シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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暴徒と談合

 遂にこの日が来てしまった。

 今日は旅狼と黒狼とニトロ製薬の三クランによる談合が行われる日である。

 

 ニトロ製薬からはリーダーと俺の二人が参加することになっている。

 というわけで現在俺はリーダーが来るのを談合場所であり黒狼の拠点でもある黒狼館の前で待っているのだが……

 

「視線が……」

 

 現在の俺は男モードなので冥王装(チオハヤク)シリーズ一式で身に包んでいるのだが、これがまあ目立つ。

 だって頭が燃えていて体からは稲妻を放っているのだから。どう考えても目立つ。目立ちすぎてもう人だかりに囲まれている状態だ。

 

 

 

「あれぶんぶん丸じゃん!」

 

「誰か声かけてみてよ」

 

「嫌だよ殺されるってアレ……」

 

「噂で聞いていた百倍は禍々しいんだけど」

 

「絶対キレてるってアレ……」

 

「なんで黒狼館の前に?」

 

「燃えてる……」

 

「この空気の中入れない……談合に遅刻しちゃう……」

 

 

 

 視線を向けると目を逸らされる。

 一周回って誰からも声をかけられないのはこの装備の良い所だな。

 

 でもこのままだとリーダーも黒狼の人も困るだろうし……しかし追い払う勇気もない……

 

 ちょっと威圧したら散ってくれないかなと考え、溜め込んでいた蒼雷を少し放出する。

 誰にも当たらないように俺の直ぐ側に蒼い稲妻を落として音と光で威圧してみると、プレイヤー達が悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 

「あ、あわわ……!?」

 

「……黒狼の人、ですか?」

 

「殺さないでぇ……!」

 

「あの、談合遅れちゃいますよ……?」

 

「談合……?あっ!?」

 

 スッ転んで震えていた女性に声をかけるとやっぱり黒狼の人だったようで、黒狼館の中へと飛び込んで行った。

 

「そろそろ来ると思うんだが……」

 

 インベントリの整理をしながら更に待ち続けること数分。

 そこにやってきたのは知り合いではあるがリーダーではない人達。

 

「ペンシルゴン、目的地の前に化け物がいるんだけど?」

 

「カッツォ君よく見て。ぶんぶん丸君だよアレ」

 

「え?……あ、マジじゃん」

 

 ペンシルゴンとオイカッツォ。旅狼のメンバーであり共にウェザエモンに挑んだ二人である。

 サンラクが見当たらないが、その代わりに見慣れないメンバーが一人。

 

「君がぶんぶん丸?聞いてた話では全身真っ黒な犬頭だったんだけど、防具変えたの?」

 

 その女性プレイヤーの頭の上で揺れているそれは普通のプレイヤーには存在しないものだった。

 俺の犬面とは違う、明らかに頭から生えている獣耳。どうやらこのゲーム、何かしらの手段で種族の変更が可能らしい。

 

「頭燃えてるけど、それが深海のモンスターの防具なの?青い炎も雷も使ってくるモンスターを見たこと無いし」

 

 なんかめっちゃ話しかけてくるこの人……しかもプレイヤーキラーじゃん。怖い……!

 

「グルルルル……!」(精一杯の威嚇)

 

「お、やる?」

 

 くっ、戦闘狂タイプかこの人。その刀をチャキチャキするの怖いからやめてほしい。

 

「今から談合があるんだから止めておきなさい。ぶんぶん丸君も出席するんだから」

 

「そうだったね。ニトロ製薬の人なんだっけ?あそこ錬金術師のクランだったと思うんだけど、錬金術師なの?」

 

「……錬金術師ではありませんよ」

 

「ふぅん?何か特別な事情がありそうだね?」

 

 今の俺は隠し職業でメインもサブも埋めているから何も話せない。

 因みに舞闘術士(マーシャルダンサー)についてはリーダーに報告済みである。

 

「これはこれは、旅狼の皆さんお揃いのようで……」

 

 この人を早くなんとかしてくれないかと心の中で祈っていると、聞き覚えのある胡散臭いけど安心感のある声が聞こえてきた。

 

「リーダー!」

 

「うわっ……ビックリした、ぶんぶん丸くんだったか。ちょっと見ていない間に……立派に?なったねぇ……あつっ!?」

 

「あ、これダメージ判定あります」

 

「触れるもの全てを傷つけてしまうタイプの悲しきモンスターかな?」

 

