リゲインファンタジア〜ある魔王と勇者達〜   作:sorasumi

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エピローグ

「……入りなさい。」

ノックの後に聞こえた、落ち着いた声。

俺ちゃんは意を決して、扉を開けた。

「フェイト!」

立ち上がって俺ちゃんの名前を呼ぶ母さん。

でも。

「……今の俺ちゃんは、マオちゃんだよ。母さん。」

「マオ……私は、貴方に謝らなくてはなりませんね。貴方をフェイトからマオにしたのは、他でもない私達です。」

何を、知った風な事を。

分かってくれてるんだ。

相反する、二つの気持ちが生まれて、ぶつかって。

「違うよ。俺ちゃんが、フェイトちゃんを、捨てちゃったんだと思う。」

残ったのは、申し訳無さだった。

「ごめんなさい。」

「いいえ……マオ、ありがとう。」

ふわっと、温かさに包まれる。

懐かしい……優しい、匂いがした。

「フェイトでも、マオでも……生きていてくれて、ありがとう。」

その言葉を聴いて、つい目の奥が熱くなる。

泣くのなんて、何時ぶりだ?

ああ、それこそ、この王宮を飛び出した、あの時以来かな。

「ドラゴンの討伐にも、力を貸して下さったのでしょう?ドラゴンの頭に刺さったままだったあの槍は、私がキトへ頼んで異空間へ置き……娘へ贈った物の一つでした。」

「えっ、あの槍が……て事は、剣も、刀も?」

「ええ。」

「ひょっとして……金貨まで?」

「そうですよ。」

知らなかった。異空間にいつの間にかあったから、平気で使ってた。

とすると俺ちゃんは、結局家族の世話になり続けてたのか。

「俺ちゃん、勝手に金貨をお客さんにあげてました。重ね重ねごめんなさい。」

「聞いていますよ、とても素敵なお金の使い方だと思います。」

ああ、敵わないな。

「ありがとう。そうだ、マオって名前も、気に入ってるよ。」

そう言うと、母さんは笑って答える。

「ちょっと嬉しかったんです。フェイトもキトも、国王様が名付けましたから。私も名付け親になりたかったので。」

国王様には内緒ですよ、と付け足して、また笑った。

 

「国王様。」

ベッドに伏せる、青白い顔をした国王様……いや、父さん。

「おお、フェイト……居るのか、そこに。」

俺ちゃんはマオだよ。そう言いかけて飲み込んで。

「居るよ……俺ちゃん、帰って来たよ。」

手を握る。

「父さん……今までごめんなさい。」

「よい……済まなかったな、フェイト……」

父さんは、ぽつぽつと語り出す。

「もっと早く気付いていればな……サラと言ったか……彼女がこれは何か、と見せてくれた割り箸。あれを受け取って、もしやと……」

そうだったんだ。そういえば父さん、キトちゃんにあげたオモチャも褒めてくれてたなぁ。

「お前に、もっと向き合ってやれば良かった……」

「父さん。俺ちゃんは、これからは此処に居るから。」

もう、父さんは長くは無いのだろう。

それでも、時間が有るのだから。

「ああ、ありがとう……フェイト。」

また、共に歩こう。父さん。

 

「これは、絵本か?」

「おお、そういや買ったなこんなの。」

今は俺ちゃんが再び王宮で暮らす事になったので、異空間に仕舞ってあったモノをキトちゃんに引っ張り出して貰ってる所。

要は引っ越し作業中だ。

「この絵本は、実話を元に作られていたヤツだな。百年程前か、勇者が魔王を倒した時のストーリーだ。」

ペラペラとページを捲るキトちゃん。

「へえー。」

「と言うか、マオが住んでた城がその魔王が建てた城だぞ。魔界なんて僻地にあったから、そのままだったみたいだが。」

「ありがとう!魔王さん!」

色々な人に支えられて、俺ちゃんは此処に居ます。

「てかさ、何でキトちゃんは俺ちゃんの空間魔法ガチ封印しやがったんだよ?不便だぞお陰で!今のこの作業だってそのせいなんだからな!」

八つ当たり。

「マオに……姉上に、もう、何処にも行って欲しくなかった。」

「おぉう。」

カウンター。

コイツ、たまに小っ恥ずかしくなるセリフ平気で言うんだよな。

思わず目線を下げると、キトちゃんの持った絵本の最後のページ、その挿絵。

俺ちゃんが微かに憶えていた、勇者が家族と食卓を囲む、如何にもハッピーエンドな光景を目にした。

「そうだ、やろう。勇者とご飯食べよう!」

「はぁ?なんだ急に……」

「キトちゃんの持って来たドラゴン退治の方が急だったっつーの!」

「すまん。」

 

そして。

「よう、フェイト……いや、今はマオなんだったな。」

「アズマちゃん!久しぶり!」

アズマちゃんが王都へ帰って来る、その日に合わせてパーティーを開いた。

名目は、俺ちゃんの……()()の誕生日パーティー!

という訳で豪勢な料理が並ぶ円卓の一席に、俺ちゃんが着席。

俺ちゃんの右隣にメイちゃん。

「マオ様、いつぞやの約束、憶えてますわよね?」

「甘い一口だろ?期待してな。」

「幸せですわ〜!」

俺ちゃんの左隣にキトちゃん。

「失礼。」

「いいのか美人の隣だぜ?」

「家族は別だ。」

メイちゃんのまた隣にサラちゃん。

「わくわくでござる〜!」

「酒は止めとけよ?一応。」

「もう、いつまでそれを言うつもりでござるか!」

キトちゃんのまた隣にミルちゃん。

「王宮のコックさんの料理、楽しみ〜!」

「いっぱい食べて大きくなりな。」

「女の子にそれはないんじゃないの?もう!」

サラちゃんのまた隣にアズマちゃん。

「いやー、やっとロクなモンが食えるぜ!」

「詳しくは聞かないでおこう。」

「なんだよ、後でたっぷり聴かせてやるよ。」

ミルちゃんのまた隣に母さん。

「マオ、いっぱい友達ができたのですね。」

「うん、母さん。」

そして父さんが、そんな俺ちゃん達を微笑んで見守っている。

ああ、幸せだな。

「俺ちゃんさ、ここにいていいんだよな。」

誰にでもなく、呟いた。

その声は、楽しげな喧騒に掻き消されて。

それが、何よりの答えなのだろうと思えた。

 

「そうだ、折角だ。コレ使って、メシ食わねえか?」

「あっ、そうだ!ボクも持って来てるんだ!」

「それは何ですの?割り箸?」

「そうだ、キトちゃんとメイちゃんには渡してなかったね。キトちゃん、異空間から探してくれる?いっぱいあるから。」

「ん?えーと……本当にいっぱいあるな。これか。」

「あっ、拙者も欲しいでござる!前に貰ったの、国王様に没収されちゃったでござる!」

「うふふ……」

「はい、全員持ったね。それじゃ!」

「「「「「「「いただきまーす!」」」」」」」

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