シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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ノックアウト勝利が存在するスポーツゲーム好き


暴徒と素材集め

 栄古斉衰の死火口湖は今はもう活動を停止している火山の火口に水が溜まり、湖と化したエリアなのだという。

 湖の底とか気になるが、既にいろんなプレイヤーが挑んでみて水圧で潰れているか息が続かなくて窒息するかの二択だったらしい。STMとVITに相当厚く振るか、何らかの乗り物とかスキルとか魔法とかが無いと底を見ることはできないのだろう。

 

 そんなことより今は鉱石だ。火山内部にてランタンで周囲を照らしてツルハシを振るう。ゲーム的な都合なのか無くても暗闇で目が見えるけど、やっぱり明るい方が見逃しが少なくて済む。

 

 以前よりもスタミナが増えたのでツルハシを振る効率は上がっているのだが、やはりSTRが圧倒的に不足している感じがする。

 もっと軽くて振りやすいツルハシとか無いだろうか。ツルハシが軽くていいのかはわからないが……あ、そうだ。

 

「ツルハシ使わなくてもよくね?」

 

 インベントリに入れっぱなしだったアイアンレイピアを取り出す。ちょっとこれを作った人には申し訳ないが、武器として使うことは今後あんまり無さそうなのでここで使わせてもらおう。

 

「よーく狙って……「ドリルピアッサー」!」

 

 アイアンレイピアの切っ先が鉱脈に触れると、ゴリゴリと大きな音を立てて渦巻くエフェクトが鉱脈を削っていく。

 エフェクトが消えると同時に鉱脈から鉱石がポロポロと転がり落ちてきた。

 

「狙い通りだな……壊れやすい物の採掘には使えないだろうけど」

 

 俺は一つも見つけられなかったが、四駆八駆の沼荒野では化石が採掘できることがあるらしい。ただDEXやTECが高くないと上手く採掘できないようで、そういうアイテムはこういう雑な掘り方だと出てこないか出てきた瞬間に壊れてしまうだろう。

 

 リキャストタイムがあるので連続ではできないが、リキャストタイム中はツルハシを振るえばいいのだ。

 そういえばツルハシも武器として装備可能なんだよな。効率よく採掘できるツルハシを鍛冶屋で作ってもらってもいいかもしれないし、振り続けたらツルハシ用スキルとか出てくるのかもしれない。

 

「白色鉄鉱……銀色とは違うのね。赤とか青とかもあるのかなこれ」

 

 十分な量の鉱石を確保して、火山内部の探索を続ける。

 ここまで何度かモンスターと出会っているが、未だにポイズンリザードには出会えていない。やはり乱獲されているのだろうか。毒武器の素材にも使えそうだし、少なくとも1体は狩っておきたいのだが……

 入り組んでいて視界もあまり良くないし、なんかこう、レーダーとかミニマップ的なものがあればよかったのだが、そういうのは流石に魔法の分野だろう。

 ……いや、やってみたら案外スキルとしてエコーロケーションを習得出来たり?

 

 それは一旦置いといて、数十分歩き続けてようやく蜥蜴のようなモンスターを発見することができた。蜥蜴と言っても現実のオオトカゲよりもさらにデカく、ワニくらいの大きさはある。

 姿勢が低く、「フルパワースイング」を当てるのは難しいだろう。そしてこいつがポイズンリザードだとしたら毒攻撃をしてくるはずだ。

 

「おっと」

 

 蜥蜴の噛みつきをバックステップで回避しながらグレーブレードを顔の側面を切り裂く。しかし鱗に阻まれたのか表面を掠っただけで大したダメージになっていないようだ。

 

「しっかり腰を入れた攻撃じゃないと通らないか……」

 

 仕方ないので「フリースケーティング」を発動する。狭い洞窟内で使用すると思いっきり壁に激突して死ぬ可能性があるのだが、そこは気合で何とかするしかない。

 

