機動戦士ガンダムSEED DUEL 作:デュエル好きの名無し
皆様ありがとうございます。
吹き飛んだ隔壁を通って、ヘリオポリス外部から内部へと入り込んだ2機の機影。
ムウ・ラ・フラガのメビウス・ゼロと、ラウ・ル・クルーゼが駆るシグーは、それぞれの機体のメインカメラを、各々作業に従事中のストライクとデュエルに向けた。
「奪われなかった2機か!」
「ほう、あれがミゲルとクーウェルを……危険だな」
2機のGを認識するや否や、排除を選択したクルーゼ。
ストライクとデュエルのどちらを狙うかを、己のシグーとの距離を基準に一瞬の間に導き出し、クルーゼはシグーをデュエルに向けて急加速させた。
「チッ!やらせるかよ!」
「悪いがムウ、今の貴様に用はないのだよ!」
デュエルに向かうシグーの思惑を理解し、そうはさせまいとメビウス・ゼロが間に入るも、シグーは鮮やかな重斬刀捌きでメビウス・ゼロに残された最後の武装である、リニアガンを斬り飛ばした。
「ナニィ!?」
「これでもう邪魔はできまい。後でじっくり料理してやろう!」
丸裸同然となったメビウス・ゼロなど最早眼中に無い。
そのモノアイをデュエルに固定したシグーが、スラスターを全開に吹かし、己が敵へと突撃する――!
「マズイわ、逃げて!」
「しかし距離的に」
「エネルギー残量から考えて、長時間の戦闘は耐えられないわ!」
「わかりました」
一度だけ反論してしまったが、マリューさんの指示に従いデュエルのスラスターを吹かす。
よく考えなくとも、先程の戦闘でバッテリーを消費してしまっている以上、シグーとの戦闘は厳しいものになる。
ひとたびフェイズシフトダウンするだけでも、今の私などすぐ様落ちる。
それを改めて頭に叩き込み、残量バッテリーに気を配りながら、シグーの猛攻を間一髪で回避して行く。
重斬刀の振り下ろしを、機体を半身にさせることで躱し、返す刀で放たれる横薙に対し、スラスターを使い空へと逃げることで対応する。
「む?」
「くっ!」
残りのバッテリーの無駄な消耗を抑える為の、必要最低限の回避――なんて言えたらどれほど良かったか。
実際はシグーの攻撃が速過ぎて、反応がギリギリになっているだけだ。
分かっていたこととはいえ、ラウ・ル・クルーゼと私の技量の差には、かなりの開きがあるらしい。
……それに加えてこちらにはマリューさんもいる。
彼女もまたこの世界における重要人物だ。
私が命を奪ってしまった彼のように、死なせる訳には行かない……!
操縦桿を握る手に力が篭もり、震え出す。
緊張で汗が吹き出し、落ち着かない気持ちになる。
「イブさん、落ち着いて」
イブ。マリューさんにそう呼ばれた私は、少し前のある一幕を思い出す。
『名前がないなんて不便だよな』
『ちょっと、トール!』
『だって実際そうじゃんか』
『お前な……それじゃカズイのこと言えないじゃないか』
『うんうん』
『うぐっ、でもキラだってそう思うだろ!?』
『え、ここで僕に振るの?』
不意に私に名前が無いことを不便だと言ったトールを発端として、急遽私の名前を考えることになった。
『白くて雪みたいな髪色だし、スノーホワイトとかは?』
『長い』
『赤い瞳が綺麗だし、ルージュは?』
『……なんかしっくり来ない』
『凛としてるからリンはどうだ?』
『………ごめん』
『と、特に思いつかないし、皆に任せる』
『僕も、急には……』
『『『うーん……』』』
いくら失敗作とはいえ、見た目でいえば絶世の美少女間違いなしである今世の私。
生半可な名前で妥協したくはなく、少し我儘になってしまった。
時間も無い中必死に考えてくれた皆に申し訳なくなり、これまで出してくれた案の中から、どれかを選ぼうかと考えたその時。
『なら、イブはどうかしら』
『イブ?』
微笑ましげに私達を見ていたマリューさんが、一つの案を出してきたのだ。
『アダムとイブから取ったのだけど……勿論、あなたが嫌なら他の名前を考えるわ』
そう語るマリューさんは尚も微笑みを浮かべている。
