リゲインファンタジア〜ある魔王と勇者達〜   作:sorasumi

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クール系魔導士キト

「とりあえず、まともに門を開けて入って来てくれてありがとう。」

「ああ、門だけ造りがやけに簡素だと思った所だ。」

規則正しい三回のノックの後、邪魔する、と凛とした声を上げて今回の客人のエントリーです。

邪魔するなら帰って〜とか言ったらマジで帰っちゃいそうなオーラを感じ、素直に思った事を言ってお出迎えする俺ちゃんなのでした。

「前回のサムライだろ。悪かったな、人選ミスだ。なかなか国内部の人間がどいつもこいつも忙しくてな。」

「ほう、と言いますと。お前さんが魔界へのゲートを開ける魔導士さんですか。」

「ああ。キトだ、よろしく。」

「キトちゃん。そうか。」

「お前は?」

「……秘密だよ。」

自己紹介を挟んだ所で。

「そうか。では、単刀直入に言うぞ。魔王、人間界に来てドラゴンを倒してくれ。」

「それこそ勇者ちゃんの仕事じゃない?」

困惑する俺ちゃんを他所に話を続けるキトちゃん。

彼が言うには。

「バカでけーんだよ。まるで山だ。今は峠で寝てるが、王都から見える位置にまで来るだけでも混乱が予想される。だからそれまでに仕留めろ。」

とのこと。

「そうは言ってもねぇ。俺ちゃんの取り柄なんて空間魔法と、いつの間にか異空間に揃ってるアイテム位よ?」

「どっちも凄えよ。言っとくとその空間魔法、王家の者にしか扱えない筈なんだぞ。」

「ふーん?ま、便利だから有り難いけどね。じゃあキトちゃんってやっぱり王子様?」

「ああ。もっぱらやってる事は魔導士だが、そうなってるな。」

「ワオ。じゃ、立ち話は慣れてないでしょう。座んなよ、こ・こ。」

ぽすぽすと、ソファベッド仕様の玉座の空いたスペースを叩く。

「いやいい。」

「遠慮なさんないで。ひと足お先に味わっておきんさい、玉座の座り心地。」

「美人の隣に座ると緊張する。」

……そう言われちゃしょうがねえな。

「ともかく、返事をお聞かせ願いたいが。」

「いいよ。」

「……怪しいな。理由を聞いても?」

「なんだよせっかく快諾してやったのにさ〜そしたら訝しむ訳〜?シンプルに人助けだよ、他に理由要るぅ?」

「確かに。悪かった。」

「あ、うん、めちゃくちゃ素直だね……」

「それじゃ、こっちで作戦がまとまり次第オレがまた伺うとしよう。失礼するぜ。」

「ああん、ちょい待っち〜。」

踵を返して去ろうとする彼の肩を、空間魔法でワープさせた腕で叩いて引き止める。

「まだ何か……うわビックリした!空間魔法をこんな事に使うな!」

「遊ぼうや。」

「断る!さらば!協力には感謝する!」

それだけキッパリと言い、にべもなく彼は出ていってしまった。

「あらぁ……そっかアイツは自力で帰れるもんなぁ。もっと話したかったんだけどなぁ……あ、割り箸も渡しとらんやん。」

 

「……報告は以上となります。」

「ああ、分かった……もう今日は休め。」

「はっ。失礼します。」

バタン。

「ふぅー……」

国王様……父上が病に伏し、突然魔王を倒せとの厳命を下してからの日々を思い返す。

「魔王は今のところ人間界に危害を加えるつもりは無い様です。俺では彼女に敵いませんでしたが、俺に傷一つ付けず送り返した事がその何よりの証拠です。しかし彼女は退屈しております。如何でしょう、彼女が気まぐれを起こして人間界への侵攻を試みる前に、腕利きの勇者を送って彼女を楽しませ、意思疎通を図ってみては。」

アズマと言ったか……辺境からの勇者はそう言った。

「魔王は……悪い魔王じゃありません。ボクの事、いっぱい褒めてくれました。」

「魔王は拙者と、友達になってくれたでござる!ま、また会わせて頂けないでござるか?」

そうして募った勇者達も、口々に魔王を讃える。

すると父上は何を思ったか、今度は魔王を生かしたまま捕らえよと言い出した。

で実際、この目で確かめてみて。

……よく分からなかったな。うん、悪い感じはしなかったが、総括するとよく分からなかった。

しかし、実力は計り知れない物がある気がする。

アイツを討伐やら封印やらならばともかく、捕らえるなんて上手くいくのか?

まあ、今はドラゴンの方でそれどころじゃないが……

「ん……」

ふと、謁見の間へと続く廊下、その壁に掛けられた肖像画が目に留まる。

父上と母上、小さい頃のオレ。

三人の肖像画だ。

しかし、オレには姉上が居た。

姉上は、オレが物心付く頃には病で死んだと聞いている。

だがそのへんの木の枝からオモチャを作って、小さい頃のオレにくれてたようで。

オレの私室に未だ置いてあるそれだけが、かつて彼女が存在した事を物語る証拠だった。

姉上の名前は……フェイト。

「あら、キト様。いかが致しました?」

「ん、メイ団長。」

目の前に立つのは、王都の騎士団長であるメイその人だった。

「何でもないさ。そっちはまた婚約者漁りか?」

「もう、そんな言い方なさらないで下さいまし!私はただ、生涯を添い遂げるに相応しいお方を探し求めているだけです!」

「そう言って何十年目だ?行き遅れる前にとっとと決めちまえよ。」

コイツは騎士団長としては模範的な振る舞いをしているが、それ以外の時間は婚約者候補を探してばかりいる残念な女だ。

「なっ、そんな風に恋人を選べる訳がありませんわ!」

「選べる暇もないんじゃないのか。」

見た目は整っているからプロポーズしてくる金持ちの男は掃いて捨てる程居るのに、当人は見向きもせずに年下の女ばかり追い掛け回している。

まあ、人の好みそのものを否定するつもりはないが。

「もう……そうですわ、国王様は何と仰っていました?」

「相変わらず魔王を捕らえよ、の一点張りだ。ドラゴンに関してはオレがいくら言っても動こうとしない。」

「まあ……」

「だからもう、オレが独断で動く。」

「そんな!いくら国王様の病状が良くないからって……」

「民の命とどっちが大切だ?」

「それは……」

「時間が無いんだよ。心配するな、そもそもバレなきゃ済む話だ、全責任はオレが持つ。お前にも手伝って貰うからな。」

「ええ、民の為ならば、覚悟はできていますわ!」

本当、兵、あるいは指揮官としては優秀なのにな。

と、思った所で思い付いた。どうせ魔王にもメイにもドラゴン退治を手伝わせるなら、顔合わせをしておいて貰うか、と。

「この後空いてるか?」

「ええ、休暇の予定ですわ。」

「魔王連れて来いよ。」

「なっ、そんな無茶な……」

「めちゃくちゃ可愛い女だったぜ。オレよりは上だが、お前よりは下かな。」

「推して志願させて頂きますわ!」

「それじゃはい。」

ブォン。魔界行き。

「感謝致しますわ!」

つったかたー、と。

さて、オレはオレの仕事するか。

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