シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
「な……何が起こったんだ……?」
気が付けば俺は灰色の世界に立っていた。
どこまでも続いていそうな白い地面と灰色の空の中、狼狽えている俺を見つめる黒い影が一つ。
顔以外真っ黒すぎて輪郭しかわからないが……マジでなんだアレ?宇宙人?悪魔?痩せた巨人?
尻尾があって、背中と頭から何か尖ったものが生えている?顔には真っ白な鳥の嘴のように見える形状のマスクをしているように見える。本当にマスクを着けているのかそう見える体の一部なのかはわからない。
「えー……こんにちは?」
「……」
返事は無い。よく見れば背中のあれは翼か?そういや真なる竜とかなんとか言ってたな。
二足歩行で背筋を真っ直ぐ伸ばしていて、尻尾や翼があることや首がそこそこ長いことを除けばかなり人に近い体形をしているのだが、その身長は五メートル以上は余裕でありそうだし、それなのに手足は不気味なほど細く長い。
「……あの……」
「……」
何もしてこないんだけど、俺から何かしなきゃダメ?
武器も防具もアイテムもあるが……
「なんなんだ……ん?」
リュカオーンの刻傷が何かを弾いたようなエフェクトを発している。
もしかして何もしていないようで何かしているのか?
「うっ、ゴフッ!?」
突然喉の奥から湧き上がる違和感につい咳き込んでしまう。
咳と共に口から赤黒いポリゴンが飛び散り、全身が痺れる。
「状態異常「真竜の呪い:フェーズI」ね……」
これが原因か。HPとスタミナが急速に減少し、更に全ステータスダウン。更に苦痛によって動きが鈍る。周囲に伝染する……
「……全部アクセサリーで対抗可能じゃん」
HPもスタミナも減ったそばから回復するし、なんなら
ステータスダウンはほぼ誤差。動きが鈍るのも封花の
「敵対……しているのか?どうなんだこれ?」
刺激しないように観察していると、遂にそいつは動き出した。
「うおっ!?急に動くな!?」
大きな翼を広げ、こっちが不安になるほど細い脚で地面を蹴って急速に接近して来るのと同時に、真っ黒な奴の体と重なっていて見えなかった右手の非常に長い一本の爪が振るわれる。
本体が巨人サイズならその爪も余裕で二メートル以上はありそうな長さで、間一髪で回避したものの、その爪が通った軌跡に黒い靄が残っている。
「対話でどうにかなる相手じゃなさそうだ……俺にとってはそっちの方が好都合だけど!」
とりあえず今持っている武器の中では一番長く使っている
「ん-、物理無効?属性攻撃じゃないとダメかな……いや、こいつも回復がダメージになるタイプか?」
「……」
奴が巨大な翼を羽ばたかせるとかなり広範囲を覆い尽くす黒い風が巻き起こる。
流石に回避不可能なので一応防御の構えをしながらその風を受けてみる……流石に見た目だけとは思えないのだが、暫くそれを浴び続けていると一つのウィンドウが出現する。
「「真竜の呪い:フェーズⅡ」……何となくわかってきたぞ」
これが進行し続けると多分ヤバい。その前に決着をつけろと、そういう相手なのだろう。
「
回復のポーションを奴に向かって投げつけようとインベントリから取り出し……ポーションが黒く変色していることに気が付く。
「あー……回復アイテムが汚染されるとか、そういう能力か……」
飲むとどうなるのかはわからないが、まあ飲まない方がいいだろう。ポーションをインベントリに戻して、一応自分に呪いを防ぐお札を貼っておく。ちょっと気になることがあるからな……
「あんまりこの黒いの吸わない方が良さそうだけど……すぅー………「超振動咆」!!」
試しに
するとクリスタル・セプターの柄頭の装飾から噴き上がる炎が激しさを増し、増幅された振動がより広範囲に広がって奴を包み込む。
奴はブルブルと震えてちょっと形が崩れたが、叫ぶのを止めればすぐに元通りになってしまった。
「振動は全く効かないわけじゃないけど効果が薄そうだな……じゃあ次は属性攻撃……うわっ!?」
奴がこちらに爪の先端を向けてきたその瞬間、突然奴の指先から爪が発射された。
なんとか回避は間に合ったが、まさか爪を発射してくるとは。しかも一回限りの切り札というわけでもないようで、回避した爪が空中で旋回して奴の手元に戻って来て、そのまま宙に浮かんでいる。
「……」
奴が左手を掲げると、左手の指からもスラリと長い爪が生えてくる。その長さの爪をどこに収納しているんだ?それとも爪を生成しているのか?
