シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
「待てコラ!逃げんじゃねぇ!!」
奴はあの巨体からは想像できないほどの速さで飛び回りつつ、上空から爪を次々と発射してくる。
遥か上空を超スピードで飛び回る奴に攻撃を当てることは困難だ。
しかもあいつが上空を旋回しているだけで黒い靄が撒き散らされ、重力に引かれてゆっくりと広範囲に落下して来る。それだけではない。
ズドドドドドォォォンッ!!!!!
「爆発すんじゃねーか!!ミサイルだろこれ!!?」
ミサイルみたいな爪じゃなくて本当にミサイルだった。着弾と同時に爪が破裂し、衝撃波と共に周囲に黒い靄が撒き散らされる。
「くっ、フェーズⅢ……!」
黒い靄に触れすぎたか。スタミナの回復が遅い。
確実に症状が悪化している。これ以上進行したらスタミナが足りなくなるぞ……!
しかし幾つか気になることがある。この呪いを防ぐお札……これを貼っている間はあらゆる呪いを防いでくれるし、耐久値に限界が来ると破れてしまうはずなのだが、さっきから破れる気配が無い。それなのになぜ症状が進行するのか。
それに俺にはリュカオーンの刻傷がある。これがあらゆる呪いを弾くはずなのに症状の進行が止まらない。
刻傷すら貫通する呪いを付与できるような敵がいてもおかしくはないとは思うが、なんか引っかかる。そんな強力な呪いならこのお札が破けていないのはおかしいのではないか?
「おーい!!降りてこい卑怯者ー!!」
範囲重視の
スキルで飛んでも奴が飛ぶスピードが速すぎて追い付けない。ならば──!
「いくぞ、
この武器は本領発揮の為にはクリティカルに命中させる必要がある。
しかし相手は遥か上空。ならどうすればいいのか?
「切腹!」
そう、自分をぶった切ればいいのだ。こっちの方が確実なのは当然だ。
クリティカルに命中したことで刀身にとても暗い青色の炎が灯る。
「まだまだぁ!切腹!切腹!切腹!」
ウェザエモンがこれを見たら何を思うのだろうかとか一瞬考えたりもしたがそれは置いといて、八回の切腹によりエンチャントは最大まで強化された。
そのまま燃え盛る刀を鞘に納める。これ鞘が燃えたりしないのだろうか?
次々と降り注ぐミサイルの雨を避けつつ、奴との距離が最も近づくその瞬間を待つ。
スキルでスタミナの最大値を限界まで強化し、スタミナの消費量も軽減させることでスタミナをより多く消費できるようにする……ちょっとややこしいが、そういう判定らしい。
思考加速スキルも発動。目、つまりは頭部を強化するスキルなので犬面の強化が適用され、いつもより更に周囲の速度がゆっくりに感じられる。
「──今」
奴が俺の頭上を通り過ぎるその瞬間、搗星の奥義を解き放つ──!
「──「流星雨」!!!」
スタミナを全て消費し、その消費したスタミナの分だけ踏み込みに補正がかかる抜刀斬りが解き放たれる。
俺の莫大な量のスタミナが一気に燃焼され、空気抵抗も摩擦も無視して、重力を味方につけたその踏み込みは、たった一歩で遥か上空を飛ぶ奴との距離をほぼゼロまで縮めた。
加速する思考の中でどこにどう刀を振るえばクリティカルになるかは予め考えてある。
後は相手がこれに反応して対処するよりも速く、苦痛に身を捩るよりも速く、事前に決めていた通りに刀を八回振ればいい。
「──!?」
「燃え尽きろ」
物理が効かないこいつ相手にクリティカルが出せるのかどうかわからなかったが、属性攻撃ならクリティカル判定があるらしい。
正直発動した俺でも認識が困難なレベルの超高速の斬撃は確かに八回クリティカルのエフェクトを発生させた。
奴の体の内側から炎が溢れ出し、電子レンジに入れた卵のように弾け飛んだ。
原型を失った奴は飛行能力を失い、ぐちゃぐちゃの黒い塊のまま墜落してゆく。
「空中でスタミナ切れはちょっと怖いな……」
落下しながらスタミナ回復を待ち、
少し遅れて炎に包まれた奴が墜落すると同時にその体がバラバラになってあちこちへと飛び散る。
普通に考えれば即死なのだが、よく見れば燃えている部分だけを切り離して燃えていない部分を集めて体を再構成しようとしているのがわかる。
「させるか!焼き尽くしてやる!」
復活を阻止しようと接近するが、地面に広がった奴の崩れた体の一部から次々と巨大な爪が生えてきては宙に浮かび、俺の行く手を遮って来る。
同時に出現する爪の数は十本までっぽいが、一本一本がめちゃくちゃ長い爪がこうもブンブンと飛び回って爆発するとなるとまともに接近することができない。
「それならまとめて吹き飛ばしてやるよ……!」
「狐火隠顕」を発動。「フリッカー」が元になっているこのスキルは回避を行えば俺の体が黒い火に包まれ、火が周囲に飛び散るのと同時に姿が消える。そして散らばった火のうちどれかから再出現するという攪乱性能がかなり高いスキルとなっている。勿論スタミナを消費し続けて連続発動も可能だ。
「フリッカー」と異なり、回避しようとした瞬間から姿が消える上に飛び散った火はゆらゆらと揺れながら移動するので回避先の予測は困難となっている。
宙に浮かぶ爪の隙間をスルスルと抜け、狐火に騙され見当違いの場所で爆発する爪を横目に復活途中の奴の前に立つ。
復活途中の奴をよく観察すれば、崩れている体の中に真っ黒で巨大な剣のようなものがあるのが見える。あれが弱点というか本体かな?
