シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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イヤーッ!休日出勤イヤーッ!
毎日残業に加えて休日出勤もしたら執筆時間なくなっちゃうううううう!!!


暴徒と搗炎

 蠍に撃ち落とされて轢き殺された俺はムンクさんの工房へと足を運ぶことにした。

 

「お久しぶりです。ちょっと深海に行ってクターニッドを殴り倒してきました」

 

「……もうお前さんが何をしてきたって俺は驚かねぇよ……」

 

「それで……その、晶尾鞭(クリスタル・ケイン)が壊れちゃったんですけど……」

 

「武器はいつか壊れるものだからそれは構わんが、あれを壊せるのか……絶対に壊れないように頑丈に作ったんだがな……」

 

「すみません……」

 

 呆れた様子のムンクさんにルルイアスで集めてきた素材や拾った朽ち果てた槍などを全部預ける。

 シャンフロの装備はかなり自由度が高いので、俺がこれでこういうのを作って欲しいと頼むよりもセンスがある人に素材を見てもらってオススメされた物を作ってもらった方が楽だし良いものが出来上がる。

 

「こりゃまた……とんでもねぇモンを持ってきたな……全部見終わるまで時間がかかる。団長の所に行ってきな……成れたんだろう?「呪律者」によ」

 

「わかるんですか?」

 

「ああ。これまでのお前さんとは明らかに違う。もう暴走の心配はいらんな」

 

 今まで普通に使ってきたけど、冷静に考えると暴走の危険がある職業ってめちゃくちゃだな。暴走してシャンフロのNPCに襲い掛かろうものならシャンフロ内で懲役数年から最悪無期懲役があり得るからな……実質キャラロストだなこれ。リスポーンとかどうなるんだろう?

 

 というわけで店の奥の魔法陣から呪啓者ギルドへと転移する。相変わらずこの転移の瞬間は一瞬の浮遊感で気持ち悪くなるが、ここ最近重力を自力で操作しまくっていたからかちょっと慣れてきた。

 知らない女性と立ち話していた団長が転移してきた俺に気が付いて、少し驚いたような表情を見せてこちらに駆け寄って来る。

 

「ぶんぶん丸君……!そうか、呪律者になれたんだね……!」

 

「あ、はい。なんとか無事に……無事?まあ一回死にましたけど……なれました」

 

 俺の肩に手を置き、安堵の表情を浮かべる団長……そこまで心配されるようなことだったのか?

 

「あの、呪律者になるのに失敗していたらどうなっていたんですかこれ?」

 

「……その時は、その人は「呪縛囚」になる。そうなってしまえばもう転職は不可能になり、常に暴走の危険が付きまとうようになるね」

 

「ひえぇ……」

 

 これ、マジで詰みになる一歩手前だったんじゃないか?そういうことはシナリオの説明にちゃんと書いておいてくれよ……いや、俺があんまり呪啓者ギルドのメンバーと会話していなかったのが悪いのか?

 

「団長さん、その人が噂の新人君かい?」

 

 先ほどまで団長と話していた黒髪の女性がそう問いかける。

 プレイヤーではない……しかし歓迎会でも見ていない人物だ。

 

「そうだよ。期待の新人、ぶんぶん丸君だ」

 

「ど、どうも……」

 

「成程……私が新大陸に行っている間に入団したとは聞いていたけど、もう呪律者にまで成長しているとはねぇ……」

 

 この人、あの歓迎会の時には新大陸に居たのか……あのタイミングでは新大陸は解禁されていなかったと思うのだが、あくまでプレイヤーがそこに行けないだけだったのかな?

 

「自己紹介をしないとね。私はアタランテ、お前さんの先輩だよ。新大陸の調査に呪啓者ギルドも協力して欲しいと言われてね、ここで一番の実力者である私が行ってきたんだ。それでつい最近帰ってきたんだよね」

 

 自分で一番の実力者と言うのか……団長よりも強いんだろうか?

 

「アタランテ君の実力は本物だ。私が知る限り、王認勇士(キングス・パラディン)や賞金狩人にも匹敵する実力者だ」

 

「私に達成できない依頼はない!」

 

 そのキングス・パラディンというのも賞金狩人というのもよくわからないのだが、まあ団長が言うのならその強さは本物なのだろう

 

「ところで、ここ最近開拓者も次々と新大陸に向かっているそうなんだが、お前さんは新大陸に行ったことはあるかい?」

 

「いえ、まだ一度も行ったことはないですね」

 

 確か船に乗るのに色々と実績が必要だし、乗れる数も限られているから抽選で選ばれる必要もあるんだっけ?

