シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
まだエルデンリングのDLCもプレイできていないのにナイトレインの発売日も迫ってきている……
この小説を書いて投稿して反応が貰えるのが楽しすぎてゲームをする時間を殆ど執筆に割いちゃっています。腕があと二本欲しい……
ジークヴルムには敗北したが俺の戦いはまだ終わっていない。
とりあえずもう夜遅いので詳しい話はまた明日しようということになったのだが、ここで爆弾情報が投げ込まれた。
なんとあの激闘が通りすがりの配信者に配信されていたのだという。しかも割とガッツリ最初の方から。
ログアウトして急いでその配信のアーカイブを確認。中身はざっと確認しただけだが、重要な情報が映り込みまくっている。
しかも最初の方は物陰からこっそりと映していたのが途中からガッツリと至近距離で配信されていて俺の発言まで配信に入り込んでいる。時々一瞬だけ視界に映り込んでいたアレは配信用アクセサリーだったのか……
既に数万回再生されていたがまだ間に合うと信じて削除申請を送ってみたのだが、当然それが向こうに届いて削除されるまでには時間がかかる。
待っている間にも再生数がどんどん増えてゆくので、最終手段でその配信者のSNSアカウントにアーカイブを削除してもらえないかとダイレクトメッセージを送って削除してもらった。めちゃくちゃ謝罪されたし俺もメンタルが限界だったので、削除が確認できたら直ぐにベッドで横になって目を閉じた。
ファントムとか存在が広く知られたら絶対に面倒なことになるからな。情報を独占したいわけでは無いが、プレイヤーによる混雑は起こってほしくはない。
なんかもう色々と重なってシャンフロのモチベーションがどんどん落ちていっている……明日が怖い……
……
…………
………………
仕事を終えて帰宅。食事と風呂を済ませてライオットブラッドを飲んでからシャンフロにログインする。今日はアルコールは無しだ。
ニトロ薬局テンバート支店の控室で目を覚ます。丁度休憩中だったのか、テンバート支店担当のクランメンバーがログインしてきた俺に声をかけてきた。
「あ、ぶんぶん丸さんこんばんは!昨日のぶんぶん丸さんが映ってる配信見ましたよ!戦ってるとこ初めて見たんですけど凄いですねアレ!でっかくなったりビーム吐いたり!」
「…………………………………………………………………………………………………………ソウデスカ………………」
今すぐログアウトして寝るかどこか適当なエリアを火の海にしてやるか真剣に悩み始めていたその時、控室のドアがノックされる。
「お、今丁度ログインしてきたところかな?ぶんぶん丸くん」
ドアが開き、入ってきたのは相変わらずフットワークが軽いリーダーだった。
俺は即座にベッドから降りてその場で土下座する。
「本当に申し訳ございませんでした……!」
「美しさすら感じる程の躊躇いのない土下座だねぇ……このままだと色々と会話し辛いし、椅子に座ろうか」
リーダーと向かい合う形で椅子に座る。
リーダーの表情はいつもと変わらない張り付いたような笑顔だ。キャラメイクでそう見える顔つきにしているのか、本当に常に笑顔の人なのかはわからないが、今はその笑顔が死ぬほど怖い。
「さて、私もあの配信は確認したんだけど、何かジークヴルムと因縁でもあるの?」
「因縁……俺じゃなくて、俺が持っている武器の方ですね。昔ジークヴルムが手に入れたけど捨てた槍らしくて……」
インベントリからルインヴァルを取り出す。
そういえばあれってムンクさんが言っていたリビルドとやらの「槍の担い手として認められる」の条件を満たしたことになるのでは?後でムンクさんの所へ行ってみるとしよう。
「この槍絡みで突然ユニークシナリオが発生してしまいまして、強制戦闘になっちゃったんですよね……その時はあそこまで勝負が長引くとは思っていなくて……」
「二時間以上戦ってたからねぇ……すぐ削除されそうだなと思ってダウンロードしてから見たけど、凄く見ごたえがある映画みたいだったよ。クランメンバーにも共有して……」
