リゲインファンタジア〜ある魔王と勇者達〜   作:sorasumi

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激ヤバ騎士団長メイ

「私と結婚して頂けますか!?」

「待って?」

ちょっと時間を巻き戻そう。俺ちゃんも状況を整理したいんでね。

キトちゃんのと比べるとだいぶ大きなノックの音で目を覚ました俺ちゃん。

ああ誰か来たのか、と寝起きの頭で考えながらもボーっとしていたら、突然俺ちゃんの顔を覗き込む麗らかな女性に、求婚されています。

なるほど分からん。

「私は王都の騎士団長メイと申しますの!キト様から直々に指名され魔王様を捕らえるべく参りましたけどこんなにお美しいお方を無理矢理に連れ帰るなんてとんでもないですわ!どうか私の伴侶となって手を繋いで人間界に帰りましょう!?」

「うん、一回整理したい。書くもの頂戴。」

「婚姻届ですね!?どうぞ!」

「聞いてる?うわ俺ちゃんの名前以外記入済やんけ怖ッ!」

ごめん何こいつ?は?今こんなのが騎士団長なん?王都どうした?てかキトちゃんも何考えてんの?厄介払いか?

「俺ちゃんの事好きなの?」

「愛しておりますわ!先程拝見した寝顔のお可愛いこと!そのお顔を私だけに向けて下さいまし!」

「無理かな。今日は帰ってくれる?」

「お断り致しますわ!私と正々堂々決闘なさい!私が勝ったら魔王様は私だけのモノになって下さいまし!」

「俺ちゃんが勝ったら?」

「勿論私は魔王様だけのモノですわ!」

話が通じません。やりゃいいんでしょもう。

 

「いきますことよ!王都の騎士団長たる誇りにかけて負けられませんわ!ああ、真剣なお顔も素敵ですのね!」

「ありがとー。」

中庭にて、騎士団の紋章である猛獣の顔が刻まれた十字槍を掲げるメイちゃん。

とりあえず負かさないとコミュニケーションが取れないと判断して、俺ちゃんも愛槍『御氷流音(おひるね)』を取り出して構え、向かい合う。

「はあぁッ!」

「ッ速い!」

キン!キキン!

実力は本物か。小刻みな槍捌きだが重さが乗っており弾くと手が痺れる。

大振りな攻撃は無く、突きと薙ぎに時折フェイントを挟み、こちらの体勢を崩す事を重視している様だ。

ゼロ距離になれば体術の心得がある俺ちゃんの勝ちだろうが、これではそうもいかない……なーんてね。

「フン!」

俺ちゃんの一撃でガキィンと一際鈍い金属音が鳴り、メイちゃんの十字槍はやや持ち上がった。

そして俺ちゃんから見て横に刃が並ぶ十字槍、その凹みに柄が引っ掛かるように地面に槍を突き立て、その勢いのまま槍を支えに跳ぶ!

そしてメイちゃんの槍の柄を踏み締め、なお十字槍を手放さないメイちゃん目掛けて走ると!

「えぇい!」

と言いながら普通に隣に着地。

「え?」

今日初めて聞いた彼女の困惑の声に満足しかけるが、勿論これで終わりじゃない。

「よっとぉ!」

「ひゃあ!」

両肩に乗せる形で彼女を抱え上げて、自分ごと回す!

「ひゃあああぁ〜!」

回す、回す、まだ回す!

これぞ俺ちゃんの必殺技……エアプレーンスピンと呼べば通りが良いかな?

「あああ、だ、だめ、こ、こうさんですわ……」

うん、満足。

 

「ちょっと手荒だったね、ごめん。もう気分は大丈夫?」

玉座に並んで座り、休ませていた彼女に話しかける。

「は、はい……」

なんか大人しくなったのはいいが、俺ちゃんを見る目がもっと艶めかしくなったな。

「その、魔王様って、大胆ですのね……」

目を伏せて恥じらう彼女。

「臆病ではないかもね。」

「私、家族にだってあんな風に抱き抱えられた事ありませんでしたわ。」

「そうね、本来ケガした人運ぶ時の抱え方だからね。」

良い子はマネしない様に。

「湯浴みをして来ますわ……待ってて下さいまし。」

「なんか勘違いしてるね。」

「そ、そんな、今すぐに欲しいだなんて。」

「言ってないね〜。」

「言葉もなく襲おうだなんてっ!」

「……まあ、ムードってのがあんじゃん?魔界は日が長いんだ、お話しよう、お話。」

俺ちゃんが折れる事にしました。これでも対話できなかったら強制送還だな。

「そ、そういう事でしたら……私ったらつい……」

「キトちゃんから指名されて来たんだよね?キトちゃん何て言ってた?」

「はい、『魔王連れて来いよ』とだけ伺いましたが、もうその必要もありませんわ。私の伴侶となったからには魔王様を生涯守り抜く覚悟ですわ。」

「半分アイツのせいか。ええと、ドラゴンがどうとかは?」

「まあ、そのお話もご存知ですのね。もしかして魔王様、お力を貸して下さるの?」

「うん、そのつもりよ。」

「ありがとうございますわ!でしたら魔王様、私と一緒に人間界へ向かい、そこで共に暮らしましょう?」

「うーん……それは、まだイヤかな。ちょっと行って、すぐ魔界に帰って来る感じを想定してるけど。」

「どうしてです?私、こう言ってはなんですけど裕福ですの。魔王様のお望みとあれば、きっと叶えて上げられます事よ。」

「お金じゃないんだなぁ……んー、まあいっか喋っちゃっても。ちょっと昔話していい?」

「魔王様のお話でしたら何なりと!」

こんなんでも騎士団長サマだ、誰彼構わず言い触らしたりはしないだろう。

それじゃ、ちょっと話してやるか……

 

