シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
折角だし三日連続で更新します
現在、経験値稼ぎ以外にすることがあんまりないのでムンクさんの鍛冶仕事を見学している。
今ムンクさんが鍛えているのはボロボロのルインヴァル……キラキラ輝く炉に突っ込まれた槍の穂が搗色の炎で熱せられている。
「とんでもない希少鉱石の数々!私でも燃やしてしまうのがもったいなく思えてしまうね……!」
「口よりも手を動かしな」
「はいはい」
アタランテさんもムンクさんの助手として参加している。
アタランテさんの職業は鍛冶師ではないが、昔からムンクさんの鍛冶仕事の手伝いをしていたそうだ。
昔、テレビアニメだったか映画だったか忘れたが、蒸気機関車を動かすのに次々と石炭の山をスコップで掬って炎の中へ放り込むシーンを見たことがあるのだが、大体あんな感じでアタランテさんが燃料を炉の中へと次々と焚べている……まあその燃料とはラピステリアなどのレア鉱石なのだが。
まるでダイヤモンドを燃料に蒸気機関車を走らせているかのような光景だが、こうして「価値」をルインヴァルに与える必要があるんだとか。ただ熱いだけではダメらしい。
作るのにかけた金で価値が決まるとは限らない。一億円かけても出来上がった物が一般的な割り箸一善ならどう頑張っても数百円以上の値段で売れはしないだろう。大赤字だ。
だがルインヴァルは違うそうだ。かけた金と鍛える人の技量次第で際限なく価値が上がり続ける。燃やせるのならばダイヤモンドを炉に突っ込めばダイヤモンド一つ分以上の価値が槍にプラスされるのだ。
つまり今から出来上がる物は誰が見ても数百億マーニの価値を認めるほどの槍ということになるわけだ……ヤバくね?
勿論ムンクさんの技量次第でそれ以下になる可能性はあるが、恐らくシャンフロ全体で見てもムンクさんを超える鍛冶師は殆ど存在しないだろう。エムルちゃんが言っていたビィねーちゃんや、掲示板でよく名前を見かける「聖槌」の所有者ならワンチャンあるくらいか。
なんかそこまで行くとどんな性能になるのか想像もつかないのだが、果たして俺にとってもそれだけの価値がある槍になるのだろうか?
暗い炎の中で白熱するボロボロの穂に次々と黄金が重ねられ、溶け込んでゆく。
恐るべき勢いで成長する黄金の水晶を内側に押し止めるように金槌が振るわれる……うーんファンタジー。
どう考えてもそのサイズには収まらないだろうとツッコみたくなるが、邪魔するわけにはいかないので黙っておく。
そんなこと考えている間にも次々と
金槌の音、水晶の音、希少な鉱石が次々と燃え尽きてゆく音……好きな人は好きなんだろうなこういうの。
まあ偶に派手に爆発音がするからちょっと心臓に悪いのだが。多分ローエンアンヴァが燃えて中身が出てきた音だと思う。
鍛えるだけではい完成とはならない。
価値というものは性能だけでなく、見た目の美しさによっても左右される。装飾も重要なのだ。
「ということでここからは私も参加するよぉ!」
「うわぁ!?」
突然工房にラローリーさんが現れたと思ったらどうやら装飾担当らしい。急に後ろから肩に手を置くのはやめてほしい。
今まで釘ばっかり作ってもらっていたけれど、そう言えばこの人装飾品全般作れる人なんだった。
その間にムンクさんは新しい柄や石突などのパーツを用意するそうだ。
「うーん、既にこの時点でこの槍の呪いがバンバン漏れ出しているねぇ……」
「そうなんですか?」
「開拓者には影響ないのかな?この槍、どうしても欲しくて欲しくてたまらなくなっちゃう呪いがあるみたい」
「なんと」
それってヤバくない?NPC限定っぽいが、これを持っていると命を狙われまくるのでは……
「そこは大丈夫だと思うよ。ぶんぶん丸くんに喧嘩挑もうなんて考える人がまずいないと思うからね。どれだけ価値があるお宝であっても、竜の
しれっと化け物扱いされたような気がするが、実際
新たな問題児が増えそうになっている現実に頭を抱え……そしてその時はやって来る。
「完成だ……これがかつての姿を取り戻した
「これが……おおっと!?」
「あぶなっ」
遂に復活した黄金に輝く穂を持つルインヴァルが俺に手渡され……見た目からは想像できないほどの軽さで逆にバランスを崩す。
ドゴンッ!