(ブレスをチャージする音)
「待ってぶんぶん丸くん、うちが悪かったから!お店が、お店が吹き飛んじゃうから!!」
おっと危ない。無意識にブレスをぶっ放そうとしていた。もう俺はダメかもしれない……
「もう嫌だ……一人になりたい……何も知らないNPCとだけほんのりと関わって生きていたい……」
「重症だねぇ……前からそうだろうとは思ってたけど、君は目立つの苦手なんだねぇ」
それは悪い意味でどうしようもなく目立つ幼少期を過ごしてきたからかなぁ……
「ん-……強制スタートのユニークシナリオに巻き込まれて、負ければ材料費だけで数百億マーニする装備を失う可能性があったと……これは遅刻しても仕方ないねぇほんと……」
ルインヴァルの狂気じみた修復方法やユニークシナリオの内容を聞いたリーダーは若干引きながらそう答えた。
ルインヴァルは恐らくこの世界に一本しかないユニーク武器だ。これを失う可能性がある時点でわざと負けるという選択肢を選べなくなってしまい、戦いに慎重になり過ぎたところはある。
もっと早めに必殺コンボを仕掛けていればギリギリ代表戦に間に合ったかもしれない。でも時計を見る余裕も無かったしなぁ……
「まあ正直な話、ぶんぶん丸くんには水晶巣崖の素材を持ってきてもらったり、うちらが進められなかったユニークを代わりに攻略してもらったりした上で、更にユニークモンスターの情報まで持ってきてくれているからねぇ……あまり大きくないマイナスに対してプラスが比べ物にならないくらいデカいから何も言えないんだよねぇ……むしろこっちが土下座して靴を舐めなきゃいけないレベルだよ……」
「俺の靴舐めたら感電しますよ」
「全身凶器のパトロン様だねぇ……」
これ相手を蹴ると雷属性の追加ダメージが入るから普通に強いんだよね。
「それで遅刻の件なんだけど、止むを得ない事情があったわけだし不問とするよ。それにぶんぶん丸くんの参加はうちとペンシルゴンちゃんとひゃくちゃんの三人で強引に決めたことだからねぇ……」
ひゃく……?ああ、サイガ-
「いいんですか?賠償金支払いでも素材集めでも大体のことはしますけど……」
「これまで通りクランメンバー兼取引相手として好きにこのゲームを楽しんでいてくれればそれでいいよ。それだけで君はうちのクランに利益を生み出すし、それに怒らせるようなことをして君を敵に回したくないからねぇ……うちのクランなんて文字通り吹き消せるでしょ君」
「まぁ、その気になればブレスとファントムで先制攻撃すれば……やりませんけど」
「賞金狩人が出てくる前に巻き添えで街が壊滅的な被害を受けそうだねぇ……」
このゲーム、リアルにし過ぎているせいで悪意があるプレイヤーが計画を立てて行動したら色々と崩壊しそうな危うさがあるんだよな……対策はされているんだろうけど、最悪スペクリ事件みたいなことになるんじゃないだろうか……プレイヤーの悪意でゲームがサービス終了を迎えたというのはゲームを作る立場の人間としては何とも恐ろしい話だ。
……
…………
………………
今週の日曜日には新大陸へと船で向かうので、それまでに色々と準備をしておきたい。
「ムンクさーん。ジークヴルムの角圧し折ってきましたよー」
「…………そうかい……」
「アハハハハ!ムンクさんの言う通り随分とめちゃくちゃなことをしてくれるじゃないか新人君は!」
「ん……?」
ムンクさんの工房に入り……そこには過去に一度だけ歓迎会に会ったことがある呪啓者ギルドの男性NPCがムンクさんと一緒に分厚い本を読んでいた。
「歓迎会の時以来だねぶんぶん丸君」
「あー、ハーバートさん?どうしてここに?」
「フフフ、ムンクさんが考古学に興味を持ってくれたようでね。つまりお勉強中というわけなのだよ」
この洗ってはいるんだろうけど泥や油の汚れでまだら模様になっている革のジャケットと中折れ帽が印象的な男の名はハーバート。
ハーバートさんはジョブが考古学者派生らしく、あちこちを走り回って古い時代のあれやこれやを発掘すべく活動しているらしい。
しかしなぜ急にムンクさんが考古学を?
