シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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暴徒と恐怖

 あまりにも長いラローリーさんの話を聞き続けること三時間……それに加えてリュカオーンとかクターニッドとかのことを根掘り葉掘り聞かれまくってマジでめちゃくちゃ長い時間拘束された……後半は強制ログアウト一歩手前だった。

 

 話を聞いていたら深夜になってしまったのでその日はもう寝て、翌日フィフティシアのムンクさんのお店に向かうことにした。

 

「ムンクさんこんにちは」

 

「おう、お前か……新しい装備は出来ている。ちょっと待ってな……」

 

 いつものように裏路地を通ってやってきたムンクさんの店だが、変装用装備と聖杯があれば普通に表を歩けるようになるはずだ。

 

「まずは変装用の防具だが……先に言っておくが、デザインしたのは俺じゃなくてアタランテとラローリーだからな」

 

 そう言ってムンクさんが店の奥から持ってきたものは……

 

「えぇ……ゴスロリぃ……?」

 

「……防具としての性能は保証する……」

 

 黒を基調としたびっくりするくらいフリフリのドレスに大きなリボン……これ何て言うんだっけ?ボンネット?

 いやまあ性転換した状態でこれを着たらまず俺であるとバレることはないだろうが……バレた時がヤバくないかなこれ……名前はそのままなわけだし、出血しているし……

 

 一応性能を確認……名前は「葬奏骨装(アントニア)」シリーズというのか。

 うわ、薄いのにやたらと硬い。VIT+5000ってなんだよ。普段俺が着ていたのは段ボールか何かか?

 しかもこれあの"伴葬(レクイエム)"の素材を使っているのかよ……え、この手触り……まさか、骨を糸に加工したのか……?なんだその超技術。そんな技術をこれに使っていいのか……?

 

 というかアンデッドの素材を使っているからバッチリ呪い付きじゃんこれ。当然のようについている外部からの回復不可に加えて、それぞれの部位に肉体の元々のSTR、DEX、AGI、TEC、VIT、LUCを半減するという正気とは思えないデメリット効果が付いているんだけど、MP特化の魔法使いでもこれ装備するの辛くない?

 それと一式セットボーナスで水圧耐性とか泳ぎ速度アップとか暗視効果とか温度変化耐性とか、ゴスロリらしかぬ水棲生物らしい効果が色々とあるが、それよりも呼吸をしなくてもスタミナが回復する効果と呼吸を止めている間気配が薄れる効果がヤバそうな気がする。

 

 まあこれは後で着てみるとして……次にムンクさんが持ってきたのは変装用ではないきちんとした戦闘用の新しい防具一式だ。

 

「アトランティクス・レプノルカの素材をベースに色々と混ぜ込んで作った。素材の加工を通して海にはとんでもねぇ化け物が沢山居ると改めて思い知ったぜ……」

 

 ルルイアスでの一週間はほぼ毎晩何かしらの化け物が襲来してきていたのを思い出す。また機会があれば海に潜ってみようかな。

 

 アトランティクス・レプノルカの素材をベースにしたというその防具の見た目は、首から下を包む肌にピッタリと張り付く漆黒のウエットスーツの上から、背中に大きく描かれた真っ白な呪啓者ギルドの紋章が目を引く黒い外套を羽織っていて、更に黒いグローブとブーツを身に着けているという、ちょっと変質者一歩手前なデザインになっている。

 

 そして一番特徴的なのはその頭。犬面をシャチの素材で強化したようだが、カラーリングもシャチっぽくなっており、目と下顎は白く、それ以外が黒い。

 強化前はこの世の全てを噛み殺さんと言わんばかりの表情だったのだが、シャチの目の周りの白い部分……アイパッチだっけ?それが目の代わりとなっているようで、巨大な鋭い目で睨みを利かせているように見える。視線がわからないというのは結構大きなメリットなのでそれはいいのだが、見た目が怖すぎる。

 しかも口の部分を開けばなんでも噛み切れそうな鋭い牙が並んでいる。こんなの装備して街中を歩いていたら最悪衛兵に捕まるんじゃないかな……

 

 とりあえず全身装備してみよう。

 

ボッ!

 

「……鏡あります?」

 

「そこにあるぞ」

 

 なんか発火するような音が聞こえて、ちょっと嫌な予感がしたので鏡を覗いてみる。

 するとそこには頭部からうなじにかけて蒼い炎に包まれた犬頭の不審者の姿が!

 

「なにこれぇ……」

 

「面白そうな素材があったから頭に組み込んでみたんだが、こりゃ随分と愉快なことになったな」

 

 面白そうだからでそんな機能頭に組み込まないでくれ。手が燃えるとかならかっこよかったと思うのだが、頭が燃えているのは完全にヤバい人なのよ。というか人かどうかも怪しいよコレ。

 

 気を取り直してその性能だが……名前は「冥王装(チオハヤク)」シリーズというらしい。

 その性能、驚異のVIT+8000越え。動きやすさ重視で装甲とか最低限しかつけていないのに、一つ一つが8000を超えている。俺は今まで綿菓子でも着ていたのか?

