機動戦士ガンダムSEED DUEL 作:デュエル好きの名無し
ストライク、デュエルの出撃から時は少し遡る。
ランチャーストライクが主砲、アグニの直撃を受け機体を損傷したクルーゼは、母艦であるナスカ級高速戦艦"ヴェサリウス”へと帰還していた。
「隊長!」
「いったい、何が……」
そんなクルーゼを出迎える2人のザフト兵。
赤服のアスラン・ザラと、緑服のミゲル・アイマンだ。
泣く子も黙るトップガン、ザフトが誇るエースパイロットたるクルーゼが、高々片腕を破壊されたくらいで撤退するなど普通は有り得ない。
だが現にこの上官は帰還した。ともなれば、その理由が気になっても仕方がないというべきだろう。
「情報にない新型の戦艦による乱入を受けた。強奪に失敗した2機も健在だ」
そんな2人に対し、クルーゼはあくまで冷静に淡々と伝える。
「戦艦!?」
「あの2機も…!」
「これ程の脅威を野放しにする訳には行くまい。急ぎD装備で出撃しろ!」
鋭い声で再出撃を命じるクルーゼに、ミゲルや他の数名のパイロット達は敬礼を返し己の機体へ飛びかかって行く。
「隊長、私も行かせてください!」
少しの間ミゲル達を見詰めていたアスランは、我に返った様子でクルーゼに告げる。
「……そうは言ってもだな。君の機体は本国にあるだろう」
一瞬呆気に取られたクルーゼだったが、隊長としての判断を元に正論を返す。
今回の任務において、G兵器の奪取要員に選ばれたアスランを含むクルーゼ隊の赤服達は、己の機体をプラント本国に置いてきており、この場にアスランが動かせる機体はなかった。
「しかし、っ!」
尚も食い下がるアスランに少しの引っ掛かりを感じつつも、クルーゼはアスランの肩に手を置く。
「今回は譲れ。ミゲル達の気持ちが分からない訳でもあるまい」
アスランに向けて一度頷き、クルーゼはそのまま格納庫を去った。
「……」
上官に聞き入れて貰えず、暫くの間俯いていたアスランだったが、やがて何かを決意したかのように顔を上げ、どこかに向けて歩き出した。
その視線の先には先の任務にて奪取したGの1機――イージスがあった。
「こいつら、っ」
「そォら落ちろ!」
要塞攻略用のD装備を装着したジンの持つ大砲――M69バルルス改 特火重粒子砲から放たれたビームの塊を、相対するデュエルがその手に構えたシールドで受け止める。
「ナチュラルが、生意気なんだよ!」
「こっの!落ちろってんだよ!」
「マシュー!オロール!タイミングを合わせろ、闇雲に撃っても相手の思う壷だぞ!」
放たれる砲撃の全てを1つの取りこぼしもなく、シールドで果敢に防ぐのにはある理由があった。
「コロニーの中でこんなものを……」
そう、ここはヘリオポリス。コロニーの内部だ。
こんなバカスカ撃たれてるビーム兵器が、シェルターにでも当たろうものなら大惨事間違いなしだ。
ジンに乗っているザフト兵に、民間人を守るなんて考えは欠片もないだろう。
どうせ連中からすれば、ヘリオポリスは連合に尻尾を振っていた裏切り者に過ぎない。
というか、そもそも民間人のみの字すら頭にないんじゃないだろうか?
「民兵組織とはいえ、これは」
ザフトは世界でも類を見ない志願制の軍隊――というより義勇軍であり、マトモな軍人教育も受けていない以上、その実態は武装集団と大差無い。
背後にあるプラント自体不法占拠といっても過言では無いのだから、むしろテロリストとでも呼ぶべきか?