 頭だけじゃなくてそれ以外の部分も迂闊に触れようものなら相手が感電するからなコレ。レインさんが結晶に触って感電していたから間違いない。

 因みに頭の炎や体の電気は任意でダメージ判定を消すこともできる。じゃないと横になるだけで大火事になっちゃうからね。それでも自分はダメージを受け続けるけど。

 

 サンラクは遅れて来るようなのでそのまま五人で黒狼館に入る。

 入った瞬間、中で俺達が来るのを待っていた黒狼メンバーの視線が突き刺さる。中には咄嗟に武器に手を伸ばしたメンバーも……

 

「戦いに来たわけでは無いのに……」

 

「その顔で言われても説得力あんまりないよね」

 

「他の防具無いの?」

 

「今装備できるのはこれだけですよ。顔は晒したくないので……アバターとは言え恥ずかしくて……」

 

「その顔でそんなセリフ言われても怖いだけだよ」

 

「素顔を見たからには死んでもらう……とか言いそう」

 

「見せましょうか?素顔」

 

 その時──

 

「だっしゃらーっ!!」

 

「!?」

 

 黒狼館の二階の窓を突き破り、吹き抜けから落下してきたのはルルイアスでも見た半裸の女……サンラクだった。

 

「ええ……」

 

 遅刻ギリギリだからといってだいぶめちゃくちゃなことするなコイツ……

 まあそのおかげで注目が俺から外れたから良しとしよう。

 

「ふぅ……セー……うおっ!?二属性シャチ!?」

 

「ぶんぶん丸です」

 

「えっ?あ、ぶんぶん丸氏だったか……アイツの素材で防具作るとそうなるのか」

 

 やっぱりこれ頭を燃やす必要はないんじゃないかな……

 

 というわけで無事?時間通りに三クランによる談合が開始された。

 

 最初の議題は旅狼の京極というさっきの獣耳プレイヤーが黒狼メンバーをPKしたことによるアイテムのあれやこれや……

 俺達には関係なさそうなので適当に聞き流しておく。

 

 PKはゲーム的には一応正当な手段によるアイテムの所有権の移動なので返してほしければ金を払え、ぶっ飛ばされたくなかったら値引きしろ、みたいなやり取りを旅狼のトップであるペンシルゴンと黒狼のトップであるサイガ-100がしている。

 俺はこういうやり取りが苦手なので、幕末だと一切交渉せずに自分が死ぬまで相手を殺し続けるスタイルだ。交渉よりも天誅である。

 

 納得できずに怒鳴る装備が貧相な黒狼メンバーを京極が理論武装しながら全力で煽り、黒狼をギスギスさせてゆく。

 黒狼の内部分裂が目的とは言え随分とノリノリだな……PKを積極的にするプレイヤーなんて大体そんなもんか。

 

 そして次の議題は……おや?あの威圧感のあるフルプレートアーマーは……

 

「あー……どうも」

 

「……その……遅れて、ごめんなさい……」

 

 遅れて談合場所に現れたのはいろんな意味で今回の騒動の中心人物であるサイガ-0。

 そういや黒狼のトップと名前の雰囲気が似ているが、リアルで知り合いだったりするのかな?

 だとするとリアルの方でも凄く気まずい雰囲気になっていそうだ。

 

 話を戻して、次の議題は旅狼とニトロ製薬は何故同盟を無視して黒狼に無断で影リュカオーンを含むユニークモンスターの撃破をしたのか。というものだ。

 

「俺そもそも同盟を組んでいたという話を全く聞いていないんですけど?」(小声)

 

「うちのクランは人数が多いから情報の伝達に時間がかかってね……まさかそのちょっとしたタイムラグの間に二体もユニークモンスターを撃破しているとは思わなかったねぇ……これに関しては真っ先に君に連絡しなかったうちの落ち度だけど……」(小声)

 

 何故か頭装備を魚の覆面に変更したサンラクが弁明を始める。

 

 サンラク曰く、リュカオーンもクターニッドも完全に不慮の事故。

 待ち合わせ場所に急いでいる時に偶然リュカオーンと遭遇してしまい、やむを得ずに交戦。そして撃破。

 そしてサイガ-0と俺がその証人である……と。

 

「うちのミスはなんとか誤魔化せそうだねぇ……」(小声)

 

 黙っていれば意外と何とかなる時もある。でも何とかならない時の方が多いから手遅れになる前に報告しよう。社会人になると嫌でも実感することになるぞ!

