シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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二十話くらい書き溜めが出来たので暫くは週二投稿で頑張ります
それとこの小説のお気に入り数が1500件を超えました。ありがとうございます
記念に後書きにいつもの設定ゲロ吐いておきますね。オエーッ!


暴徒と生還者

 必要なアイテムを買い集め、スキルを調整し、後は蠍を狩りまくってひたすら経験値を蓄え続ける日々。

 格下相手になると経験値効率が落ちるらしい。ならばレベルキャップ解放前にまだ格上判定の蠍を狩りまくれば解放後に蓄えた経験値で一気にレベルが上がるだろうと考えての行動なのだが、やはり同じ相手と戦い続けるのは飽きる。

 

 気分転換にまたぶらぶらとシャンフロを散策してみようかなと考えて性別反転の聖杯を使用し、ゴスロリ幼女モードでフォスフォシエから逆走する形でそれぞれの街を観光して回る。

 

「この辺りに初めて訪れた時はまだ呪われていなかったから普通に観光できていたんだよな……」

 

 今思えばあの鍛冶屋が全ての始まりだったと言える。

 別にあの人が特別なNPCというわけでもないだろう。一発でレアモンスターのレアドロップを手に入れて、それを使って一発で完成したのが黒蝕の喪白剣で、後のファントムである。あれは幸運だったのか、それともファンブルだったのか……

 

 ちょっとその鍛冶屋を覗いてみたが、鍛冶屋のおっさんは元気そうだった。

 俺があの時の犬面の不審者とは気づいていないようだったので、そのまま何も言わずに店から出た。

 

 かつての俺は攻略優先で観光は後回しにしていたのだが、呪いの武器ゲットで観光が殆ど不可能になり、そこからほぼノンストップで攻略していた。

 このゲーム、異世界シミュレーターとして見ても完成度が物凄く高い。街を見て回る。ただそれだけでも異世界の文化を体感できてとても素晴らしい経験を得ることができる。

 

 農業とか釣りとか採掘とか、マジで凄まじい量のコンテンツがあるからなこのゲーム。俺はシャンフロライフを半分どころか十分の九くらい損していたんじゃないだろうか。

 

 攻略ルートを逆走し続け、遂に最初の探索エリアである跳梁跋扈の森にまで戻ってきた。

 気配を消し過ぎているとモンスターに襲われるので、偶に呼吸してリュカオーンオーラを放って追い払う。

 

「うわー!何あれ!?」

 

「かわいい!兎さんだー!」

 

「おー、初心者プレイヤー……初々しい……」

 

 大人気ゲームなだけあって次々と始めたばかりであろうプレイヤーとすれ違う。

 このプレイヤー達がいつかレベル99かそれを超えるステータスとなって最前線で戦う日が来るのか、あるいは生産職となって他プレイヤーを支えるのか……このゲームはこれからも長い間プレイヤー達から愛され続けるのだろう。

 

「あっ」

 

スパーン!

 

「キャー!?マリンちゃーん!?」

 

 ヴォーパルバニーに首を斬られて女性プレイヤーが死んだ。

 アクション系VRゲーム初心者はこのように自分が死ぬ感覚を乗り越えられるのかどうかが大きな壁と言われている。

 

 人によってはこれに耐えられずにもっと穏やかなVRゲームに流れるし、刃物の先端を向けられるだけでダメな人もいるし、ステータスを高めたらその場でジャンプしただけで高所恐怖症で失神する人もいたりと、アクション系VRゲームは割と人を選ぶ。シャンフロの総プレイヤー数三千万人という数字がどれだけぶっ飛んでいるのかがよくわかる。

 

 因みにうちの会社のゲームはシンプル過ぎて直ぐに飽きるという意見がそれなりに多いが、アクションゲームは苦手だけどVRゲームで体動かしたいという層からはそれなりに人気なのでここ最近は結構売れている。

 俺が入社する前はもっとぶっ飛んだゲームばっかり作っていたのだが、売れなさすぎて現在の方針となった過去がある。

 

 仲間の死にショックを受けていたもう一人の女性プレイヤーもヴォーパルバニーから目を離したその隙に首を包丁で斬り裂かれて死んだ。南無阿弥陀仏。

 

「敵討ちってわけじゃないけど」

 

 致命武器を落としてくれないかなとちょっと期待して、幸運にバフを乗せて投げナイフを投擲。

 ナイフが刺さった勢いでヴォーパルバニーが派手に弾け飛び、その場に赤い包丁が落ちて地面に突き刺さる。

 

「……ドロップしたわ」

 

 赤黒い刃を持つ包丁、致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)を地面から引き抜いてインベントリに収納する。

 

 どうしよう。やるか?サンラクが言っていたユニーク……いやしかし、格上の相手にゲーム最序盤で手に入る装備で挑むというある意味舐めプをしないといけないのか……というかレベル99になっても条件満たせるほど格上の相手はいるんだろうか?ジークヴルムとか?

