リゲインファンタジア〜ある魔王と勇者達〜 作:sorasumi
「またつまらぬ物を切ってしまった。」
「人ん家の門ぶっ飛ばしといてそれはなくない?」
なんということをしてくれたのでしょう。
外から「てやー!」と元気な声が聞こえたかと思えば、見事な彫像が施された魔王城の正門が、轟音と共に壮大なガレキの塔に早変わり。
見て下さい、今にも崩れそうです。近づかないよう引き続き十分な注意をして下さい。
現場からは以上です。魔王ちゃんがお伝えしました。
「拙者は誇り高き孤高の侍、サラと申す!人間界を脅かす魔王よ、義によって拙者が成敗致す!」
「あーはい、そういう感じ。」
「なんと冷めたリアクションでござるか!?」
「いやー付き合ってあげても良かったんだけど、なんか癪になっちゃって。てか今更ツッコんで悪いんだけど、切れてないし。粉砕だし。それ木刀だよね?」
彼女の構える樺色の一振りには傷一つなく、使い手がアレなだけで相当な名品であると予想がつく。
「せ、拙者は、その……血を見るのが苦手でござるからして……」
「よく侍名乗れるなそれで。で、サラちゃんや。な・ん・で門壊して入ってきたんで・す・か?」
「いや、特に……」
「特に!?」
乱暴とはいえ、門を開けて入って来てくれた前の二人はまだマシだったんだな、と思い返すよ全く。
もういいや、これ以上城を壊される前にさっさとしばいてお帰り願おう。
「勝負すればいいんでしょ?」
「如何にも!いざ尋常に!」
そう言って八相に構えるサラちゃん。見た目だけは様になってるな。
まあこんなんでも侍だと言うのだから、剣を以てご相手を仕るのが礼でしょう。
「しゃあねえな、それじゃ久々に俺ちゃんの華麗なる剣捌きを……」
「御免!」
「うわあっぶな!」
キィン!と音を立て火花が散る。コイツ、普通に不意打ちして来やがった!
抜刀術の要領で瞬時に異空間から愛刀『
これは長引かせるとマズい、余波で被害が拡大しかねん。
「御免!」
続いて二の太刀、下段からの突きと読んだ!
「ゴメンで済むかっ!」
カキィン!またも鳴る快音、しかし今度は火花は散らず!
「じゃー謝らないでござる!」
三の太刀、じゃない、打ち下ろす柄で殴るつもりか!
なんでもアリかコイツ……ならこっちもだ!
「はぁッ!」
ゴッ。
「なッ!?」
後の先、低く構えてからの頭突きで止めてやった。痛い。
しかし勝ったな。脚を斬ってやれる体勢だが、それは流石に止めてあげて。
「しからば御免ってな!」
「うひゃあ!な、何するでござる!?」
そのまま刀は捨てて突進し、彼女の股に頭を差し込み、両足を両手で掬い取って上体を起こす。
居反り、ないしダックアンダーと呼べばピンと来る読者の方もいらっしゃるかな?
「お、下ろすでござる〜!」
「やだね〜。」
身長は俺ちゃんの方がだいぶ高いので、サラちゃんは宙吊りの状態だ。
あーあ、俺ちゃんの首が180°回ればそのサマ拝んでやれるのにな。
「わ、分かった、謝るでござる!謝るから、下ろして〜!」
「お、ギブアップということでいいね?」
「命だけはお許しを〜!」
「取らんよ。」
「あっ待って!ゆっくり下ろして欲しいでござる!もうちょっとで手がつくから、そこから肘と、膝がつくまでゆっくり……」
「は〜い。」
ということで。
「うう、もうお嫁に行けないでござる……」
「そこに関しては俺ちゃんもすまん。で、俺ちゃんに言う事があるんだったよね?」
「はい……門に落書きしててごめんなさいでござる……」
「余罪!さては貴様、門壊したのその証拠隠滅か!もう許さねえ、償うまで人間界返さねえからな!」
「ひいい……」
そしてお互い武器は仕舞って、件の正門……だった所。
「うーむ、ガレキは空間魔法でどかしたけど、一から造るしかないなぁ……」
「がんばれー、でござる。」
「おめぇのせいだろうがよ!おめぇが頑張んだよ!オラ設計図!オラ木材!オラ工具!オラ働け!」
「ひぃん……」
簡単に作図した設計図を頼りに、魔界のスギに鋸を入れて行く。
サラちゃんは最初こそイヤイヤといった手つきだったが、少しずつ慣れてきたのか、興が乗ったのか。
「次はどこ切るでござるかー?」
なーんて声までかけてくれる様になった。
「ふふ、何かを作るってのも楽しいでござるな〜」
「呑気ねアンタね。」
ギーコ、ギーコ。
「拙者、壊してばっかで知らなかったでござる。」
「せやろね。」
ギーコギーコギーコ。
「……こう思うと、悪い事してたでござるな。」
「うん確実に。」
ギーコ、ギーコ。
「拙者、産まれた里から……その、追い出された身でござるから。」
ギ……ギーコ、ギーコ。
「家宝のこの木刀だけを頼りに、各地を渡り歩いて、王都で路銀が尽きた所で魔王の噂を聞いて、懸賞金目当てに魔界に送って貰ったんでござる。」
「まあそんなとこだろうとは思ってた。よく義によってとか言えたね。」
鋸の音が止まる。流石に思う所があるのかな?