 

「リュカオーンがそんな簡単に倒せるわけないだろうが! どんなチートを使ったのか白状しろよ!」

 

「チート、チートねぇ……面白い冗談だ、ネット芸人に向いてるよお前」

 

「んだと……!」

 

 おーバチバチやってるなぁ。

 

 シャンフロのチート対策って凄いらしいね。世界的なハッカー集団がガチでハッキングしようとしてもどうにもならないシステムを素人がどうにかできるはずもない。

 チートを使えば一瞬でVR機器本体ごとBANだそうだ。

 

 チート対策は大切だ。俺の勤めている会社のゲームはクリアを目指すというよりも、どこまでスコアを伸ばせるかのスコアアタック的な要素が大きいゲームが多い。なのでチーターが現れるとスコアランキングがめちゃくちゃになってランキング更新を狙うプレイヤーのやる気が損なわれてしまう。

 善良なプレイヤーはそれを対策しない会社の次回作を買おうという気持ちになるのだろうか?ならないだろう。

 

 因みに同じ理由で俺は自分の会社のゲームをやるなと言われてしまっている。カンストスコアや理論値スコアを出しちゃうとランキングにチーターがいる!って苦情が来ちゃうんだよな……

 

「まぁ、誰にでも秘密はあるもんだが同盟を結ぶ間柄だし教えるか。俺は単体でレイ氏のアルマゲドンに匹敵する火力を持っている」

 

 サンラクが黒狼メンバーを威嚇して黙らせてから話を続ける。

 恐らくその火力とはリュカオーン戦で見せたリュカオーンの顎を粉砕したあのパンチのことだろう。

 

 おっとサンラクの視線がこっちに。

 それにつられてみんなの視線が集まってしまう。俺も話さなきゃダメ?

 

「……俺にも、切り札がいくつか、あります……」

 

「それは以前、フォルティアンの闘技場を吹き飛ばしたというあの技か?」

 

 そう言えばあったなそんなこと……

 

「その技は色々あって使えなくなっちゃいましたが……それ以上の威力の技が、あと五つくらいあります……」

 

「五つも……?」

 

「はい。口からビームを出せます」

 

「えっ」

 

「ぶんぶん丸氏はマジで口からビーム出せるぞ。それでリュカオーンもクターニッドもボコボコにしたからな」

 

「リュカオーンを……」

 

「怪獣かな?」

 

「それ魔法なの?スキルなの?」

 

「これ以上は秘密ということで……」

 

 もう疲れた……俺としてはこれだけの人数を前にして言葉を発することができたのがもう既に奇跡に近い。

 大人数に注目されると言葉が出てこなくなってしまうのは社会人になっても全然治らなかった。もう帰りたい……




この時主人公の捜索掲示板では主人公が黒狼館を襲撃したとか噂されている

主人公が勤めている会社は元々は医療用VRソフトの研究開発を行っていた企業であり、幼い頃の主人公がこのVRソフトを使用した治療を受けたことがきっかけで主人公はVRに強い興味を持ち、将来はその会社に就職することを決めていた。プロゲーマーの道が見えてもその会社に就職することを優先するレベル
因みに主人公はこの会社に近い社宅に住んでいる

その会社は後に医療用VRソフト開発の経験を生かして家庭用VRゲームソフトの開発にも手を出し始めたのだが、最初はゲームバランスが極端すぎてそんなに売れていなかった。サンラクが大絶賛するソフトも何本か世に送り出しちゃっている
そんな時にこの会社のソフトに助けられて、プロゲーマーの道を蹴ってでもこの会社を選んだ主人公が面接を受けに来て……この話を真面目に書くと長いのでここまで

仕事には業務用VRツールが一部で採用されており、横になってVR空間内での仕事を可能にしている。VR内でVRソフトを疑似的に起動してフルダイブしたままテストすることも可能
VR空間なので瞬間移動したり必要な書類を目の前に出現させたりと自由自在で肉体の疲労も溜まらないが、長時間の連続フルダイブが脳に与える影響がまだハッキリとしていなかったり寝たままの仕事で肉体が衰えたりと、まだまだ課題が多いのであまり普及していない

なお主人公は納期がヤバくなるとライオットブラッドでブーストしてから思考入力モードで複数窓同時プログラミングという人間離れしたことをし始めるのでその度に周囲からドン引きされている
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