シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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今年最後の更新となります
来年もよろしくお願いします


暴徒と青

 閃光が収まり、静寂が訪れたコロッセオ。

 ずっと感じていた威圧感も消え、クターニッドだったものが崩壊してゆく。

 

「お、終わったんだよな……?」

 

 これでまだまだ余裕あります!とかやられたら俺はキレるぞ。それはもうゲームじゃないだろって運営に文句言ってやるぞ。

 

 崩壊する肉塊から何かが這い出し、空中へと浮かび上がる。

 それはここまでに何度か見た魔法陣であり……恐らくはクターニッドでもあるもの。

 

 ……まあ、何でも反転できるやつがアレで死ぬわけがないよな。この場合は相手が負けを認めてくれるかどうかなんだよな……頼む、これで終わりであってくれ……!

 

『生命の輝き、確と見届けた』

 

 不思議なことにあの魔法陣に目は無いのに視線を感じる……やっぱり脳に直接なんかされているんだろうなコレ。視線が苦手だから凄くぞわぞわする……

 

『連なる二つの奇跡。相反することなく、共に在る事……喜ばしい』

 

 二つの奇跡?何のことなんだ?話が難しくてよくわからん……二つ……何が二つなんだ?プレイヤーとNPC?いやそんなメタ的な話ではないと思うのだが……

 いや待てよ、さっきクターニッドは一つ目の奇跡とか二つ目の奇跡とか言ってたな……え、本当にプレイヤーとNPCのことを指している?そういやウェザエモンも二号計画(セカンドプラン)とか言ってたし……プレイヤーとNPCには何か大きな違いがあるのか?プレイヤーは死んでもリスポーンするのには何か設定がある?

 

『遠く、遠く……遠くへ来た。星の海はもはや遠く……されど、見上げた先のあの海こそが故郷である』

 

『星の大海を征く旅人……滅べどもその旅は継がれ続く……人よ、偉大なる祖を持つ栄誉を誇れ』

 

 何となく分かっていたことではあるが、恐らく人類は別の星からこの星へと宇宙船か何かでやってきたのだろう。

 んで、クターニッドはその宇宙船の中で生まれた実験生物的な……こんな生物作れちゃうって昔の人は一体どんな技術力を持っていたのか。

 

『人よ、力を示せし人よ。その旅路の一助を授く』

 

「よっしゃ報酬キタ!」

 

 あ、報酬くれるんだ。じゃあやっぱりこれで勝利なのかな?

 

 クターニッドが変形するのと同時に、俺達の前にも八つのカラフルな光が出現する。よく見ればそれはクターニッドが使っていた杯のミニサイズだった。いや、俺達からしたら通常のサイズなんだが。

 あ、アラバの前にも……エムルとシークルゥには無し?モンスター扱いだからか?

 

『我が八の光輝、その断片を一つ授けよう……』

 

 これ全部とはいかないらしい。しかし全部で八つとは、やっぱり封将を何とかしていなかったらこの四つも戦闘中に使われていたのだろうか?

 

 杯の効果は……性別、ステータス、視界……使われる前に壊したこれはダメージと回復の反転か……え、これ使われていたら俺即死してたのでは……?

 そして残りは近距離無効、遠距離無効、物理無効、魔法無効……封将の能力だ。これ使われていたらかなり面倒だったな……

 

 しかしどれか一つだけか……どれも魅力的だが、全てに何かしらのデメリットが存在している。

 それを考えると……一番デメリットがマシで実用性が高そうなのは性別反転か?女性専用装備の着用も可能になるし、変装に有用だと思われる。その上体格の操作は戦法をガラリと変えられるから十分アリだ。

 

 しかしステータス反転も気になる。これスタミナと入れ替えで何かしら悪さできそうなんだよな……入れ替えた瞬間スタミナが10になるけど、スタミナ0でも動けるスキルがあるしな。デメリットは大きいけどこれも十分にアリだ。

 その他は意味が無いかデメリットが大きすぎて俺には扱えない。一時的に無敵になってもその後即死するのは流石に……

 

「タコさん! これ三つくらい貰えないんですか!!」

 

 どちらにしようか悩んでいると秋津茜がクターニッドに交渉……おねだり?を始めた。

 クターニッドは会話が可能とは言え、こういう交渉に答えてくれるものなのだろうか?システム的に報酬は一つと決まっていそうなものだが……

 

『二つ授けよう』

 

 増えちゃったよ。

 あ、マジで二つ選べるようになってるじゃん。それじゃあありがたく性別反転とステータス反転の両方を頂くとしよう。

 

「なぁ……」

 

「ん?」

 

 ごちゃごちゃになっているインベントリを整理していると、サンラクが何かに気が付いたのか、俺達に問いかける。

 

「誰かさ、ユニークモンスターを倒したアナウンス……聞いたやつ、いるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぞわり

 

 

 

 

 

 その時、「青色」が蠢いた。

 

「……これ、ゲームのラストで崩壊する建物から脱出するタイプのヤツ?」

 

 どこからか湧き出た不気味なほどに青一色の何かがコロッセオに広がってゆく。青が触れた瓦礫が一瞬で青に染まり、青の中へと呑み込まれてゆく。

 マジかよ、ここに来て急に脱出ゲースタート?これで死んだらどう言う扱いになるんだ?

