シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
ノリと勢いで書いているからこうなる
「……お?」
「戻ったか」
急にまた闇に包まれたと思ったら、ムンクさんの工房に戻ってきていた。
今のは何だったのか……夢?じゃないよな、ファントム持っているし。
「あの……何だったんですかさっきの?」
「ハッ……少し驚かせてやろうといきなり送り込んだのは悪かった。説明してやろう」
ムンクさんは何が起こるのかわかっていたようだ。割とガチで死にかけたぞ……
「その前にまず、俺の職業について詳しく説明していなかったな。俺は今「深匠」という職に就いている。名匠と呪啓者の複合職だと思えばいい」
呪啓者って三つも派生があったのか。名匠は鍛冶師の最上位職だったっけ?
「深匠の存在は知ってはいたんだが、長い間どうやったらソレになれるのかは分からんかった……だが、この前お前さんから素材を預かったその時、突然「深化」というモンを思いついてな……実際にやってみたらできちまった。そして気づけば俺は深匠となっていたのよ……」
「割と最近の話なんですね」
「ああ。お前さんがいなければ、俺はこの領域に到達する前に死んでたかもしれんな。あんがとよ」
なんか知らんうちにNPCの重要そうなイベントが進んでいるような気がする。
シャンフロのリアリティはたまにゲーム的にはあまり良くない方向に働く。
普通のゲームなら過去回想が流れたり、プレイヤーがつきっきりの時だけイベントが進んだりするものだが、シャンフロのNPCは常に生きているように動くせいで、イベントが知らん間に進んでいつの間にか終わっていて、結果だけ知らされるみたいなことが偶に起こるし過去回想が流れたりもしないのだ。
まあ会話が上手い人なら自分がいない間に何が起こったのかをしっかり聞き出せるんだろうけどね。俺には無理だ。
「話を戻そう。深匠になると「深化」という特殊な強化ができるようになる……呪われた武器が持つ何かしらの性質、その内どれかを深堀りしてより際立たせるモンだと思えばいい。その代わりにそれ以外の性質が浅くなっちまうがな」
言われてみればこのファントム、首を斬り落とす能力とかいろんな状態異常を付与する能力とかが失われている。代わりに際立った性質は恐らく「病」なのだろう。
幸いなことに首切り能力が失われた影響か首から常時出血することはなくなったようで、どれだけ変装しても首からの出血でバレる問題は一応解決した。その代わりに血が黒くなった影響か肌がだいぶ暗い色になっているのだが……
「深化を繰り返し行ってると、その武器が持つ呪いがより深刻なものとなる……呪いが恐怖を呼び、その果てに宿った恐怖が姿形を持つようになる……「真なる竜種」としてな」
「真なる竜種……?」
「ソレについて詳しいことは俺にもわからん。遥か昔、その領域にまで辿り着いたという深匠がいたようでな、その者が残していた日記にその名が記されていた……どうやらその深匠は三本目の深化で恐怖を武器の形に押し止めるのに失敗したようでな。自らが鍛えた竜に食い殺されたと言い伝えられている」
「ヒエェ……」
しれっと俺が知らない間にムンクさんが最悪死亡の危険な橋を渡っていることが判明した。というか制御に失敗してあのドラゴンが外に出ていたら最悪フィフティシアでパンデミックが起こっていたのでは?
「武器の形に押し止めても、そいつが荒れ狂う竜であることに変わりはない……故に「調伏」して従えさせる必要があるわけだ。お前さんがさっきしてきたことがそれよ」
「なるほど……?」
調伏に成功したからなのか、呪いの内容が割と大人しく……なったのかこれ?
なんか倒す度に数が増えるとか書いてあるし、数が増えても重複しない部分にはわざわざ重複しないと書いてあることを考えると、そう書かれていないデメリット効果は増えた分だけ重複して最終的に毎秒最大HPの100%ダメージ&STR・DEX・AGI・TEC・VIT・LUCが100%ダウンになるのでは?
まあその辺りは実際に使ってみて検証してみるしかないだろう。
うーんやりたいことが一気に増えたな……
形状はこれまでと同じ両刃の特大剣だが、今までの鞘に納めたままの剣のような見た目のアンバランスさは無くなり、全体的にスマートになっている。
細くなったからなのか元々とても軽かったのに更に軽くなっており、強い風が吹いたらそのまま飛んでいってしまいそうだ。
「まあ、何はともあれ……改めて、これからもよろしくな」
ブルブル……
「……今返事しませんでしたかコイツ?」
「剣の形になっているだけの竜だしな。そういうこともあるだろうよ」
えぇ……ネレイスちゃんの亜種的なものになっているのコイツ?だったら呪うの止めてくれないかな……
……
…………
………………
新しい装備を手に入れた瞬間、それを試す瞬間というものはいくつになっても心が躍る。
「うぎゃーッ!?」
体が粉々になって弾け飛んだ。これで記念すべき百回目の死だ。
「お、思っていた数百倍ヤバいぞコレは……」
心肺機能と封臓とかいう謎の機能の活性化……その影響なのかスタミナとMPが高速で回復してリキャストタイムが大幅に短縮されるのはとても便利だ。
体に負荷がかかっているのかダメージを受け続けるのもまあ許容範囲内だ。そのくらいのデメリットはあるだろうと思っていた。
だがそれ以上に問題なのが──
ブチブチブチッ!!
全身の関節一つ一つが千度くらい回転して死んだ。
このアクセサリー、スキルと魔法に加えて、恐らく魔力を使用するあらゆる行動の出力が跳ね上がるのだ。
補助スキルや魔法を使えばHPがゴリゴリ削れ、攻撃スキルや回避スキルを使えば制御を少しミスった瞬間空中で大回転することになる。
そして
ズドォオオオオン!!!
