機動戦士ガンダムSEED DUEL 作:デュエル好きの名無し
まさかランキング入りできるとは思っていなかったので嬉しいです┏○ペコッ
アルテミスの爆発に紛れ脱出したことにより、これまでアークエンジェルを追尾していたザフト艦はアークエンジェルの反応をロストしており、比較的安全に宙域から離脱することができた。
……とはいえいい事ばかりでもない。
元々補給の為にアルテミスに向かったというのに、アルテミスではなんの補給も受けることができなかった為、現在のアークエンジェルでは物資――特に水の不足が目立っていた。
「スンスン、オイル臭い」
「ん?嬢ちゃんもシャワー浴びて来るかい?艦長達には俺から言っとくが」
「別にいい、大丈夫」
「そうか?ならいんだけどよ」
節水の為、シャワーに回数制限がかけられるという世の女性からすれば死活問題ともいえる状況になっている訳だが、中身が中身である私からすれば特に気にすることもない。
ただオイル塗れになった手さえ洗えれば問題ないとミリアリアの前で零してしまったのが運の尽き、ミリアリアによってシャワールームに連れ込まれ、体を徹底的に洗われたというエピソードもあるがこの場では割愛する。
今現在私は整備員達と共に、ヘリオポリス脱出時に破損したパーツ類の修理を行っている。
原作において、キラのストライクに腕やら足やらを散々斬り飛ばされたり、ビームライフルで撃ち抜かれまくっていたデュエルだが、今は私の乗機としてアークエンジェルに搭載されている以上、予備パーツだって無限にある訳でもない。
その為、こうして比較的無事そうなパーツはできるだけ修理を試み、再利用しようと考えているのだ。
そうして暫く作業に夢中になっていたのだが、少しして私は手を止めた。
なぜなら、
「キラ?」
「あ、えっと」
ストライクのコクピット内で作業中だった筈のキラが、いつの間に私の前に立っていたからだ。
「何か用?」
「休憩を貰ったんだ。マードックさんからイブも誘ってやれって」
「ふーん」
まあずっとやってたし、そろそろ休憩してもいいくらいか。
「分かった」
「ほんと?じゃあ行こう」
「ん」
2人で格納庫から出て行き、休憩室に立ち寄ってソファーに腰を下ろす。
向かい合うように座っていると、キラが不意に切り出して来た。
「……実は、聞きたいことがあったんだ」
「聞きたいこと?」
「うん。でも、答えたくなかったから答えなくていいし、忘れてくれてもいいから」
「分かった」
なんだろう。私が答えたくないって思うような質問……思いつかないかも。
「……イブはさ、クローンだって言ってたよね」
「言った」
確かに言ったし、そもそも公言もしてるから、今まで関わったクルー達の中で知らない人はいないんじゃないかな?
「その、自分がクローンだってことはさ、いつ知ったの?」
「最初から」
「――え」
キラの慎重に言葉を選ぶような、1つ1つの発言に気を張っているように感じる言葉に、私は淡々と答えた。
「物心ついた時にはもう知ってたから」
「そ、そうなんだ。……イブはさ、その時どう思ったの?」
「どうって……」
今でこそ馴染んだこの記憶も、本当は"私”のものじゃない訳だし……なんというか、返答に困る質問。
でも、強いて言うなら
「悲しくはなった」
「悲しい……」
クローンだということ改めて自覚した時は、それこそ私自身のアイデンティティを喪失しかけた。
普通に生きていただけでは気付ける筈もなかったであろうあの感覚は、今でも――いや、それこそ永久に忘れられないだろう。
それくらい、己にはオリジナルがいるという事実は衝撃だったのだ。
「まあでも、今は気にしてないけど」
「え、どうして?」
「皆が名前を付けてくれた。私はイブ、今はそれでいいと思う」
「あ…」
少し呆気にとられたように口を開けたキラが、柔らかな笑みを浮かべる。
「うん、そうだよ。君はイブという1人の人間なんだ。誰かのクローンなんかじゃ――何その目」
「理由は無い」
「なにそれ……」
どうやら、他ならぬ
「…でも、よかったよ。イブもちょっとは受け入れてくれたみたいで」
「受け入れた?……そうかもしれない」