 シャンフロのプレイ人口だと高レベルのプレイヤーに限定してもとんでもない倍率になりそうな気がするが……

 

「ならお前さん、新大陸に興味はあるかい?」

 

「はい。新大陸に行けば、開拓者は今よりももっと強くなれると言われていますし……」

 

 レベルキャップ開放施設、強大なモンスター、見たことのない新素材……先に新大陸に向かったプレイヤーからもたらされた情報はどれも魅力的だ。

 

「よし、じゃあこの依頼を受けてみないかい?私が受けてもいいんだけど、全部私がやっちゃうと後輩が育たないからね」

 

「依頼?」

 

 アタランテさんが手渡してきた羊皮紙を確認する……へー、青の金剛石商会からの依頼か。えー、新大陸の鉱石集め依頼……!?

 

 

 

『クエスト「新大陸に眠る価値の輝き」を受注しますか?はい・いいえ』

 

 

 

 マジか、船に乗れるのか!

 

 出航するのは数週間先だが……それまでに色々と準備しないとな。

 一度向こうに行ってしまうとこっちに戻って来れるのは結構先になるだろうからな。

 

「そうそう、ラメリンちゃんも新大陸に行くみたいだから、一度向こうに到着したらラメリンちゃんに頼めば転移魔法で簡単に往復できるようになるよ」

 

「一度に大量の鉱石を持ち帰るのも大変だからね。ぶんぶん丸君とラメリン君には何度か往復してもらうことになるよ」

 

 転移魔法すげぇ……シャンフロは世界観重視でファストトラベルに色々と制限があるそうなのだが、片道一週間かかる大陸間移動を一瞬でできるのはあまりにも便利過ぎる。なんとかして俺もその魔法を習得できないんだろうか?

 

 依頼の細かい説明を受けてからクエストを受注し、魔法陣を通ってムンクさんの所へと戻る。

 

「戻りました」

 

「おう。大体見終わったが……ここまで多いと、何を作るか少し迷うな……」

 

 まあこれだけの量があったら大体なんでも作れそうだしな。

 とりあえず今俺が何が欲しいのかを纏めてみる。

 

「まず新しい防具……できれば動きを阻害しない軽めのやつで……ああ、晶尾鞭(クリスタル・ケイン)が壊れちゃったから新しい鉄鞭も……あ、そうだ」

 

「?」

 

 インベントリからクターニッドから貰った青の聖杯を取り出し、それを掲げると俺の体が青い光に包まれる。

 

「……!?」

 

「クターニッドから性別を入れ替えるアイテムを貰いまして……この姿に合わせた変装用の防具って作れませんか?」

 

 防具を全部外して反転後の姿をムンクさんに見せる。先ほど驚かねぇと言ったばかりのムンクさんが物凄い表情をしていて少し笑いそうになった。

 黒き死に捧ぐ嘆き(レクィエスカト・イン・パーケ)は装備の度に別の装備を犠牲にしなければならないので、あれ以外にも即座に着脱可能な女性向け装備が欲しいのだ。

 

「……あ、ああ……ちょっと待て……あー、わかった。用意しよう……丁度良い素材もあるしな……」

 

 顔にまで広がっている痣を良い感じに誤魔化せる装備でお願いします。まあどれだけ厚着してもこの呪いから出ている黒い煙っぽいのはどうにもならないかもしれないが……あと首の出血。

 

「ゴホン……それで、お前さんが持ってきたこの槍だがよ……」

 

 そういってムンクさんが持ち上げたのは朽ち果てたルインヴァル。かなりボロボロだが、これは直せるのだろうか?

 

「お前さん、「英傑武器(グレイトフル)」って知ってるか?」

 

「いえ、知りません」

 

「そうか。なら説明しよう……とは言ってもそんなに難しいモンじゃねぇ。英傑が英傑となった時に振るった武器、或いは英傑が更なる偉業を積み重ねた時に振るった武器……それが英傑武器(グレイトフル)になるのよ……これも今は錆び付いてはいるが、間違いなくかつてどこかの英傑が振るった武器だ」

 

「わかるんですね」

 

「ああ、この武器はまだ生きている」

 

 ……生きているって生命的な意味では無いよね?比喩的なやつだよね?