「ぶっ飛ばしてゴフッ!?」
俺の口から黒いポリゴンが噴き出し、一瞬動きが硬直する。
それと同時に表示された「真竜の呪い:フェーズⅣ」の文字。だが──
「こんな呪いで……いや、
「……!」
まあ殆ど装備のおかげではあるのだが、その素材は俺が用意したんだ。これくらい言わせてくれ。
墓守呪業【
「お前の弱点はよくわからんが、魔力ごと燃やせば大体の奴は死ぬのはわかっている!」
この世界、兎に角魔力が大事っぽいからな。魔力を燃やすというのはじゃんけんで相手を直接グーで殴り倒すレベルで有効な手段と言える。
「汚物は消毒だ!!!【
魔力を燃やす灼熱の黄金を解き放ち、灰色の世界を黄金に染め上げる。
「……!」
俺の背後から襲い掛かろうとしていた爪も余波に呑まれて光の中に消えてゆく。
このスキル、味方を強化する要素があるからか、この攻撃範囲で自分含めてフレンドリーファイアが発生しないというかなりインチキ仕様になっているからな。背後の敵もこの通りだ。
「ゲホッ、ゲホッ……喉が痺れる……」
MPが切れてブレスが中断される。
今の俺は多分頭が蒼く燃えて刀が青黒く燃えて全身が黄金と黒が混ざった炎で燃えている漆黒の巨人のような見た目になっているんだろうな。化け物というかそういう怪奇現象か何かだろこれ。
黄金の炎で焼かれた奴の体がどんどん縮んでゆく。
かなり細かくバラバラになった奴の体の一部をよく見れば、それは真っ黒で小さな鼠と蝙蝠と蜥蜴を合体させたようなキメラの集合体だったことに気が付く。気づかない方が良かったかもしれない……
小さいパーツからどんどん燃え尽きてゆき、遂に残るは奴のマスクと胴体のほんの一部となった。
しかしそれでもまだ戦うつもりなのか、残された奴の一部が本体らしき剣に纏わりついて何かをしようとしている
「えいっ」
搗星を突き刺せばあっさりと燃え上がり、残っていた体も完全に崩壊する。
そして、そこには一本の漆黒の大剣と体を失ったマスクだけが残された。
「ムンクさんもとんでもない物を作ったものだな……」
こういうイベントがあるなら事前に教えて欲しかった……まあたまにはこういうサプライズも悪くは……いややっぱり事前に教えて欲しいわ。
搗星をインベントリに収納して地面に突き刺さっている剣の柄を握る。相変わらずとても軽い。
「これからもよろしくな、ファントム」
剣を引き抜けばそれがトドメとなったのか、残されていた奴のマスクが砕け散り、灰色の空へと溶けて消えた。
『
『調伏対象:
『竜狩りが終了しました』
『称号【真竜の調伏者】を獲得しました』
『武器【
両手剣
二つで一つの剣は深匠の手で完全に一つとなった。
目を逸らさずに恐怖の闇を見つめ続けた者だけが、その先に真実の光を見出せる。
我は汝と共に産まれ、そしていつかは脱ぎ捨てられる
なれば汝が風と共に去るその時まで、我は汝と共に歩み続けよう。
幾度死せど歩みを止めぬ
・この剣を装備した者はこの剣の所有権を有している限り死亡するまで1秒毎に最大HPの10%のダメージを受ける。
・この剣を装備した者はこの剣の所有権を有している限り死亡するまで肉体の元々のSTR・DEX・AGI・TEC・VIT・LUCが10%低下する。
・この剣の所有者は所有権を放棄しない限り永続的に「特殊状態:
・この剣の所有権は「
・この剣の所有者が死亡した場合、この剣は消滅して「ぶんぶん丸」のインベントリ内に再出現する。
・この剣が全て消滅した場合、一定時間後に「ぶんぶん丸」のインベントリ内にこの剣が1本再出現する。
・この剣の耐久値は時間経過で自動的に回復する。
・この剣は霊体に干渉できる。
・この剣は物理ダメージを与えることができない。
・攻撃を命中させると対象に破壊属性を持つ暗黒属性のダメージを与える。
・攻撃を命中させると対象に「真竜の呪い」を蓄積する。
