シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします


暴徒と生還

 どういう原理かは知らないが勢い良く飛んでいった船を追いかける事数分。

 途中スタミナが切れそうになって海に落ちたりもしたが、なんとか船まで辿り着いた。

 

「とうっ!」

 

 ジャンプして船の甲板に飛び乗れば、先に脱出したみんながそこにいた。

 スチューデも無事だったようで、俺の姿を見て口をあんぐりと開けている。

 

「ただいま」

 

「うわぁ!?海から幼女が……って、ぶんぶん丸氏!?無事だったのか!」

 

「ちょっとあの青いのと戦って時間稼ぎしていたらみんな先に帰っちゃったからここまで気合で飛んできました」

 

「戦ったって、勝てたの?」

 

「いえ、流石に無理でした。多分アレはレイドボスかステージギミックで一人じゃどう足掻いても無理っぽいです」

 

「ご無事で何よりです!」

 

 この船はフィフティシアに向かっているらしい。到着までしばらく時間がかかるだろうし、横になって休ませてもらおう。

 何というかもう……めちゃくちゃ疲れた……

 

「あ゛あ゛あ゛~……もう、もう無理、カフェイン切れた……今すぐログアウトしたい……」

 

「燃え尽きてる……」

 

 とんでもない長期戦だった……ライオットブラッド・トゥナイトの持続力が無ければ俺は途中でガス欠を起こしていただろう。

 そして今、完ぜんにカフェインがつきた。もうムリ、おきあがるのもつらい……あばばばば……

 

 なんかあらばがいってる……どわーふ?がんだっく?

 あ、あくしゅ……ぐえっ、せなかたたかないで……

 

 ねれいすちゃんどうしたの?え?よはんなとゔぃんせんとにおわかれのあいさつ?えらいねぇ。

 ほら、ふたりともさよならしなさい……ん?

 

 

 

 

 

 

『シャングリラ・フロンティアをプレイされている全てのプレイヤーの皆様にお知らせ致します』

 

「運営からのアナウンスだ、珍しい」

 

 ニトロ薬局フィフティシア本店。

 現在クラン「ニトロ製薬」の中でも有力な錬金術師が集まり、より優れたアイテムを作るための技術の交換や必要な素材のリスト化、それを集めるメンバーの選定などなど、様々な目的があって度々行われる会議の真っ最中である。

 

 本当は最近クランに入ったばかりでありながらもユニークモンスターの撃破までやってみせたとあるクランメンバーにも参加してもらう予定だったのだが、どういうわけかログインはしているのにメールバードには応答しない状態が一週間続いるため不参加となっている。

 

「またユニークモンスターが討伐されたってアナウンスだったりしてな!」

 

「もしやまたぶんぶん丸さんが……?」

 

「いやいや流石にそれは……」

 

「最近連絡つかないし、それくらいデカいことをもしかしたらやってたりするかもねぇ」

 

 そんな冗談を言い合いながらも一旦会議を中断して運営のアナウンスに耳を傾ける。

 シャンフロで運営からのアナウンスが出る主な理由はアプデのミスだが、気が付いたら修正されていたりするのがシャンフロだ。そこまで気にするような内容でもないだろう……そう思っていた。

 

『現時刻を持ちまして、ユニークモンスター「深淵のクターニッド」の撃破を確認いたしました。撃破者はプレイヤー名「ルスト」、「モルド」、「秋津茜」、「サンラク」、「サイガ-0」、「ぶんぶん丸」の六名です。さらにユニークモンスターの撃破に伴い、ワールドストーリー「シャングリラ・フロンティア」が進行しました』

 

 頭を抱える者、自分の事のように喜ぶ者、ずっこける者、開いた口が塞がらない者、突然のアナウンスに慌てて会議室に駆け込んでくる者……反応はそれぞれ違うが、兎に角大騒ぎである。

 

「……えー、緊急会議!このままだとぶんぶん丸くんが他のクランに引っこ抜かれるかもしれないから、対策を考えようの会!!」

 

 会議は踊る。

 

 

 

 

 

◇◇

 

【NPCが】ぶんぶん丸氏捜索掲示板 Part.4【協力してくれない】

 

 

345:ギガネ

マジでどこにいるんだあの人

 

346:チキンカツ太

裏路地を移動しているという噂があったけど、最近は空を飛んでいるという報告もあるしマジで見つからん

 

347:ノブナガ

持ってるスキルがライブラリでも把握しきれてないってどんなプレイスタイルなんだろう?