 

 まあこれに関しては後回しでいいか……覚えていて余裕があったらやってみることにしよう。

 

 道中そんなこんなあったが、逆走の果てに遂にファステイアに到着した。

 なんかもう懐かしく感じるな……最初の街だが、観光どころか最低限の買い物しかしていなかったっけな。

 

 こうして見ると田舎っぽさはあるものの、広さだけはサードレマ並なんだなこの街。まあここがこのゲームのスタート地点で一番混雑する場所だろうからそういうメタ的な理由もあるのだろう。

 

 初心者プレイヤーが殆どなので、プレイヤーの装備が大体一緒で地味だ。この中ではゴスロリはとても目立つ。

 時々半裸がいたり鳥面や馬面、そして犬面のプレイヤーがうろうろしているのを見かける……あ、あの犬面の人。名前がぶんぶん丸……いや、ぷんぷん丸だ。マジでいるんだなああいうの……

 

「何か美味しい物ないかな……ん?」

 

 なんか俺に向けられている視線の中に明らかにこう……粘ついているというか、気持ち悪い視線が……

 視線の違いが分かってしまうレベルで気持ち悪い視線ってなんだよと思いつつ、その視線の発生源を見つめ返す……

 

「ぐへへへへ……ゴスロリ幼女だぁ……」

 

「コナツちゃん、山賊みたいな声出てるよ。それにプレイヤーっぽいし中身おっさんかも……」

 

「おっさんでも美少女の見た目なら私は行ける……!」

 

「コイツ、無敵……!?」

 

「中身はなんにせよあの防具めっちゃ作り込まれているな……ティーアスちゃんに着せたい……」

 

 何やってんだアイツ……

 

 そういえばコナツはここでティーアスとかいうNPCを呼び出すべく活動しているんだったな。

 今はネームカラーが通常色なので指名手配状態ではないようだが、その周囲にいるプレイヤーはガッツリ指名手配されている。

 

「わわっ、こっちに来た!」

 

「あの防具からして初心者じゃない。高レベルプレイヤー……!」

 

「狩られたらルティアさんに着せるメイド服が……!」

 

「逃げるよみんな!」

 

「コナツちゃん足止めお願い!」

 

「任された!」

 

 指名手配犯共が逃げて行って、その場にコナツだけが残る。

 都合がいい。俺の変装が広まっても困るからな。

 

「……」

 

「あ、あのー……私に何か用ですか?」

 

「……あまり他プレイヤーをジロジロと見るのは止めた方がいい」

 

「え、声カワイ……あっ、ハイ。スミマセンデシタ……」

 

「ハァ……」

 

 VRマシンとは簡単に言えば夢を見させる機械である。

 

 VRゲーム内ではボイスチェンジャーなどが備わっていない限り現実の自分の声に近い声がアバターから発せられることになる。

 これは簡単に言えばVRマシンが「自分の声だと思い込んでいる声」を読み取り、VRゲーム()の中のアバターの口からその声を再現したものを再生しているからだ。

 

 ここで重要なのは「自分の声だと思い込んでいる声」になるということ。有名な話では、「自分の声」というものは空気の振動が自分の耳に届いたもの以外にも、骨を伝わって体の内側を通って耳に届いたものの二つが混ざった音を「自分の声」として認識していることが殆どであり、空気の振動だけが耳に届く他の人が認識する「あなたの声」とは結構な違いがあったりする。

 しかしVR内では自分も他人も自分が思う「自分の声」が聞こえることになるので、現実で自分の声を録音して自分で聞いてみたら声が全然違う現象の逆が起こることになる。

 

 『お前いつもと声違くない?』『いつもこんな声だよ?お前こそ声違くない?』となるわけだ。実際目の前にいるコナツの声は現実で聞く声よりもちょっと高い。

 

 ……つまり、VRゲーム内の声というものは理論上自分を騙せればどんな声でも出せるのである。

 

「あっ、ちょっ、近い……!」

 

「久しぶりだなコナツ。セツナとウェザエモンの時以来か」

 

「!? その声……!」

 

「秘密にしておいてくれよ。変装しないとまともに外を歩けないんだ」

 

 性別反転で声を変えられている状態から更にそれを上書きするように、元々の自分の声で発声する。

 コナツも知っている俺の特技、VR変声術だ。勿論現実ではできない。

 

 元々はコナツに幼女アバターを使わせられている時、幼女っぽい声でロールプレイもできないかと無茶振りに無茶振りを重ねられた結果、やってみたら偶然できちゃったものである。

 それ以来四対一の非対称型対戦ゲームとかで相手パーティの声を全員分覚えて声真似で誘導して孤立させて殺すのによく使っている。特に姿を人間に変えて騙して奇襲するモンスターを使う時とか相手がガチの悲鳴を上げるぞ。

 

「このゲームって性別変えられるの?」

 

