シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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暴徒と孤島

 飛んできたフレンド申請を承諾し、バイバアル改めサバイバアルとフレンドになる。

 なんというか、当時の蛮族っぷりを知っている身としてはコイツとフレンドになるという感覚が信じられんな……

 

「γにμときて、τの有名人ともここで遭遇することになるたぁな……!」

 

「え。サンラクには会ったけど、『γのガンマン』もいるのか……」

 

「今はヤシロバードという名前だな」

 

「ヤシロバードね……」

 

 アトバードからヤシロバード……跡取りから社長か。アイツもしかしてリアルで結構凄い立場の人だったりする?

 

「というかサンラクにも会ったのか」

 

「ああ、昨日な。しかしお前、コナツは男アバターだと言ってたが……サンラクもいきなり性別が変わったしよぉ。どんなカラクリだ?」

 

「細かいことは秘密だが、そういうことが可能になるアイテムがある。声も含めて一度死ぬまで反転する」

 

「あ?でも今のお前の声は……」

 

「反転後のデフォだとこんな感じ。こっちの声だと俺だと分からないだろ?」(ダウナー系ロリボイス)

 

「……そういやそんな特技あったなお前……」

 

「懐かしいな……孤島では茂みに隠れて弱めのエネミーの鳴き真似をして、油断して近づいてきた奴の頭を斧でカチ割ったり、逆に強いエネミーの鳴き真似で追い払ったり、エネミーを呼び寄せたり……」

 

「人のこと半分土に埋めて惨猿を呼び寄せるのはあまりにも非人道的すぎんだろテメェ!」

 

「人の指噛み千切るような奴に言われたくないわ」

 

 懐かしき孤島の思い出……誰かが水源に毒を撒いたようで一時期φ鯖から殆ど人がいなくなったことがあり、その隙にφ鯖の資源を根こそぎ刈り取っていったらφ鯖から木が一本もなくなっちゃった時期があったっけな。リスポーンして帰って来たφ鯖の奴らを死なないように縛って生き埋めにしてまで伐採し続けたからな。

 勿論ゲームなので暫くしたらまた生えてきたそうだが、それ以来φ鯖とτ鯖の間で度々激しい抗争が繰り広げられることとなったのだ。

 

 τ鯖の島を埋め尽くすように建てられた無数の建築物を追加の壁とかで強引に接続することで巨大迷宮を作り上げ、建築物判定で地表を覆い尽くすことで島全域のエネミーの湧き潰しを行う計画の為に兎に角建築資材が必要だったのだが、資源が湧くポイントまで殆ど潰れてしまっていたのでτ鯖は常に資源不足だったのだ。

 貪牛が湧くと折角作った迷宮が崩壊してしまうのでその前に島全域を埋めるのが目標だったのだが、後半になるほど資源不足でペースが落ちて貪牛の大体月一くらいの頻度のスポーンに間に合わないという問題に直面していた。

 

 そこで他の(サーバー)を利用する計画が立てられたのだ。

 資源を他の島で確保し、船に加工して海上で保管。貪牛のスポーンに合わせて別の島へ逃げる。

 最終的に大量の資源の塊となった船団をτ鯖で解体し、一気に建築を進める計画だったのだが、他の島からの妨害、略奪が凄まじくて結局巨大迷宮が当時の鯖癌で完成することはなかった。

 

 逆に言えば毎月迷宮を建て直していた上にτ鯖のみんなが好き勝手に家を建てて壁で繋いで罠を置くから侵略者に対しては堅牢な要塞と化していた。

 τ鯖の誰かが捕まって拷問されて最奥までの安全なルートを吐かされたとしても、実際にそのルートを通る頃には壁も罠も知らぬ間に増えているからその情報が何の役にも立たないという。まあこっちも完全に把握していないから度々罠で自滅するんだけどな。

 

 そうなるともう面倒くさくなった侵略者共が火を放ったり壁をぶち抜いたりしてくるわけだ。酷い話だ。

 

「そういや、この前の日曜に話題になってたジークヴルムの角を折ったっつーぶんぶん丸って……」

 

「急用を思い出したからこの辺で……」

 

「あっ、逃げやがった!」

 

 気配を消して重力を操作し、低空を滑るように水平移動。

 人には触れられたくない過去があるものだ。そこに触れられたらもう逃げ出すしか無いのだ。

 

 どこまで広まっているんだあの動画……

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 帰ってきたぞフィフティシア。

 ショートカット防止の為なのか空を飛んで移動しようとしてもボスエリアの手前まで来ると謎の力で減速してしまうのが面倒だ。まあボス自体は大体フルパワーでぶん殴れば瞬殺だけど。

 

 一応使うかもしれないので致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)を強化してもらいにムンクさんの工房を訪れる。

 

「ムンクさーん。ちょっと強化してほしい武器が……ムンクさん?」

 

 そこには金槌で何もない虚空を一心不乱に叩き続けているムンクさんの姿が……何をしているんだあれ?