・攻撃の命中時、確率で対象の所持品を一時的に汚染する。(インベントリ内のアイテムもランダムに汚染される。汚染されたアイテムを使用すると「真竜の呪い」が蓄積される)
・攻撃の命中時、対象が「真竜の呪い」を発症していた場合、対象は現在のHPとスタミナとVITとLUCで判定を行い、判定に失敗した場合硬直する。致命的失敗の場合即死する。
・攻撃の命中時、使用者のレベルから対象のレベルを引いた数値の確率で即死させる。
・「
・【竜威解放】:ファントム……その戦闘中、全ての「
・【
・【
・【
・【
※特殊状態「呪血」……対象の血が黒くなり、全身に黒い痣が浮かび上がる。アンデッド系モンスターとドラゴン系モンスターとの遭遇率に補正がかかる。他の呪いと病に対して抵抗を得る。NPCとの会話で補正がかかる。
※状態異常「真竜の呪い」……発症した相手のHPとスタミナが減少し続け、全耐性と全ステータスが低下し、激しい苦痛を与える。この状態異常を発症している状態で更に「真竜の呪い」が蓄積された場合、症状が進行する。10秒毎に対象の現在のHPとスタミナとVITとLUCで判定を行い、判定の結果によって症状が回復、または進行する。フェーズⅣの判定で致命的失敗を出した場合対象は即死する。この状態異常を発症した状態で死亡した場合、一定時間その場に死体が残る。
……で、どうやったらここから出れるの?
主人公が一人で割とあっさり倒せたのは、ファントムが生まれてからまだ数ヶ月も経っていない上に装備込みでほぼ完璧に使いこなしていたとサーバーが判断して、主人公と相性が良い性能になるようにファントムが生成されたから&主人公が集団相手(ほぼ蠍)に使いまくっていたので対集団に特化した性能になっていたから
これが英傑武器みたいな生まれてから数百、数千年経っているような武器だとヤバいことになります
正攻法のファントムの倒し方
最初の状態では殆どダメージが通らない上にスキルや魔法が大体弾かれるので、最初は仮面を集中狙いします
仮面にだけ普通にダメージが通ります。ファントムは仮面へのダメージを嫌がります
↓
仮面の破壊に成功するとファントムが発狂モードに入りますが、解析系のスキルや魔法が通るようになります。解析を行う度に少しずつ情報が明らかとなり、属性耐性が緩和されます
物理耐性はほぼ無効のまま変わりません
発狂モードのファントムは対策をしていないと一定範囲内に入られるだけで心臓麻痺判定を絶え間なく押し付けてきます
↓
最後まで解析すると錬金術師の【緊急錬成】で特効薬が調合できるようになります。これで呪いを治療したり投げつけてダメージを与えたりできるようになります
貴方が錬金術師ではない場合、属性攻撃で気合で削り切ってください
なお、ファントムはピンチになると超上空に逃げます
因みにテイムモンスターとか人形とかを持ち込むと、お互いがお互いに呪いを撒き散らすようになるので症状の進行が加速し、しかもどれか一体が死んだ瞬間ファントムが増えるというトラップが仕掛けられています。ソロ推奨です
ファントムの正体は「伝染病」です
「真竜の呪い」は半分は呪いなので呪い対策をすると症状の進行速度が半減しますが、もう半分は病なので
その体はとても小さなマナ粒子や菌に近い性質を持つ竜の集合体であり、バラバラにされても数が減っても直ぐに元通りに戻ってしまいますが、その再生力の代償として「マナに直接干渉する攻撃」にめっぽう弱いという弱点があります
特に「マナを燃やす毒」や「マナを滅却する灼熱」などは天敵中の天敵です。HPは控えめなのでこれらの耐性を貫通する攻撃手段があればギミック無視での攻略も不可能ではありません
因みに覇槍ルーヴァルで突っつくと即死します。竜特効+放射線殺菌なので
ファントムという名前にはオペラ座の怪人(ファントム・オブ・ジ・オペラ)やF-4戦闘機(ファントムII)が含まれています
怪人の仮面がペストマスクと繋がっていたり、ミサイルキャリアと保菌者を指すキャリアが繋がっていたりします