 回避モーションで加速して物理演算を利用してむりやりダメージを出す奥義、その名も物理演斬……きちんと物理演算が仕事しているゲームなら高い所から飛び降りたり、馬に乗って突撃したり、爆風で吹き飛んで体当たりしたりと、あの手この手でダメージを稼ぐことができるのだ。

 

 蜥蜴の噛みつきをくらわないように側面に張り付いて左右に往復しながら剣を振るう。うーん硬い。流石に火力不足が深刻になってきたな。

 

「このままじゃスタミナが……そうだ、スタミナポーションを試してみるか」

 

 お試しで買っておいたニトロ薬局のスタミナポーションを試しに飲んでみると、その効果は直ぐに発揮された。自然回復とは別にじわじわとスタミナが回復するタイプだったようで、「フリースケーティング」のスタミナ消費と拮抗してくれている。

 

「これはいいな、暫くはあの店にお世話になりそうだ!」

 

 それから5分ほどかけて蜥蜴の撃破に成功した。ドロップアイテムを拾って確認してみるとちゃんとポイズンリザードだった。

 

「このままだと毒武器作っても刃が通らないとかもあり得そうだな……防御貫通系スキルも必要か……」

 

 後でスキル秘伝書にいいのが無いか確認しに行かなければ。それと秘伝書を買うのにも金が要るし、もっとポイズンリザードを狩るとしようか。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 千紫万紅の樹海窟は太陽の光が届かない洞窟であるにも関わらず、光を放つ苔によって常に明るさが保たれており、本当にここは洞窟の中なのかと言いたくなるほどの樹海が広がっている。ここまでの中で一番ファンタジーしているエリアだ。

 ここに生息しているモンスターは大体虫型であり、当然のように巨大である。人によっては発狂するんじゃないだろうか。

 

「ウオァアアアアアアア!!?」

 

 因みに俺は現在進行形で発狂している。虫は苦手ではあるが問題はそっちではない。

 

 ブブブブブブブブブブブブ……

 

「くたばれ蜂どもぉおおおおおおっ!!」

 

 さっきからめちゃくちゃ大量のバスケットボールサイズの蜂に襲われている。

 大木の上の方に蜂の巣があったようで、そこに不用意に近づいてしまったことで蜂たちを怒らせてしまったようだ。

 洞窟の天井が無数の蜂に覆われ、羽音が響き渡るこの光景を前にして発狂しない人の方が少ないだろう。

 

 こいつら意外と硬いししっかり連携もとってくる。他の蜂よりも大きい個体が時々混ざっており、そいつは力は弱いが更に固く、針には毒があるようだ。

 

「死んでたまるかぁああああ!!」

 

 持っているスキルを全て活用して雨の如く降り注ぐ針を避けながら近づいてくる蜂を叩き落としていく。

 針が掠る度にHPが削れるが、レッドキャップゴブリンの装備一式の効果によって殴る度に回復する。生と死の反復横跳びだ。

 

「ちっ、毒った!「リフレッシュブレス」!」

 

 俺のVITはゴミカスなのだが、どうやらVITは耐性に関わるステータスでもあるようで、毒攻撃をくらうと一瞬で毒になる。「リフレッシュブレス」はスタミナを消費して毒の回復を早めたり蓄積を減らしたりしてくれるスキルだ。あんまり出番がなくて鍛えるのにわざと自分のことを貪食蛇の刺剣でちょっと刺したりしてたが、鍛えておいて助かった。

 

 スタミナが尽きれば終わりの状況だが、ニトロ薬局で毒蜥蜴の肝を売って追加購入したスタミナポーションを一気飲みしてスタミナ消費を遅らせて、可能な限りスタミナを消費しない動きを意識してスタミナを温存しつつ、「アージェントチャージ」のリキャストタイムが終わるまでスタミナを持たせて、再発動可能になったら即発動してスタミナを回復。「フリースケーティング」を絶対に途切れさせないように立ち回る。

 