俺ちゃんが何故、今の今までこんな所で暮らしてるのか。

一言で言えば、家出なんだ。

俺ちゃん、男として育てられてたんだよ。

今思えばよくある話さ。跡継ぎが生まれないからって長女を男として育てて、なんでも詰め込んでおいて、長男が産まれたら、もうどうでもいいんだ。

両親も親戚も、メイドさんだって俺ちゃんを無視して、弟ばかり構う様になってさ。

そのうち嫌になっちゃって、空間魔法で家出しようと思って。

そしたら繋がったのが魔界だった。

ちょっと空気が薄くて殺風景だけど、それもなんだか居心地良く感じてたな。

たまさかお城も空いてたからね。そこに勝手に住んで、食べ物は自給自足して。今に至るって訳。

 

「その、弟さんの名前って。」

「ああ……キトちゃんだよ。あーいつ、どうも気付いてないっぽいんだよな〜。」

「国王様が魔王様に……それも()()()()事に拘り続ける理由が今分かりましたわ。そうですわ、道理で……ああ、思い返せば、よく似ていますわね……」

「あ、会った事ある?覚えてなくてゴメンね。でも、父さんも今更何なんだろうね?言っておくと、俺ちゃんは帰る気サラサラ無いから。」

「魔王様は……いいえ、王女様。貴方はそれでよいのですか?」

「……ふ〜ん?続けてみて?」

「本当にそれでよいのか、と申しているのです。国王様は今、病に伏せているのですよ。国王様にも、きっとお考えがあったのでしょう。家出したまま父親と死に別れてもよいのですか?」

俺ちゃんの眼を真っ直ぐに睨みながら、そう問い掛けるメイちゃん。

「別に。構いやしねえ。知ったこっちゃねえ。」

「ッ!」

結構ヒドい事言うんだな、と自分の中の冷静な部分が茶々を入れる。

しかし、一度口にした気持ちは、簡単には収まってはくれない。

「メイちゃんは俺ちゃんがどんな扱い受けてたか知らねえんだろ?」

「それは、そうですけど……」

「シンプルに嫌いなんだ。あんなのとっとと……」

パァン!

……痛ってえ。マジのビンタやん。それこそ親父にもぶたれた事無いってのに。

「へぇ、血気盛んな騎士団長サマで。」

「今、何を、何を言おうとしたのですか!王都の騎士団長として、例え魔王様であろうと、王女様であろうと許せませんわ!」

見直した、というのが素直な感想ではあるが。彼女の凛とした言葉と態度に、自らを省みる。

「……そうだな、謝るよ。言い過ぎた。だが、兎に角俺ちゃんの意思は動かないからな。人間界には戻らない。キトちゃんとの約束は果たすが、ドラゴンだけ倒したらさっさとこっちに帰る。」

「……もう知りませんわ!」

彼女はそれだけ言って玉座から立ち上がり、俺ちゃんに背を向けて歩き出す。

「魔王様には幻滅しましたわ!婚約のお話は無かった事にさせて頂きます!」

「最初から無えよ。ほら、王都までゲート開いてやる、帰れ帰れ。」

「失礼しますわ!」

ブォン。ゲートを閉じると、魔王城はしばらくぶりに静まり返る。

「何だったんだ全く……」

 

「許せませんわ、許せませんわ、許せませんわ!」

キレながら紅茶を啜るメイ。よく仕事中の人間……それも王子であるオレの隣でやれるな。

「おい……何があった?」

「魔王様とは破局致しましたわ!」

「そうか、交際してた方が驚きだな。」

「半日と保ちませんでしたわ!なんて酷いお方なのかしら!」

「一応詳細を報告しろ、作戦に支障が出ると困る。」

ペンを走らせながら命令する。まあ、慣れた物だ。

「それは……言えませんわ。」

「言えない?」

書類から顔を上げると、彼女は苦々しい表情でオレから顔を逸らす。

その視線の先は暖炉の上……姉上がくれたオモチャが並んでいる。

「命令でもか?」

「……キト様、お姉様の事、覚えていらっしゃる?」

「……まさか。」

「魔王様……いえ、王女様は、自身を跡継ぎとして育てておいて、キト様が産まれたら見限った、国王様の元には帰りたくないそうですわ。」

そうか。

それで魔王は……姉上は。国王様は……父上は。

だとしたら、それは、なんて。

悲しい、すれ違いなんだ。

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