奴は左手の爪もこちらに向けて発射し、それを追いかけるように突っ込んで来る。
どうやらあの爪、ただ浮かせるだけじゃなくて体からある程度離れていても自在に動かせるようで、宙に浮かぶ右手の爪が俺の回避に合わせて空中で軌道がグネグネと曲がって襲い掛かって来るし、回避して俺の背後へと飛んでいった左手の爪が音もなく戻って来て死角から迫って来たりと自由自在に動き回っている。非常に厄介だ。
「……」
「ドラゴンにしては随分と変な戦い方をするな……」
両手の爪を発射したり、それを空中で操作して俺を包囲したり死角から襲わせたりと自在に操りつつも、本体も黒い靄を撒き散らしながら長い手足で殴る、蹴るなどの猛攻を仕掛けてくる。
この奴や奴の爪が通った跡に残る黒い靄、かなり長い時間その場に残り続けることを考えるとただのエフェクトじゃなさそうな気がする。なるべく触れないようにしておこう。
「それじゃあ次はデカいのを一発……すぅー……」
水晶を齧って飲み込み、大きく息を吸い込めば、防具に埋め込まれた結晶にチャージされていた魔力が頭部へと流れていくのがわかる。
犬面の口が開き、バチバチと音をたてて蒼い稲妻が口元にチャージされてゆく──
「──「エグゾーストブレス」!!!」
肺の中の空気と一緒に体に蓄積しているものを吐き出すスキルによって、飲み込んだ水晶のエネルギーと俺にかかっていた状態異常がそれに応じた属性となって全てブレスに乗り、吐き出される。
水晶の地属性に火傷と毒状態による炎属性と毒属性、そして兇相の冥王犬面によって雷属性が付与された混沌の息吹が大地を抉り取りながら直進し、そのまま奴を飲み込む。
「……!」
様々な属性が混ざったカラフルな息吹によって奴の体がボロボロと崩れ、押し流されてゆく。空中に浮いていた爪がブルブルと震えてその場に落下してボロボロに崩れる。
属性攻撃は有効そうに見える。だとすると黒死の天霊ほど理不尽な耐性ではなさそうだ。
「ん-……ただの状態異常じゃないっぽいな」
「エグゾーストブレス」は攻撃と同時に状態異常を吐き出すことで結果的に治療もできるスキルなのだが、真竜の呪いだけは治っていない。
ニトロ薬局で一応買っておいた状態異常を治す薬を服用してみようとインベントリから取り出すが、これも黒く変色していたので服用するのはやめておく。
「……」
「……あれダメージ入っているのか?」
ボロボロに崩れた奴の体の一部が再び一か所に集まって元の姿に再生してゆく。
これを繰り返していったらそのうち倒せるかもしれないが、大きなダメージを受けているようには見えない。
よく見れば崩れ落ちた体の一部は完全に元に戻っているわけではないようで、その中の一部は地面に落ちた後ポリゴンになって消滅しているから完全にノーダメージではないと信じたい。
なんかこう、弱点とかないのかな。コアを破壊しないと何度でも復活しますってパターンはゲームでは珍しいことではない。
「……」
「うわっ」
相変わらず無言で生物らしさを感じさせない奴の猛攻が突然止んだと思ったら、奴はその場で両腕を伸ばしてを横に広げる。
すると奴の両手の指先から次々と尖った物が生えてくる……
「……いちにーさんしー……十本同時か。まあ爪なら指の数まであるよな」
剣聖だったっけ?剣を沢山浮かべて操る職業。大体あんな感じで爪が十本宙に浮いている。
フォルティアンの闘技大会で遭遇したのは三本浮かせていたっけな。あれって何本が限界なんだろうか?
まあ別ゲーでなら剣を十一本浮かせているキャラとかもいるし、あの爪が突然爆発でもしない限りはそう対処は難しくはないだろうが、あの黒い靄に触れないようにするのは流石に無理だな……
「俺も剣聖になってみたかったけど、もう転職できんのでな……」
今の俺が剣士ギルドに行っても追い返されるだろう。出来れば傭兵から転職してみたいんだけどね。
「よっ」
十本の爪が発射され、黒い線で空中に複雑な軌跡を描きながら四方八方から爪が飛来する。
同時に十本バラバラに操れるのは凄いとは思うけど、練度が足りていないな。隙間だらけだ。これなら狭い間隔で並べて動かして面の攻撃にした方が相手を大きく動かせるしお手軽だと思うよ。
「……」
「俺にその爪を当てたいのなら少なくともあと三本は必要だな」
空飛ぶ十本の爪の乱舞と、奴の細くても濃厚な死の気配を纏う腕や脚の攻撃を避け続ける。
こういう超範囲超密度の攻撃の対処には慣れている。奴の癖を見抜いてパターン化できれば楽なのだが、シャンフロのAIが相手だとちょっと難しい。
「うわぁ視界が黒い……」
もう黒い靄が辺り一帯を埋め尽くしている。シンプルに視界が悪い。
視覚に頼らなくても足音や風を切る音でおおよその距離はわかるが、それで本体+十本の爪全部の対処を同時にするのは流石にキツイかな。
「邪魔だ吹っ飛べ!!!」
奴の足音が離れていくタイミングで足音がする方へと「サウンド・バースト」を放つと、少し遅れて遠くの方で音の爆弾が炸裂し、轟音と同時に衝撃波が発生する。
奴に直撃はしなかったようだが、それでも奴の体がぐにゃぐにゃに崩れており、衝撃波によって黒い靄も一気に吹き飛んで視界がクリアになった。
「タフなのかそうじゃないのかよくわからん相手だな……」
簡単にバラバラになるけれども、どれだけバラバラにしても大したダメージになっていないように見える。
弱点属性じゃないとまともなダメージが入らないパターンの可能性もあるな。何が弱点なんだ?それともあのマスクを引っぺがす必要があるのか?