 

『忌々しい始源の亡霊め』

 

 なんか世界観的に重要そうなことをクターニッドが言っているが、今はそれどころじゃない。

 

『人よ、この場は再び深淵へと沈む……危機は近い、ゆめ忘るることなかれ』

 

 あ、なんか視線が誘導されて……何でかは知らんがあっちに行くのが正解な感じがする。こんなことまで可能なの?

 

『行け、旅は続く……この世界に生きる人よ、バハムートを見つけ出せ』

 

現在(いま)は継がれし「人」のものである、しからば抗い戦うのもまた現在(いま)を生きる者……』

 

 セツナも言っていたが、そのバハムートとやらはそんなに重要なものなのか?

 なんかこう、もうちょっとヒントとか……ああもう青が来ている!逃げないと!

 

 あの青色が何なのかは知らないが、荒波のように暴れ狂い迫って来るそれに捕まれば即アウトだろう。

 先回りまでして来るそれを触れないように飛び越え、追い付かれないように走り続ける。

 

 俺はスタミナがあるので余裕だが、他のメンバーはそうはいかないらしい。ならば……

 

「ぶんぶん丸氏!?」

 

「ちょっと試したいことがある」

 

 俺は立ち止まり、振り返って青の中へと飛び込む。

 勿論触れはしない。スキルを使って浮遊し、水飛沫のようにどんどん跳びかかって来る青を避ける。

 

 こいつらが生き物なら逃げるあいつらよりも直ぐに捕まえられそうな距離の俺を狙うのではと思ったのだが、半分正解と言ったところか。

 量が膨大すぎる。青のヘイトは……これにヘイトという概念があるのかは知らないが、恐らく俺に集中している。しかし一部はまだみんなを追いかけ続けている。

 

「ぶんぶん丸……!」

 

「ねえあれ大丈夫なの!?」

 

「えーっと、ここは俺に任せて先に行け!ってやつです!」

 

「それ死亡フラグってやつでは!?」

 

 見た所向こうに行った青の一部の侵食のスピードはだいぶ落ちているようなので、俺がここに残ったのは無駄ではなかったらしい。さて……

 

「来いよ「青色」。俺はそう簡単には食えんぞ?」

 

 最早波を超えて壁と化した青が四方八方から迫り来る。

 「量律翻弄(ワンダーランドトリップ)」で体を小さくして被弾面積を最小限に……これでもまだ足りない!もっと小さく!

 

「早速使わせてもらうぞ……!」

 

 インベントリから「青色の聖杯」を取り出して掲げれば俺の姿が更に小さな幼女となる。邪魔な防具を外し、小さく軽くなった体で空気を蹴って跳ね回る。

 

 青がうねり、俺を捉えようと濁流の如く押し寄せる。

 呑み込まれた瓦礫が一瞬で青に染まり、青の一部となって青の嵩が増してゆく。

 

「コイツは良い、もう少し時間稼ぎをしてから合流を……!?」

 

 地上で青が渦を巻き、火山の噴火のように勢い良く青の飛沫が打ち上げられる。

 限界まで体を小さくしてその隙間を通り抜けようとするが、物理的に回避できるだけの隙間が無い。

 

 仕方なく左腕で受け、即座に肩の関節を捩じ切って左腕を分離。千切れた左腕が一瞬で青に染まり、青の濁流の中へと落ちてゆく。

 そうだろうとは思っていたが、マジで即死っぽいなあれ。

 

 千切れた腕を再生、また犠牲にして再生……それを暫く繰り返していたが、そろそろ限界だ。

 

「もう無理か、撤退!」

 

 斜め上へ高速で落下し、みんなが走っていった方向へと向かう。

 真下では青がどんどん集まってきており、重なり合ってどんどん波が高くなってきている……うーん、ギリ追い付かれそう?

 

 あんなのが外に漏れだしたらこの世界が滅んでしまうだろう。だからクターニッドは海の底でこれを封印していたのか。

 

「でもやられっぱなしも気に食わん」

 

 倒せる相手ではないだろうが、ちょっと押し返すくらいなら……!