 

 よくわからないが忙しそうなのでそっとしておく。

 でも折角来たので店の奥の魔法陣を使わせてもらい、呪啓者ギルドへと飛ぶ。

 

 あと少しで新大陸に向かうので数日かかる可能性がある依頼を受けたりはしないが、それでもここに来る理由はいくつかある。

 

「マスター。バニラフレンチトーストを一つ」

 

「かしこまりました」

 

 いくつかあるが、その中でも一番の理由は飯が美味いからだ。

 現実での体質と仕事柄どうしても運動不足に陥りやすい俺にとってゲームの世界で食を楽しめるというのは非常に重要なことだ。

 

 味覚を完全再現!とか謳うゲームはこれまでに数多く発売されてきたが、シャンフロはここでも圧倒的クオリティで他社のゲームをぶっちぎっている。

 ヤミナベ・メーカーとか名前のわりに……いや、こんな名前だからか味覚の再現度かなり高かったんだけれど、シャンフロの再現度は味覚や嗅覚に特化したそれすらも超えている。

 

 トーストもフレンチトーストも好きなのだが、やはり炭水化物は太るからなぁ……

 バニラアイスに蜂蜜までかけたフレンチトーストなんて現実で常食していたらデブになるわ。

 

 そういえばこの世界のアイスクリームは氷属性魔法で作った氷を使って冷やすんだとか。ラメリンさんが魔法陣から氷山みたいな氷の塊を取り出しているのを見たことがある。

 戦闘ではその氷塊を直接相手に叩きつけるんだって。怖いねぇ……

 

 アクセサリーの影響で満腹値的には常時満腹状態なのだが、実際には腹の中は空っぽなので食べることができる。

 因みにこのフレンチトースト、ステータスに割と強いバフがかかる。でもインベントリに入れたまま暫くするとアイスがドロドロに溶けてるしトーストは冷めてるし蜂蜜はベタベタだしで戦闘中に食べるのには向いていない。そして食べるのを忘れて放置していると腐る。

 アクセサリーである程度は長持ちはさせられるが、やっぱり出来立てが一番美味い。

 

 コナツによるとインベントリアの中に入れた食べ物は腐らないしいつまでも温度が保たれるんだとか。どうなっているんだそれ。

 

 バニラフレンチトーストを食べ進めていると、隣の席に誰かが座った。

 

「……」

 

「……?」

 

 ……え、本当に誰だこの人?NPCのようだが見たことが無い。

 背の低い金髪の少女のNPCが俺がフレンチトーストを食べているところをじっと見ている……何この状況?

 

「マスター。これと(おな)じものをみっつ」

 

 あ、注文するんだ。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 日を改めて、再びムンクさんの工房に訪れた。

 これでまた何もない虚空を叩いていたらどうしようかと思っていたが、今度は何もない虚空を研いでいた。

 もしかして何か見えないものがそこにある(・・・・・)のか?

 

「……え?」

 

 そう俺が思ったその瞬間、ムンクさんの手元に突然青く装飾された黄金に輝く槍の穂が出現する。どういうことなの……?

 

「……もう少しで完成する。暫し待ちな」

 

「あ、はい」

 

 あの輝き、見た目は少し変わったがルインヴァルだよな?しかしなんで透明になっていたんだ?素材の影響?

 ユニークモンスター由来の素材を二つも使ったのだから変な効果があってもおかしくはないとは思うが……

 

 言われた通り暫く待機……しかし見えない武器を鍛えるとか手をうっかりぶった切りそうなものだが、ムンクさんは大丈夫なんだろうか?

 

「……あれ?」

 

 ふと気が付けばまたルインヴァルの姿が見えなくなっている……いやもしかして……

 

 ルインヴァルはそこにあると念じれば、ムンクさんの手元にルインヴァルが再び出現する。

 

 そして逆にルインヴァルはそこにないと念じれば……

 

「……消えた」

 

「気づいたか。そうだ、このルインヴァルはお前さんの認識に左右される槍となったのよ」

 

「マジですか」

 

 ムンクさんがルインヴァルのなかご(見えない)を柄と組み合わせ……一本の槍として完成したその瞬間、柄まで消えてしまう。

 

「これで完成だ。ルインヴァルはお前さんの手に戻った……念じればお前さんの手に現れるはずだ」

 

「えっ……ルインヴァル?うわっ!?」

 

 先程までムンクさんの手の中にあったはずのルインヴァルが俺の手の中に出現する。

 もう何が何だかよくわからない。とりあえず性能を確認しよう。

 

 

 

 

 

ルインヴァル・リビルド

再構築を果たした英傑の武器。黄金の龍王の角を折った偉業と深淵の盟主から授かった反転の力を宿している。

輝槍の光とは即ち価値の輝き、しかしその真なる価値は相応しき英傑の手の内にあってこそ発揮される。

 