そしてうっかり石突で床を叩いてしまったのだが、今度はその逆。見た目以上の重さによって大きな重い音が工房に響く。床が凹んだ……
ファントムのように兎に角軽いのではなく、実際の重さと感じる重さが違うのか?性能を確認しよう。
ルインヴァル・リペア
槍
再起を果たした英傑の武器。槍に宿った真なる炎は呪われし槍に二つの道を照らし示す。
輝槍の光とは即ち価値の輝き、誰の目にも輝いて見える竜の心さえも奪う羨望の至宝。故にこそブリューナクとは全てを惹きつける魔魅の槍に他ならない。
・羨望の槍
ルインヴァルの所有権を有している間、NPCとの会話で補正がかかる。また、一部のモンスターのヘイトを集める。
・自在の槍
ルインヴァルの所有者が体感する負荷、重さ、長さ、大きさは所有者の望み通りになる。(ルインヴァルの価値とチャージした月光によって上限、下限が変動する)
・価値を授ける槍
ルインヴァルの所有権を有している間、所有者は追加のステータスポイントを獲得し、自由に振り分けられる。また、経験値、歴戦値、習熟値、感覚値、信頼値、野生値の獲得量に補正がかかる。(ルインヴァルの価値によって獲得ポイント、補正値が変動する)
・価値を喰らう槍
ルインヴァルは鉱石素材を収納できるインベントリを持つ。このインベントリ内の素材とチャージした月光を消費することでルインヴァルの耐久値を回復し、一時的に消費した素材に応じた追加効果を得る。(消費した素材の価値に応じてルインヴァルの価値が高まる)また、ルインヴァルで止めを刺した時、対象のレベルに応じてルインヴァルの価値が高まる。
・曇ること無き輝きの槍
ルインヴァルはあらゆるマイナス効果を受けない。また、継続的に耐久値を減少させるものに耐性を持つ。
・竜を屠る槍
特定カテゴリのモンスターに対するダメージ量を強化する。
『称号【
うん、ヤバいこと書いてあるなこれ。
要するにコレ、倉庫とかに入れておくだけで強くなれる槍ってことじゃん。所謂人権とか呼ばれるタイプのぶっ壊れアイテムじゃん……
しかも普通に槍として強くて使い続ければどんどん性能が上がってゆく。というか今獲得した称号からしてその価値は最低でも十億は超えているっぽいな……
そしてこの槍、装備条件が存在していない。恐らく「誰にとっても価値のある槍」として、どんなステータスであろうが装備できるようになっているようだ。
とりあえず追加のステータスポイントは全部スタミナに……あ、これ追加分は振り直し自由なんだ。スタミナ以外に振っても今の装備だとほぼ無意味だろうけど。
大きさは……手の平に収まるサイズから工房の壁から壁に届くサイズまで自由自在と。
当然片手で扱いやすいサイズにして振り回して、戦闘中に自分への負荷はそのままに突然リーチを伸ばすことも可能と。
「うん。ヤバいわこれ」
「ヤバいね。突然伸び縮みするだけでも恐ろしいのに、重さまで自由自在とはね。無敵の槍じゃないか」
しかもまだ月光のチャージが完了していない状態でこれだ。ここから更に強くなるのか……
しかもフレーバーテキストからしてこれ……
「その槍にはまだ先がある。その道は二つ……
リペアから更に先があると。もう現時点でかなり強いと思うのだが……
「
な、なんかだいぶむちゃくちゃなこと言っていないかそれ?というかそれをどうやって証明するんだ?
