シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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暴徒と逃亡

 なんやかんやあったが一先ず談合は終わり、解散となった。が……

 

「うおおおお離せええええ! ジュネーヴ条約違反だぁぁぁあああ!」

 

「恐ろしく体が怠い……」

 

 俺は現在サンラクと一緒に拘束されている。

 拘束されているサンラクに気を取られていたらリーダーに突然謎のポーションを投げつけられて、その直後に突然動けなくなってしまった。

 

「フフフ……ぶんぶん丸くんメタのデバフポーションさ!効果が通ればスタミナが即座に0になって動けなくなる特製の硬直ポーションだよ」

 

「何それエグい……」

 

「ぶんぶん丸くんは目を離したら直ぐにいなくなっちゃうからねぇ……直ぐに終わると思うからそれまで我慢してね」

 

 まあ俺も咆哮で似たようなことはできるが、あれが流通したら面倒なことになりそうだな……

 

 そこまでして俺を拘束した理由だが、どうやら聖盾輝士団だか聖女ちゃん親衛隊だかのトップが俺とサンラクに用があるとのこと。

 なんで聖盾輝士団が今回の七クラン連盟に参加してくれたのかと言えば、その狙いは俺達二人だったらしい。

 

 因みにクラン名が二つあるのではなくて、聖盾輝士団というこの世界に元々あったNPCの組織に聖女ちゃん親衛隊というプレイヤーのクランがそのまま入ったということなんだとか。

 

 で、その用というのが、聖女ちゃんなる人物が俺とサンラクに興味があるようで、代わりに聖女ちゃん親衛隊が探していたそうだ。

 ただ俺の方に関しては聖盾輝士団のNPCが全力で俺が聖女ちゃんに接近するのを阻止しようとしているようで、そのあまりの必死さの理由が気になったジョゼットが個人的に俺を探していたらしい。

 

 なんか上の空なサンラクは置いといて、話せる範囲内でその理由について説明する。

 

「俺は呪いの装備を持っていまして、その呪いの中にはユニークモンスターの呪い(マーキング)のようにNPCからの印象に影響を与えるものもあるんです」

 

「ふむ、続けて?」

 

 声が渋すぎる魔法少女がしれっと会話に混ざっている。

 この人はライブラリというクランのトップだったか。見た目と声のギャップが強烈すぎる人として話題になっていたのを見たことがある。

 確か俺がよく閲覧しているシャンフロの攻略サイトの運営もこのクランだったな。

 

「続けてと言われましても、それ以上でもそれ以下でもないといいますか……特別な素材を使ったわけでもないですし、本当に偶然強すぎる呪いの武器ができてしまって、それを使い続けていたらNPCからの印象が地の底に落ちてしまった感じで、悪いことは殆どしていません……」

 

「その武器を見せてもらうことは可能だろうか?」

 

 ではメニューを操作して……腕が動かねぇ!

 スタミナが多すぎてまだ硬直状態が続いている……あ、そういえばアイツ、声に反応するっぽいんだよな。名前を呼んだら自力で出てこないかな。

 

「……ファントム、自力で出てこれるか?」(小声)

 

 試しにやってみた。

 

カラカラカラカララララ……

 

 できた。十本全部出てきた。数を指定しなかった俺が悪かった。

 

「同じ武器が……十本?」

 

「同時に出てくるということは、双剣のように複数本で一つという扱いなのだろうか?しかし十本の剣を同時に扱うことはできないはず……」

 

「ふ、増えてる……」

 

 あ、リーダーが聞いてないんですけど?って顔でこっちを見ている。

 でも武器のことまでいちいち報告するのも面倒だしなぁ……

 

「呪いの剣ねぇ……うわっ!?」

 

「動いた!?」

 

 ジョゼットが地面に落ちているファントムを一つ拾い上げようとしたその時、ファントムがブルブルと震えだして慌てて手を引っ込める。

 その直後、ファントムが全て独りでに浮遊して俺の直ぐ側の地面に突き刺さった。

 

「剣が浮いた……剣聖なの?」

 

「あー……まあ、そんな感じ、です……」

 

「ふむ、剣聖専用の十本セットの剣……その効果は?」

 

 助けてリーダー。このままだと延々と追及されそうだし、ファントムは俺のMPを勝手に使って動くしでストレスで頭が爆発しそうだ。

 

「これ以上は……えー、ニトロ製薬が抱えているユニークにも関係してくるので……」

 

「ここから先の情報が欲しかったらニトロ製薬のリーダーであるうちに話を通してもらわないとねぇ」

 