 

「直せるんですか?」

 

「ここまで朽ち果てていると難しいな……こいつは長い年月で熱を失っちまっている。どうにかしてこいつに再起の種火を与えてやらなきゃ、鍛えても元には戻らねぇだろうよ」

 

「その種火はどこに?」

 

「俺も知らん。ただの炎じゃ無理ということだけは確かだがな」

 

 うーん、わからん!どこかにヒントが転がっていたりしないだろうか?

 とりあえず槍は返して貰って、種火になりそうなものについて考える。

 

 種火……炎……炎と言えば……なんか忘れているような……あ、そうだ。

 

「そういえば、焔刀(えんとう)石墨(せきぼく)】はどうなりましたか?」

 

「おう、お前さんのお陰で炉も刀も完成した。少し待ってな……」

 

 ムンクさんが店の奥へと入っていく。

 その間、完成したという炉を観察してみる。

 

「うーんすっごくキラキラしている……」

 

 さっきから視界に入っていたけど、主な素材が水晶っぽい金属だからかめっちゃ輝いていて眩しい。そしてその傍には炉に大量に投げ込んだのであろう水晶巣崖産の宝石の残りが少し積み重なっている……なんというか、燃料費も含めたら刀一本に数十億かかってるんじゃないかこれ?

 それだけの金をかけたとなれば期待してしまうな。セツナメタルとかいうめっちゃレアそうな素材まで使ったわけだし……あれ他の入手手段は存在するのだろうか?

 

「待たせたな。ほらよ」

 

「これが……」

 

黒死の抱擁(ノリ・エイ・タンゲレ)にだって負けやしねぇ、最高の一振りに仕上げさせてもらった」

 

 店の奥から出てきたムンクさんに鞘に納められた大脇差を手渡される。

 それじゃあ早速性能を確認するとしようか。

 

 

 

 

 

英焔刀(えいえんとう)搗星(かちぼし)

脇差

魔力を侵し黒炎を起こす古代の毒と、墓守の残滓でありぶんぶん丸が成した偉業である神代の鋼を宿す大脇差。

鋼に宿る神代の魔力が呼び起こされたことで古代の黒炎は神代の搗炎へと至った。

呪いを宿すこの刀の試練を乗り越えようとする者にこそ、この刀は祝福を与える。

 

・この刀の所有権は「ぶんぶん丸」から強制的に移動することはない。

・この刀の耐久値が0になった場合、武器として使用不可能になるが消滅せず、その状態から修復できる。

・この刀を装備している間、クリティカルのプラス補正が全て打ち消される。

・この刀を装備している間、クリティカルに極大のマイナス補正。

・攻撃を命中させるとその部位に「破壊属性」を蓄積する。

・クリティカルに命中させる度に「神焔カウンター」を1つ追加する。(最大で8つまで)

・60秒毎に「神焔カウンター」を1つ消費する。60秒が経過する前に「神焔カウンター」が追加された場合、秒数はリセットされる。

・「神焔カウンター」が1つ以上ある間、この武器に「神焔属性」がエンチャントされる。「神焔カウンター」の数に応じてこのエンチャントは強化される。

・「神焔カウンター」の数に応じてクリティカルのマイナス補正が緩和される。

・「神焔カウンター」の数に応じて最大スタミナ、スタミナ消費量、スタミナ回復量に補正がかかる。

・「流星雨」……「神焔カウンター」を1つ消費して、納刀した状態からスタミナを全て消費して居合斬りを繰り出す。消費したスタミナの量に応じて踏み込みの距離と斬撃の飛距離とそれぞれの速度に補正がかかる。

このスキルの発動中は「神焔カウンター」が追加されず、「神焔カウンター」が減少してもエンチャントの性能が低下しない。

このスキルがクリティカルに命中しなかった場合、この刀の耐久値が0になる。

このスキルがクリティカルに命中した場合、「神焔カウンター」を1つ消費して追撃を行うことができる。

このスキルを連続で7回クリティカルに命中させた場合、8回目の攻撃には貫通効果が付与され、更にクリティカルに命中した場合、追加で即死効果が付与される。

このスキルを連続で8回クリティカルに命中させた場合、その戦闘が終了するまで「神焔カウンター」が8つに固定され、全ての攻撃がクリティカルに命中する。

 

 

 

 

 

 長いよ!!!!!テキストが!!!!!