 

「「量律翻弄(ワンダーランドトリップ)」反転、「魔勁修羅(マヘーシュヴァラ)」、「英雄律(ヒロイック・ルール)」……!!」

 

 反転後の小さな体で発動したからか、影を纏った姿もいつもより小さいな。まあ男の姿でもアレは倒しきれるとは思えんが。

 

 自分自身を踏み台にするかの如くどんどん高さを増して一直線に迫り来る青に狙いを定める。

 こいつもいつかプレイヤーがなんとかしなきゃいけない時が来るのだろうか?その時は数百人規模のレイドボスになるのかな?

 

 ブレスをチャージ……こうしている間にもどんどん青が積み重なり高くなっている、その姿はまるで急成長する巨木のようだ。

 俺を逃さんと枝を伸ばすように広がりながら迫る青に溜め切った黄金を解き放つ。

 

「海の底にぃ……帰れ!!!!!」

 

 黄金の波と青の波が正面から激突する。

 黄金が青を焼き払い、押し返すが、青もそれに負けじと更なる質量を以ってして黄金を呑み込み、距離を詰めて来る。マズい、スケールが違いすぎる……!

 

 流石にこのレベルの化け物を一人でどうにかするのは不可能か……そう思ったその時、どこからか飛んできた謎のエネルギー波が黄金に集る青を吹き飛ばす。

 

 視線を向ければ、そこにはあの……えー、封将の……なんだっけ?クリオネっぽいモンスター?がいた。

 確かサンラクが倒したはずだが……まあクターニッドが蘇らせたとかそんな感じなんだろう。細かい考察は後!

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

 更に気合を入れて大声を上げる。

 これまでの人生でこれだけ全力で叫んだことなんて一度も無いんじゃないかと思うほどに気合を入れて叫んだことで放たれる黄金の奔流がより太くなり、青を徐々に押し返してゆく。

 大声を出すということに慣れてないんだよな……今度カラオケソフトでも買ってみようかな?

 

 そして遂にブレスが地上で荒れ狂う青に着弾し、激しい爆発と共に黄金の波が広がり、着弾地点周辺の青と瓦礫が焼き払われて吹き飛んで行く。

 しかし大したダメージにはなっていないようで、大きく空いた穴も一瞬で青で染め上げられてゆく。うーん清々しいほどに無理ゲーだなこりゃ。

 

 今の内に逃げようと空高く飛び上がったところで島の四方の塔が輝き、その直後に海から現れたとんでもなく巨大な触腕が島全体を覆い尽くす。

 そしてそのまま島を丸ごと海の中へと引きずり込んでゆく……やっぱりクターニッドって規格外の存在なんだな……

 

 ルルイアスは「青色」と一緒に再び海の底へと消えていった。これでこのユニークシナリオもおしまいかな?

 さて、俺も帰るとするか──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ、サンラク達は!?スチューデは!?」

 

 慌てて周囲を見渡し、空の彼方へとぶっ飛んでいく帆船を見つけて急いでそれを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『深淵のクターニッドは再び倶なる天より別たれた』

『狂える大群青は再び封じられた』

『ユニークシナリオEX「人よ深淵(ソラ)を見仰げ、世界は反転(マワ)る」をクリアしました』

『小さな海賊は、明日を恐れぬ勇気を得た』

『ユニークシナリオ「深淵の使徒を穿て」をクリアしました』

『称号【深淵からの生還者】を獲得しました』

『称号【トゥルー・シーカー】を獲得しました』

『称号【群青からの生還者】を獲得しました』

『称号【継承の証明】を獲得しました』

『称号【道は違えど心は同じ】を獲得しました』

『称号【一目置かれたアウトロー】を獲得しました』

『アイテム【青色の聖杯】を獲得しました』

『アイテム【藍色の聖杯】を獲得しました』

『アイテム【表裏の瑠璃(ウルトラマリン)】を獲得しました』

『アクセサリー【深淵の警鐘】を獲得しました』

『アイテム【世界の真理書「深淵編」】を獲得しました』

『ワールドクエスト「シャングリラ・フロンティア」が進行しました』




ギリ年内にクターニッド戦が終わりましたが、クターニッド編はもうちょっとだけ続きます

「群青からの生還者」……要するに「ここは俺に任せて先に行け!」した上で狂える大群青から逃げて自力でルルイアスから生還したプレイヤーが貰える称号。特殊な効果はないが、このルートで脱出するとクターニッドからの好感度が大きく上がる
表裏の瑠璃(ウルトラマリン)」……ルルイアス滞在中の全体的な評価が(パーティ全体で)一定以上かつクターニッドからの好感度が一定以上で更に狂える大群青との野生値が一定以上という条件を満たしたプレイヤーが貰える報酬。クターニッドの反転の力が宿っている瑠璃であり、素材や触媒として使用することでそのアイテムの性質を反転させることが可能になる。ベターな使い道は呪いの装備を反転して祝福の装備にすることだが……
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