 

348:怪しい者

フォルティアンの闘技場での目撃情報だと、翼が生えてて若干空中に浮いてて瞬間移動するらしい

そして相手の首が突然ポロリして死ぬらしい

 

349:そうだ水

???

 

350:ニッポン刀

何をどうしたらそんなスキルが生えるの……?

 

351:たかしかし

魔法じゃないの?

 

352:怪しい者

目撃者が少ないしマスク被っているからハッキリしてないけど、詠唱はしてないらしいから恐らくスキル

 

353:ギガネ

あのマスク怖すぎ

 

354:ウ~ロン・チャ~

うちの実家の犬が俺に見せる表情にそっくり

 

355:末代の恥

お前の実家ヘルハウンド飼ってるの?

 

356:ウ~ロン・チャ~

柴犬だが?

 

357:ニッポン刀

あの武器も気になるよね。斬ってもダメージが無くて状態異常?で時間差で死ぬ剣

 

358:第Q

鍛冶師スレが大騒ぎしているアレか

 

359:ニッポン刀

闘技場を粉砕したあの必殺技とか、その必殺技の後に金色の剣身がにょきにょき生えるアレとか、流石に鍛冶師が作れるやつじゃなくね?

 

360:たかしかし

ユニーク?勇者武器?

 

361:怪しい者

金色と言えば勇者武器だけど、噂では水晶巣崖で発見された金色の蠍の素材なんじゃないかという説もある

 

362:ニッポン刀

下手なユニークよりヤバいモンスターの素材かー……

 

363:末代の恥

もう実質ユニークだろそれ

 

364:トpppッポギ

鍛冶師スレが希望と絶望で混沌としてて笑っちゃった

水晶巣崖チャレンジ俺も参加してみたけど瞬殺されたわ

 

365:チキンカツ太

あれは酷い事件だったね……

 

366:猫伸ばし全一

三十人参加して突撃して五秒で壊滅したんだっけ?

 

367:ニッポン刀

一歩踏み込めば蠍の群れにぶち殺されるからな

あれは飛べなきゃ話にならんわ

 

368:ギガネ

で、その飛行スキルの持ち主が見つからないと

 

369:剣>ペン

あんな明らかにヤバいオーラを発しているのに見つからないのが不思議だよな

 

370:マッチョラテ

あの人が滞在している街は明らかにNPCの挙動がおかしくなるからそれでおおよその位置まではわかるんだけどね

 

371:でんでんむしむし

NPCが名前を聞くだけで怯えて追い返されるって何したの?

PKでもそこまでの反応はされないだろ

 

372:末代の恥

何かしらのユニークモンスターの呪い説がある

 

373:ニッポン刀

リュカオーンやジークヴルムの呪いをつけているプレイヤーはそこそこいるけど、あんな反応はされてないよな?

 

374:ギガネ

例の呪い二つ持ちの珍鳥もNPCにビビられはするものの会話できてるらしいからな

 

375:剣>ペン

ファッ!?

 

376:怪しい者

クターニッドが倒された!?しかもまたぶんぶん丸だ!!

 

377:さくさん☆なとりうむ

サンラクと合わせて中身運営説がガチっぽくなってきたな……

 

378:末代の恥

これ他のユニークモンスターのことも知ってそうだな

全力で捜索しなければ

 

379:ギガネ

珍鳥とはフレンドなのか?

だとしたら喋るヴォーパルバニーの情報も持ってそう

 

380:ニッポン刀

その逆もありそうだし、サンラク氏捜索掲示板との協力も視野に入るな

 

381:†ドヤ顔ダブルダガー†

ラメリンちゃんとどういう関係なのか、ひっ捕らえて吐かせなければならぬ

 

382:怪しい者

ぶんぶん丸とサンラクのインパクトが強すぎてサイガ-0がメンバーにいることに誰も気づいてない

 

383:ノブナガ

あ、マジだ。なんでアタックホルダーが?

