機動戦士ガンダムSEED DUEL   作:デュエル好きの名無し

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ep.02

感慨深くも、複雑な思いを抱きながらストライクを見つめていたのだが、デュエルのコクピットに銃口を向けていたマリュー・ラミアスの表情が歪み出したのを見て、私もコクピットを開いた。

 

「子供…!」

 

驚いたような表情とは裏腹に、声にそこまでの動揺は乗っていない。

大方通信時の声で大体予想していたのだろう。……ストライクのパイロットも子供だし。

 

タラップを通じて地上に降りる。

無数の視線が突き刺さるが、この無表情ボディは眉一つ動かさない。

 

「君は……」

 

そしてワイヤーから手を離し、ラダーに掛けていた足も離した上で、改めて彼らに向き合ったところ、ちょうど正面に立っていたキラ・ヤマトと目が合う。

……やはり気分的に少し合わせ辛い、自然な動きで逸らしておこう。

 

「私は、何者でもない。何者にもなれなかった者」

 

「え?」

 

「……改めて、先程自己紹介したマリュー・ラミアス大尉です。あなたにお聞きしたいのだけど」

 

「何か?」

 

どこか得体の知れない私から、自然とキラ・ヤマトを庇いながら、質問を投げかけてくるマリュー・ラミアス。

それとなくキラ・ヤマトの学友である、ヘリオポリスの学生達も守れるように立ち回るのは、流石現役の軍人と言ったところか。

 

「あなた、先程名前が無いと仰いましたが、それはどういうことですか?」

 

気になるだろうに、敢えて名前に関する事だけを聞いてくるとは。

つくづくどうしようもない連中が多いC.E.(コズミック・イラ)の中でも、マリュー・ラミアスという人間が如何に人格者なのかよく分かる。

 

……で、問題は、そんな人格者かつこれからストレスを溜めまくることになるマリュー・ラミアス……マリューさんに、情報という名の爆弾を渡さなければならないこと。

 

「そのままの意味。私は人によって作られたヒトモドキ。名前なんて、それこそ生まれてこの方与えられたこともない」

 

「なっ!?」

 

「「「「「え!?」」」」」

 

どうやら、マリューさんだけでなくキラ・ヤマトを含むヘリオポリスの学生組にも刺さったらしい。

これまで固唾を飲んで見守っていた彼らが、一斉に声を出し、一歩後ずさった。

 

「つまり…あなたは……?」

 

かくいうマリューさんも声が震えている。

だけど、この様子で篭っている感情が恐怖ではないのだから、この人の人間性がどれ程優れているのかを実感させられる。

 

「一言でまとめれば、クローン」

 

そう、私はクローン。

僅かに残された、不完全な最高のコーディネーターの遺伝子情報を基に、ダメ元で作り出された失敗作。

 

ブルーコスモス襲撃による劣化を、一刻も早くと無理に埋め合わせようとあいつらは足掻いた。

だが、破壊された人工子宮に代わって、急遽母体として利用した女性がほぼナチュラル同然だったことで、実験体はハーフコーディネーターと蔑まれ、価値無しのレッテルを貼られた欠陥品へと落ちた。

 

「資金さえあればいくらでも作り出せる。替えの利く人形」

 

同類でありながら、(カナード・パルス)とは違い、成功例であるキラ・ヤマトへの復讐心すら持てない者。

 

「それが、私」

 

環境の違いもあるかもしれない。

カナード・パルスは様々な組織において、スーパーコーディネーターの失敗作として蔑まれ、モルモットとして非道に扱われて来た。

 

……だが、仮に私がカナード・パルスのような過去を得たとしても、キラ・ヤマトへの復讐心は抱けそうにない。

弱い私には、それすらも不可能だろうから。

 

「……」

 

マリューさんも、ヘリオポリスの学生達も、悲しげに顔を歪めて黙り込んでしまった。

時折何かを話そうとしても、口から言葉として出る前に霧散してしまう様子だ。

 

「それでも」

 

「?」

 

しかし、一人だけ少し様子が異なる相手がいた。

ある意味では私のオリジナルである彼、キラ・ヤマトだ。

 

「それでも君は、人間だと思う」

 

「私が……?」

 

人……間……?