私が首を傾げながらも肯定すると、キラは優しく微笑みながら頷く。
「そうだ。?オーブについたら一緒に暮らさない?父さんや母さんも受け入れてくれると思うよ」
「それは流石に……あなたのご両親に申し訳ない」
「大丈夫だと思うけどね。なんでか君とは他人な気がしないから」
「……」
キラもキラで何か感じるものでもあるのだろうか。
キラでこれならムウさんにクルーゼにも何か……いや、それは後。
「そう言ってくれるのは嬉しい、でもやめておく。……私に幸せになる資格なんて、ある訳ないもの」
いついかなる時でも
”お前の罪を忘れるな"と、そう言われている気がした。
「デブリベルト」
「でも、それって……」
ムウさんを通じて、マリューさんによってブリッジに呼び出された私とキラは、デブリベルト内を漂流する様々な残骸から補給を行うという旨を聞き、それぞれ声を漏らした。
「こうでもしないとこっちが保たないんだし、しょうがないだろ?」
「だからって…!」
「なにも好き好んで墓を荒そうという訳ではない。我々が生き延びる為には必要なことだからだ」
飄々としたムウさんに反発したキラだったが、珍しく眉を下げた様子のナタルさんに諭され俯いた。
「……あなた達には、船外ポッドでの作業を手伝ってもらいたいの」
そう言うマリューさんもまた難しい顔をしており、軍人として――何より大人として、まだ子供であるキラやトール達に手伝わせることを、本心では良く思っていないようだった。
だが、ナタルさんの言う通り私達が生き延びる為には必要不可欠。
アークエンジェルに乗る全ての命を預かる者として、苦渋の末決断したといったところか。
「……」
キラが無言になったように、トール達もまたマリューさん達の表情から悟ったのだろう。
嫌そうな顔こそするものの、文句を言う者は現れなかった。
「死者達の眠りを妨げるつもりはないの。ただほんの少し、今の私達に必要な物を分けて貰うだけ。彼らの分まで、私達が生き抜く為に」
デュエルを駆りながら、必要な補給物資が書かれたリストに視線を落とす。
アークエンジェルに補充する弾薬類に推進剤は完了。
その他の諸々は作業ポッドに乗り込んだ皆が回収中。となると……
「あとは水」
……でも確か水はあそこにしかなかった筈。
メインカメラの方向を
"ユニウスセブン”。
C.E.の歴史を語る上で避けては通れない、”血のバレンタイン"事変により崩壊した農業用コロニー。
あるブルーコスモス所属の地球軍将校の独断によって積み込まれたその核ミサイルは、ザフトが展開したモビルスーツ部隊の警戒網をすり抜け、24万3721人の人命と共にユニウスセブンをデブリの山に変えた。
血のバレンタイン後の大西洋連が発した表明が原因で、"エイプリル・フール・クライシス”という更なる悲劇に繋がる訳だが……まあ今はどうでもいいか。
今は水を……、センサーに感あり?
ライフルとシールドを構え直し、デュエルの頭部を動かす。
メインカメラが捉えた姿から、システムが瞬時に敵機の情報を導き出した。
「ZGMF-LRR704B 長距離強行偵察複座型ジン」
両肩のレドームが特徴なその機体は名前にある通り偵察型であり、索敵・通信能力が強化されている。
……応援を呼ばれるのは不味い。
「ここで落とす」
狙撃用スコープを展開、照準をジンに合わせる。
ロックオンが完了すると同時に、コクピット目掛けて引き金を引いた。
ビームライフルの緑の光に胸部を貫かれたジンは、数秒痙攣するように震えた後、爆散した。
……ごめんなさい。でも、私達が生きる為には必要なの。
彼らは私達を追うクルーゼ隊とはまた別の部隊であり、ここユニウスセブンに赴き、行方不明となってしまったラクス・クラインの捜索を行っていた。
つまり、私達がここに訪れなければ、中にいたパイロット達はまだ生きていられたのかもしれない。
「……」
操縦桿から手を離し、パイロットスーツに包まれた己の手を見詰めた。
……何を今更、もうこの手には血がびっしりとこびりついている。
一人でも人を殺めてしまえば、もう後戻りはできないのだから―――
※ジャック・オー・ランタン様脱字の報告ありがとうございますm(*_ _)m