爆弾で焼き払ってやろうかと思いインベントリを漁る……うーん、爆薬も汚染されているか。いや爆薬なら汚染されていても関係ないか?
試しに瓶に入れられている爆薬を奴に向けて投擲してみると、特に問題なく爆発が起こった。
ダメージが入っているのかはわからないが、奴の体が崩れる程の威力の何かをぶつければ奴の動きが一時的に鈍るし、宙に浮かぶ爪も動きが少しの間止まる。爆破は有効なようだ。
「金はあっても爆薬はそんなに数がないんだから、さっさとくたばってくれないかな」
「……」
この前の"
「雷属性も有効か?具体的にどう効いているのかわかんないけど……」
怯んでいる隙にクリスタル・セプターで殴っているのだが、なんかフワフワした柔らかい物を叩いているかのような不思議な感触と共に奴の体の中に鉄鞭が埋まってしまう。
しかしこれでも殴る度に溜まるカウンターはちゃんと溜まっているようで、殴る度に強くなっていく蒼い稲妻が奴の体を流れているのが見える。
電気が流れた跡からボロボロと黒い物が崩れ落ちているし、多分効いているとは思う。
このままでは倒しきる前に呪いが進行して死んでしまうのではないだろうか?もっと大胆に攻めた方がいいかもしれない。
そんなことを考えていると、再び奴が翼を広げて黒い風を起こす。
これも浴び続けると良くないっぽいし、速攻で決着を──
「……まあ、翼があるなら飛ぶよなぁ……」
奴のほっそりとした巨体が灰色の空へと舞い上がる。そのままどんどん高度を上げてゆき、豆粒のように小さく見えるほど高く飛び上がって行ってしまった。
ヤバいぞアイツ、飛び回って時間稼ぎするつもりだ!
灰色の世界……真なる竜種エクストラナンバーとの際に飛ばされる特殊な専用戦闘エリア。入れるのは元になった武器の持ち主一人だけ(テイムモンスターなど例外もある)
真なる竜種によって異なる光景となるが、基本的には何もない空間。真なる竜種が特定の環境を利用するタイプの場合はその環境も用意される
エクストラナンバーはシャンフロサーバーによる自動生成なので運営のバランス調整を受けていない原典の原液そのままなドラゴンが生成されてしまうので、こうして専用エリアに飛ばさないと何が起こるか予測困難だし最悪レイド級のドラゴンが街中にポップすることになって危険過ぎるというバランス調整担当の神の判断で実装された
因みに万が一ファントムくんが専用エリアの外に出てきてしまった場合、フィフティシアは一瞬で壊滅するし、旧大陸は死の大地と化すかその前にジークヴルムが焼き払うか運営が気が付いて緊急ナーフが間に合うかの勝負になる
バランス調整担当の神は発狂し、胃薬の神は胃に穴が空く
ぶんぶん丸がモンスターの大群相手に使用し続けた結果、物凄く尖った性能になってしまったファントムくん
ファントムくんはソロで挑む前提&ギミック重視タイプなので単純なスペックは真なる竜種の中ではかなり控えめですが、ギミックをソロで攻略させる気ゼロのクソ仕様にすることでバランスを取っているタイプ
時間制限がある中でギミックを見抜いて攻略してね!え?■■魔法とか○○魔法とかギミック解除に必須なのにお持ちでない?では死ね
HPが減ってきちゃったなぁ……飛んで時間切れになるまで逃げ回っちゃお!え?対空手段をお持ちでない?では死ね
どうしてもギミックを無視して攻略したい?時間制限がある中で物理ほぼ無効&属性耐性(極大)を突破できるならどうぞ