地面に頭を思いっきり打ち付けて頭が破裂した。
このようにほんの僅かにでも関節を動かそうとすればそのモーションが数百倍に増幅されて死に至る。
「これは……流石に同時起動は無理だな……」
同時に使うにしても自滅覚悟で一瞬だけといった使い方になるだろう。
ただスキルや魔法の出力が大幅にアップするというのはかなり強力な効果だ。
それに
そしてここまで自殺を繰り返していたことでファントムの「
とりあえず検証のためにインベントリから十本全部出してみる。
当然装備できるのは両手で二本までなので残り八本は床に落ちる。相変わらず見た目のわりに音が軽い。
「浮かせる魔法は……【
その一言で床に落ちていた八本と手に持っていた二本がふわりと浮かび上がる。
えーっと、オート操作とマニュアル操作が可能なのか……って
「うわっ、MP消費エグっ!?」
発動中ずっとMPを消費するタイプらしく、物凄い勢いでMPが減少している。
MPを回復するアクセサリーで常に回復させ続けているのにMPの減少が止まらない。
「同時操作の本数で消費MPが変わるのか?……よかった、一本だけなら回復量の方が上だ」
常時十本操作でフルパワーとはいかないようだ。MP回復ポーションがぶ飲みもインベントリを圧迫するからな……
それと今の検証で十本全部装備したという扱いになったようで、HPバーが激しいダメージとそれをギリギリ上回る回復でガタガタと荒ぶり始めた。
試しにこの状態のまま
金月晶の
同じカテゴリのアクセサリーで同じ効果の物を同時に装備してもその効果が発揮されないらしいが、
その答えは俺にはわからないが、それよりもアクセサリースロットの圧迫がヤバい。
封卵の
金月晶の
もう五つスロットが埋まってしまった。
効果が強力で
というか今気が付いたのだがファントムって装備条件ないのか。まあこれは
黒死の
「先は長いな……」
経験値はファントムの検証のついでに稼ぐとして、折角剣聖みたいなことができるようになったんだし、浮遊させた剣を制御する練習もしないとな。
「検証は地道にやっていくとして、他になんかやるべきことがあったような……」
情報の洪水でパンクしそうになっていた頭を整理する。
えーっと、何かやり残していたことは……
……
…………
………………
はい、やってまいりました。久しぶりの栄古斉衰の死火口湖でございます。
「一度は潜ってみたいと思ってたんだよね」
折角手に入れた装備に水圧耐性が付いているのだから使わないのは勿体ない。
登山の途中で遭遇したモンスターもプレイヤーも威圧感だけで逃げてゆくので検証とか全然できなかったが、それはまあいいだろう。平和なのはいいことだ。
目の前に広がる火口湖には特にプレイヤーの姿は見当たらない。まあ普通に来ても泳ぐくらいしかすることないだろうしなここ。
ちょっと試しに湖に飛び込んで泳いでみて、防具が水を吸って重くなって、陸に上がろうにも上がれずにパニックになって溺れて死ぬプレイヤーが割といるらしい。シャンフロってリアルだなホント……
「それでは……レッツダイビング!」
おお、水の中も流石のシャンフロクオリティ。泡の一つ一つまで違和感なく物理演算が適用されている。
暗視効果で水中でもくっきりと見えるのだが、特にモンスターは生息していないのかな?それとも刻傷で逃げているだけ?
「
「……底が見えたな。特に何もなし?」
湖の底を良く探索してみるが、特にお宝があったりするわけではなさそうだ。
たまにプレイヤーが落としたと思われるアイテムが見つかりはするものの、特にレア物があるわけではない。
「んー……ゲーム的に何かしらの隠し要素がありそうなものなんだが……」
周囲を見回し、スキルを重ねて「
「おっ……亀裂?通れるかも」
火口の内側の壁の一部に人一人がギリギリ通れそうなサイズの亀裂があるのを見つけた。
なんかちょっと亀裂のでき方が不自然なような気もするが……とりあえず近づいてみる。
「ちょっと狭いな……「
体を小さくして中を覗いてみると、下に引っ張られる水の流れを感じられた。
試しにこの亀裂に向かって「
「あれ、なんだこれ?この下に空間があるのか?」
今自分が立っている湖の底。この下に空間が存在しているようで、この亀裂を通れば下側へ行けるようだ。
なんか不思議な地形だな……何というか、後からこの湖の底が作られたというか……もしかしたら火山が噴火しないように誰かが火口に押し込んだ栓だったりして……
「マグマ溜りにダイブとかは止めてくれよ……!」
その話は置いといて、行ける空間があるなら行ってみたくなるのがゲーマーというものだ。
念のためファントムを構えて亀裂の中へと飛び込んだ。
デカいのにこういう狭い所で引っかからないの便利だなファントム。都合よくすり抜けたりすり抜けなかったりしてくれる。
あ、待って結構流れ速ゴボボボボ……
ファントムはまだ生まれたばかりの赤ちゃんなのでこれから少しずつ物事を覚えて出来ることが増えていきます
因みに武器によって性格が違うのでその辺は運。性能的には凄く相性が良くても致命的に性格が合わなくて武器と喧嘩することになる可能性もあるコンテンツ
極僅かな手ぶれが増幅されまくって手首ドリルになってそのまま手首が捩じ切れるレベル。人間の体ではどう頑張っても制御不可能。もっと体が大きくて重くて頑丈であれば……