 

 そしてこれにも呪いの素材を使用しているようで、外部からの回復無効、肉体の元々のSTR、DEX、AGI、TEC、VIT、LUC半減が四つでそれぞれ八分の一になり、更に頭装備は常に燃えていて熱でダメージを受け続ける上にMPが常に消費され続けるデメリット効果もある。これだけ見ると頑丈な処刑装置にしか見えないが、その分効果がかなり盛られているようだ。

 

 まず全ての部位にそれぞれ状態異常とデバフと即死への耐性。胴と腰と足にはMPをそれぞれ100までチャージできる効果がある。

 MPをチャージすると防具に埋め込まれた結晶が蒼く輝き、最大までチャージされるとバチバチと蒼い電気のエフェクトが発生する。このチャージしたMPを自分に戻すことはできないが、蒼い稲妻として放電することが可能となっている。また、チャージしたままだと直接触れた相手に雷属性のダメージを発生させるらしい。

 

 そして頭装備の「兇相の冥王犬面」には各部位にチャージしたMPを消費して、頭部に関係するスキルや魔法を強化する効果がある。

 思考加速のようなスキルから咆哮などのスキルも強化し、頭突きなんかのスキルも強化対象らしい。どのように強化されるのかはそのスキルや魔法次第だそうだ。

 それとシンプルに熱いから接触するだけで炎属性のダメージを与えることもできるらしい。これゲームだからいいけれども、現実だと頭部が焼け爛れてとんでもないことになるのでは……

 

 それと犬面の口を自分の口のように自由に開け閉めできる謎機能も備わっているようだ……噛み付けば良いのか?

 

 セット効果には水中で活動するのに便利な効果が盛り込まれており、更に周囲の魔力濃度に応じて強化されるMPリジェネ効果で常時MP消費のデメリットを打ち消す設計らしい。フレーバーテキストによると高度と魔力濃度には何かしらの関係があるのだとか。つまりシャチのように深く潜るほど有利になるということかな?

 そしてSTMにSTMの元々の数値をそのまま加算するという強力なSTM補正つきだ。深海で暮らしている哺乳類(シャチ)の素材だから肺活量に大幅なボーナスということなのだろうか?あいつが肺呼吸なのかは知らんけど。

 

「見た目は置いといて……この装備があれば新大陸でもやっていけそうです!」

 

「まだまだ武器が残っているぞ」

 

 もうこの装備だけで無双できそうな気がするが、まだ頼んだ武器が残っている。

 

 次にムンクさんが持ってきたのは……杖?

 

金晶独蠍(ゴールディ・スコーピオン)の水晶とアトランティクス・レプノルカの結晶を組み合わせた鉄鞭……名前は「晶王笏(クリスタル・セプター)」だ」

 

 杖じゃなくて鉄鞭なのか。じゃあこう持って細い方でぶん殴るのが正しい使い方なのかな。

 金の水晶に蒼い結晶が巻き付いていて、その先端……いや、鉄鞭ならこっちが柄頭か?そこではアトランティクス・レプノルカを少しデフォルメしたかのような蒼い結晶の彫刻が圧倒的な存在感を放っており、大きく開かれた口で藍色の宝石を咥えている。

 

 全体的にキラキラしていて高級そうな見た目をしているのだが、これでも武器らしい。これ一本でどのくらいの値段がするのだろうか?

 

 その性能だが、まず相手をぶん殴る度に「蒼雷カウンター」なるものが蓄積して、その数に応じて強力になる雷属性エンチャントが付与されるという効果。

 これはシンプルに強い。ヒット数を稼ぐ必要はあるが、それ以外に特に面倒な準備は必要なく、そのまま殴り続ければ大ダメージと同時にエンチャントが更に強力になっていく。

 

 そして二つ目の効果だが、月光を浴びると耐久値が自動で回復するというもので、夜なら余程天気が悪いか新月でもない限り耐久をあまり気にしなくても良くなる。金月晶の(まじな)い釘との相性も非常に良い。

 

 最後に音量の増幅効果……この彫刻の中に仕組まれている核が振動を増幅するんだとか。拡声器のように構えて使えばいいらしい。

 咆哮スキルの強化だけでなく、「反響定位(エコーロケーション)」の探知範囲増加などにも活躍させられそうだ。

 

 あと装備している間、彫刻から蒼い炎が出てくる……が、これはエフェクトだけなのか触っても熱くはない。まあ自分の腕が燃えても困るしそれは別にいい。

 