 リーダーによってファントムへの追及は止まったが、このままここにいてはまた別の事で延々と質問され続けることになる可能性が高い。多分キョージュはそういうタイプの人間だ。

 スタミナは全回復していないが、逃げるのに十分な量は回復している。というわけで灼毒馬釘(ソーマ=スタング)(スペリオル)を起動して、関節を強引に動かす。

 

「俺は代表戦に備えてやることがあるのでこの辺で……」

 

「あ、逃げた!」

 

「速っ!?」

 

「見た目だけじゃなくて走り方も犬なんだ……」

 

 倒れ伏した姿勢から犬のように四足歩行で全速力で駆けだす。

 ファントムは【渡鴉(キャリア)】で回収し、追い付かれないように裏路地を跳ね回る。

 

 もう何回目だろうな、裏路地で追跡を振り切るの……

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 サードレマはエリアが三つに分かれており、一番偉い人がいる城郭エリア、上級階層が住む上層エリア、庶民が住む下層エリアが存在する。

 普通のプレイヤーは下層エリアしか自由に行き来できないのだが、偉い人の許可証があればプレイヤーも上層エリアに行くことができる。

 

 そう、許可証さえあれば俺みたいな不審者を超えた何かであっても上層エリアに行けてしまうのだ。

 実際にヤバいくらい青ざめた顔色の門番に許可証を見せて通して貰って俺はここにいるのだ。

 

 なんで許可証を持っているのかと言えばサードレマの上層エリアでも活動している青の金剛石商会と仲良くしているからである。

 商人と仲良くするのには金になるものを持っていけばいい。俺がお土産感覚で水晶巣崖から持ち帰っているラピステリアとか世界観的には超希少鉱石だからね。

 

 俺がわざわざそんなことをしてまで上層エリアにやってきた理由。それは……

 

「それじゃあ実際にやってみようか」

 

「はい!」

 

 ここはサードレマ上層エリアに存在するアタランテさんの自宅の隣にあるアタランテさんが所有している訓練施設……道場である。

 舞闘術士(マーシャルダンサー)を極めるために、広くて暴れても問題なくて他の人が訪れない場所としてこの道場に案内されたのだ。

 

 俺は武術とか武道とか格闘技とか、そういうのをリアルで習ったことが無い。

 俺の戦闘スタイルは様々なVRゲームをプレイしていく内に自然と出来上がっていたものだった。

 実戦で身に着けた我流の型と言えば聞こえは良いが、実際は素人丸出しの行き当たりばったりの我流未満の何かである。

 

 強いプレイヤーやAIに遭遇した時にその動きを覚えておいて、近い状況が訪れたらその動きを再現するくらいのことはやっているが、どうしてその動きが強いのかとかは全然理解していないし、アレンジもできない。できることはただコピーするだけだ。

 

「私の動きをただ真似するだけじゃダメだよ。私とお前さんじゃ身長も手足の長さも違う」

 

「こ、こう……?」

 

「まだ優雅さが足りないね」

 

「優雅さ……?」

 

 まさかゲームのNPCからガチな武術を学ぶ日が来るとは思わなかった。

 やっていること自体はなんかエフェクトが出たり飛んだりとファンタジーではあるのだが、理論はガチだ。

 

 普通のゲームなら流派とかそういう単語が出てきても、ちょっと修行イベントをやったらあっさりと技を習得して、後は実戦でモーションアシストを頼りに流派技を繰り出すくらいのものなのだが、シャンフロはこんなところまで作り込まれている。

 

 まだ教わって数日しか経っていないのにこんなことを言うのもアレだが、システム的なプレイヤーキャラの強さだけじゃなくて、俺のプレイヤースキルそのものが鍛えられている感じがする。

 今まで特に気にしたこともなかった歩法とか呼吸とかを意識してみるだけでも結構変わるな。具体的にはスタミナの減りの速さとか距離を詰める速さとか。

 

「腰を捻ってー」

 

「腰を」

 

「回りながら飛んでー」

 

「飛ぶ……あ、ジャンプじゃなくて浮くの……?」

 

「たた浮かぶんじゃない。鳥のように羽ばたくのさ」

 

「……?」

 

 当たり前のように飛行能力を要求されるんだけどこの舞難し過ぎない?いやまあ飛べはするけれども。

 

「鳥が足で獲物を捕らえるイメージ!」

 

「こうですか!?」

 

「脚の動きは悪くないね。でももっとこう、爪で挟み込むように」

 

「人間の足で出来るんですかそれ?」

 

「練習あるのみだね。裸足でやった方が分かりやすいかな?」

 