「今から恐らく数千年も昔のお話……その時代の人類は我々の想像を絶するような技術力を持っていたと考えられている。無果落耀の古城骸や去栄の残骸遺道を見れば一目瞭然だろう」
「そうですね」
「私はその時代の遺物を独自に調査していてね。その殆どが朽ち果てた修復不可能な残骸だが、幾つか当時の武器らしき残骸の発掘にも成功しているのだよ」
「なるほど。つまりムンクさんは……」
「そういうこった。古の技術を現代に蘇らせ、自分の糧にできんか試したくなってな」
もしかしてムンクさんの強化イベントってまだまだ続いているのか?どこまで凄くなるんだこの人。
そういえば深匠って二つのジョブの複合職なんだっけ?となるとくっついた分ジョブの枠が空いている筈だから、そこに考古学者のジョブをを入れるのかな?
「勉強の邪魔しちゃってすみません。それでは……」
「ああ、ムンクさんに用事があるのなら帰らなくても大丈夫だ。今日の分の勉強は今終わったところだからね」
「そうでしたか」
帰る準備をしているハーバートさんは置いといて、インベントリからルインヴァルとなんかいつの間にかインベントリに入っていたジークヴルムの角らしい物を取り出す。
この角アクセサリーらしいけど、アクセサリー枠を全部潰している俺には装備できない。何か別の利用方法はないのだろうか?
「そうか、ジークヴルムに槍の担い手として認められたか……ふむ、今のこいつなら
リビルドか……リバースの方も気になるのだが、そもそもリビルドとリバースの違いって何?
「リビルドは生まれ変わり……元の姿を取り戻すのではなく、新しい担い手であるお前さんに合わせて作り直すのよ」
「俺に合わせてかぁ……」
「しかしお前さんに合わせるのなら、それ相応の素材も必要になるんだが……」
ムンクさんの視線の先。そこにあるのは金色の光を放つ角……というか、光が角の形をしているとでも言うべきななんとも不思議なアクセサリー。
見えるし触れるけどそこにあるのかないのかよくわからない。見える概念とも言えるもの。
「これ加工できるんですか?」
「そのままでは俺でも無理だ。それを加工できるようにする特殊な力を持つ素材が必要だな」
そう言って工房の奥から何かを持ってきたムンクさん……あ、あれは……!
「お前さんが深海から持ち帰ってきたこのクターニッドの力を宿す瑠璃……こいつを使う」
それはクターニッドから貰ったけど特に良い使い道が思いつかず、雑に使うのも勿体ないので放置していた
……で、それをどうやって使うの?
「存在しているようで存在していない物をどうやって鎚で鍛えればいいのか?できるのであれば答えは簡単よ。存在していないようで存在している物に反転させればいい」
「……???」
「非物質的でありながらそこにあると認識させる概念的な素材……その性質を最大限利用した槍にしてやる」
なんかもうよくわからないけど、ムンクさんなら何とかしてくれるだろうしルインヴァルのリビルドを任せることにした。
露骨な古匠フラグ。でもマーリョークウンヨーンユーニットと稼働するレガシーウェポンはプレイヤーが協力して用意してあげないといけない。
このイベントが発生するのは本来ゲーム中盤以降の想定であり、そこまで進んでもプレイヤー達が古匠の就職条件を発見できなかった時のために用意されたヒントでもある。
ハーバートは呪われた王家の墓とかそういうのに躊躇なく飛び込んでいくタイプの人
そしてファンタジー世界なのでガチで呪われていて毎回酷い目に遭っているけど懲りない
昔は考古学者ギルドに所属していたが遺跡から呪いのアイテムを持ち帰りまくって問題を起こしまくって追い出された過去がある。考古学者ギルドのNPCと仲良くなるとちょっと情報が出てくる
旧大陸を端から端まで短いスパンで行ったり来たりしているので中々出会えない
平日の昼間でもログインできるようなプレイヤーじゃないとまともに交流できない。呪啓者ギルドのNPCの中でもトップクラスに好感度を稼ぎ辛いメンバーの一人
実はムンクも本来は同じくらい好感度を稼ぎ辛いのだが、主人公がめちゃくちゃなことしまくりつつ頻繁に会いに来るので主人公への好感度がかなり高くなっている
逆に一番ちょろいのはレイン……なのだが、主人公が一切交流しようとしていないので好感度がマイナスのままになっている