私はイブという名前を何度も口の中で反芻し、一つ頷いた。
『決めた。私の名前は、イブ』
――ロックオン警報のアラートが大音量で鳴り響く。
「っ!」
慌てて視線をモニターに固定すれば、こちらに向けられる突撃銃の銃口が目に入る。
……どうやら、回避の軌道を読まれたらしい。
なんとか左手に構えたシールドで放たれた銃弾を防ぐも、シールドによって目線が埋め尽くされ、シグーの姿が見えなくなる。
「どこ?」
すぐさまシグーの行方を探るも見つけられず、焦りを募らせる。
「後ろよ!」
「ッ!」
隣のマリューさんの言葉に、頭で考えるより先に体が応じ、動作を入力されたデュエルが回し蹴りを放つ。
「っ、なかなかやるようだな」
デュエルの回し蹴りがシグーの右腕に直撃し、その手に握られていた重斬刀を弾き飛ばす。
「それ、貰う…!」
バッテリーの節約の為に、背部バックパックに備え付けられたビームサーベルと、マウントされたビームライフルは使用できない。
そのような状況下において、機体本体のエネルギーを消費せずに使える武器があるならば、迷わずに使用を選択する。
故に、多少の隙を晒してでも重斬刀の回収を試みたのだが……どうやら失敗だったらしい。
モニターの画面いっぱいに映るシグーと、こちらに向く黒光りする銃口。
「―――」
死を覚悟したその時、またもやコロニーの隔壁を吹き飛ばす者が現れる。
「今度はなんだ?」
「な、なに…?」
「いったい、何が……」
爆煙を突き破る白亜の艦体は、まるで2本の足を備えたかのような形状をしており、その独特な姿はある種の美しさを感じさせる。
間違いない、この艦は……!
「戦艦だと!?例の新型か、仕留め損ねなったようだな!」
「アークエンジェル!?」
「っ、今!」
シグーのモノアイがアークエンジェルに向けられている。
つまり、搭乗者であるラウ・ル・クルーゼの注意もまた、このデュエルから逸れている。
隙を活かし、頭部バルカン砲イーゲルシュテルを乱射、堪らずといった様子で飛び退くシグー。
『イブ!マリューさん!』
「キラ?」
「キラくん!」
私自身もデュエルを今出せる最高速度で離脱させ、シグーと距離を取れば、キラのストライクから通信が繋がれた。
『トール達が持って来てくれた武装を取り付けました!遠距離攻撃ができる装備らしいです。今援護します!』
「っ!ダメよキラくん、それは!」
『え?』
慌てた様子のマリューさんの声に、訳が分からないといった感じの声を出したキラ。
その直後、地上から放たれた赤い光がシグーの片腕を破壊し、勢いそのままにコロニーの外壁へ直撃、それすらも射抜いて破壊してしまう。
「なんて威力……あの武器は?」
「ストライクの3つのストライカーパックの一つ、ランチャーストライカーの主砲、320mm超高インパルス砲"アグニ”よ……」
あれがアグニ。実際に見たのは初めてだけど、かなり怖く感じた。
もしあんなものが直撃でもしようものなら……骨すら残らないか。
シグーの方も撤退して行く。
流石のラウ・ル・クルーゼと言えども、機体を損傷した状態でストライクとデュエルの2機に加え、母艦であるアークエンジェルまでもを相手取るつもりは無いようだ。
まあ普通に考えて不利過ぎるし、その判断は間違いではないと思う。
「敵機、離脱して行きます」
「ええ……ひとまず、アークエンジェルと合流しましょう」
「了解しました」
先程の戦闘の結果、バッテリーがいよいよ危険域一歩手前まで来てしまっているが、まあ問題はないか。
フェイズシフトをオフにし、残りのエネルギーをスラスターと動作機構に注ぎ込む。
機器類を操作しながら、チラリとマリューさんの顔色を伺う……まだ酷い。
やはり先程の光景が相当堪えたらしく、自己嫌悪一色に染まってしまっている。
なんとか励まして上げたいが、生憎私の頭では気の利いた冗談の一つも思い付かず、デュエルのコクピット内は重苦しい空気に包まれた。
あまり明確に描写している訳でも無いので、これで曇らせになっているのか少し不安です( - - ;)