シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
道に迷った……と言うにはそもそも道なんてないのだが、現在俺は樹海を超えた先にあった砂漠で遭難している。
「広すぎんだろ……」
シャンフロって恐らく実際の広さとプレイヤーの移動距離にズレがあるっぽいんだよな。
恐らくガチの大陸並の広さがある世界を歩いて移動したらとんでもない時間がかかるだろうから、その辺りを考慮した結果なのだろうが……それでも広すぎる。
今は数少ない遠くからでも認識できる目印の一つである火山に向かってひたすら空を移動している。
その途中で採掘できそうな岩場を見つけたら降りて採掘。終わったらまた飛んで移動……
「砂漠には人いないのかな……」
亜人はまだ発見報告が少ない。もしかしたら砂漠に住む亜人もいるのかもしれないが、こんな広い砂漠でどうやって探せと?
マッピングアイテムを使って念入りに探せば人が居るオアシスを発見できるのかもしれないが、残念ながら俺はそういうアイテムを所持していない。
ワンチャン飛んでいたら偶然発見できる可能性もあるが、あまり期待はできない。
ドドドドドドドドドド……!!
「またか!」
地面が激しく揺れ、砂の中から勢い良く飛び出してきたのは頑丈な表皮と長い胴体を持つ巨大
大きく開いた口で砂を飲み、螺旋回転しながら体の側面の複数の穴から砂を噴き出しているその姿は正に天然のドリル。
空を飛べるわけでは無いが、低空飛行だと長い体を伸ばしてこのように襲い掛かって来る。
多分刻傷に吸い寄せられているんだろうな……
【
「ほらよ、食いたいなら食えよ」
「
「
ドガガガガガガガガガガガガ!!!!!
黄金が混ざった漆黒のエフェクトを纏う槍がワームの口にすっぽりと入り込んだその直後、激しいヒット音を鳴り響かせながら全身の穴から一斉にダメージエフェクトが噴き出した。
この連結スキルは剣を装備している場合と槍を装備している場合で攻撃方法が変わる特殊な攻撃スキルとなっている。
槍を装備している場合、スタミナを全て消費して破壊属性と弾かれ無効効果と装甲、スキル、魔法貫通効果が付与された槍を投擲するスキルとなる。この貫通効果は六回まで機能するらしい。
「急いでいる訳じゃないけれども、何回もまともに相手していられないよ」
ちょっと雑に行かせて貰おうか。
「消えぬ残り火」でスタミナが0の状態で体を動かし、更にバフを重ねる。
のたうち回るワームの頭部に狙いを定めて、自分でも制御できない自殺紛いの超高速落下蹴撃を放つ──
「「
スキルの発動を宣言したその瞬間、視界が真っ白になり──
「……威力は凄いんだけどなぁ……」
周囲一帯の砂がガラス化した暑いを超えて灼熱地獄と化した砂漠から抜け出す。
幸運の確定食いしばりだけだと不安だったので、最大HPの100%を一撃で削り切れるダメージを受けた時、一度だけHP1で耐えられるスキル、「
それで落下の衝撃には耐えられたのだが、周囲はこの有様。【
重力を操作して斜め上向きに使えばまだマシになるかな……いや、それだと空の彼方まで飛んでいくことになりそうだな……
これ連結したら最悪確定自滅技になるよな?
パーティプレイなら使い道ありそうだけど、ソロだとなぁ……
……
…………
………………
「……お、景色が変わって来た」
砂漠から南西に進み続けて今度は……沼地?
空気が湿っている。地面もぬかるんでいる……直ぐ隣に砂漠があるのに急にジメジメとした場所に出てきたな……
「シャンフロのことだし設定はあるんだろうけど……何をどうしたらこうなるんだか」
考察はライブラリに任せるとして、俺はこのまま火山に向けて直進するとしよう。
なぜかはよくわからないのだが、何だか無性に火山に行きたい気分なのだ。
あの火山からなんかこう……キラキラしたものを感じるんだよね。
泥の中からボコボコと湧いて出てくる蟹や蠍……っぽい蟹を薙ぎ倒しつつ火山へ直進。
こいつら刻傷があるのに襲い掛かって来るということは俺よりレベルが上だと思うのだが、全然レベルが上がらないな……それだけレベル100以降の必要経験値量は膨大ということなのだろうが、呪業スキルの習得しすぎも原因の一つだろう。
どこかに良い狩場があれば……できれば他のプレイヤーがやってこない場所が望ましい。巻き込むからな……
偶に遭遇するモンスターを大技で雑に倒せば、「鰥寡蟲毒」の効果でスタミナ消費半減が一時的に付与されるので移動が快適になる。
短時間の戦闘なら「
「邪魔! 「
スタミナを全て使い切るのはこちらも同じだが、こちらは武器をぶん投げることなく六回攻撃を行う。
正直「流星雨」と被っているが、今は
ほぼ動けなくなった蟹をガンガン叩いて感電死させて再び歩みを進める。