 

「確かに、僕は君の事を知らないし、君がどんな人生を歩んで来たのかも知らないよ」

 

……そうだろうね。今のあなたは何も知らない。

いずれ知る事にはなるとはいえ、今の君は中立国の一般人。ただ、それだけ。

 

「でも、君からは思い遣りを感じた。むしろその逆で、僕らから怖がられても、君は責めたりはしなかった」

 

違う、私はただ……

 

「君は、優しい”人間"だと思う。……それに、その、君がどう思ってるのかは分からないけど、その髪の色や目も綺麗だよ」

 

「―――」

 

綺麗、なのか……はっ、はは。

そんなことを言われたのは……初めてだ。

この色素の抜け落ちた髪と、血の如く赤く輝く瞳を見て、よもやそんな感想が出るとは。

 

キラ・ヤマト。この男は、思っていた以上に愉快な性格らしい。

……まあ、この後待ってる「守れなかったものが沢山ある…」で、擦り切れて廃人になるんだけども。

 

とまあ、そんな事を考えていた時だった。

 

「……キラくんの言う通りよ」

 

「え?」

 

先程まで、上手く言葉を纏められずにいたマリューさんが、迷いなく口を開いた。

 

「あなたの過去に何があったのかを、私達は詳しく知らない。けど、あなたには人を思える心がある。なら、あなたは人間として胸を張っていい。少なくとも、私はそう思うわ」

 

「お、俺もこの人と同じ気持ちだよ!」

 

「私も、あなたは優しいと思うわ!」

 

「こいつらの言う通りだよ。だから心配すんなよ」

 

「違和感とかないかと言われると……ないとは言えないけど」

 

力強くも、人を思いやる優しさに満ちた言葉を送って来た彼らに、私は口をぽかんと空け呆然としたが、胸を包む暖かな感情に思わず微笑みが零れた。

 

尚、キラ・ヤマトを含む四人から、デリカシーに関して説教を受けている約一名(カズイ・バスカーク)からは目を逸らしておくことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから改めて自己紹介を済ませた後、トール達ヘリオポリスの学生組は、ストライクのパワーパックこと"ストライカーパック”の回収に向かい、キラはストライクを用いて友軍との通信を行っていた。

 

なら私は何をしているのかと言えば、マリューさんと一緒にデュエル用の各種装備の回収である。

加えて損傷時に備えての予備パーツの収集も、並行して行っている。

 

パックとの接続によりバッテリーを回復できるストライクと違って、デュエルを含む他の4機は戦闘中にバッテリーを回復する手段がない。

故に、現在も外にザフトがいるこの状況では、無用な電力の消耗が躊躇われる。

 

……だが、コンテナの輸送を行える程の大型トレーラーは、既に学生組が使用している以上こちらにはない。

いくらマリューさんと2人とはいえ、たかが人間2人でMS用の装備やパーツを運べというのは無理がある。

 

必然的に、デュエルを使わざるを得ないという訳なのだ。

 

「あった。あのコンテナよ」

 

「あれには何が?」

 

「ビームライフルが3丁に、ビームサーベルが6本あるわ。グレネードの予備弾に、イーゲルシュテルンの弾薬もあの中にある筈」

 

……どれも聞き覚えもあれば、見覚えもある武装達だ。

原作におけるデュエルとそのパイロットたる彼は、これらの兵装と、後に追加されるある装備を用いて、キラのストライクと幾度も刃を交えた。

 

最終的にはある大戦果ともいえる活躍も見せた訳だが……そんな彼は私が殺してしまった。

彼と比べれば、月とすっぽんどころか、太陽と塵レベルに価値のない私如きがだ……

 

鬱屈した気持ちに呑まれかけるが、今はウジウジ悩んでいる場合ではない。

軽く頬を叩き、マリューさんに問い掛ける。

 

「これだけですか?」

 

「あとは”ゲイボルグ"がある筈なんだけど……」

 

「ゲイボルグ?」

 

聞き覚えのない名前に首を傾げる。

そんな武装デュエルにあったかな?

 

「350mm口径のレールバズーカ砲よ。ちょうどこの辺りに保管されてるんだけど……」

 

「350mm……そんな大きなバズーカ、探せばすぐ見つかると思いますが」

 

「そうなのよ……おかしいわね」

 

……ああ思い出した。ゲイボルグって確か外伝で*1ゴールドフレームが持ってた武器だった筈。

確かヘリオポリス脱出時に持ち逃げされたんだっけ?

 

なら無いのも納得だけど……普通は知り得ない情報だし、黙っておこう。

 

「ひとまず、戻りま――」

 

そこまで言いかけた時、突如としてコロニーの隔壁の一部が大きな音と共に吹き飛び、爆炎と共に2つの機影が現れた。

*1
外伝作品:機動戦士ガンダムSEED ASTRAYに登場するガンダム。地球連合軍の技術を無断盗用したモルゲンレーテ社によって建造された5機のプロトアストレイの一機であり、原作ではロンド・ギナ・サハクが搭乗。外伝主人公であるロウ・ギュールが駆るレッドフレームや、叢雲劾が駆るブルーフレームと幾度と交戦するという活躍を見せ、その後も……




長くなるとエたりそうなので、割と早いペースでサクサク進めて行く予定です。
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