 流石に無限にやって来るなんてことは無いはずだが、減ったそばから狩りに出かけていたであろう蜂が増援に駆けつけてくるし、蜂の巣の中からも蜂が次々と出てくる。

 うわ、もっとでかい蜂が巣の中から次々と……

 

「うおおおおおライオットブラッドよ、俺に力をぉおおおおおお!!」

 

 こんなことなら今日のライオットブラッドはバックドラフトにしておけばよかったとちょっと後悔しつつも、ライオットブラッドは決して努力する者を裏切らないと信じて剣を振るい続けた。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

「ゼーッ、ゼーッ、ゼーッ……もう残りはそいつだけだな女王蜂……!」

 

 襲い来る蜂をほぼ全て叩き潰し、残ったのは巣に張り付いて指示を出し続けていた巨大な恐らく女王蜂であろう個体が一匹と、それを守るように動いている大きめの蜂が残り一匹、つまり残り二匹だ。

 正直マッドディグの数倍強かったし、攻撃密度の理不尽さではリュカオーン以上だったぞお前ら。

 

 現在俺は地面を埋め尽くすほどの蜂のドロップアイテムに囲まれているが、それはつまりアイテムを拾えていないということであり、今死ねば最悪収穫無しになりかねない。絶対に負けられない戦いだ。

 

 恐らく女王を護る騎士的ポジションであろう蜂の最後の一匹が女王の命令で突撃して来る。一匹だけなら大して怖くは無い……なんて油断はしない。

 

「最後まで女王の側を離れなかったお前は、一匹だけで女王を護り切れるような切り札なんじゃないか?」

 

 針と言うより杭と言った方が正しいのではないかと思うほどに巨大な針がグレーブレードとぶつかり合い、「レペルカウンター」で針を弾き返す。

 ずっと使い続けていたグレーブレードから耐久が限界を迎えそうになっていることを知らせる警告が発せられる。お疲れグレーブレード、後でもっと強くしてやるからな。

 

「かっ飛ばしてやるよ……!」

 

 グレーブレードを沼鉄の鈍直剣と交換して、リキャストタイムが終わったスキルを一斉に発動する。

 

 再び突撃して来る蜂と巣に張り付いている女王蜂を見据える。立ち位置と角度を調整して……ここだ!

 

「弾丸ライナァアアアアアアアアア!!!!!」

 

 全てのスタミナを注ぎ込んだ「フルパワースイング」が「威嚇の咆哮」によって一瞬動きが止まった蜂の重心を捉えた。

 野球のルールは全員ノックアウトすれば勝ちと認識している俺の放った打球は弾丸の如きスピードで飛翔して──

 

 ズドォオオオオンッ!!!

 

「多分ゲッツーってやつだな。うん」

 

 飛んでいった蜂は自分でも驚くほどに綺麗に女王蜂に直撃して二匹纏めてポリゴンとなって消滅して。更に衝撃で巣が崩壊して木の上から落ちてきた。

 

 今ので全ての蜂が死んだようで、今まで倒してきた蜂の分の経験値が一気に入ってレベルが上がったのを確認して、長きに渡る戦いが終わったことを認識して溜息を吐いた。

 

「お、これもしかして蜂蜜もゲットできる?」

 

 できた。しかもこれフレーバーテキストに書いてある通りなら結構いいバフがかかりそうだな。ちょっと舐めてみよう。

 

「味覚に制限がかかってても結構甘いなこれ」

 

 リアルでも凄く蜂蜜が食べたくなってきた。明日の朝食は蜂蜜トーストにしよう。




ポイズンリザードは原作で登場していなかったような気がしますが、サードレマの薬剤師が加工していたので多分その辺りで出現するモンスターだと予想しています。シャンフロのゲームが発売されたらこの辺りもハッキリしそうで楽しみですね

主人公はノックアウトありの野球ゲームで数多の殺人魔球と殺人打法を開発した過去があります。野球のルールは知りませんが、システムが相手を試合続行不可能にすれば勝ちと言っているのでセーフ
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