 

 原稿用紙に収まらないレベルのあまりにも長すぎるテキストをなんとか読み解き、おおよその性能を把握する。

 要するにクリティカルにめっちゃ当て辛い代わりにクリティカルに当てれば強い武器ということだ。

 

 鞘から抜いてみれば、刀身が真っ黒だった焔刀(えんとう)石墨(せきぼく)】とは違い、セツナメタルを使用したからか少しだけ青っぽい黒色をしている。

 

「強そう……でも普段使いするにはちょっと集中力を要求されすぎるなこれは……」

 

 兎に角クリティカルに当てなければ話にならない効果だ。しかもクリティカル補正も全て打ち消されるとなれば、一戦一戦かなり集中してクリティカルを狙わなければならない。

 まあ大体の雑魚敵は黒死の抱擁(ノリ・エイ・タンゲレ)で瞬殺できるが、今後状態異常に強い相手が出てくる可能性も考えると、他にもお手軽に使える属性武器が欲しいところだ。

 

「なるほど、属性武器か……」

 

 ムンクさんはそう呟いてアトランティクス・レプノルカの素材を拾い上げた。

 確かにあのシャチの素材を使えば相当強力な雷属性武器ができそうだ。

 

 必要になる素材と修理、強化してほしい装備をムンクさんに預けたが、まだ大量に素材が余っている。

 そうだ、この素材で新しい呪い釘を作ってもらおう。早速ラローリーさんの工房へ……そういえばさっき呪啓者ギルドに行った時にギルド内にラローリーさんがいたな。まだギルド内にいるのならそこで素材を渡した方が移動量が少なくて済む。

 

「もう一回店の奥の魔法陣お借りします」

 

「おう」

 

 

 

「……あの姿のままでギルドに行ったらてんやわんやの大騒ぎになりそうだが……まあいいか」

 

 

 

 性別反転状態のまま被り物無しで呪啓者ギルドに入ってしまった俺はラローリーさんとアタランテさんにもみくちゃにされた。たすけて。




アタランテは呪啓者ギルド中最強のNPCであり呪律者の一人。メタ的には賞金狩人が実装される前のシャンフロ内で起こってしまった運営の想定外の事件や事故を解決する役を任されているキャラ。
なので当然その実力はシャンフロ内でもトップクラスであり、呪律者になると失うはずの「呪界啓示(カース・ビジョン)」に限りなく近い能力をスキルも魔法も無しに自力で習得して使いこなしている。システム的には龍宮院 富嶽のトレースAIをベースとした専用AIに加えて、シャンフロサーバーが全力でバックアップすることで超精度の未来予測を実現している
ウェザエモンの晴天大征ですら初見攻略が可能だが、ティーアスの超越速(タキオン)は速度差があり過ぎて無理。因みにこの二人が同時にスキルを発動したらシャンフロが鯖落ちする可能性大なので同時に本気を出さないようにサーバーが調整している

開拓者の成長や賞金狩人の実装でメタ的にも余裕ができたので、新大陸の長期間調査依頼を受けていた。なので新大陸のことを質問すればかなり有力な情報が得られるのだが、この主人公会話しないので……



現在狼争編を執筆中ですが、忙しい上に先の展開が中々思いつかなくて苦戦中です
原作の勝ち抜き戦に主人公を入れると、大将にしちゃうと主人公に出番が来ないかサンラクが負けることになるし、先鋒にすると全抜きしちゃって色々と重要なフラグが折れるので、上手いこと妥協点を見つけるか、ルールを変えてしまうか、そもそも主人公を何かしらの理由で参加できなくするか……難しい
最初は主人公が先鋒から無双するけどサイガ-100戦で仕事の電話がかかってきて棄権して離脱という流れにしようかと思っていたのですが、突然の休日出勤の苦しみを作者も味わい、執筆する気力が消し飛びました。休日出勤で苦しみながら休日出勤で苦しむ小説を書くとかマゾすぎるので……
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