「
「その人とは……?」
「それは俺も知らん」
「私も知らない」
「私も」
つまりいろんなNPCと交流して情報を集めろと。はい無理!!!絶対に無理!!!
というかリバースの方もこれもしかして人前で槍を見せびらかすとかそういうのが必要なんじゃないか?無理なんだが???
「……このままでも十分強いし、気が向いたらでいいか……一生気が向かないだろうけど……」
「新人君は内気だなぁ」
なんかこう……特定のモンスターを倒せ!みたいな条件なら良かったんだけどなぁ……
というか普通、成し得なかった過去の解決って言ったら、かつて英傑が挑んだけど敗北したモンスターへのリベンジとかそういう内容になるでしょ。どんだけ目立ちたいんだよお前。
それは置いといてこの槍、システム的にも軽くしておけば片手で扱える槍という扱いになるようで俺でも装備できるのだが、それよりも気になるのが「あらゆるマイナス効果を受けない」という部分。これもしかして刻傷のデバフ効果を弾くのでは?
というわけでそれを検証するべく、ある程度の広さがある呪啓者ギルドにやってきた。
検証の手伝いをしてくれるのはアタランテさん。刻傷が装備に悪影響を及ぼすのは戦闘中だけなので、戦う相手が必要なのだ。
俺はルインヴァルを。アタランテさんは曲剣を構えて向かい合う。
「いつでもどうぞ」
「それでは……」
お互いの同意によってシステム的に戦闘状態となり、その瞬間左腕の刻傷からどす黒いエフェクトが漏れ出す。
黒い煙がルインヴァルへと伸びて……ルインヴァルが僅かに発光し、それを掻き消した。
「……完全無効ではないのか」
刻傷とルインヴァルの漆黒と黄金のエフェクトがぶつかり合い、それと同時にほんの少しずつだがルインヴァルの耐久値が削れている。
丁度良いので試しにルインヴァルにアムルシディアン・クォーツを食わせてみる。
「おお、黒くなった」
黒い鉱石を食べさせたからか、ルインヴァルの穂が黒く染まる。
正確な効果はわからないが、とりあえず耐久値は回復したので良しとする。
「それでは改めて……行きます!」
「検証の為の軽い勝負とは言え、負けるつもりはないよ!」
正直ちょっと気になっていたんだよね。この人がどのくらい強いのか。
そこも含めて検証といこうか。
価値の高まりに比例して性能もどんどんぶっ壊れになっていく槍。それがルインヴァル
……しかしこの槍、NPCがめちゃくちゃ欲しがるのである。一般NPCの鍛冶屋に渡すと高確率で持ち逃げされる
どれだけ隠して運用していても、いつの間にかNPCに存在がバレていて噂が広がりまくる
意地でも手放さないでいると裏社会でルインヴァル強奪クエストが発生するのでプレイヤーにもバレる
しかも騒ぎが大きくなりすぎると賞金狩人まで出てきて最悪の場合槍を処分されてしまう。賞金狩人が出てこない新大陸側だともっとヤバい騒ぎになる
実は数百億レベルまで価値を高めてしまうと街中のNPCが発狂して襲い掛かって来るようになってしまうので、そうなる前に呪啓者ギルド誰かが説得しに来る隠しイベントが発生する
なお、そのイベントが発生する基準となるラインは所有者の様々なマスクデータを参照して上下する仕様であり、この主人公はマスクデータの数値がぶっ飛んでいるのでこのイベントが発生しなかった
一般NPCから見ても今の主人公は財宝を抱えるドラゴンみたいなものなので、狂気すらも呑み込む威圧によって一周回って正気を保てている状態
運営は少しずつ素材を追加したりモンスターを倒したりして価値を徐々に高めていくうちに、それと同時に強くなっていく呪いに翻弄されるようになり、それをどう対処するかで四苦八苦する流れを想定していたのだが、主人公が超高額素材を乱獲しつつ、更にピンポイントでそれを燃やせる化石属性武器を持っていたせいその過程がすっ飛ばされてこうなった