 どういう原理なのかさっぱりわからないが、アタランテさんの飛び蹴りが命中したマネキンの肩が見事に抉り取られた。

 舞闘術士(マーシャルダンサー)の道は長く険しい……

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 舞闘術士(マーシャルダンサー)の舞の鍛錬を繰り返し、それをスキルとして習得するために水晶巣崖へ突撃し、また鍛錬……

 

 黒狼との代表戦はサンラク達が負けるとはあんまり思えないが、俺に順番が回って来る可能性はある。

 それまでに最低限スキルとしてでも舞を複数習得しておきたい……正直人間相手なら全力で叫ぶだけで勝てそうな気もするが、シャンフロの対人戦の経験は浅いからな。謎のスキルで音ダメージ無効とか普通にありえそうなので攻撃手段はあればあるほど良い。

 まあ個人的には使い分けが面倒なので耐性をぶち抜くくらいに特化させた一つの技だけで戦うとかそういう戦い方の方が好きなんだけどね。

 

ドドドドドドドドド……

 

「結構な数を狩っていると思うんだけど、こいつら絶滅したりはしないんだろうか……」

 

 ゲームだからと言えばそれまでだが、この蠍共はどこでどうやって繁殖しているのだろうか?

 こんなのが超スピードで繁殖していたら世界が蠍と水晶に呑み込まれそうな気もするが、実際に水晶の大地の拡大を何とかするクエストがエイドルトにあるそうだ。この世界、ふとした拍子にあっさり滅びそうだな……

 

「やるぞファントム」

 

 インベントリからファントムを五本呼び出し、蠍の群れの中に真っ直ぐ突撃させる。

 狙わなくてもこれだけ大きくて沢山並んでいたら余裕でヒットするし、貫通してどんどん奥の蠍にもヒットする。

 

 ファントムに深化したことでこれまでのすり抜ける性質はそのままに、通り抜けるのと同時に属性ダメージを与えられるようになっている。

 実質的な装甲貫通能力は格上の蠍に対しても有効打となり、ダメージを与えるのと同時に真竜の呪いを蓄積させてゆく。

 

 蠍が苦痛で悶え始めたら状態異常を発症した合図だ。ある程度悶えている蠍の数が増えてきたことを確認してファントムの魔法を唱える。

 

「誘爆しろ、【感染爆発(パンデミック)】」

 

 ファントムと真竜の呪いを発症している蠍から次々と爆風が発生し、その周囲の蠍がノックバックして群れが散り散りになる。

 これだけで蠍を倒せはしないが、この爆風を浴びた蠍もいずれ発症し、そして次の爆弾となって群れの被害を拡大させてゆくことになる。

 

「対集団性能凄まじいな……」

 

 しかも発症したまま死んだら一定時間死体が残るという謎の仕様が非常に凶悪で、死体からも爆風が発生するので死んでも死体が相手の脅威として残り続けるのだ。

 対処するなら死体から離れるか死体を隔離するしかない……これ対城戦とかあったら凶悪過ぎないか?壁を貫通して剣が飛んで来て、死人が出たら城を放棄するか死体を拠点の外に投げ捨てるかしないとどんどん追い詰められるってことだよね?

 

「うーん地獄絵図」

 

 ひっくり返って悶え苦しむ蠍と動かなくなった蠍の死体が辺り一面に転がっている。

 そしてそれらを踏み越えてまだまだ突っ込んで来る蠍の群れ。更に奥から迫って来る要塞のような蠍……

 

 装甲貫通があればワンチャン行けるんじゃね?と思って要塞蠍に挑んでみたけどなんか普通にファントムが弾かれてやんの。

 属性耐性が高すぎる相手だとそうなるのnぎゃーっ!?




硬直ポーション……ニトロ製薬が新たに開発したポーション。掛けるだけで対象を硬直状態にしてスタミナを強制的に0にする恐るべきポーション……なのだが、ちょっとでもVITに振っているプレイヤーなら高確率で無効化できてしまうという致命的な欠陥がある。あと材料費がバカ高い


ファントムのシンプルな弱点として、VITが高い相手には状態異常が中々入らず、暗黒属性耐性が高い相手には深く刺さらずに弾かれてしまうというものがあり、当然高レベルのモンスターは大体VITが高い上にその他のステータスも大体高いので発症しても即完治してしまいます
なのでそれを手数で補うための増殖効果と疑似剣聖魔法というわけです

そして集団が相手だとその中の誰か一体でも発症すると感染を広げる爆風が連鎖してこうなります
なおそのうち蠍たちはソーシャルディスタンスを覚えて対策して来る模様
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