この時代のザフトに比べたら、投降も受け入れる連合の方がまだマシ*1だろう。
「でも、流石に3機は厳しい……」
1発も取りこぼせない都合上、その全てをシールドで受け止める必要があるのだが、そのシールドは1つしかない。
実弾ならばフェイズシフト装甲を信頼し、デュエルを本体を盾にすることもできるが……ビーム兵器である以上破壊されて終わりだ。
「アークエンジェルを守るとはいえ、欲を出し過ぎた」
そもそも今回の敵戦力はD装備を装着したジンが3機に、無断出撃のイージスを加えた4機。
イージスはストライクが抑えているから除外するとして、残りの3機の内1機くらいは
……というか最初はそうだったのだ。
ミゲル・アイマンと、オロールというパイロットが操る2機と交戦中にアークエンジェルから飛んで来た通信を聞くまでは。
『デュエル、こっちにもジンが来ているぞ!何をしている!』
「っ!」
慌ててアークエンジェルがいる方向にメインカメラを向ければ、そこにはアークエンジェル目掛けて大砲を構えるジンの姿が。
「させない!」
ビームライフルで2機のジンを牽制、ビームサーベルを抜刀する。
僚機からの通信でも聞いたのか、モノアイをこちらに向けるジンに斬りかかり、注意をデュエルに引き付ける。
こうしている間にも放たれ続ける2機のジンの攻撃の数々も、ビームはシールドを滑り込ませることで受け止め、ミサイルはビームサーベルでの斬り払いで対応する。
「バッテリーは…まだある」
この体はスーパーコーディネーターの失敗作。その更に欠陥品な訳だが、長所くらいはあった。
それは学習能力の高さ。完成品であるキラと比べれば雲泥の差だが……比較対象を一般のコーディネーターにすれば勝機になる。
加えてあのラウ・ル・クルーゼとの戦闘だ。
あれには正しく意味があった。あの戦闘のお陰で、最初は無様な戦いしかできなかった私でも、こうして複数のジンを相手取れているのだから。
「とっとと死ね、ナチュラルが!」
「ん」
痺れを切らしたのか、突っ込んで来る1機に敢えて背を向ける。
「はっ、手こずらせてくれたなァ!」
サブカメラを通じ、腕を振り上げるジンを―――その背後から迫る無数のミサイルを見据える。
「マシュー!後ろだ!」
「後ろ!?ひっ、うああああああああぁぁぁ!!!」
「マシュー!!ぐっ!?」
「隙あり」
「―――!」
アークエンジェルから放たれたミサイルに群がられ、爆散するジンに気を取られた1機目掛けてタックルを仕掛ける。
いかにも重そうな装備を身に付けているジンに躱せる筈もなく、グラりと体勢を崩したところに、コクピット目掛けてビームサーベルを突き立てる。
荷電粒子の高熱を浴び、パイロットは悲鳴すらあげられずに蒸発。
その際に動力部もまとめて貫いたのか、残された機体もまた爆散する。
「オロール!?クソッ!」
「アークエンジェル、いい仕事」
目標に当たらずにコロニーを吹き飛ばさないか心配だけど、今回は上手くいったらしい。
…ただ、重い装備に頭に血が上ったパイロットという条件が揃った結果ということは忘れないようにしないと。
アークエンジェルにも伝え――遅かった……!
「当たるかよそんなもん!」
「アークエンジェル、攻撃は極力控えて!コロニーがもたない!」
『だが、ここで落とされる訳には!』
「民間人がいる!」
『くっ』
残る1機のジンに向かう無数の光弾を見て、慌ててブリッジに通信を繋げる。
モニターに映るナタルさんは不服そうだが、こればっかりは受け入れて貰わないと困る。
今のヘリオポリスは不安定なのだから、アークエンジェルの砲撃なんかがシャフトに直撃でもしてたら……なんて思ったついその時。
「「っ!?」」
ギギギ…という重苦しい音と共に、空が砕け、地にヒビが刻まれて行く。
ヒビから瓦礫が吹き上がり、コロニーが崩壊を始める。
「マズイ…!」
コクピット内に警報が鳴り響き、機体の制御が利かなくなる。
コロニーの中と外の気圧の差によって、スラスターを全開に吹かせても抗えない圧倒的な力が発生。
抵抗も虚しく、私はデュエルと共に暗黒の宇宙空間へと吸い出された。
時を同じくして、アスランが駆るイージスと対峙するキラのストライク。
『キラ!なんで君がそんな物に乗っている!?』
「アスランこそ、どうしてこんなことを!?」
互いに武器を向け合いながら、言葉を交わす2機のG。
『地球軍が、ナチュラル共が!こんなモビルスーツを作るからだ!』
「だからって……ヘリオポリスには民間人だって大勢いるのに!」
『隠れてナチュラル共とこんな物を作っていたんだ、同罪だ!』
「そんなのおかしいよ!君は何を言ってるんだ!?」
地球軍とGAT-Xシリーズを建造したヘリオポリスが悪いと主張するアスランに、民間人は関係ないと否定するキラ。
互いの叫びと叫びがぶつかり合い、膠着状態となる。
『それに……君だってコーディネーターだろ!なんでナチュラル共の味方を!』
「コーディネーターとか、ナチュラルとか、そんなの関係ない!僕は、友達を守りたいだけなんだ!」
『キラ…!?』
2機の機影は時折重なりながら、通信を繋げ続ける。
互いに相手の主張を聞き入れない様に、このまま永遠にも近い時間が流れようかと思われたその時……
『「!?」』
限界を迎えたヘリオポリスが崩壊する。
イブを乗せたデュエルと同様に、急激な気圧の変化により発生する力に呑み込まれるストライクとイージス。
『キラァァァァァァァァァァァ!!!!』
「うっ、ぐぅぅぅぅ!!」
2機のGは引き離され、それぞれ暗闇の覗く宇宙空間へと投げ出された。
何気にミゲルさん生存してますが、どの道死にます(壮大なネタバレ)