なんか西に向かうにつれてだんだんモンスターが大きくなってきているような……まあゲーム的な都合で考えると東からスタートするなら西に行くほど難易度が上がるのは当然か。
「……あれは川だな。あの川の向こうはまた別エリアっぽいな」
暫く飛んだり跳ねたり虐殺したりしながら進み続けていると、かなりの幅を持つ大きな川に道を阻まれる。
当然橋なんてかかっていない。普通ならこの川を超える手段をどうにかして用意する必要があるのだろう。
「まあ、飛べばいいよな」
因みにこの川にはピラニアらしき肉食魚が住んでいるようだ。低空飛行だと跳びつかれて喰われる。
見た目は大体ピラニアだがその大きさは大型犬サイズである。もう鮫だろこれ。
「また急に空気が変わったな……ここからは火山地帯?」
空が暗い。
火口からは立ち昇る煙が空を覆っており、火山灰が降り注いでいる。
人が住める環境じゃなさそうな気がする。いるとしたら火山灰が降り注ぐ中でも平気な種族か、或いは地下や洞窟の中に住んでいそうだ。
大きな川を挟んだ向こう側の生態系はどうなっているのか──
「るぇッ!?」
凄まじい衝撃と共に俺の体が弾き飛ばされる。
水晶ガードがなければ間違いなく即死していたであろうその一撃は、頑丈そうな岩も砂利の地面も一度に貫き、その周囲を高温で赤熱させてドロドロに溶かしていた。
ずしりと重く、しかし静かな身のこなしで現れたソイツは灼熱の
「でっか……!? カメレオン、なのか!?」
先程の攻撃の正体はこの十メートルを優に超える超巨大カメレオンの舌のようだ。
そんな舌で獲物を捕らえたら一瞬で炭になりそうだが、そんなことは今はどうでもいい。
その体の表面には陽炎が揺らめいている。炎属性というよりは恐らく体温自体がめちゃくちゃ高いのだろう。爬虫類なのに?
「分かってりゃ対処は出来る!」
「
このスキルはただの思考加速スキルではない。それに追加して
カメレオンの閉じた口が僅かに膨らむその直前、体の中央に空いた大きな穴から真っ二つに裂けた俺の背中が見えたのを確認して──
「回避!」
先程まで俺がいた場所を弾丸の如きスピードで灼熱の舌が通り過ぎる。
その舌を引っ込められるよりも速く、インベントリから呼び出したファントムを一気に十本その舌に突き刺した。
「あぶねぇ!?振り回すな!!」
灼熱の舌を伸ばしたまま首をブンブン振り回して暴れるカメレオン。
当然振り回される灼熱の舌が鞭の如く暴れ回り、辺り一帯を無差別に溶断してゆく。
正面に立つのは危なすぎる。奴の背後へ……おや?
「尻尾は逆に冷たいのか?」
カメレオンの特徴的な長い尻尾を加速した時の中で観察してみれば、その表面には霜がついており、冷気を放っている。
何とも不思議な生物だ。凄く極端なヒートポンプ的な……
ところで、ソレを切り落としたらどうなるんでしょうかねぇ?
熱の移動が出来なくなって弱体化?或いは冷却が出来なくなって発火?
【
奴はまだ舌に刺さったファントムに意識を向けている。やるなら今の内!
それと同時に俺の視界に表示された幾つかの細い光のライン……これに沿って攻撃を放てばクリティカルになるというスキルだ。このガイドとは別に若干クリティカルに当てやすくなるモーション補正効果もある。
その他のバフも重ねて──ここ!
ザンッ!!!
「
今のはモーションを阻害されない効果で深く斬れたように見えただけだ。
一発でダメなら六発斬ればいいだけだ。
「トゥルルの導き」が傷口という新たなる弱点への理想的な追撃ルートを表示してくれた。
そこへ吸い込まれるように放たれた二発目は更に深く傷口を抉る。
「さーん!しー!ごー!」
斬る。斬る。斬る。
俺のスタミナを全部注ぎ込んだ斬撃は新大陸のそれなりに西側のモンスターにもまあまあ通るようだ。
……七連結したスキルでもこの程度とも言えるが。流石にスタミナ全振りでは普通の筋力特化のようなパワーはそう簡単に出せないか。
「ラストッ!!」
加速した時の中でも斬った衝撃で激しく揺れていた千切れかけの尻尾へ最後の一発を放つ。
まだ動く馬の脚で踏み込み、体重を乗せた一振りはカメレオンの尻尾を確かに断ち斬った。
どんどん主人公の強さがインフレしてゆく……強くし過ぎると緊張感無くなっちゃうから困るのに強くするのやめられない……
「
連結ランク6
剣スキルであり槍スキルであり投擲スキルでもある。なのでこの連結スキルを出すためには最低でも剣、槍、投擲スキルをそれぞれ一つ以上連結する必要がある
剣を装備した時は近距離、槍を装備した時は中・遠距離への対応が可能になる優秀なスキル。スタミナを全て使い切るが、それに見合った破壊力を備えている
貫通効果は六回まで発動するので防ぎきるのは困難。対人戦ならスキルや魔法の防御、盾、鎧をぶち抜いてバラバラにされる。
でも実は盾のランク7連結スキルに七回まで貫通を無効にするスキルが存在している。この二つをぶつけ合わせることが条件の隠し実績が存在している