「でも、教えてくれてありがとう。サラちゃん。」
「……そういえば、名前を聞いてなかったでござるな。」
「フェイトと申す。内緒にしてね?」
「フェイト殿……拙者と、友達、になって、欲しいでござる。」
鋸から手を離し、向き合ってそう告げる彼女は初めて見る表情をしていた。
流石の俺ちゃんもこんな顔した娘をおちょくる程、性根が腐っちゃいないので。
「勿論。」
そう言って、彼女の手を取った。
「や、やっと……完成でござるか……」
不格好な、しかし大きな門の前で、息も絶え絶えにサラちゃんがこちらを見る。
あれだけの強さならちょっと位長居して貰っても大丈夫かな〜とか思ってたけど、やっぱり魔界の空気は薄いのだなと実感させられる。
「そうとも〜ありがとうサラちゃん!心の友よ♪」
「えへへ……」
「それでは、お別れのお時間です。」
「へ?」
ブォンと登場、お馴染みのゲート。
せっかくなので、完成した門の中に広げてみた。
行先は王都の外れとなっております。
「ごめんね。俺ちゃんのワガママに付き合わせちゃったかな。」
「ま、待って欲しいでござる!や、やっと拙者に、友達が……」
「サラちゃん。」
ゆっくりと、優しく彼女を抱き留める。
「サラちゃんは良い奴だよ。しっかり自分を持った、強い奴だね。」
「う……うぅ……」
「けどそれはサラちゃんだけじゃない。皆が自分を持ってる。その皆をそのまま見て、そのまま大切にしてあげる事。それが友達を作るコツかな。ホイ、こいつはお駄賃兼お土産です。美味しいモノ食べれば元気になるから。」
サラちゃんにこれまたお馴染みの小袋を握らせて。
「バイバイ。元気でね。」
「フェイト……殿ぉ……」
崩れ落ちる彼女をえっちらおっちら門の向こうまで抱えて運んで、ゲートを閉じた。
締まらんなぁもう。
「うぅ、ぐすっ、っぐ、ぇえ……あぁあっ……」
青空の下、拙者は泣いていた。
拙者の産まれた家は、平たく言えば名家でござった。
「跡取りにもならん面汚し」
母上の言葉を借りれば、それが拙者でござった。
可愛かった弟達も皆揃って、大きくなるに連れて拙者から離れて行く。
そしてただ一人、拙者を可愛がってくれていた父上がこの一振りだけ遺して病でこの世を去った日。
拙者はひとりぼっちになったのでござる。
いや……そう、信じ込んでしまったのでござるな。
きっと、これから先いくらでも、友達を増やしていけると、フェイトは教えてくれたでござる。
「ぐすん……おっと、思わず貰った袋で涙を拭ってしまったでござる。これ、中身は……おお!お?」
金貨と、これ、何でござろう?
う〜む、筋の入った木の棒にしか見えないでござるな。
まあ、何でもいいでござる。
何であれ、友達からの贈り物なのでござるからな。
大切に取っておくでござる……金貨の方は、そうもいかないかもでござるが。
かたじけないでござる、フェイト殿。