「ユニークモンスターの討伐報酬でな。ボイチェン付きだ」

 

「ネカマネナベが全力でゲットしに行きそう……いや、その場合元の性別に戻っちゃうか……」

 

「ああ、これも秘密にしておいてくれよな」

 

 一応これ重要な情報だったわ。あんまり喋り過ぎると良くないな。

 

「それにしても、なんでぶんぶん丸がここに?何かの用事?」

 

「いや、ただの観光で特に明確な目的があるわけじゃない」

 

「観光ねぇ……あ、そうだ。特に何の予定もないならさ、ちょっと会わせたい人がいるんだけど、今時間大丈夫?」

 

「大丈夫だが……誰だ?」

 

「サバイバアルっていう人でね。ティーアスちゃんを着せ替え隊のリーダーなんだけど、ぶんぶん丸のことを話したら知り合いかもしれないから一度会ってみたいって」

 

 知り合いかもしれない……?

 サバイバアル……バイバアル……?いやまさか……

 

 思い出すのは孤島の記憶。

 度々侵略したりされたりを繰り返していたφ鯖の有名人の名前と大部分が一致している……偶然だよな?

 

 流石に本人だとしても急に殴りかかってきたりはしないとは思うが……

 

「あ、噂をすれば……サバさーん!」

 

 先程逃げていった指名手配犯達が呼んできたのか、ノシノシとこちらに歩いてくる一人の女性プレイヤー。

 なんというか、立ち姿から中身の性別がガッツリ漏れ出ているな……

 

 ポニーテールに鼻から左頬にかけての傷(ペイント?)が特徴的なそのプレイヤーが俺とコナツを交互に見つめて口を開く。

 

「どうやら、揉め事にはなっていねぇようだな……知り合いか?」

 

 声ひっく。やっぱり中身は男か……そしてその声、聞いたことがあるぞ。

 こちらも男の時の声で……

 

「こちらでは初めまして、サバイバアルさん。ぶんぶん丸です。俺の勘違いでなければ、あの孤島以来ですね」

 

「! お前がぶんぶん丸か……その声、やはりな……!」

 

 ああ、顔はあの時とは違うけれど、その笑い方はあの時から変わっていないな……

 

「コナツ。ちょっとこの人と話をするから」

 

「? わかったわ」

 

 人が少ない裏路地へ場所を移し、サバイバアルと二人きりになる。

 さて、殴り合いにならなきゃいいんだけど……

 

「久しぶりだな。『φの野人』、バイバアル。うちの迷宮を素手で解体しようとした蛮族の親玉が、こっちではネカマしつつロリコン集団の親玉になっているとはな……」

 

「ネカマはお互い様だろうが。俺達の島をイースター島みたいにしやがって……『τのミノタウロス』、うしわか丸……!」

 

 睨み合いが暫く続いて……システムメッセージが表示される。

 

 あ、フレンド申請だこれ。




致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)を一応ゲットさせたけどこの主人公がラビッツに行くかどうかは不明です。

主人公の特技であるVR変声術はディプスロのよりは範囲が狭い。声を覚えてからちょっと練習が必要。オウム返しなら即座にできる。
この主人公は過去に色々あって自分の声すら知らなかった時期があり、その時の経験が無意識に声真似能力を育てていた。でも本人の性格的に声真似をすることが殆ど無かったし聞かせることも無かったので長らくこの特技に気がついていなかった。


ここから先はお気に入り1500件記念のちょっとしたゲロです(ネタバレ注意)



















釘打たれし赤棺(ルッキング・タブー)
呪啓者及びその派生職でのみ装備可能。
この(まじな)い釘は装備する時、アクセサリースロットを2つ消費する。(この(まじな)い釘は(まじな)い釘2つ分としてカウントされる)
この(まじな)い釘は一度装備すると装備者の血肉と完全に一体化し、外すことが出来なくなる。
赤き力を用いて作られた(まじな)い釘。
赤き力の凝固たるこの釘は使用者に新たなる部位を与える。
使用者の任意で発動可能で、発動中は任意の部位を一つ得ることができる。
この(まじな)い釘の装備中にHPが最大値の30%以下になった場合、自動的に発動して装備者の身を守る。
この(まじな)い釘を過度に使用し続けた場合、使用者は「赤棺開封(ブレイクシール)」状態となり、MPとSTMを含む全ステータスが時間経過で上昇し続け、HPが時間経過で減少し続ける。(240秒経過で必ずHPが0になる)
「赤棺開封」状態になってから30秒経過する度にランダムに1つ部位が追加される。これにより部位が6つ追加された時、装備者の種族が「赤嵌屍竜(レッドレギオン)」に擬似改宗(デミコンバージョン)され、アバターはAIによって操作される。

霊穴に直接突き刺して装備する(まじな)い釘は装備者に大きな力を与えるが、その霊穴に消えない傷を残す。
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