機動戦士ガンダムSEED DUEL   作:デュエル好きの名無し

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ep.03

吹き飛んだ隔壁を通って、ヘリオポリス外部から内部へと入り込んだ2機の機影。

ムウ・ラ・フラガのメビウス・ゼロと、ラウ・ル・クルーゼが駆るシグーは、それぞれの機体のメインカメラを、各々作業に従事中のストライクとデュエルに向けた。

 

「奪われなかった2機か!」

 

「ほう、あれがミゲルとクーウェルを……危険だな」

 

2機のGを認識するや否や、排除を選択したクルーゼ。

ストライクとデュエルのどちらを狙うかを、己のシグーとの距離を基準に一瞬の間に導き出し、クルーゼはシグーをデュエルに向けて急加速させた。

 

「チッ!やらせるかよ!」

 

「悪いがムウ、今の貴様に用はないのだよ!」

 

デュエルに向かうシグーの思惑を理解し、そうはさせまいとメビウス・ゼロが間に入るも、シグーは鮮やかな重斬刀捌きでメビウス・ゼロに残された最後の武装である、リニアガンを斬り飛ばした。

 

「ナニィ!?」

 

「これでもう邪魔はできまい。後でじっくり料理してやろう!」

 

丸裸同然となったメビウス・ゼロなど最早眼中に無い。

そのモノアイをデュエルに固定したシグーが、スラスターを全開に吹かし、己が敵へと突撃する――!

 

「マズイわ、逃げて!」

 

「しかし距離的に」

 

「エネルギー残量から考えて、長時間の戦闘は耐えられないわ!」

 

「わかりました」

 

一度だけ反論してしまったが、マリューさんの指示に従いデュエルのスラスターを吹かす。

よく考えなくとも、先程の戦闘でバッテリーを消費してしまっている以上、シグーとの戦闘は厳しいものになる。

 

ひとたびフェイズシフトダウンするだけでも、今の私などすぐ様落ちる。

それを改めて頭に叩き込み、残量バッテリーに気を配りながら、シグーの猛攻を間一髪で回避して行く。

 

重斬刀の振り下ろしを、機体を半身にさせることで躱し、返す刀で放たれる横薙に対し、スラスターを使い空へと逃げることで対応する。

 

「む?」

 

「くっ!」

 

残りのバッテリーの無駄な消耗を抑える為の、必要最低限の回避――なんて言えたらどれほど良かったか。

実際はシグーの攻撃が速過ぎて、反応がギリギリになっているだけだ。

 

分かっていたこととはいえ、ラウ・ル・クルーゼと私の技量の差には、かなりの開きがあるらしい。

……それに加えてこちらにはマリューさんもいる。

 

彼女もまたこの世界における重要人物だ。

私が命を奪ってしまった彼のように、死なせる訳には行かない……!

 

操縦桿を握る手に力が篭もり、震え出す。

緊張で汗が吹き出し、落ち着かない気持ちになる。

 

「イブさん、落ち着いて」

 

イブ。マリューさんにそう呼ばれた私は、少し前のある一幕を思い出す。

 

『名前がないなんて不便だよな』

 

『ちょっと、トール!』

 

『だって実際そうじゃんか』

 

『お前な……それじゃカズイのこと言えないじゃないか』

 

『うんうん』

 

『うぐっ、でもキラだってそう思うだろ!?』

 

『え、ここで僕に振るの?』

 

不意に私に名前が無いことを不便だと言ったトールを発端として、急遽私の名前を考えることになった。

 

『白くて雪みたいな髪色だし、スノーホワイトとかは?』

 

『長い』

 

『赤い瞳が綺麗だし、ルージュは?』

 

『……なんかしっくり来ない』

 

『凛としてるからリンはどうだ?』

 

『………ごめん』

 

『と、特に思いつかないし、皆に任せる』

 

『僕も、急には……』

 

『『『うーん……』』』

 

いくら失敗作とはいえ、見た目でいえば絶世の美少女間違いなしである今世の私。

生半可な名前で妥協したくはなく、少し我儘になってしまった。

 

時間も無い中必死に考えてくれた皆に申し訳なくなり、これまで出してくれた案の中から、どれかを選ぼうかと考えたその時。

 

『なら、イブはどうかしら』

 

『イブ?』

 

微笑ましげに私達を見ていたマリューさんが、一つの案を出してきたのだ。

 

『アダムとイブから取ったのだけど……勿論、あなたが嫌なら他の名前を考えるわ』

 