 ちょっと重いが装備条件にSTRが存在していない。代わりにDEXとTECとVITがかなり要求されるが、他の装備で補える範囲だ。

 

「この防具と合わせるとなんか魔王感あるな……」

 

 見た目が完全に関わっちゃいけないヤツのそれだ。

 前の防具は常にキレてるヤバい奴みたいな感じだったが、こっちは近付いたら無言で殺してきそうな静かな威圧感がある。

 そしてここに呪いが加わるわけだが……

 

「そして最後に黒死の抱擁(ノリ・エイ・タンゲレ)だが……あれは俺が今まで作ってきた武器の中でもグランシャリオやポラリス、搗星(かちぼし)にも並ぶ最高傑作と言ってもいいものだった」

 

 なんか知らん単語が出てきたぞ。呪啓者ギルドの誰かが持っている武器の名前だろうか?

 

「あれをあれ以上に強くすることが俺にできるのか……そう思っていたんだがなぁ。お前さんからあの素材を預かったあの瞬間に天啓……いや、呪啓を得た」

 

 そう言って店の奥からムンクさんが持ってきたものは、お札を貼られ、鎖で縛られ、幾つもの鍵がかけられた、二メートル以上はある大きくて細長い箱。

 一つずつ鍵が外され、鎖が解かれ、札が剥がされ……その度に箱の中から放たれる威圧感が強まっていく。

 

「これが"深海楽団(ブロスバンド)"の素材によって黒死の抱擁(ノリ・エイ・タンゲレ)が極限まで「深化」した姿──」

 

 最後の鎖が解かれたその瞬間、ユニークモンスターにも匹敵する威圧感が肌に叩きつけられ、心臓を鷲掴みにされたかのような錯覚を覚える。

 ゆっくりと蓋が開かれ、遂にその姿が露に──

 

「のわぁっ!?」

 

 突如、箱の中から噴き出した闇に呑み込まれ、視界が暗転する──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──その名は「Phantom(ファントム)」。お前さんなら必ずその「恐怖」に打ち勝てると俺は信じているぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真なる(The Truth)竜種(Dragon):EXNo.Ⅳ』

 

Phantom(ファントム)

 

『竜狩りが開始されました』




主人公の新防具の見た目は遊戯王のスプライトを参考にしていたりする

NPCの中でもトップクラスの鍛冶の腕の持ち主に贅沢な素材を次々と与えたらどうなるのか。その答え
本当はビィラックに近い気質でかなり気難しい性格に設定されているムンク。でも初対面の二十六がコミュニケーションでクリティカル判定を出して、主人公が次々とめちゃくちゃなことをしてレア素材を持ってくるので感情が何周かして今の感じに落ち着いている
本当は一本武器を作ってもらうのに相当面倒な手順が必要になるのだが、ムンクのクエスト経由で呪啓者ギルドに入ったことによる好感度の高さと思わず武器を作りたくなるような素材の持ち込みでゴリ押している状態


真なる竜種エクストラナンバー……通常の真なる竜種とは発生条件が異なるが、結果としてはかなり近い性質を持つもの。通常の真なる竜種とは別に番号をつけられている。人工精霊とも言える存在
その能力や外見は深化した武器の性能や性質、その武器をどう扱ってきたか、どれだけ使いこなせていたか、その武器をNPCがどう認識しているかなどをサーバーが判断して自動生成される。また、知能の高さや戦闘の上手さはその武器に人格に近いものが発生してからどれだけの時間が経過したか、どれだけ戦闘に使用したかがある程度影響する
つまり強いけど扱い辛い呪いの武器を年単位でじっくりと時間をかけて共に戦い、少しずつ深化を繰り返してこの領域に到達させた場合、持ち主がめちゃくちゃ苦手とする性能のドラゴンが出てきて、しかも賢くて強いというとんでもない鬼畜難易度と化す
逆に武器の呪いとの相性がめちゃくちゃ良くて短期間で一気にこの領域に到達させた場合は持ち主にとってはかなり温い相手になる……とは言ってもソロ専用のエンドコンテンツなので並のエクゾーディナリーよりはヤバいのが出てくる。推奨レベルは勿論150以上


実はもっと後の方で通常ナンバーの真なる竜種として登場させる予定だったファントムくん
この小説を書き始める前から能力を考えていたし、登場させられる時が来るのを楽しみにしながら執筆していたら急に新しいアイデアが湧いてきちゃって急遽出番が超前倒しにされた裏話があったりする
なおその過程で能力に手を加えまくったら名前が一緒なだけのほぼ別物と化したので、旧ファントムくんには別の名前を与えて引き続き出番が来るまで待機していてもらいます。もしかしたら出番が消えるかもしれません

Phantom(ファントム)「えっ」

Recoil(リコイル)「ドンマイ」
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