・抱擁されし槍

ルインヴァルの所有権を有している間、所有者の種族が「輝槍眷属(ブリューナク・ファーヴニル)」に擬似改宗(デミコンバージョン)される。また、NPCとの会話で補正がかかり、一部のモンスターのヘイトを集める。

・認識の槍

ルインヴァルを自由に出現、消滅させることができる。また、ルインヴァルを出現させる時、その所有者が体感する負荷、重さ、長さ、大きさは所有者の望み通りになる。(ルインヴァルの価値とチャージした月光と所有者の歴戦値によって上限、下限が変動する)

・価値を授ける槍

ルインヴァルの所有権を有している間、所有者は追加のステータスポイントを獲得し、STMに振ることができる。また、経験値、歴戦値、習熟値、感覚値、信頼値、野生値の獲得量に補正がかかる。(ルインヴァルの価値によって獲得ポイント、補正値が変動する)

・価値を喰らう槍

ルインヴァルは鉱石素材と黄金素材を収納できるインベントリを持つ。このインベントリ内の素材とチャージした月光を消費することでルインヴァルの耐久値を回復し、一時的に消費した素材に応じた追加効果を得る。(消費した素材の価値に応じてルインヴァルの価値が高まる)また、ルインヴァルで止めを刺した時、対象のレベルと歴戦値に応じてルインヴァルの価値が高まる。

・万世不朽の槍

ルインヴァルはあらゆるマイナス効果を受けず、継続的に耐久値を減少させるものに耐性を持つ。また、継続的に耐久値を減少させるものによって耐久値が一定値より減少しない。

・竜を屠る槍

特定カテゴリのモンスターに対するダメージ量を強化する。また、該当するモンスターとの戦闘終了時にモンスターのレベルと野生値に応じてルインヴァルの価値が高まる。

・「輝槍仮説第六(ブリューナク)魔晶(クォーツ)

所有者のSTMが6000以上の時に使用可能。ルインヴァルとその所有者から黄金のマナの結晶が生える。(ルインヴァルの価値とチャージした月光と所有者の発動時のスタミナと歴戦値によってこのスキルの性能が強化される)このスキルの効果時間終了後、スタミナが全て消費される。

 

 

 

 

 

 ……うん。さっきから左腕の刻傷がなんかめちゃくちゃ熱を帯びているんだけど、これ大丈夫なの?

 この……擬似改宗(デミコンバージョン)?というのが刻傷の改宗(コンバーション)不可に引っかかっているっぽいのだが、恐らく両方の効果が永続的に強制発動し続けているせいで俺の体の中で槍と狼が終わらない喧嘩をしている状態になっているっぽい。

 

 この輝槍眷属(ブリューナク・ファーヴニル)とかいうのに俺の種族が変化しそうになっているようだが、これは予想だけど、ヤバいデメリット効果を内包していそうな気がする。

 呪いの槍の眷属になるってどう考えてもロクなもんじゃないだろう。メリットもあるかもしれないが、他の誰かと協力して確認するのも危険そうなんだよな……なんかうっすらと俺の精神に何かしらの影響を与えているっぽい気配がするんだよなこれ。こう、「手放したくない」というかなんというか……なので他人と協力して検証するのは無しだ。

 

 あとしれっと書いてあるけどなんだSTM6000以上って。

 えっと、ルインヴァルの追加ステータスポイントを全てSTMに振って……あ、装備の補正でなんとか足りるなこれ。




呪啓者ギルドは仇討人と関わりがあるので向こうの関係者がたまにギルドに訪れることがある。勿論その逆も起こることがある。


メニュー操作無しで思考制御で一瞬で存在する、しないを切り替えられるようになったルインヴァル
消すことは距離に関係なく可能。出現させる時は距離の制限がある。つまり思いっきり遠くへぶん投げても一瞬で手元に戻って来るようになった

輝槍眷属(ブリューナク・ファーヴニル)……この種族になったプレイヤーは肌の一部が黄金の鱗に覆われ、角や翼や尻尾も生える。素手での攻撃は斬撃判定となり、息を吐くだけで無詠唱の毒属性魔法が発動可能というヤバい種族
ただし思考が激烈に引っ張られる。何をするにしてもルインヴァルが最優先となる……流石にプレイヤーの脳を弄りまくるのはヤバいのでプレイヤーなら頑張れば抵抗可能なレベルだが、NPCだと即洗脳される
プレイヤーでも全てのリソースをルインヴァルに突っ込むし、他プレイヤーに対して攻撃的になるし、特に他の輝槍や聖槍の持ち主に対してはより攻撃的になる

主人公がリビルドした影響で誰にとっても価値のある槍ではなくなり、主人公にとって最も価値のある槍へと変化した
そのため若干汎用性が低下してNPCへの魅了効果は抑えられたが、それでもまだ油断はできない
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