そう語るマリューさんは尚も微笑みを浮かべている。

私はイブという名前を何度も口の中で反芻し、一つ頷いた。

 

『決めた。私の名前は、イブ』

 

――ロックオン警報のアラートが大音量で鳴り響く。

 

「っ!」

 

慌てて視線をモニターに固定すれば、こちらに向けられる突撃銃の銃口が目に入る。

……どうやら、回避の軌道を読まれたらしい。

 

なんとか左手に構えたシールドで放たれた銃弾を防ぐも、シールドによって目線が埋め尽くされ、シグーの姿が見えなくなる。

 

「どこ?」

 

すぐさまシグーの行方を探るも見つけられず、焦りを募らせる。

 

「後ろよ!」

 

「ッ!」

 

隣のマリューさんの言葉に、頭で考えるより先に体が応じ、動作を入力されたデュエルが回し蹴りを放つ。

 

「っ、なかなかやるようだな」

 

デュエルの回し蹴りがシグーの右腕に直撃し、その手に握られていた重斬刀を弾き飛ばす。

 

「それ、貰う…!」

 

バッテリーの節約の為に、背部バックパックに備え付けられたビームサーベルと、マウントされたビームライフルは使用できない。

そのような状況下において、機体本体のエネルギーを消費せずに使える武器があるならば、迷わずに使用を選択する。

 

故に、多少の隙を晒してでも重斬刀の回収を試みたのだが……どうやら失敗だったらしい。

モニターの画面いっぱいに映るシグーと、こちらに向く黒光りする銃口。

 

「―――」

 

死を覚悟したその時、またもやコロニーの隔壁を吹き飛ばす者が現れる。

 

「今度はなんだ?」

 

「な、なに…?」

 

「いったい、何が……」

 

爆煙を突き破る白亜の艦体は、まるで2本の足を備えたかのような形状をしており、その独特な姿はある種の美しさを感じさせる。

間違いない、この艦は……!

 

「戦艦だと!?例の新型か、仕留め損ねなったようだな!」

 

「アークエンジェル!?」

 

「っ、今!」

 

シグーのモノアイがアークエンジェルに向けられている。

つまり、搭乗者であるラウ・ル・クルーゼの注意もまた、このデュエルから逸れている。

 

隙を活かし、頭部バルカン砲イーゲルシュテルを乱射、堪らずといった様子で飛び退くシグー。

 

『イブ!マリューさん!』

 

「キラ?」

 

「キラくん!」

 

私自身もデュエルを今出せる最高速度で離脱させ、シグーと距離を取れば、キラのストライクから通信が繋がれた。

 

『トール達が持って来てくれた武装を取り付けました!遠距離攻撃ができる装備らしいです。今援護します!』

 

「っ!ダメよキラくん、それは!」

 

『え?』

 

慌てた様子のマリューさんの声に、訳が分からないといった感じの声を出したキラ。

その直後、地上から放たれた赤い光がシグーの片腕を破壊し、勢いそのままにコロニーの外壁へ直撃、それすらも射抜いて破壊してしまう。

 

「なんて威力……あの武器は?」

 

「ストライクの3つのストライカーパックの一つ、ランチャーストライカーの主砲、320mm超高インパルス砲"アグニ”よ……」

 

あれがアグニ。実際に見たのは初めてだけど、かなり怖く感じた。

もしあんなものが直撃でもしようものなら……骨すら残らないか。

 

シグーの方も撤退して行く。

流石のラウ・ル・クルーゼと言えども、機体を損傷した状態でストライクとデュエルの2機に加え、母艦であるアークエンジェルまでもを相手取るつもりは無いようだ。

 

まあ普通に考えて不利過ぎるし、その判断は間違いではないと思う。

 

「敵機、離脱して行きます」

 

「ええ……ひとまず、アークエンジェルと合流しましょう」

 

「了解しました」

 

先程の戦闘の結果、バッテリーがいよいよ危険域一歩手前まで来てしまっているが、まあ問題はないか。

フェイズシフトをオフにし、残りのエネルギーをスラスターと動作機構に注ぎ込む。

 

機器類を操作しながら、チラリとマリューさんの顔色を伺う……まだ酷い。

やはり先程の光景が相当堪えたらしく、自己嫌悪一色に染まってしまっている。

 

なんとか励まして上げたいが、生憎私の頭では気の利いた冗談の一つも思い付かず、デュエルのコクピット内は重苦しい空気に包まれた。




あまり明確に描写している訳でも無いので、これで曇らせになっているのか少し不安です( - - ;)
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