって大地が揺れ、地面がひび割れる。
そこから大地をぶち抜くかのように土の拳が出現し、倒れ込もうとしていたクターニッドの背中を殴りつけ、空高く打ち上げる。
やっぱりクターニッドの物理演算はなんかおかしい。攻撃する時は触腕を重い物として扱えるけど、移動が遅くならないようにそれ以外では軽い物として扱われているのだろうか?
「いいねぇ、狙いたい放題だ!俺は右三つをやります!」
「外すんじゃないぞ。おおたけ丸」
「ぶんぶん丸です!」
地上から背中の珠に目掛けて次々と放たれるルストの魔力の矢。俺もこのチャンスを見ているだけでは終わらせない!
「砕け散れ!!「
蠍素材で繰り出せる最後の「
ルストの矢は左側の珠三つを正確に射貫き、爆散させた。これで触腕は全部消せた!
「地に墜ちな!クターニッド!!」
全ての触腕が崩壊したクターニッドへ更に上空からサンラクが迫り、双剣を合体させて大剣として振り下ろす。
重たい一撃を叩き込まれたクターニッドの落下が加速し、背中から勢いよく地面へと叩きつけられる。
サンラクからも激しいダメージエフェクトが出ているが、ほぼ地面と垂直に落下している状態から体を持ち上げ、地面スレスレで急カーブして地面に叩きつけられるのを回避した。見ててヒヤヒヤするなアレ。
「ラスト頼むぜ秋津茜!ぶちかませ!」
「【竜威吹】!!わぁぁぁぁーーーーっ!!!!」
印を結び、大きく息を吸って準備をしていた秋津茜がその声を合図に黄金のブレスを解き放つ。
地面に叩きつけられて大きな隙を晒していたクターニッドはそのまま閃光に呑み込まれ──
(漫画版から原作版に切り替えたタイミングのせいでスチューデを逃がし忘れていたのは内緒)
漫画版だとスチューデもクターニッド戦で活躍するのかな?単行本次巻を楽しみに待つことにします
また武器と腕をぶっ壊している主人公。主人公が別のゲームで鍛えた腕を犠牲にすることで胴体への反動ダメージを最小限に抑えるテクニックが地味に発揮されているという謎の設定があったり
ほぼ主人公の視点で進んでいるのでサクサク話が進んでいますが、それでもクターニッド編は長い……えっ、ここからもっと長いボス戦が増えるんですか!?
実はこの後のクラン同士のいざこざに主人公をどう巻き込むか考えていなかったりする……主人公を入れるタイミングをミスると原作キャラの活躍がガッツリ奪われたり原作キャラにショボい負け方をさせたりすることになってしてしまうから難しい……