 

384:たかしかし

他の三人誰?

 

 

 

 

 

 

 吹っ飛びかけてた意識が顔面に着地してきたハヤブサによって強引に引き戻される。

 青い空と白い雲を眺めて波の音に耳を澄ましていたら、突然鳥の尻がドアップになって耳元でバタバタ羽ばたかれて爪が顔面に食い込んできたら嫌でも目が覚めるというものだ。

 

「な、何事……?」

 

 どうやら野生の鳥ではなくメールバードのようで、メッセージが表示される。

 

「あー、リーダーから……またクランに黙ってユニークモンスター攻略しちゃったよ……」

 

 でも今回のは完全に事故である。話そうにも話せない空間に隔離されていたのだから許してほしい。

 

 メールバードの内容はシンプルにユニークモンスター撃破に対する賞賛と呼び出しだった。

 それに対して謝罪と流石に疲れたので呼び出しにはまた明日答えるというメッセージを書いて返信する。

 

「あ、もう港に着くじゃん」

 

 ボーっとしている間にフィフティシアの港までもうすぐという所まで来ていたようだ。

 

 フィフティシアからどんどんハヤブサが飛んで来てはサンラクの頭に着地しようとして、エムルちゃんがそれを阻止するかわいい攻防を繰り広げているのを横目にこれからどうするかを考える。

 とは言っても新大陸進出とか次のユニークモンスター撃破とかそういうのじゃなくて、今俺が聖杯で性転換しているのをどうするかだ。

 

 これ死ぬまで元の性別に戻らないんだよな。変装するために貰った聖杯なのだから、完璧な変装用装備を手に入れるまではこの姿を他のプレイヤーに見せたくないのだ。

 この姿のまま港に帰り、そこにいたプレイヤーに目撃されて性転換のことを広められるとめんどくさい。

 

「何とかして誤魔化すしかないか」

 

 船が港に到着し、みんなが船から降りていく。

 

 ここで「量律翻弄(ワンダーランドトリップ)」を発動!身体を男の時と同じくらいまで大きくする!

 そしてこの状態でメニューから装備一式を装備すれば……!

 

「……なんだろう、手足の長さが足りていない……頭がデカい気がする……」

 

 まあギリ誤魔化せる範囲だろう。

 しかしこのスキルには制限時間がある上に気が緩むと体の大きさがブレる。なのでここからはスピード勝負!

 

「とうっ!」

 

 甲板から大ジャンプ、そして着地!

 なんか知ってる人も知らん人も集まってバチバチやっているところの側に着地してしまったことで視線が集まってしまうが、この中に直接俺に用事がある人はいないだろう。多分。

 

「君は……」

 

 声も反転しているので返事をしてはいけない。赤髪の女性プレイヤーを無視してその場から走り去る。

 

 裏路地に飛び込み、ぶつからないようにスルスルと駆け抜ける。

 もうフィフティシアの裏路地のことは大体把握している。このルートを通れば……

 

「到着」

 

 ニトロ薬局フィフティシア本店の裏口から中に入り、クランメンバー用の共用ベッドが置いてある部屋へ走らずに急いで向かう。

 

「よし、リスポーンポイント更新っと……」

 

 ベッドで横になり、ここでリスポーンするように設定する。更新せずに死んでたらルルイアスで復活していたのかはちょっと気になったが、流石に試す気になれなかった。

 

 さて、後は性転換を解除するだけ。というわけで……

 

「ぐえっ」

 

 アクセサリースロットから釘を外してリジェネ効果を消失させた瞬間、猛烈な勢いで減少するHP。

 即死亡からのリスポーンを果たし、性転換が解除されていることを確認してログアウトした。

 

 さて、寝るか!




裏路地にやたらと詳しい主人公
裏路地に逃げ込んだ主人公を捕獲することは困難を極める

これでクターニッド編は完結となります。明日幕間を投稿して、期間を開けてから続きを投稿していきたいと思います。
最近忙しいので投稿間隔がかなり開いてしまいそうですが、エタらないように地道に続けていきたいです
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