機動戦士ガンダムSEED DUEL 作:デュエル好きの名無し
G兵器の運用母艦として開発・建造された、地球連合軍の新型強襲機動特装艦"アークエンジェル”艦内では、様々な区画を生き残ったクルー達が忙しなく走り回り、各々作業に従事していた。
そしてここブリッジでは、CIC要員達が各種戦闘準備を整える中、まだこちらに来て間も無いムウが、ナタルからの状況の詳しい説明を受けていた。
「……なるほど。となると、やっぱり俺達でどうにかするしかないな」
ナタルからの説明を聞き、正しく現状への理解を深めたムウの一言。
「コロニー内の避難はほぼ100%完了。ですが、先程の1件で警報レベルが9に上がったとのことです」
「あー、シェルターも完全にロックされたと来たか。ま、あんなことになっちまったし、無理もないよね」
軍人として、淡々と情報を口にするナタルに対し、悩ましげな表情を時折浮かべながらも、顎に手を当てながら打開策を考え続けるムウ。
そんな2人を見て、マリューが絞り出すように告げる。
「……あの2人に力を借りましょう」
ムウとナタルが思わず顔をマリューに向ける。
「……本気?あの坊主と嬢ちゃんを巻き込むのか?中立国の民間人だぞ」
「これ以上、民間人に軍の機密を触れさせる訳には行きません!」
すぐさまムウとナタルから否定の声が上がる。
「……しかし、あの2機を動かせるのは彼らだけです」
「フラガ大尉がいます!エンデュミオンの鷹と呼ばれたあなたなら……」
「おいおい!あの2人が書き換えたOS見てないのか?あんなの普通の人間にどうこうできる訳ないっての!」
「……なら、元の状態に戻させれば」
「それでノロクサ出てって、宇宙の藻屑になれってか?」
「「……」」
艦橋に暗い空気が立ち込める。
ムウは努めておどけた態度を取ることで、なんとか場を明るくしようと努力したが、こればかりはどうしようもないというものだ。
「……やはり、2人の力が必要かと」
「かーっ、情けないったらありゃしないけど、……そうするしかないか」
「……」
「お断りします!」
案内された部屋に入って来たマリューさんからの頼み――もう一度ストライクとデュエルに乗ってくれという内容のそれに、キラは大声で否定の声を発した。
「僕達は、戦争が嫌でここまで来たんです!もうこれ以上、僕らを巻き込まないでください!」
「キラくん……」
……まあ、そうだろうな、自分から戦いに赴きたいなんて普通は思わない。
でも、
「私は行く」
「「「「「え?」」」」」
「私が死んでも、代わりはいるもの」
「ッ!?」
「イブさん…!」
あ、図らずもエ○ァの名台詞が。……まあいいや。
「私の命は他の皆とは価値も、重みも違う」
所詮はクローン、元さえあればいくらでも作れる玩具だ。
……それに、私は本来いない存在。なら、迷うまでもないだろう。
「キラは待ってて。戦いたくないなら、無理に戦う必要なんてないから」
「あ…」
「マリューさん、格納庫へ」
「え、ええ。……でも、あなた」
「問題ありません。時間が無いのでしょう?」
「っ、こっちよ」
皆からの視線を受けながら、マリューさんに格納庫へと案内して貰うと声をかける。
何かを言いたげなマリューさんだったが、私の言葉に現実を思い出したのか、足早に格納庫への道を歩き出そうとする。
……その時だった。
「待ってください!」
キラが、その瞳に決意を浮かべながら叫んだ。
「僕も……僕も行きます!」
私とマリューさんだけでなく、トール達も唖然となった。
さっきまで大声を出してまで拒絶していたというのに、いったいどういう風の吹き回しか。
……まあなんにせよ。
「キラ、私に気を遣わなくていいよ。元々、こういうのは私の役目だから」
いくらこの世界の大元が、キラ・ヤマトという少年を主人公とした物語の世界とはいえ、物語はあくまで物語に過ぎない。
キラはこの世界を生きる人間であって、脚本通りに動くキャラクターでも何でもないのだから。
そう思い発した言葉は、キラの強い一言に否定された。
「違う!戦うのは怖いけど……でも、君を1人にはしたくないんだ!」
「3番コンテナ開けぇー!装備はソードストライカーだ!」
ストライカーパックの換装作業を指示しているマードックさんの大声を聞きながら、
……OSは問題なし。各種ビーム兵器のエネルギー配分率もこのままでよし、あとはフェイズシフト装甲に回す電力関連か。
「基礎はストライクを参考に、でもデュエルの装甲はストライクの物よりも厚いからそこも考慮して」
この調整で少しはマシになればいいけど……ん?通信。
『イブ』
「キラ?どうしたの?」
『あ、いや……大丈夫かなって』
「私が?問題ないよ」
『そ、そう』
通信はストライクから繋がれており、コクピット上部のモニターにパイロットスーツを着たキラの顔が映り込む。
……かく言う私もパイロットスーツを着ているのだが。
何故かあった白を基調としたそのパイロットスーツは、今の私の姿とよく合っていた。
ちなみに私は他の皆と比べて少し背が小さかった為、サイズの合うパイロットスーツを探すのに少し手間取らされたが、あちこちひっくり返してなんとか見つけることに成功したという裏話もある。
「それだけ?なら切るけど」
『ち、違うよ。伝えたいことがあるんだ』
……というのはさておき、時間もない中長々と話している訳にも行かず、用が済んだのならと通信を切ろうとしたのだが、どうやらまだ用件は終わっていないらしい。
画面の中のキラは少し気恥ずかしげな表情を浮かべていたが、一度深呼吸を行い、私に目を合わせて来た。
『さっきも伝えたけど、僕は君を1人にはしたくない。君はああ言ってたけど、僕らは君を人だと思ってるから』
「……」
さっきと言えば、アレのことか。
申し訳ないけど、何度言われても私の意識は変わらない。
キラも、マリューさんも、トール達も私が人間だと言うけれど、どうしても納得できない。
私の体は、いくらでも替えの利くヒトの模造品であり、”私"という意識自体も、元々この世界には存在しなかったのだから。
『きっと、今僕が何を言っても君には届かないと思う』
うん、まあ……そう。
曖昧な笑みすら浮かべられず、おずおずと頷いた私に、キラは目を細めた。
『……だから、皆と一緒に何度だって言う。君は人間だって、僕らと同じなんだって』
「っ」
僅かに息を呑む。
何故だか分からないが、胸の奥がとても暖かく感じた。
「私は――」
『キラくん!イブさん!』
理解できない感情のままに、何かを口にしようとするも、もう一つのモニターに映ったマリューさんの言葉に掻き消された。
『マリューさん!?どうしたんですか?』
『ザフトが来たわ!しかもイージスを投入して来てる!』
「……イージス。奪われたGの1機」
ストライクやデュエルと同じ第1期GAT-Xシリーズ、その4号機にあたるGAT-X303
……かの機体が姿を現したということは、アスラン・ザラが原作通りに出撃して来たということに他ならない。
まだデータの吸い出しも満足に済んでないであろう機体で来ていることから、無断出撃であろうことは想像に難くない。
「準備はできてます。マリューさんいつでも出れる」
『イブ……っ、ストライクも行けます!』
『ええ。2人とも、お願い!』
開かれたハッチの先に見える景色を見据え、一度目を瞑る。
心を無にして――目を開く。
「イブ、デュエル発進する」
『キラ・ヤマト!ガンダム、行きます!!』
サクサク行くとは……いったい……